認知症になったとき -老人のための家庭医学百科-
認知症は誰にでも起こりうる問題です。
 あなたが現在認知症老人を抱えているわけではないとしても、身近な人が認知症になってしまったときにどうすべきか、相談できる施設やサービスにはどのようなものがあるのかなど、前もって知っておきたいものです。

 1.認知症とわかったら、まずなにをすればよいか
 2.公的制度の利用
 3.サービスを受けられる施設とその内容
 4.医療施設の選び方
 5.スムーズな家庭介護を行うために
 6.介護保険制度の利用
6.介護保険制度の利用
 2000年4月から介護保険制度がスタートしました。介護保険制度は、40歳以上の方が保険料を支払い、介護が必要となったときにサービスを利用するという社会保険制度です。従来の、措置に基づく福祉の考え方ではなく、利用者側が自分の要望や好みに応じて最適と思われるサービスを受けるために、自分の意志でサービスを選択できることが特徴です。サービスの利用時には、保険者である市町村へ申請し、要介護または要支援認定を受けた後、サービス提供機関を自由に選択して契約を交わし、原則として利用したサービス費用の1割を負担することになります。
(1) 対象者
 介護保険の対象者は、年齢により2つに分かれます。また、サービスを利用できる条件も各々の場合で異なります。

A)第1号被保険者
 65歳以上で市町村から介護が必要であると「認定」を受けた者。

B) 第2号被保険者
 40〜64歳の医療保険加入者で、老化が原因とされる病気(特定疾病−参照)で介護が必要と「認定」を受けた者。

*注 : 特定疾病として以下の15種類が定められています。
1.初期の認知症 2.脳血管疾患 3.筋萎縮性側索硬化症 4.パーキンソン病 5.脊髄小脳変性症 6.シャイ・ドレーガー症 7.糖尿病の合併症 8.閉塞性動脈硬化症 9.慢性閉塞性肺疾患 10.変形性関節症 11.慢性関節リウマチ 12.後縦靭帯骨化症 13.脊椎管狭窄症 14.骨折を伴う骨粗しょう症 15.早老症
(2) 申請からサービス開始まで
申  請 各市町村の窓口または地域の在宅介護支援センターに申請します。申請は、本人または家族のほかに、指定居宅介護支援事業者や介護保健施設による代行申請も可能です。
認定調査 訪問調査 主治医の意見書
調査員が家庭を訪問し、全国共通の調査票をもとに認定調査して、コンピュータ処理によって一次判定結果を出します。 かかりつけ医などが医学的管理の必要度と疾病、負傷の状態を診断し、意見書を作成します。
審査判定 介護認定審査会による審査・判定
訪問調査と意見書をもとに、各分野の専門家による介護認定審査会が審査・判定します。
要介護
1・2・3・4・5
要支援 再調査 非核当
認定通知

本人へ通知

審査判定後、認定結果通知および被保険者証を郵送します。通知は原則として申請から30日以内に郵送されますが、30日を過ぎる場合は、認定結果通知が遅れる理由を記した通知が届きます。また、認定結果に不服がある場合は、都道府県の介護保険審査会に審査請求をすることができます。

要介護・要支援者

ケアプラン
の作成
介護支援専門員(ケアマネージャー)にケアプランの作成を依頼します。作成のための料金はかかりません。 自分で利用計画を立て、市町村に提出します。

契 約

ケアプランが決まったら、契約書の内容・条件に問題はないかをよく確認し、サービスの種類ごとに各々の事業者と契約します。また、サービス利用料の1割は利用者の負担になるため、料金についても確認が必要です。

サービスの
利用

サービスを利用するときには、サービス利用票と介護保険の被保険者証を利用機関に提示します。
 
(3) 介護支援専門員(ケアマネージャー)とは
 保健・医療・福祉サービス従事者のうち、一定の実務経験があり、試験に合格した後に実務研修を終了した人が担当します。利用者からの相談に応じて利用者の希望や心身の状態にあったサービスが利用できるよう、ケアプランを作成したり、区町村、在宅サービス事業者、介護保険施設などとの連絡や調整を行うのがケアマネージャーです。
 ケアプランを立てるときなどは、ケアマネージャーの能力次第でプランの良し悪しが決まってしまうため、十分に検討して信頼できるケアマネージャーに依頼することが重要です。また、担当したケアマネージャーに不満があるときなどは担当をかえてもらうこともできます。ちなみに、ケアマネージャーは各在宅介護支援事業者や各在宅介護支援センターなどに所属しています。
(4) 保険で受けられる在宅サービスの利用上限額(全国平均)
 利用者負担額は原則として、下記の利用上限額の範囲内で実際に利用した金額の1割となります。ただし、利用するサービスの種類によって金額は異なります。詳しくはケアマネージャーにお問い合わせください。  
 


 在宅サービス
要介護度 ケアプランのめやす 訪問通所サービス利用上限額(月額) 短期入所サービスの利用日数
(半年)
要支援 ・週2回の日帰りで通うサービスを利用する 61,500円 7日
要介護1 ・毎日、ホームヘルパーなど何らかのサービスを利用する 165,800円 14日
要介護2 ・週3回の日帰りで通うサービスを含め、毎日何らかのサービスを利用する

194,800円

14日
要介護3 ・夜間(または早朝)のホームヘルパーなどのサービスを含め、1日2回のサービスを利用する
・医療の必要性が高い場合に、週3回の訪問看護を利用する
・認知症の方については、週4回の日帰りで通うサービスを含め、毎日サービスを利用する
267,500円 21日
要介護4 ・夜間(または早朝)のホームヘルパーなどのサービスを含め、1日2〜3回のサービスを利用する
・医療の必要性が高い場合に、週3回の訪問介護を利用する
・認知症の方については、週5回の日帰りで通うサービスを含め、毎日サービスを利用する
306,000円 21日
要介護5 ・早朝、夜間のホームヘルパーなどのサービスを含め、1日3〜4回程度のサービスを利用する
・医療の必要性が高い場合に、週3回の訪問介護を利用する
358,300円 42日


利用上限額は、全国平均の金額です。具体的な上限額は、同じ要介護度であっても、利用するサービスの種類によって異なります。詳しくはケアマネージャーにお問い合わせください。
訪問通所サービスとは、訪問介護、訪問入浴介護、通所介護、訪問看護、訪問リハビリ、通所リハビリ、福祉用具の貸与を指します。
(5) 保険で受けられる施設サービスの平均利用額(食費を含む、23区内の平均利用額)

 施設サービス
施設の種類 平均利用額(月額) 利用者負担額(月額)
特別養護老人ホーム   336,000円 50,000〜60,000円程度
老人保健施設 367,000円
療養型病床群等 441,000円
施設サービスの利用者負担額は、サービス利用費用の1割と食事負担等をあわせた金額になります。
施設サービスについては、施設の種類、要介護度ごとに利用額が決まるため、在宅サービスのような利用上限の定めはありません。
(6) 介護保険の保険料

A) 65歳以上の方(第1号被保険者)

 保険料の納め方は、(1)年金が支払われるときに天引きされる、(2)個別に納付する、の2通りがあります。保険料額は市町村ごとに決められており、5段階に設定されています。所得に応じてどの段階になるかが決まります。


 保険料の納め方
老齢・退職年金の受給額が年間18万円以上の方 年金から天引き

 ・老齢・退職年金の受給額が年間18万円未満 の方
 ・課税の対象でない年金を受給している方
 ・無年金の方

銀行・郵便局での窓口納付
または口座振替
どちらも年6回(偶数月)に分けて納めます。


 保険料額(月額)の1例
第1段階 老齢福祉年金受給者で世帯全員が住民税非課税または生活保護受給者

 1,650円
 (基準額×0.5)

第2段階 世帯全員が住民税非課税  2,475円
 (基準額×0.75)
第3段階 本人が住民税非課税  3,300円
 (基準額)
第4段階 本人が住民税課税で年間合計所得が250万円未満  4,125円
 (基準額×1.25)
第5段階 本人が住民税課税で年間合計所得が250万円以上  4.950円
 (基準額×1.5)
基準額は市町村の高齢者数やサービスを必要とする人数、サービスの供給量などから算定します。
 B) 40〜64歳までの方(第2号被保険者)
第2号被保険者の保険料は加入している保険料に上乗せされ、一括で納付します。保険料は各医療保険者ごとに異なります。納付された介護保険料は、各医療保険者からいったん「社会保険診療報酬支払基金」に集められ、その後市町村に分配される仕組みになっています。

被保険者

介護保険料
医療保険料

医療保険料

社会保険診療
報酬支払基金

市町村



 保険料の納め方と保険料額
加入の医療保険 納め方 保険料額
 社会保険の方 ・給与から天引き
・被扶養者には直接の負担なし
・標準報酬月額によって決定される
・保険料率は医療保険者ごとに異なる
 国民健康保険の方 ・世帯主が世帯中の第2号被保険者分を納付 ・前年の所得に応じて決定
詳しくは各医療保険者にお尋ねください。

認知症とわかったら、まずなにをすればよいか公的制度の利用サービスを受けられる施設とその内容
医療施設の選び方スムーズな家庭介護を行うために介護保険制度の利用


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