→English 最新更新日:2013年4月22日

日本老年社会科学会  Japan Socio-Gerontological Society

最新刊案内:老年社会科学 2013.1 Vol.35-1
論文名 高齢者の社会活動と開発された活動満足度尺度の得点との関連
-「日頃の活動満足度尺度」と「社会活動に関連する過ごし方満足度尺度」-
著者名 岡本秀明
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 35(1):3-14,2013
抄録 高齢者の社会活動全般の満足度を把握するために開発された「日頃の活動満足度尺度」と「社会活動 に関連する過ごし方満足度尺度」の2 つの尺度の特性をみるため,社会活動との関連性を男女別に分析 して検討した.千葉県内都市部4 市在住の高齢者(65 .79 歳)を対象に郵送調査を実施し,分析項目 に有効回答が得られた932 人を分析対象者とした.社会活動は,地域基盤的活動,貢献活動,趣味等 仲間内活動の3 つとした.独立変数に3 つの活動を一括投入した重回帰分析の結果,@日頃の活動満 足度得点には貢献活動と趣味等仲間内活動が正の関連を示し,A社会活動に関連する過ごし方満足度の 全体得点には3 つの活動すべてが正の関連を示し,B社会活動に関連する過ごし方満足度の4 つの下 位尺度別得点には,女性と比較して男性のほうが関連を示さない活動が多くみられた.概して,3 つの 活動のなかで,趣味等仲間内活動への関与が活動満足度を大きく上昇させる傾向がみられた.
キーワード 日頃の活動満足度尺度,社会活動に関連する過ごし方満足度尺度,高齢者,社会活動
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論文名 家族ユニットにおける介護生活評価指標の開発
著者名 堀口和子,岩田 昇,松田宣子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 35(1):15-28,2013
抄録 本研究の目的は,介護生活継続を可能にする家族の認識と対処行動を抽出し( 研究T),家族ユニッ トにおける介護生活評価指標を開発すること( 研究U)である.研究Tでは,中・重度要介護者を3 年 以上在宅介護している14 家族( 計18 人)を対象に半構造化面接を実施し,介護生活継続を可能にして いる要素を抽出した.研究Uでは,この要素に基づいて評価指標(Family Caregivers’ Appraisal Checklist ; FACL)を試作し,訪問看護サービスを利用する1,020 家族に試用した.771 家族の回答を 個人用の認知的介護評価・対処方略尺度項目群とともに因子分析し,FACL の測定次元を検討した結果, FACL は認知評価・対処方略に加え,経済状況・介護継続意思・介護体制などの個人レベルでは見逃さ れてきた次元より構成されていた.在宅での介護生活の状況を評価するには,家族単位で多角的に評価 する必要があることが示唆された.
キーワード 介護生活評価指標,介護家族,在宅介護,評価指標の開発
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論文名 孤独感を媒介としたソーシャルサポートの授受と中高年者の精神的健康の関係
-UCLA 孤独感尺度第3 版を用いて-
著者名 豊島 彩,佐藤眞一
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 35(1):29-38,2013
抄録 本研究は,中高年者を対象としてソーシャルサポートの受領と提供が孤独感を低減する効果,および 両者の精神的健康との関連性を検証することを目的とした.50 歳以上の男女を対象として質問紙調査 を実施し,326 人を分析対象者とした.本研究では孤独感を測定する尺度としてUCLA 孤独感尺度第3 版を用い,確認的因子分析により信頼性を確認した.その後,精神的健康(WHO-5),ソーシャルサポー トの授受,主観的経済状況,主観的健康度を変数とするパス解析を行った.その結果,情緒的サポート は孤独感と関連性が認められたが,道具的サポートとの関連性は有意ではなかった.また,ソーシャル サポートと精神的健康との直接的な関連性は,道具的サポートの受領を除いて認められなかった.本研 究の結果から,ソーシャルサポートが精神的健康に及ぼす効果は,サポートの有無を認知することが直 接的に影響するのではなく,孤独感という不快感情を低減することによる効果であると考えられる.
キーワード 精神的健康,ソーシャルサポート,UCLA 孤独感尺度第3 版,中高年者
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論文名 虚弱な高齢者を対象とした心理的QOL 向上のための ライフレビューとライフストーリーブック作成 プログラムの効果
著者名 河合千恵子,新名正弥,高橋龍太郎
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 35(1):39-48 ,2013
抄録 本研究はライフレビューとライフストーリーブック作成プログラムを虚弱な高齢者に実施し,心理的 QOL に及ぼす効果を検証することを目的とした.参加者は特別養護老人ホーム利用者22 人(年齢範囲: 71 .95 歳)で, 10人は介入群, 12人は対照群とした.介入群は, 週に1 度, 連続して6 回ライフレビュー を実施し,のちにライフストーリーブックを作成した.プログラムの介入効果を調べるために心理的 QOL に関する指標として精神的健康,ネガティブ気分,自尊感情,統合性を測定した.群と評価時点 を2要因とする反復測定の分散分析を行い,3つの指標において有意な交互作用を認めた.評価時点の 効果が介入群と対照群で異なっており,介入群は精神的健康,ネガティブ気分に改善を示したのに対し て,対照群は自尊感情に悪化を示した.本研究からライフレビューとライフストーリーブック作成プロ グラムが虚弱な高齢者の心理的QOL を向上させるのに効果的であることが示された.
キーワード ライフレビュー,ライフストーリーブック,介入プログラム,虚弱な高齢者,心理的QOL
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論文名 日本版老年的超越質問紙改訂版の 妥当性および信頼性の検討
著者名 増井幸恵,中川 威,権藤恭之,小川まどか,石岡良子,立平起子,
池邉一典,神出 計,新井康通,高橋龍太郎
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 35(1):49-59,2013
抄録 日本版老年的超越質問紙の改訂版(Japanese Gerotranscendence Scale Revised;JGS-R)を作成し,そ の妥当性と信頼性を検討した.JGS-R を地域在住高齢者1,973 人に実施し,欠損のないデータ(n = 1,831, 女性52.3%,年齢範囲69 〜 81 歳)を用いて確認的因子分析を行った.その結果,最終的なモデルの適合度 (GFI = .95;AGFI = .93;RMSEA = .044)は十分に高く,JGS と同様の因子構造が確認された.再検査 信頼性は,インターネット調査モニター(n = 344,女性50%,年齢範囲49 〜 79 歳)のデータを用いて検 討した.調査間隔1 か月のJGS-R の8 つの下位尺度の再検査信頼性はr = .55 〜 .83 であった.一方,内的 一貫性の低い下位因子もあった.これらの結果から,JGS-R には一定の妥当性および信頼性が確認された が,尺度のさらなる検討の必要性も示唆された.
キーワード 老年的超越,構成概念妥当性,交差妥当性,再検査信頼性
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論文名 高齢期の社会的孤立に関連する諸問題と今後の課題
著者名 斉藤 雅茂
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 35(1):60-66,2013
抄録 本稿では,高齢者の社会的孤立と関連している諸問題をレビューし,孤立軽減に向けた今後の課題を整 理した.一部では,「自ら望んだ孤立」の存在が指摘されているが,孤立傾向にある高齢者の多くは,単 に人との交流が乏しいだけでなく,低所得や住環境の劣悪さ,不健康などほかの生活課題を同時に抱え, ソーシャルサポートが乏しく,強い孤独感や生活上の不安を抱えていること,社会的孤立は自殺のような 極端なケースだけでなく,高齢者全体の健康余命喪失にも強い影響を及ぼし,高齢者による犯罪にも関連 しうる問題であることが改めて確認された.今後の課題としては,日本でも個別の実践報告は蓄積されつ つあるものの介入効果に関するシステマティックレビューが十分になされていないこと,介入に際しては 独居以外の多様な対象設定が必要であること,社会的孤立の地域要因の解明が進んでいないことが確認さ れた.
キーワード 高齢者,社会的孤立,レビュー,関連問題,ソーシャルネットワーク
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論文名 ソーシャルワークにおける困難事例の支援方法に関する質的研究
-ナラティヴ・アプローチ,ICT,テキストマイニング-
著者名 荒井 浩道
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 35(1):67-75,2012
抄録 本研究は,ソーシャルワークにおける困難事例の支援方法について質的データをもとに検討を行うもの である.本稿では,新しい支援方法として,ナラティヴ・アプローチとICT( 情報通信技術)を取り上げ, 質的データを用いながらそれぞれの可能性を論じた.また,質的データの新しい分析方法として,テキス トマイニングの可能性について論じた.
ナラティヴ・アプローチは,問題を外在化し,希望を発掘することで,認知症患者を介護する家族の特 殊な経験に寄り添った支援を行う可能性がある.ICT は,情報の入手,発信,共有を容易にするツールであり, 都市高齢者のエンパワメントを図り,地域のネットワークを強化する可能性がある.テキストマイニング は,質的データを統計的に処理することで,研究者の恣意性を廃した客観的分析を行う可能性がある.
キーワード ナラティヴ・アプローチ,ICT,テキストマイニング
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