◆どのような病気か?◆
心臓の筋肉に酸素や栄養を供給している血管が冠状動脈ですが、この血管が動脈硬化を基盤に閉塞し心臓の筋肉が壊死に陥った状態が心筋梗塞です。
冠状動脈は左冠状動脈回旋枝、左冠状動脈前下行枝、右冠状動脈の3つの主要血管に分かれますが、閉塞部位によって前壁梗塞、後壁梗塞、下壁梗塞、側壁梗塞、中隔梗塞、心内膜下梗塞などがあり、壊死の広がり方や予後は若干異なります。
心筋梗塞の原因は、冠状動脈の内壁にコレステロールなどの脂質が沈着した粥状硬化による血栓性閉塞で、臨床的には約半数が狭心症から移行し、残りの半数は突然発症しています。
◆症状と特徴◆
胸の中央部に、締めつけられるような、圧迫されるような感じを伴う疼痛が突然起こるのが特徴です。
胸痛は持続性で数時間あるいは1日中続き、左の肩、背部、上肢、時には心窩部(みずおち)、下顎にも広がります。なかには空気中の酸素が少なくなったと感じ、部屋の窓を開け放つほどの空気飢餓感や、胸をかきむしるほどの痛みを訴えることもあります。狭心症と異なるのは、痛みが30分以上続くこと、ニトログリセリンの効果はないことです。ただし老人や糖尿病から起こる心筋梗塞では胸痛のない無痛性心筋梗塞も少なくありません。
発作時には発熱、発汗、顔面蒼白、吐きけ、不安感、血圧低下、脈拍微弱、皮膚湿潤などもみられます。
緊急時の応急処置
心筋梗塞では発症後12時間以内での死亡率が高く、一刻も早くCCU(冠疾患集中監視室)のある専門病院にて、不整脈を防ぎ循環動態を改善させる治療を受ける必要があります。救急車が来るまでの間は、患者は最も楽な体位で寝かせ絶対安静とします。呼吸はできるだけ深くゆっくり行うようにさせ、息苦しさの著しい場合にはふとんをたたんで重ねたものなどの適当な背もたれで支え座位をとらせます。
急性期は安静、モルヒネによる鎮痛、酸素吸入、抗不安薬などを使用します。心停止には人工呼吸、心臓マッサージ、除細動を要します。専門病院では、発症早期に冠動脈撮影で狭窄部位を確認し、カテーテルにより狭窄を取り除く経皮的冠動脈形成術、血栓融解を目的とする治療薬を注入する血栓溶解法、冠動脈バイパス手術などで途絶えた血液の流れの回復を試みる方法も行っています。
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