認知症になったとき -老人のための家庭医学百科-
認知症は誰にでも起こりうる問題です。
 あなたが現在認知症老人を抱えているわけではないとしても、身近な人が認知症になってしまったときにどうすべきか、相談できる施設やサービスにはどのようなものがあるのかなど、前もって知っておきたいものです。

 1.認知症とわかったら、まずなにをすればよいか
 2.公的制度の利用
 3.サービスを受けられる施設とその内容
 4.医療施設の選び方
 5.スムーズな家庭介護を行うために
 6.介護保険制度の利用
5.スムーズな家庭介護を行うために
 介護の基本は在宅であり、認知症の人にとっても、家で介護・療養ができればそれが最も自然であり好ましいことです。
 認知症になると、日常生活に少なからず支障をきたし、だれかの手助けが必要になります。しかも日常における世話の仕方によって、認知症の人の病状に大きな影響がでます。
 しかし、実際には1人の在宅認知症の人を支えるために、家族の1人が24時間張りつくことになります。その結果、家族は極度に疲労し、家庭生活が破壊されそうになったりすることもあるわけです。そこで、たいへんな介護をのりきるためには特定の介護者に全責任を負わせるのではなく、家族や身内で一致協力して行うことが必要になります。

 早い段階から訪問看護による看護や介護指導を受けたり、ホームヘルパーの派遣、ショートステイ、デイサービスなどの制度を有効に活用することで介護負担を軽くすることができます。福祉事務所に相談にいき、ホームヘルパーの派遣をお願いしたり、上手にデイサービス、ショートステイなどの施設ケアを活用することです。

 家族介護でいちばん大切なことは、この病気に対しての正しい知識と理解です。基本的な介護については、日常の健康管理に注意します。生活面では、食事、排泄、入浴、着衣などがきちんとできるように世話をします。環境の面では、住む環境をできるだけ変えないように配慮します。
 認知症の人と家族の会東京支部の笹森貞子氏は認知症の人への接し方の4つの基本を、
   1) まず認知症の人を安心させること
   2) プライドを傷つけないこと
   3) 老人のペースにあわせること
   4) 事故を防ぐ工夫をすること
としています。
 したがって、介護者の認知症の人への愛情と献身的な努力とそれに対する社会的支援サービスが必要です。同じ悩みを抱えている他の介護家族との連携をとることなどもストレス解消としてよいことです。
 たとえば、歳をとって他人と交際がなく、生きがいもなく、趣味もなく、1人寂しくぼんやりと暮らしている老人は、軽い認知症にかかると、同じ生活を続けて3、4年もすると重症認知症にまで進行してしまいます。生活意欲の失われ始めた老人に対して、家庭ぐるみ、地域ぐるみの交際、交友の促進、人の集まりに出席させたり、生きがい発見のためのゲーム・スポーツなどをさせたり、足腰の鍛錬を行うことが大切です。
 なお、問題行動(徘徊、不潔行為、不穏、攻撃的、興奮、異食など)や精神症状(不安、せん妄、幻覚、妄想、不眠など)が現れた場合は、家族の手に負えないことが多く、そのときは精神科的医療を受けるために入院が必要となります。
 介護者が老人の心を思いやり、心をこめてみてあげると、気持ちが通じることが多いのです。その老人にあった方法を見いだし、工夫することが大切です。
 最後に、在宅の認知症の人を介護するうえで、力になってくれる、前述したもの以外のおもな相談窓口とその内容を紹介します。
(1) 高齢者総合相談センター(シルバー110番)
 医療、保健、福祉などについての老人や家族からの心配、悩みに対する相談に応じてくれます。全国の各都道府県に設置されたセンターでは電話相談も行われ、電話番号は、プッシュホンの場合は全国共通で#8080となっています。
(2) 認知症てれほん相談
 相談日時は火・金曜日(祝祭日を除く)の午前10時〜午後4時です(電話:03-3269-4167)。
(3) 認知症の人と家族の会(日本アルツハイマー病協会)
   「認知症の人をかかえる家族などの交流をとおして、認知症の理解を深め、認知症の人とその家族への援助と福祉の向上を図ることを目的とする」認知症の人の家族の集まりで、全国39都道府県に支部があります。ぼけ老人の介護体験を通じて介護のアドバイスや、施設、サービスの利用の方法などの相談にも応じてくれます。そのほか、認知症の人に対する福祉政策の向上にも取り組んでいます。相談日時は月〜金曜日の午前10時〜午後4時です(電話:075-811-8195)。
(4) 在宅介護支援センター
  在宅で寝たきりや認知症など介護を必要とする老人を抱える家庭に対して、専門家が在宅介護に関する総合的な相談に応じ、市町村の窓口に行かなくてもその家庭が必要とする医療、保健、福祉サービスが気軽に受けられるよう、在宅介護の支援の拠点として、おもに特別養護老人ホーム、老人保健施設、病院などに併設されています。専門家として、ソーシャルワーカーと看護婦または保健婦と介護福祉士が24時間体制で相談できるようにおかれています。

認知症とわかったら、まずなにをすればよいか公的制度の利用サービスを受けられる施設とその内容
医療施設の選び方スムーズな家庭介護を行うために介護保険制度の利用


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