けが、事故などの場合
1.転倒による骨折


懸垂ギプス
包帯法

肘を直角に曲げ、上腕以下をギプス固定し、首からつるします。

 

単純ギプス固定法
(徒手整復法)


まず、患者の患肘関節部を固定します。助手に両手で患肢の親指とその他の指を別々に握らせ、引っ張ってもらいます。術者は両方の親指で末梢骨片を押し、整復します。


整復が困難な場合は、助手に患者の手を一度背屈方向へ引いてもらいます。


整復できれば、肘関節を直角に曲げて、上腕から中手指節関節までギプスを巻きます。

 

 

 


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 老人が骨折を起こしやすい原因に、骨粗鬆症があります。骨粗鬆症は全身の骨に変化を及ぼし、骨は薄くもろくなって老人ではすべって軽く転んだときなど、少しの外力で骨折を起こしやすい状態にあります。
 加えて、運動麻痺などがあり手足の活動度が低下していると、骨の脱灰(カルシウムがなくなっていく)が起こりさらに骨折の危険は増します。また、少量の精神安定薬や、不適切な薬物の服用(降圧薬、抗糖尿病薬など)で意識が混濁していると、転倒しやすくなり骨折の原因となります。老人の場合、転倒の誘因となる疾患があるのではないかとつねに疑う必要があります。手足の麻痺や、呂律が回らなかったりすれば、脳卒中や一過性脳虚血発作を起こしている可能性があることから、そのもとである疾患の治療も併行して行うことが重要になってきます。
 老人に起こりやすい典型的な骨折を以下にあげます。
 大腿骨頸部骨折は、転倒して起き上がれなくなったときに、まず考えるべきものです。これは、ひざから上の下肢を構成する大腿骨の上端部が、骨盤を支える関節の部分で骨折するものです。痛みのため歩行不能となり、他動的に下肢の付け根に痛みを訴えるのが普通です。痛みが強いと血圧が下がり、冷や汗とともに顔面蒼白となり、いわゆるショックになることもあります。頭を低くして安静にし、救急で医療機関を訪れるべきです。
 大腿骨頸部骨折は臥床を余儀なくされるため、それを契機として寝たきりとなったり、さらに痴呆に似た症状を呈してきたり、肺炎や尿路感染症を併発したりして不幸な転機をとることがまれではありません。そのため、早期治療と早期離床が必要不可欠であり、むやみな保存的治療は適しません。手術適応のある症例には、積極的な手術療法が必要です。内固定術や人工骨頭置換術などが行われます。そのため、早急に整形外科を受診することが大切です。
 上腕骨外科頸部骨折は、腕の付け根の骨折で肩から転倒したときに起こしやすいものです。上腕から前腕をギプス固定し、首から吊るす「懸垂ギプス包帯法」で治療します。
 橈骨遠位端骨折(コレス骨折)は、手から転倒したときに起こしやすく、前腕の手関節付近での骨折です。単純なギプス固定法で治療します。
 これら上肢の骨折では歩行は可能であり、大腿骨頸部骨折のように全身的影響がほとんどないのが特徴です。やはり患部を安静に保ち、整形外科を受診します。
 脊椎圧迫骨折は、高齢の女性に多く、ベッドから転落したり、しりもちをついたりしたときに起こします。脊椎は骨折を起こしやすいところですが、痛みがそれほど強くないような場合は、骨折と気づかないことがあります。背中が丸くなり、身長が低くなってくるのが特徴的です。多くは、コルセットをつけたり、鎮痛薬の服用など、保存的に治療されますが、悪性腫瘍の転移などを起こしていることもあり、症状が軽くとも痛みが持続するようであれば、放置しないことが大切です。
 応急手当としては、前述したように、老人がつまずいて転ぶというような軽い転倒でも、骨折を起こしやすく、まずは骨折を前提とした手当をすることが基本となります。患部に触れたり、動かすと激しい痛みがある場合は骨折が疑われます。時間とともに赤く腫れてきます。
 整形外科受診までにできることは、創傷を伴っている場合は、止血と消毒をします。腫れがでているので、患部を冷湿布で冷やすのもよいです。また、副木を装着することにより、骨折端が付近の血管や神経を傷つけることを防ぎ、骨折肢の疼痛を軽減させることができます。さらに、患者の移送も容易にさせます。副木装着の基本は、受傷部をまたぐような十分の長さをもつ板を添えることであり、これにより骨折部とその関節が動かないように固定されます。骨が皮膚から出ている場合は、そのままの状態で病院へ連れていきます。

前腕・手首
肘から直角に曲げて、肘から指までの長さの副木をあてます。手のひらは、内側に向けます。

手首
割りばしなどを利用して固定します。

副木をあてて、タオルなどでしばって固定します。

 

病気の場合:   

急性腹症   意識障害   循環系の緊急症

けが、事故などの場合 転倒による骨折  ねんざ   頭を打ったとき   のどにものが詰まったとき
やけど(熱傷)   
中毒と薬の飲みすぎ   床ずれ(褥瘡)   水におぼれたとき

 

痴呆になったとき 症状からみる病気 緊急時の応急処置 老人の身体の特徴
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