◆どのような病気か?◆
心肥大とは文字通り心臓が大きくなった状態を指します。心臓の大きさはその人の体格に比例し、普通は握りこぶし大ですが、胸部X線撮影で心臓の最大横径と胸郭の最大横径の比(心胸郭比という)が50%以上になるとき心肥大としています。厳密には心肥大には心臓壁が肥厚して大きくなるものと、心室や心房の内腔が拡張して大きくなるものとがあります。いずれも心臓にかかる負荷が増大するときにみられる現象で、両者は合併してみられることも多いのです。
心臓壁肥厚による肥大は高血圧症、大動脈弁あるいは肺動脈弁狭窄症で起こります。スポーツ選手にみられる″スポーツ心臓″は心拍出量を増加し心臓の機能を補強するために適応性心肥大をきたしたものとみられています。一方、内腔の拡張は大動脈や肺動脈弁の閉鎖不全症にみられ内腔の容積が増すための変化です。特発性心筋症では心筋そのものの異常から肥大や拡張が起こります。そのほか、甲状腺機能亢進症あるいは低下症、脚気、筋ジストロフィ、脊髄変性症などに伴う心筋異常が原因となります。
◆症状と特徴◆
スポーツ心臓や高血圧の持続による代償性肥大の場合には自覚症状を起こすことは少なく、心肥大そのものより心肥大の原因疾患による症状が主体となります。
高血圧性心肥大では労作時の動悸、息切れなど軽度の症状であるのに対し、特発性心筋症は原因不明の病気で、徐々に心筋の肥大・拡張の進行と心拍出量の低下をきたし、息切れ、呼吸困難、胸部圧迫感、胸痛、めまい、失神、疲労感、不整脈、むくみなどの心不全症状を呈します。遺伝的に起こる傾向もあります。
緊急時の応急処置
救急処置を必要とする病態は、心肥大が進み心不全に陥った場合ですから心不全の治療をしなければなりません。心臓弁膜症では体動時の胸部不快感などが増してくれば弁置換術などの外科的療法が必要になります。特発性心筋症の治療は困難で、安静、利尿薬、血管拡張薬、β-遮断薬を使います。心臓移植治療を必要とする例の多くは特発性心筋症の末期段階がその適応となっています。
|
|