1.急性腹症
 急性腹症とは、急性に発生した激しい腹痛をおもな症状とするいろいろな病気の総称です。また、救急処置がなされるまでの仮の診断名でもあり、急性腹症を引き起こすおもな病気として、次のようなものがあります。
 (A) 腹腔内臓器の閉塞、狭窄
 機械的に、あるいは機能的に腸管が閉塞し、腸管にガスが貯留する腸閉塞の原因には、手術後の癒着によるもの、がん(直腸、結腸)による閉塞や腹膜の炎症に伴うものなどがあります。特有な症状としては、腸の通過ができないことによる嘔吐です。早めに医師の治療を受けることが重要です。
 また、胆嚢結石(胆石)が胆管内で閉塞することもあります。右上腹部の痛みが特徴的です。
 尿管結石では、同側背部から腰部にかけての痛みがあります。それとともに吐きけ、嘔吐を催すこともあります。尿に血液が混ざることがあります。
 以上の痛みは多かれ少なかれ、数分〜十数分の間隔で刺し込むように起こるのが特徴で、仙痛発作とよばれます。
 
 (B) 腹腔内臓器の炎症
 急性虫垂炎、急性胆嚢炎、急性膵炎などがあります。老人の場合、軽い痛みが限局せずに起こり、発熱や白血球増多などの炎症反応に乏しいことがあり、注意を要します。一般的には、仙痛ほどではない痛みが持続するのが特徴です。
 (C) 腹腔内臓器の出血
 胃潰瘍、胃がんや十二指腸潰瘍からの出血は、吐血や下血として起こります。高度の場合、出血性ショックを起こすため急を要します。そのほか、大腸がん、大腸憩室からの下血などがあります。
 以上の急性腹症を引き起こす病気が疑われる場合は、一刻も早く医師の診断を受ける必要があります。突然の腹痛を訴えても、あわてたり、むやみに売薬を飲ませたりせず、静かに寝かせ救急車を待ちます。全身状態の変化につねに留意するとともに、腹痛の部位、性状(痛みの強さとその変化、部位の変化など)、発症時期、随伴症状などを医師に確実に伝える準備も必要です。

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