◆どのような病気か?◆
心臓は動脈を通して血液を身体中に循環させるポンプの役目をしていますが、血圧はそのときの動脈の壁に加わる圧力のことで、心拍出量(単位時間に心臓のポンプ作用により拍出される血液の量)と末梢血管抵抗(血管内を流れる血流に対する抵抗)に左右されています。血圧は普通上腕部で測定し、最大血圧(収縮期〈血〉圧)と最小血圧(拡張期〈血〉圧)がありますが、前者は心臓が収縮したとき、後者は拡張したときの血圧値です。
高血圧の定義にはいくつかの意見があって、WHOの基準では、最大血圧160ミリ以上、または最小血圧95ミリ以上が高血圧とされますが、アメリカ高血圧合同委員会(1992年)によると、血圧を日をかえて2回測定しその平均が最大血圧で140ミリより高く、または最小血圧が90ミリ以上の状態を高血圧とよんでいます。また血圧は1日のうちでも刻々と変化しており、通常、日中に高く夜間睡眠中は低下しています。これを血圧の日内変動とよんでいます。老人の高血圧の特徴は最大血圧の上昇するタイプが多く、日内変動が大きいことです。
高血圧をきたす疾患は原因の明らかでない本態性高血圧症と、その病気が原因となり血圧が上昇する二次性高血圧症の2通りに分類されます。
本態性高血圧症は体質の遺伝や環境要因がかかわっており、高血圧症のほとんどはこのタイプです。
二次性高血圧症には糸球体腎炎、腎盂腎炎、嚢胞腎、妊娠腎、膠原病、糖尿病などによる腎障害、腎動脈狭窄などの腎疾患、クッシング病、末端肥大症、甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症、原発性アルドステロン症、褐色細胞腫、副腎皮質酵素欠損症などの内分泌疾患、経口避妊薬、ステロイドホルモン、甘草製品などによる薬物性高血圧があります。
◆症状と特徴◆
高血圧で治療している人の自覚症状を調査したところ、肩や首のこり、手足のしびれ、頭重感や頭痛、めまい、胸部不快感、悪心・食欲低下、立ちくらみ、不眠、耳鳴り、むくみ、疲労感、息切れの順に多かったのですが、頻度からいえば自覚症状の訴えのない者がいちばん多くありました。ここにあげた自覚症状も高血圧症そのものが直接の原因になっていることはむしろ少なく、合併症のいかんによると考えられました。つまり高血圧があっても無症状のことが多く、したがって健康診断などで偶然に高血圧を指摘されることが少なくないのです。
緊急時の応急処置
急激な血圧上昇による臓器障害をきたす状態を高血圧性緊急症といい、高血圧性脳症、頭蓋内出血、肺水腫を伴う急性左心不全、子癇(妊娠中や産褥時に起こる急性意識障害と痙攣を主徴とし、高血圧、タンパク尿などを伴うもの)、解離性大動脈瘤などがあります。これらのときはただちに血圧低下をはからなければなりません。
高血圧性脳症では痙攣、意識障害などをきたし、急性左心不全では呼吸困難をきたします。多くの場合、注射剤にて降圧薬を用いる必要があるのですみやかに病院に送ることです。内服薬としてはニフェジピン、ニトログリセリンを舌下に含むと速効性の降圧が期待できるので、普段から血圧の高い人は携帯しているとよいでしょう。
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