4.のどにものが詰まったとき | ||
加齢による運動機能の低下は、さまざまな原因により引き起こされます。その最も重要な因子は、脳と脊髄から構成される中枢神経系の機能低下と考えられます。嚥下運動は、舌、咽頭、喉頭などの筋が連続的に滑らかに連動することにより可能です。この筋の動きは、一度起こり始めると意識的に中断することはできません。一度飲み込み始めたものを途中でやめて吐き出すことができないわけです。これは、自動的に脳が、とくに大脳の深い部分の脳幹という部分を通じて行っており、この正常な働きによって気道が閉じ、食物が食道を通じて胃へ流れるようになります。高齢になるとこの嚥下運動が時々うまくいかず、食物が気道へ流入する危険が増します。これは、とくに両側の大脳に何らかの器質的障害(脳梗塞、脳出血の既往など)があるときに往々にしてみられる症状で、仮性球麻痺(のどや舌の筋肉が動かせなくなった状態)があるときに起こりやすい症状です。 また、前述のような病気によって嚥下運動がうまくいかないことのほかに、老人はかむ力や飲み込む力も弱くなっているので、のどや食道の入り口などで食物、異物をよく詰まらせます。 たとえば、餅などの異物が気道につまったとき、不完全に閉塞していれば呼吸に伴って雑音が聞こえます。完全に閉塞していると胸に呼吸による動きがなく、口や鼻を介しての空気の出入りを感じません。それまで元気だった人が突然顔面蒼白となり、話すことも、せきをすることもできなくなります。完全気道閉塞では2分で意識がなくなり、瞳孔が大きく開き、5〜10分で不可逆的な脳の障害をきたし心停止となります。 したがって、可能なかぎりすみやかに、かつあわてずに以下の手順に従い、気道内の異物を除去しなければなりません。すぐに吐き出させないと、生命にかかわります。 患者に意識があるときは、まず強くせきをさせ、せきの力によって異物を吐き出させるのが最も有効です。独力でせきができなかったり、弱いときにはまず4回続けて背部をすばやく叩打します。効果がないときは、4回続けて側胸下部を圧迫します。このほかに、横を向かせて指をのどの奥に入れて吐かせたり、うつぶせにしてうしろから両手で患者の上腹部をぐっと押さえて抱え上げる方法があります。 さらに、口腔内〜喉頭にまで手を入れ、可能なかぎり異物を排除します。以上の方法を繰り返しながら、救急隊の到着を待ちます。 意識がなく呼吸困難を起こした場合は、気道の確保をし、人工呼吸を行います。心停止となったら心臓マッサージもただちにします。 老人では、唾液の分泌も不十分な傾向にありますから、つね日ごろから食物はなるべく細かくし、餅やパンなどは一気に飲み込まないように注意することが大切です。抜けやすい入れ歯にも注意しましょう。 |
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