◆どのような病気か?◆
貧血とは血液中に含まれる赤血球やヘモグロビン(血色素)の量が低下している状態をいいます。体内を循環する血液の細胞成分には赤血球、白血球、血小板があります。赤血球の中にあるヘモグロビンは酸素を運ぶ作用を担当していますが、その不足により生体細胞は酸欠状態が起こります。赤血球数の正常値は男性が420〜570万/ミリ立方メートル、女性が375〜500万/ミリ立方メートル、ヘモグロビンは男性が13.5〜17.5グラム/デシリットル、女性が11.5〜15.0グラム/デシリットルですが、年齢による差が大きく加齢とともに減少します。
赤血球は骨髄でつくられ、鉄分やタンパク質をもとにヘモグロビンが合成されます。赤血球の寿命は約4か月で、最後は脾臓にて破壊されます。腎臓からはエリスロポエチンが分泌され、骨髄での赤血球合成を促進します。したがって、貧血は骨髄での赤血球産生が減少したとき、出血により赤血球が失われるとき、赤血球の破壊が増加したときに出現します。
原因疾患には胃・十二指腸潰、大腸潰、潰性大腸炎、食道静脈瘤破裂など消化管からの出血、月経過多、子宮筋腫による婦人科的な慢性出血、白血病、再生不良性貧血(末梢血液で赤血球、白血球、血小板が減少し、血液をつくれないために起こる貧血)、悪性リンパ腫、悪性貧血(ビタミンB12の欠乏によって起こる貧血)、溶血性貧血(赤血球の寿命が短くなったために起こる貧血)などの血液疾患、胃がん、大腸がん、肝臓がん、多発性骨髄腫などの悪性腫、鉄分の不足、ビタミンB12や葉酸欠乏などの低栄養状態、寄生虫感染などがあります。結核のような慢性感染症、膠原病、慢性肝炎、肝硬変、慢性腎炎などでは二次性貧血が現れます。
◆症状と特徴◆
大量出血による急性貧血は顔面蒼白、血圧低下、頻脈、意識障害などショック症状を呈しますが、慢性に徐々に貧血が起こるときは動悸、息切れ、全身倦怠感、易疲労感、めまい、頭痛、耳鳴り、ふらつきなどが初発症状となります。
他覚的には爪がもろく壊れやすくなり、とくに鉄欠乏性貧血(ヘモグロビンの構成要素である鉄の欠乏により起こる貧血)では爪が凹み、そり気味のいわゆる“スプーン爪”を呈します。舌炎、口角炎も起こりやすく、悪性貧血では舌の表面が平坦で赤みを帯びてきます。脈拍の増加、手足のしびれ感、知覚障害、心雑音を伴うこともあります。
白血病、再生不良性貧血などの血液疾患では発熱、皮膚の出血斑、口腔内出血、鼻出血などを伴います。
緊急時の応急処置
慢性貧血では緊急処置を必要とすることはほとんどありませんが、大量出血による急性貧血ではただちに輸血、輸液、止血処置などを行わなければなりません。白血病をはじめとする血液病では感染症対策、脾臓摘出術、免疫抑制療法、重症例には骨髄移植など専門的治療が必要になります。
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