論文名 | 介護福祉士の専門性の構成要素の抽出 - 介護福祉士養成施設の介護教員の自由記述の内容分析に基づいて - |
著者名 | 安 瓊伊 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学, 35 (4):419-428,2014 |
抄録 | 本研究は,介護福祉士養成施設の介護教員の自由記述調査をとおして介護福祉士の専門性の構成要素 を抽出することを目的とした.調査は日本全国の4 年制介護福祉士養成施設と関東地域の2 年制介護 福祉士養成施設の介護教員276 人を対象に自由記述式質問紙調査を行った.回答者65 人の回答文を意 味のあるまとまりに切片化してコード化し,内容に親近性のある同士に束ねる過程を繰り返して行い, カテゴリー化した. その結果,148 コードが得られ,17 のサブカテゴリーから8 つのカテゴリーが抽出された.これら の介護福祉士の専門性の構成要素としての相互関係を試みたところ,“日常生活の支援” をはじめ“生 きがい支援” を実践するには,“利用者との関係形成” と“介護過程の展開” が重要な要素であること が結論づけられた.また,その基盤として“知識と技術” “倫理” “役割認識” “連携” の4 つが不可欠な 要素であることが示唆された. |
キーワード | 介護福祉士,専門性,構成要素,介護福祉士養成施設教員,質的研究 |
論文名 | 高齢期における食生活スタイルとソーシャルサポートの関連 |
著者名 | 大庭 輝,野内 類,高野裕治, 高野春香,島内 晶,豊島 彩,佐藤眞一 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学, 35 (4):429-437,2014 |
抄録 | 本研究では,高齢期における食生活スタイルとソーシャルサポートの関連を検討した.質問紙の回答 を得られたシニアカレッジの受講者374 人のうち,60 歳以上の男性230 人,女性123 人の計353 人(平 均年齢67.5 歳(SD =± 4.5 歳))を分析対象とした.基本属性の偏りについて,年齢群,ソーシャル サポートの群別にχ2 検定で確認した.食生活スタイル尺度を高齢者に適用するにあたって確認的因子 分析を行ったところ,先行研究と同様の因子構造が見いだされた.ロジスティック回帰分析の結果,食 事場面の雰囲気因子はソーシャルサポートの受領・提供ともに関連がみられた.高齢期においては,食 事場面の雰囲気を高めることがソーシャルサポートの向上に寄与する可能性が示唆された. |
キーワード | 高齢者,食事,食生活スタイル,ソーシャルサポート |
論文名 | 地域高齢者の閉じこもり解消に対する外出行動変容ステージの分類 - 外出に対する自己効力感との関連から - |
著者名 | 山崎幸子,藺牟田洋美,野村 忍,安村誠司 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学, 35 (4):438-446,2014 |
抄録 | 本研究では,高齢者の閉じこもり解消に対する変化のステージモデル(Transtheoretical Model ; TTM) の適用に向け,外出に対する行動変容ステージを分類するための評価指標を自己効力感との関連から検討 した.調査対象は2 地区設定し,A 地区は都内A 区8,000 人,福島県B 地区1,370 人の70 歳以上の地域高齢 者を対象とし,郵送法による調査を実施した.分析は,各地区における行動変容ステージの分布,および行 動変容ステージと外出に対する自己効力感との関連について検討した.その結果,A 地区では,前熟考期51 人(2.5%),熟考期34 人(1.7%),準備期46 人(2.2%),実行期22 人(1.1%),維持期1,905 人(92.6%)で あった.B 地区では,前熟考期37 人(4.3%),熟考期3 人(0.3%),準備期14 人(1.6%),実行期14 人(1.6 %),維持期799 人(92.2%)であった.行動変容ステージと外出の自己効力感の関連では,両地区において も行動変容ステージが進んだ段階にある人ほど,外出に対する自信が高く,行動変容ステージの分類におけ る一定の妥当性を確認した. |
キーワード | 閉じこもり,外出頻度,行動変容ステージ,自己効力感,地域高齢者 |
論文名 | 地域包括支援センターにおける地域高齢者の栄養状態の改善への取り組みの実態と今後の課題 |
著者名 | 大塚理加,菊地和則,野中久美子,新開省二,三浦久幸 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学, 35 (4):447-453,2014 |
抄録 | 地域包括支援センター( 地域包括)における地域高齢者の低栄養への対応は必ずしも明確になっていな い.そこで本研究では,地域の高齢者の低栄養への取り組みの実態を把握するために,2010 年4 月1 日現 在,東京都内の全地域包括359 か所を対象に,調査票を用いた自記式の郵送調査を行った.分析対象は155 票(43.2%)であった.摂食不良高齢者の把握は,民生委員や近隣住民等,地域との連携によってなされて いた.摂食状況について見た目のやせ等の観察のみで判断する群(A 群)と,それらに加えて医療的な検査 や測定結果で判断する群(B 群)では,B 群はA 群に比べて低栄養予防の業務評価が高く,介護サービス利 用や医療機関の紹介等による低栄養への対応をしていることが多かった.これらのことから,地域包括の 地域高齢者の栄養状態の改善への取り組みには,地域とのネットワークと多職種連携,とくに医療機関との 連携が重要であることが示唆された. |
キーワード | 地域包括支援センター,低栄養,地域高齢者 |
論文名 | 「健康長寿県・長野」のこれまで& これから |
著者名 | 小林良清 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学, 35 (4):455-459,2014 |
抄録 | 長野県は,2010( 平成22)年の平均寿命が男女とも全国1 位となり,高齢者就業率の全国1 位等と合 わせ,健康長寿県として内外から注目されている.その要因を科学的に提示することは困難だが,県民 1 人ひとりの熱心な健康づくりに加え,食生活改善推進員など県民を支える県民自身の活発な組織活動, そして,県民やその組織を支える医療従事者等の専門職の取組・姿勢が長野県の大きな特徴であり,こ れらの効果的な相互作用が健康長寿に結びついているのではないかと推測している. しかし,いわゆる健康寿命のうち全国上位ではない指標があり,高齢者の平均余命も必ずしも1 位で はない.県では,総合5か年計画( しあわせ信州創造プラン)および全国で初めての保健医療統合計画( 信 州保健医療総合計画)において「健康長寿世界一」を目標に掲げ,さまざまな分野の関係機関・団体お よび県民と協働して健康づくりや高齢者の社会参加等を推進するための施策に取り組んでいくこととし ている. |
キーワード | 長野県,健康長寿,平均寿命,健康寿命,要因 |
論文名 | 健康長寿を築き上げた信州人の文化・社会 - 長野県の保健補導員制度からの考察 - |
著者名 | 今村晴彦 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学, 35 (4):460-465,2014 |
抄録 | 本稿では,長野県が「健康長寿」となった要因の1 つといわれる,長野県の保健補導員制度に着目する. そして,その歴史を紐解くことで,次世代の健康づくりに向けた知見を考察する. 長野県において保健補導員制度が全県的な広がりをもつに至った要因として,本稿では以下の3 点を 提示する.1 点目は,医師や保健師,行政や国保連など,さまざまな役割をもった人物や組織がかかわ ったこと,2 点目は,活動において自治会や隣組などをはじめとした地域の資源をうまく活用したこと, そして3 点目は,国民健康保険という原点があったことである. これらの特徴をまとめると,「住民の声やニーズを汲み取り,制度をきっかけとして活用しつつ,多 くの役割をもった関係者が,地域社会の仕組みや実情に応じた形で目標に向かって汗を流した」という ことができる.これは,次世代の健康づくりにこそ生かされるべきものであると考えられる. |
キーワード | 長野県,保健補導員,保健師,国民健康保険,地域医療 |
論文名 | 次世代の健康長寿と身体活動・運動器 |
著者名 | 鎌田真光 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学, 35 (4):466-471,2014 |
抄録 | 適度な身体活動はさまざまな非感染性疾患を予防するうえで重要である.しかし,時代の変遷ととも に生活のなかにおける身体活動( 徒歩等)への依存度は低くなっている.今後は,非活動的な社会で生 まれ育った若い世代が高齢期へ突入する時代となる.高齢期に自立した生活を営むためには,運動器の 機能を健全に維持することが重要である.適度な身体活動が運動器障害の予防に効果的であることもわ かっており,身体活動の促進は,超高齢社会で健康長寿を達成するために重要な課題である.集団レベ ルで身体活動を促進する方法としては,コミュニティ・ワイド・キャンペーン,ソーシャル・マーケテ ィング等の理論・方法論に基づいた取り組みが注目されている.個人から家族・地域・国・世界に至る まで,さまざまなレベルにおける身体活動の促進や運動器の健康づくりが重要である. |
キーワード | 身体活動,運動,運動器,ポピュレーション戦略,ヘルス・プロモーション |
論文名 | 自殺ゼロの地域を目指して - 次世代の心の健康を守る - |
著者名 | 朴 相俊 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学, 35 (4):472-477,2014 |
抄録 | 本稿では,次世代の健康課題について主に心の健康の視点から再考することを試みた.とくに,心の 健康と密接な関係にある自殺問題にふれながら,次世代の心の健康づくりを考えるうえで必要な視点を 述べた.世界で年間100 万人を上回る自殺問題には,生活問題や家族問題,そして,健康問題などのさ まざまな問題が絡み合い,これらの危険要因が複合的に精神的および身体的健康に影響を与え,自殺が 引き起こされるといわれる.日本では自殺対策の一環として,うつ病などの精神疾患への医療的対策と その背後にある社会経済的要因へのアプローチなどが行われているが,同時に人と人との「つながりの 大切さ」をより具体的に国民1 人ひとりに伝えていくことも自殺対策を考えるうえで重要な視点だと考 えられる.本稿では,「つながりの大切さ」を論じるために,日本の自殺の推移にみられる「急増・恒 常化・若年化」といった特徴を紹介し,また,自殺率と関係ある失業率や所得格差,さらに,離別につ いても取り上げた. |
キーワード | 次世代,心の健康,自殺対策,つながり,離別 |
論文名 | 中間集団の衰退と「健康づくり」の個人化 |
著者名 | 新 雅史 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学, 35 (4):478-486,2014 |
抄録 | 介護保険制度の導入を契機に「健康づくり」の専門家は増えたが,その一方で専門家の働きかけに応 答しない層が目立っている.その問題に対し,健康行動の意欲を高めるアプローチ,健康行動を促す環 境づくりのアプローチ,の2つが進められている.それらのアプローチが重要なことは論をまたないが, これまで実践されてきた地域や企業といった共同体での「健康づくり」を再構築する必要がある.そう した観点から,「健康づくり」のベースとなる運動・スポーツ活動をみてみると,地域や企業単位での 実践が減り,個人単位での実践へと移行している.つまり,「健康づくり」の個人化が進行しているわ けである.個々人の状況に合わせて「健康づくり」を行うことも重要であるが,一方で,企業や地域と いった共同体を生かした「健康づくり」,あるいは「健康づくり」を通じた共同体の再生といったアプロ ーチがいっそう求められる. |
キーワード | 個人化,コミュニティ,中間集団,日常生活のスポーツ化,介護予防 |