老人の身体の特徴
 
−身長−
 身長と座高は、40歳代でともに減少し始める。この減少は女性より男性のほうに早くみられる。東京都小金井市で15年間(70歳から85歳まで)にわたって行われた縦断研究(東京都老人総合研究所,徳田ら)によれば、身長の低下は15年間の平均で、男性約2.3%(70歳時の値を基準として)、女性約3.9%である。身長の減少には複数の原因が絡んでいるが、女性の低下率が大きい第一の原因は骨粗鬆症である。また、座高の変化のほうが大きい。これは、背筋の萎縮、椎骨と椎間板の退行変性による脊柱の変化が大きいためである。年齢的には、70歳から75歳までの低下率より、80歳から85歳までの低下率のほうが男女とも低い。40歳代から始まる身長の低下は歳とともにしだいに大きくなるといわれていることから、最も変化が大きいのは60歳代から70歳代であるということになる。
 近年、日本を含めた多くの地域で、またほとんどの年齢層で、平均身長が上昇しているため、横断研究では高齢者の身長減少を過大評価してしまうことになる。結果の解釈には十分な注意が必要である。
  
−体重−
 体重は、中年で増加し、老齢で減少する。男性では30歳代が最大であるが、女性では40歳代で最大値を示す(横断研究の平均値)。体重の増加は脂肪の増加によるものである。腹部の脂肪の増加は、男性では成人初期から中年の間に起こるが、女性では閉経後まで起こらない。また女性では男性に比べて、腹部の脂肪分布が少ない。
 体重の減少は筋肉、水分、骨の減少による。先にあげた東京都小金井市の調査では、男性で70歳から85歳までに53.1kgから50.0kgと約5.8%減少し、女性では47.2kgから43.0kgと約8.9%減少している。体重に占める水の割合は老齢で減少する(男性:若年者61%、57〜86歳54%、女性:若年者51%、60〜82歳46%)が、これは細胞の喪失、あるいは細胞が小さくなるためと考えられる。
 体格指数(Body Mass Index ; BMI)と死亡率との関係は、U字型またはJ型を示す。体格指数は体重(kg)/[身長(m)X身長(m)]で割り出され、やせすぎ太りすぎの人の死亡率は高い。総死亡率が最も低い体格指数は年齢によって変化し、男性の場合には20歳代で21.4、40歳代で22.9、60歳代で26.6との報告がある。ただし、死因によって最低死亡率を示す値は異なる。実験用に飼育されている動物では、食事(エネルギー)制限をされているラット(体重は自由にエサを食べていたものの60%程度)のほうが自由にエサを食べることができるラットより長生きである。平均寿命ばかりでなく、最大寿命も延びる。このエネルギー制限の効果はラットに限られたものではなく、ミジンコ、昆虫、魚でも観察されている。
 今日の日本人の食事量は、欧米人と比べた場合、制限されたラットのそれに、ほぼ相当するのではないかと考えられている。日本人の1日に摂取する総エネルギーは約2、000kcalであり、これは欧米人の約3、000kcalに比較してみて、ちょうどラットにおけるエネルギー制限状態にあるというのである(柴田博「元気に長生き元気に死のう」参照)。エネルギー制限と寿命の関係は老年学における重要な研究テーマの1つである。
 
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