痴呆症の方は自分から喉の渇きを訴えにくいものです。水分は食事と同様に命綱。タイミングよく積極的に飲んでもらうためには真剣な努力と工夫が必要です。
老老介護をしている70代の奥様で、「寝たきりの痴呆の夫(80代)が欲しがらないから」といって水分補給を面倒がる方がいました。そこで、ヘルパーが入っている間に、ご夫婦にお茶をご一緒していただき、「○○さんは体格が良いからもう1杯いかが?」と呼びかけてみると、ご主人は頷いてゴクゴクと喉を鳴らして飲まれました。
1回で補給できる水分の量には限界がありますが、それでも、味噌汁やスープ、牛乳、濃縮栄養飲料類とは別に、1日に1000mlの水分は必要です(腎臓病などで水分補給が制限されている人は除いて)。その奥様には「1日に牛乳パック1本分か、カップに5〜6杯は水分が必要ですから、食事時以外にも10時や3時と時間を決めて差し上げてください。特に早朝、お目覚め時や朝食が遅い時には牛乳じゃなく白湯でも構いませんので、50〜100mlをとりあえず飲んでもらってください。飲んだ回数とオムツ替えの回数をノートやカレンダーに記入しておくとリズムがつかみやすいですよ」とお話ししておきました。結局、そのご夫婦の場合は、近所に住むご家族の要望により24時間巡回介護も入るようになって、朝のオムツ替えや水分補給も効率的にできるようになりました。
老老介護の場合は、介護する側も自分のことだけで精一杯ですから、介護することへのやる気が持続し難いものです。社会的介護が必要と実感しました。また、長年の夫婦の関係も介護姿勢に表れているように推察されます、わが身を顧みて勉強になりました。
次回へ続く
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