老人の身体の特徴
 
−皮膚−
 皮膚の色艶の変化、しわの増加、それに老人性色素斑とよばれるシミの増加・拡大などが、歳をとるに従って、徐々に起こってくる。顔の皮膚の変化は女性の最も気にするところである。皮膚の変化は生物学的な老化によるもの(すなわち内因性の老化)のほかに、紫外線による傷害の蓄積によるものもある。後者は光老化とか外因性老化とよばれ、歳とともに生じる皮膚の変化には、むしろこの影響のほうが大きいとさえいわれている。高齢者でも着衣に遮られて光線にさらされることが少なかった部位の皮膚変化は軽度である。一方、屋外での仕事を行っている人の露出部位の皮膚は、若くてもしわやシミが多い。
 顔のしわには額や目尻のしわのように習慣的な表情、すなわち、筋肉の収縮によって生じるものとそうでないものがある。前者の表情運動によってできるしわは、若いときには皮膚の弾性線維の伸縮によって運動が終了すれば直ちに消失するものであるが、歳をとると弾性線維に起こった変化がすぐには元に戻らなくなり、しだいに定着することになる。このようなしわは目のまわりから始まり、鼻根、額、眉間から口唇部へと広がる。後者のしわは皮下脂肪と真皮結合組織の変化に原因がある。コラーゲンが減少(20歳から80歳までに65%減少)し、真皮は全体に薄くなる。表層の細い弾性線維も減少し、また、弾性線維の網状構造が変化するため、皮膚の弾性が低下し、張りがなくなり、つまんだ皮膚がなかなか元に戻らなくなる。光老化では弾性線維の増殖と不規則化が起こる(日光性弾力線維症)。女性は男性に比べて真皮が薄く、そのため歳による変化の影響が皮膚表面に現れやすいのである。
 また、あまり汗をかかなくなる。これは汗腺(エクリン腺)の機能が低下するとともに、その数自体も減少するためである。このため、高齢者では、熱射病にも注意する必要がある。男性ホルモンに支配されているアポクリン腺の働きも低下する。
 
−毛髪−
 毛髪の変化としては、まず、頭髪が薄くなることがあげられる。頭髪は、こめかみ、頭頂部から薄くなり、しだいに広がっていき、最終的には額から頭頂部にかけて連続するようになるが、側頭部と後頭部の毛髪は残る。これは一般によく目立つはげのパターンであり、男性型脱毛症とよばれ、思春期以後に起こる思春期前に去勢された宦官にはみられないため、男性ホルモンの関与が考えられている。遺伝的要素が働いているということは、しばしば親と似た状態になることからも、想像される。頭髪が薄くなった部位には血流障害があるとの報告もあり、日本人を含む黄色人種や黒人に比べて白人で頻度が高い。
 毛は絶えず成長しているのではなく、成長期・退行期・休止期を繰り返しているわけだが、この男性型脱毛は、毛、すなわち毛包の数が減少するのではなく、毛周期を繰り返すうちに毛包が縮小し、硬毛を産生する能力がなくなり、軟毛を産生するようになった状態なのである。一方、老人性の脱毛は一定のパターンをつくらず、毛包が破壊・消失し、その数自体が減少する。毛包の密度は、30歳代から80歳代までに40%弱減少する。もちろん、生えてくる毛の太さ、強さも低下する。しかしながら、男性型、老人性、両者の境界は、必ずしもはっきりしたものではないようである。耳、鼻、眉毛の毛は、歳をとっても成長を続ける。女性では、閉経後女性ホルモンのエストロゲンの濃度が低下すると、鼻の下の毛が目立ってくることもある。逆に脇毛は高齢になると減少する。とくに日本人女性ではなくなることも多い。
 毛髪のもう1つの変化に白毛化がある。通常は35歳ごろから白毛化が起こる人がみられるようになり、その数は徐々に増加する。健康な人でも、20歳前後に頭髪の白毛化が出現し、40歳ぐらいで全頭部に広がる若年性白毛もあり、これも家族性に出現する。白毛化は、こめかみから始まり、頭頂部に、さらに後頭部へと広がるのが一般のパターンである。頭髪に続いて鼻毛、眉毛、睫毛の順に白毛化が進む。脇毛、陰毛の白毛化も頭髪より遅れる。
 毛髪の黒色はメラニンである。メラニンは毛母上部に存在する色素形成細胞で作られ、その樹枝突起より毛髪皮質細胞中に摂取される。この色素形成細胞の減少が、老化に伴う白髪化の主原因である。頭髪の白毛化は老化の最もわかりやすい徴候であり、老化過程の最も信頼できる指標との報告もあるが、それでもヘイフリック(Hayflick)によれば、それは老人の65%についてのみいえることであり、残りの35%の人は白髪でないか、かなり高齢になるまで白髪にならない。
 
 
◆老人の体とこころの変化◆   TOP
老化とは老人にみられる病気の特徴老後を健やかに過ごすために
◆正常と異常の見分け方◆
体温呼吸脈拍血圧こころ身長・体重体型・姿勢・歩行
皮膚・毛髪|目・耳
 
コンテンツ一覧
老人の身体の特徴
お問い合わせ | 特定商取引に関する法律に基づく表示  Copyright (C) 2009 WORLD PLANNING Co, Ltd. All Rights Reserved.