5.やけど(熱傷)
 老人は、身体の不自由さ、反応の遅さなどのため、やけどを起こしやすくなります。また、アンカ、湯たんぽや使い捨てカイロなどでの低温やけども多いものです。
 やけどの重症度は、第一に熱傷面積とその深さによって決まります。しかし、加齢に伴って、たとえ熱傷面積が狭くても生命予後に与える影響は大きくなります。年齢(歳)+熱傷面積(パーセント)が100以上になると、生命予後が悪いといわれています。これは、熱傷後の経時的な生体反応に対して、老人ほど基本的な抵抗力が弱まっていることによります。
 熱傷後の生体反応とは、まず24時間以内に、熱傷創部だけでなく全身の皮膚の毛細血管が拡張します。それに伴って血液中のタンパク質とともに、水分、電解質が漏出し、血液が濃縮すると同時に血管内血流量が減少します。これが高度になると、ショックになります。以上の状態が改善されなければ、全身のタンパク質が失われて栄養障害を起こします。表皮を失った皮膚は、感染に対して無防備です。高齢なほど免疫機能は低下する傾向がありますから、さらに敗血症を伴い、致命的となる率も上昇します。
 いずれにせよ、たとえ少ない範囲のやけどでも、老人の場合の治療はすみやかに行われる必要があります。まず第一に、受傷後可能なかぎりすみやかに、かつ長時間(10〜20分)局所を冷水で冷やし続けることが重要です。これにより痛みは確実に軽減し、熱傷後の炎症反応の波及を防ぐことができます。
 衣服の上からのやけどの場合は、衣服を脱がすまえに水をかけ冷やし、皮膚がくっついているときは、冷やしてから衣服を切ってゆっくりと布をとります。癒着がひどい場合は、無理にはがしてはいけません。
 冷やしたあとは患部を消毒し、清潔なガーゼあるいは布でおおい早めに外科を受診します。
 皮膚表面の水疱はできるだけ保存し、細菌感染を防ぎます。もし破れたら消毒をします。必要な局所療法は、やけどの範囲や深達度により異なるので、たとえ小範囲でも必ず医師の治療を受けるべきです。広範囲のやけどの場合は、一刻も早く救急車をよびます。

前に戻る

次に進む

 

病気の場合: 

急性腹症   意識障害   循環系の緊急症

けが、事故などの場合 転倒による骨折  ねんざ   頭を打ったとき   のどにものが詰まったとき
やけど(熱傷)   
中毒と薬の飲みすぎ   床ずれ(褥瘡)   水におぼれたとき

 

痴呆になったとき 症状からみる病気 緊急時の応急処置 老人の身体の特徴
このページのトップへ戻る 「応急手当の基本」トップへ戻る