第1回(4月23日)
痴呆症の介護と普通の介護との違いの有無は?
(その1)

 

 介護の「理念」と「心と技術」の基本に違いはありません。人格を尊重し、対等な関係で関わり信頼関係を大切にする。自立支援とその人らしい質の高い生活を保つという点でも同じです。
 但し、「痴呆症」という病気としての特徴を理解していないと、介護者の心身の負担が大きく、介護が円滑に出来ない、持続しにくいと言えます。ヘルパーもある程度経験がないと長続きしない場合が多いものです。特に、痴呆の初期から中期の方は一見普通、活動的です。(時に暗くうつ病的な人も)長時間お付き合いしていると言動がおかしいことに気がつきます。
 痴呆症の方の特徴は、物忘れ等、記憶や理解の回路が支障をきたしている(失見当識)のために、不安感が強く、混乱しやすい。身内に猜疑心を抱き易い、一方他人に対しては警戒心・緊張感が強く一見しっかりして病気とは分かり難い点にあります。又、夕方から夜中にソワソワして、時間帯によって対人関係がむつかしくなり、興奮・拒否そしてせん妄(普通の人に見えないものが見えると訴える)等が強く見られる、徘徊をする等の方がいます。言動や気分、体調に波があります。
 一見、異常・突飛に思える行動でも痴呆の方なりの理由が必ずあると言われていますが混乱が始まると、落ち着くまでに時間がかかります。
 高齢者や障害の方の介護と違いがあるとすれば、(1)排泄・食事等の日常生活動作の全てに時間のゆとりが必要、(2)人間関係・介護の積み重ねが効かず、その場その場の対応が大切、(3)見守りの介護が主体になる、(4)時間の予定が立ち難い、(5)特にコミュニケーションの取り方が大切、(6)近隣等の周りの理解・協力が必要等の点です。
 私がヘルパーとして携わったケースは、初期から中期の痴呆の男女で、高血圧、動脈硬化による片麻痺、大腿骨骨折による人工関節、慢性関節リュウマチなどの病気が複合化しているが、ある程度自立していて、排泄、歩行等の日常生活動作に一部身体介助が必要な方達でした。見守りをしながらの身体介護でした。
痴呆の後期や寝たきりの方の場合は通常の病気の介護と同じと言えましょう。

次回へ続く

 
第1回(4月23日) 痴呆症の介護と普通の介護との違いの有無は?(その1)
第2回(5月7日) 痴呆症の介護と普通の介護との違いの有無は?(その2)
第3回(5月24日) コミュニケーションが大切、関係づくりは芝居の要領で
第4回(6月11日) 痴呆症の方は自分から喉の渇きを訴えないことも。
水分補給はまめに (その1)
第5回(8月3日) 痴呆症の方は自分から喉の渇きを訴えないことも。
水分補給はまめに (その2)
第6回(8月17日) トイレの意思表示がある前に、早めのお誘い、ついでのお誘いを(その1)
第7回(9月17日) トイレの意思表示がある前に、早めのお誘い、ついでのお誘いを(その2)
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