−急性腎不全−
◆どのような病気か?◆
ショック(血圧が低下したり、意識がなくなる状態)、腎毒性物質などの原因で腎臓の機能が急速に低下し、体液の乱れがでた状態を急性腎不全といいます。慢性腎不全との大きな違いは、早期に治療を行えば、多くの例で腎機能障害が回復する可能性があることです。急性腎不全は、通常、乏尿(1日の尿量が400ミリリットル以下)を伴いますが、場合によっては尿量が普通に出ていることもあり、これを非乏尿性急性腎不全といいます。
原因としては、腎前性、腎性、腎後性の3つに大別されます。腎前性とは、腎臓はとくに悪くないのに血圧が下がったために、尿のもとになる血液が腎臓に流れなくなり、尿量が減る状態です。腎性は腎臓自体が悪くなる状態で、腎後性とは尿路結石などで尿が流れ出なくなる状態をいいます。
腎不全は、虚血性急性腎不全、腎毒性急性腎不全の2つに大別されます。前者は出血性ショックやエンドトキシンショックなどに引き続いて生じ、後者は抗生物質などの薬物によって生ずる例が典型的なものです。
◆症状と特徴◆
症状としては、尿量が減少して、乏尿あるいは無尿(1日の尿量が100ミリリットル以下)となります。また、体に水分・塩分がたまり、体重が増加したり、むくみ(浮腫)が生じたり、息切れ、呼吸困難などの心不全症状も出現します。そして、赤血球が減少し貧血も起こり、少し歩いても動悸が起こります。老廃物が排泄できないので、それと平行して血液の尿素窒素、クレアチニンが上昇します。とくに注意しなければならないのはカリウムの上昇で、急激に高くなると心停止となることもあります。カリウムは果物や野菜に多く含まれているため、生の果物、野菜の摂取制限が必要です。また、体が酸性になるために悪心(気持ちが悪い)、嘔吐、食欲不振が起こります。体の水分・塩分量増加によって、高血圧も認められます。
感染症としては、呼吸器、腎尿路、外傷が感染巣となり、敗血症の頻度が高くなっています。
◆治療◆
治療の原則は、尿毒症状態の正常化、原因となる疾患の治療、合併症の予防、十分な栄養の補給です。
急性腎不全における透析療法の開始時期は、肺水腫、精神神経症状がみられ、乏尿が3日間続いた場合や、血清電解質異常(高カリウム血症、高窒素血症、代謝性アシドーシス)がみられた場合に考えます。
−慢性腎不全−
◆どのような病気か?◆
数か月ないし数年間にわたる持続性の機能不全によって起こる状態を慢性腎不全といいます。腎機能を進行性、不可逆性(もとに戻らない状態)に低下させる疾患はいずれも慢性腎不全の原因となります。
慢性腎不全を病期分類でみると、腎予備力低下、腎機能の不十分期、腎代償不全期、尿毒症の順に分けられます。
腎予備力低下とは、ネフロン(血液をろ過して尿をつくるシステムである糸球体とそれに付属する尿細管を示す)が約50%障害されていますが、腎の排泄、調節機能は正常な状態をいいます。腎機能不十分期は、軽度の高窒素血症、尿濃縮力低下、夜間多尿がみられ、腎機能は正常の50〜30%です。腎代償不全期は、高窒素血症、アシドーシス(血液が酸性に傾く状態)、低ナトリウム血症、高リン血症、低カルシウム血症、高度の貧血、尿濃縮力の著しい低下がみられ、腎機能は正常の30〜5%です。尿毒症では、腎機能の著しい低下(5%以下)がみられ、電解質異常、高血圧、全身性多臓器障害を認めます。
◆症状と特徴◆
慢性腎不全の症状も急性腎不全とほとんど同じですが、徐々に起こってくるのが特徴です。水分・塩分の増加のために高血圧、心不全、肺水腫が起こり、体の酸性化による吐きけ、嘔吐、食欲不振が起こります。
慢性腎不全では急性腎不全でみられない腎性骨異栄養症が起こります。これは腎で活性化されるビタミンDの不足による低カルシウム血症と、高リン血症による副甲状腺ホルモン過剰が原因です。
◆治療◆
慢性腎不全の病期に対して適切な治療が必要です。大別すると、食事療法と薬物療法があります。
食事療法では、低タンパク食(0.5〜0.8グラム/キログラム)、低塩食(とくに高血圧を合併する場合は0〜5グラム/日とします)、水分制限(浮腫や体重増加の認められないときは制限は必要としないが、腎機能が極度に低下したときは尿量+200〜500ミリリットルとします)、カリウム制限(高カリウム血症の場合、カリウムを1日40〜70ミリグラムに制限します)が行われます。
薬物療法では、降圧薬、利尿薬、リン吸着剤、高カリウム血症の補正、アミノ酸製剤、アシドーシスの是正、低カルシウム血症の補正、貧血の改善が行われます。 |
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