→English 最新更新日:2013年10月25日

日本老年社会科学会  Japan Socio-Gerontological Society

最新刊案内:老年社会科学 2013.10 Vol.35-3
論文名 ケアマネジャーの定着促進要因に関する実証分析
-「 介護労働者の就業実態と就業意識調査 2008」を用いて -
著者名 大和三重,立福家徳
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 35(3):311-320,2013
抄録 介護保険制度は,2005 年の改正によって高齢者の在宅生活支援をさらに強化する施策が打ち出され た.ケアマネジャーは地域居住を推進する重要な役割を期待されているが,制度変更による業務量の増 加等でバーンアウト傾向が強まっている.本稿では,介護労働安定センターが2008 年度に実施した労 働者調査を基に居宅介護支援事業所のケアマネジャー(794 人)を対象として,定着促進要因の実証分 析を行った.その結果,「仕事のやりがい・内容」「人事評価・処遇」「職場の人間関係」における職務 満足度が就業継続意向に影響を与えるが,賃金や労働条件は有意な影響を与えていない.また,法人格 ではNPO 法人であることが就業継続意向を減じていたが,社会福祉協議会は就業継続意向を高めてい た.分析結果から賃金以外の仕事のやりがいや人事評価,人間関係などが就業継続意向に影響し,ケア マネジャーの所属する事業所の法人格も影響を及ぼしていることが推察される.
キーワード ケアマネジャー,就業継続意向,職務満足度,定着促進要因,法人格
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論文名 中高年者の就業に関する意識と社会参加
-首都圏近郊都市における検討-
著者名 菅原育子,矢冨直美,後藤 純,廣瀬雄一,前田展弘
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 35(3):321-330,2013
抄録 中高年者の就業や高齢期就業に対する意識がその他の社会参加行動に与える影響を検討することを目 的とし,千葉県柏市在住の55 歳以上を対象とした(n = 1,133)調査データを分析した.65 歳未満の半 数以上が働いており,高齢期の働きかたについては6 割が「壮年期より軽い働き方,低めの収入で働き 続ける」を希望した.仕事以外の社会活動への参加を従属変数としたロジスティック回帰分析の結果, 男性ではフルタイムで雇用されていないほど,また「ある程度の年齢になったら収入の伴う仕事は辞め る」を希望するほど,参加確率が高かった.女性ではフルタイムまたはパートで雇用されていると参加 確率が低かった.フルタイムで仕事を続けること,また現役を続行したいという意識が仕事以外の社会 参加を抑制することが示唆された.中高年者の働き続けたいという意欲を生かしつつ,その幸福に最大 限寄与する働きかた,社会とのかかわりかたを検討していく必要がある.
キーワード 高齢就業者,社会参加,退職,就業意欲
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論文名 高齢者の生活に満足した社会的孤立と健康寿命喪失との関連
-AGES プロジェクト4 年間コホート研究より-
著者名 斉藤雅茂,近藤克則,尾島俊之,近藤尚己,平井 寛
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 35(3):331-341,2013
抄録 高齢者の社会的孤立のなかでも,生活に満足した状態と考えられる孤立と健康寿命喪失との関連を分 析した.調査は2003 年10 月に愛知県知多半島6 自治体の高齢者を対象に行われ,その後,4 年間にわたっ て要介護状態への移行状況を把握した.ここでは,2003 年の時点で身体的に自立していた13,310 人に ついて分析した.同居者以外との対面・非対面接触のいずれもが月に1,2 回以下を孤立とし,生活に 満足している群を満足孤立とした.孤立高齢者の4 人に3 人程度は満足孤立に該当すること,性別や年 齢,治療疾患の有無などにかかわらず,孤立高齢者は1.34(1.18 .1.53)倍,要介護状態への移行リス クが高いこと,孤立と生活満足度に有意な交互作用効果は認められないが,男性高齢者の間では満足孤 立でも1.27(1.02-1.58)倍,要介護リスクが高いことが示された.本研究で得られた集団寄与危険割 合が全国でも一致するならば,全国の年間新規要介護認定者のうち,1.1 万人程度が生活満足度は高い 孤立状態によって生じている可能性があることが示唆された.
キーワード 社会的孤立,健康寿命,生活満足,コホート研究,集団寄与危険割合
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論文名 過去の社会参加経験が現在の社会参加に及ぼす影響
-東京都練馬区と岡山県岡山市の調査結果-
著者名 片桐恵子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 35(3):342-353,2013
抄録 高齢者の社会参加率は居住地域や性別により異なる.本研究では,先行研究が少ない過去の経験に着目 し,過去の社会参加活動の有無や特定時期の社会参加経験が現在の社会参加と関連しているのかを地域別 に検討することを目的とした.  練馬区と岡山市の50.69歳の男女に二段階無作為抽出法により郵送留置き調査を2008年に実施した(回 収率58.9%).  子どものころ,学生のころ,学校後,現在の社会参加歴を検討したところ,練馬区の男性ではどの時期に も不参加な人が4 分の1 に上った.現在の社会参加の有無についてロジスティック回帰分析を行った結果, 岡山市では学校卒業後の社会参加の有無が現在の社会参加ともっとも関連が強かった.練馬区では子ども や学生のころの社会参加や経済状況や学歴など基本的属性とも関連がみられた.退職後に社会参加経験の ない人が参加をするのは困難であり,大都市の退職シニアの社会参加の阻害要因のひとつであることが推 測された.
キーワード 社会参加,居住地域,過去の社会参加経験
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論文名 介護福祉士のストレスマネジメント教育プログラムの構築に向けた実践的研究
-知識理解ベースでの介入の効果-
著者名 横山さつき
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 35(3):354-364,2013
抄録  [目的]介護福祉士資格取得を目指す学生の概念的理解を促す内容を基本とし,大人数の講義形式 で教授する,ストレスマネジメント教育プログラムを考案・実施し,その効果を検証する.[方法] 介護福祉士養成2 年課程の学生69 人を対象に考案したプログラムを実施し,受講前と受講修了時, 修了後1 か月の3 時点で,対照群185 人を設定した質問紙調査を行った.[結果]受講の有無と調査 時期の2 元配置分散分析を行った結果,ストレスマネジメント自己効力感について,受講の有無と 調査時期の間に交互作用が認められ,受講終了時に実験群の自己効力感が高まったが,その1 か月 後に受講前と同レベルにまで低下した.[結論]考案したプログラムの有効性が確認されたが,介入 後の効果の定着を図るためのフォローアップ期間を設けた長期的支援プログラムの開発が望まれる.
キーワード ストレスマネジメント教育プログラム,知識理解ベース,介護福祉士,自己効力感,感情指数
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論文名 老年的超越研究の動向と課題
著者名 増井 幸恵
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 35(3):365-373,2013
抄録 本論文はTornstam が提唱した老年的超越理論について,日本人高齢者における老年的超越の実態,測 定尺度,実証研究による関連要因,そして高齢期の心理的well-being との関連について概観した.なかでも, 今後,急増が予測される85 歳以上の超高齢者において老年的超越が重要になるという視点から,日本人高 齢者に適した老年的超越尺度の条件と,心理的well-being の維持にかかわる老年的超越の機能について検 討を行った.最後に,老年的超越研究の今後の課題として,@縦断研究の必要性,A文化をまたいで使用 可能な老年的超越尺度の開発の必要性,B日本における老年的超越の臨床的・応用的利用の可能性につい て,論じた.
キーワード 老年的超越,高齢期の心理的発達,心理的well-being,尺度開発,超高齢者(85 歳以上)
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論文名 パーソナリティと長寿に関する研究動向
著者名 権藤 恭之
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 35(3):374-383,2013
抄録 パーソナリティは,人間の行動に影響する要因であるが,これまで多次元にわたるパーソナリティ特性 を簡便に測定できるツールがなかったために,高齢者研究では測定されてこなかった.いくつかの長期フォ ローアップが可能な研究では,パーソナリティが長寿に影響することが示唆されている.近年パーソナリ ティの5 因子説が認知され,簡便な測定ツールが提供されるようになったことで,パーソナリティを多面 的にとらえ,長寿との関連を検証する研究が増えつつある.それらの研究から,誠実性,開放性の高さが 死亡の低さを予測する強いパーソナリティの次元であることがわかってきた.また,異なる枠組みの研究 では,楽観性の高さや幸福感の高さといったポジティブ感情と関連する側面が死亡の低さを予測すると指 摘されており,長寿と関連するパーソナリティに関しては,今後概念的な整理が必要である.パーソナリ ティと長寿を関連づけるメカニズムもまだ明らかになっていないことが多い.今後,長寿との関連が指摘 されているパーソナリティ特性と具体的な行動の関係や遺伝子の影響を検証することで,より明確な因果 の経路が解明され,健康長寿を目指した介入プログラムが開発できるかもしれない.
キーワード 長寿,パーソナリティ,5 因子説,誠実性,開放性
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論文名 悲嘆は病気か?DSM-5と悲嘆の医学化への懸念
著者名 坂口 幸弘
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 35(3):384-390,2013
抄録 DSM- W -TRでは「死別除外基準」によって,死別から2か月未満の人は,自殺念慮など特別な症状 がない限り,大うつ病エピソードの診断を下されることはなかった.しかし,2013 年5 月に発行された DSM-5 では,この「死別除外基準」が削除された.また,通常でない悲嘆の形態に関して,「持続的複雑 性死別障害」(persistent complex bereavement disorder)という疾患名と診断基準の案が新たに提示された. 今回の改訂は,死別者に適切な治療を受けられる機会を提供することにつながるという点で臨床的な意義 は大きいといえる.一方で,死別に対する正常な反応に対して過剰な診断が下され,病気でないにもかか わらず,抗うつ薬が投与されるかもしれないなどといった悲嘆の医学化への懸念もある.今後,専門家に よる治療的介入だけでなく,非専門家による支援を含め,悲嘆を抱える死別者のニーズや状態に応じたビ リーブメントケアのあり方を考えていく必要がある.
キーワード 死別,悲嘆,DSM-5,医学化,ビリーブメントケア
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