◆どのような病気か?◆
慢性肝炎とは、肝炎ウイルスによる慢性的な肝障害で、急性ウイルス肝炎が一定期間経過しても治癒しないものや、同じような症状の肝炎をいいます。また、臨床的または病理組織学的に肝硬変であると診断される状態に陥っていないものをいいます。
しかし、肝炎ウイルス以外にも慢性肝障害の原因となるものには種々のものがあり、代表的なものをあげるとアルコール性肝障害、薬物によるもの、中毒によるもの、脂肪肝、ウイルソン病、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、ヘモクロマトーシス、ポルフィリン症などがあげられます。
ここでは、現在インターフェロン治療が注目されているウイルス性慢性肝炎をとりあげます。
(1)B型慢性肝炎
B型肝炎ウイルスの肝細胞内における増殖は、生体のB型肝炎ウイルスに対する免疫反応によって決まってくることがわかってきています。つまり生体の免疫機能が十分に発達していない幼少児期にB型肝炎ウイルスに感染すると、B型肝炎ウイルスに対する抗体がつくられずB型肝炎ウイルスが持続的に感染しているキャリアという状態になります。こうして20歳前後になって肝炎を発症しますが、B型肝炎ウイルスに対する抗体をつくる免疫力が十分でないため、B型肝炎ウイルスが体内から排除されないまま慢性肝炎となっていきます。成人になってB型肝炎ウイルスにはじめて感染したときには、通常(免疫不全症などの状態でないとき)は抗体がつくられ、ウイルスは排除され、急性肝炎として治癒します。
結局、B型肝炎ウイルスキャリアの母親からの胎盤を通しての感染、または出産時の産道での感染によってB型肝炎ウイルスキャリアとなり、このキャリアからの発症が慢性B型肝炎の主要なものです。
(2)C型慢性肝炎
C型肝炎ウイルス(HCV)の発見に成功したのが1988年で、HCV抗体の測定が実用化されてまだ数年しかたっていませんが、従来から非A非B型肝炎として研究が進められてきたこともあって、C型肝炎に関してはかなりのことがわかっています。日本には約120〜150万人の慢性肝炎患者がいると推定されていますが、その約70%がC型肝炎ウイルスによるものです。この約50%が輸血後肝炎であり、残りは医療行為を介しての感染、覚醒剤のまわし打ち、入れ墨などによる感染と考えられています。
C型慢性肝炎はきわめて難治性で、自然治癒は0.2%程度しかないといわれているほどです。逆に高率に肝硬変、肝臓がんに移行しやすく、10年で約30%の症例が肝硬変に、20年たつと約50%の症例が肝臓がんになるといわれています。しかし、C型慢性肝炎のなかでもとくにV型C型肝炎ウイルスによる活動性肝炎に対しては、インターフェロン治療が広く行われるようになってきています。
◆症状と特徴◆
B型慢性肝炎、C型慢性肝炎とも自覚症状が乏しく、約半数の人はまったく自覚症状がありません。自覚症状としては、全身倦怠感、易疲労感、食欲不振が最も多く、黄疸を示すことはきわめてまれです。老人は、病気の見通しについて不安なことが多く心身症もでてくることがあります。このため慢性肝炎は、健康診断や献血時の肝機能検査などで偶然発見されることが最も一般的です。
緊急時の応急処置
緊急に応急処置が必要となることは慢性肝炎の段階ではほとんどありません。 |
|