認知症になったとき -老人のための家庭医学百科-
認知症は誰にでも起こりうる問題です。
 あなたが現在認知症老人を抱えているわけではないとしても、身近な人が認知症になってしまったときにどうすべきか、相談できる施設やサービスにはどのようなものがあるのかなど、前もって知っておきたいものです。

 1.認知症とわかったら、まずなにをすればよいか
 2.公的制度の利用
 3.サービスを受けられる施設とその内容
 4.医療施設の選び方
 5.スムーズな家庭介護を行うために
 6.介護保険制度の利用
1.認知症とわかったら、まずなにをすればよいか
認知症とわかった場合にまず第一に重要なことは、認知症に対する理解と正しい知識をもつことです。その認知症がどのような原因で起こり、治療によって治せる認知症か、治せない認知症かを正しく鑑別診断してもらうことが重要です。
 認知症の原因疾患には、いろいろなものがあります。そこで原因疾患を治療が可能か否かという点でまとめてみましょう。
 治せない認知症の代表は、アルツハイマー型認知症で、現在のところ原因が不明であり、残念ながら確かな治療法がありません。これ以外の退行変性に基づく疾患による認知症についても、同様にまだよい治療法がありません。
 治せる認知症には、甲状腺機能低下症、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、脳腫瘍、低酸素血症、薬物による認知症、ビタミン欠乏に伴う認知症、うつ病(仮性認知症)などがあります。これらの疾患による認知症は、早期の発見と適切な治療により治せる可能性があります。また、脳血管障害(脳出血、脳梗塞など)が原因となって発現する脳血管性認知症は、治療はむずかしいとはいえ進行を抑えて症状を軽くすることができます。しかし、これらの病気においても、脳の破壊が高度に進んでしまったものは治すことができません。
 それでは、正しい診断をしてもらうにはどうしたらよいのでしょうか。認知症性老人が家庭で生活するなかで、保健、医療、福祉面の相談・治療、およびサービスを受けられる機関とその内容を簡単に述べます。
(1)医療機関
 まず、大学病院や総合病院の内科、精神科、精神病院および精神科診療所で専門医の診察を受けて、正確な診断をくだしてもらうようにします。なお、かかりつけの医師がいる場合は、その医師に相談して、認知症患者を扱っている専門医療機関を紹介してもらうことです。
(2)老人性認知症疾患センター
 厚生省の老人性認知症疾患センター事業として、都道府県によって精神科を有する総合病院などに設置されており、保健医療・福祉機関と提携をはかりながら、老人性認知症疾患患者などの専門医療の相談、鑑別診断、治療方針の選定、夜間や休日の救急対応にあたっています。治療が目的の長期入院はできません。
 病院によっては、予約が必要だったり、自治体の相談窓口や保健所をとおさないと受診できないセンターもありますので、詳しいことは保健所などに問いあわせてください。
 ここ数年で多くの施設がオープンしているほか、保健所、福祉事務所および市区町村の老人福祉担当課、精神保健センターが在宅の認知症性老人についての相談に応じてくれます。
(3)保健所
 保健所は、地域における精神保健の第一線機関であり、在宅の認知症性老人やその家族への支援サービスの一つとして、老人精神保健相談指導事業がすすめられています。このサービスは、第一に老人の認知症疾患の予防などについて地域住民に普及啓発を行う、第二に相談窓口を設置して認知症性老人の介護(ケア)の相談や指導を実施する、第三に各関係機関との連絡をとり適切な処置がなされるよう配慮し相談ケースの処理を行うことなどであり、より身近なアドバイスが受けられるものです。
(4)福祉事務所
 福祉事務所は、福祉に関する現業事務所であり、家族が出向けば認知症性老人についての相談や指導が受けられ、各種の福祉サービスが受けられます。

認知症とわかったら、まずなにをすればよいか公的制度の利用サービスを受けられる施設とその内容
医療施設の選び方スムーズな家庭介護を行うために介護保険制度の利用


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