→English 最新更新日:2012年11月5日

日本老年社会科学会  Japan Socio-Gerontological Society

最新刊案内:老年社会科学 2012.10 Vol.34-3
論文名 高齢者を対象とした聴力の主観評価尺度の作成
著者名 石岡良子,権藤恭之,黒川育代,蓮花のぞみ
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 34(3):317-324,2012
抄録  本研究の目的は,健聴から軽度,中等度の難聴の高齢者を主な対象者と想定した聴力の主観評価尺度 を作成することである,加齢に伴って聞こえの困難さを自覚しやすい日常場面を用いた7 項目からなる 尺度を作成した.本尺度の特徴を把握するため,純音聴力検査を実施し,本尺度とともに基本属性,補 聴器装用の有無,病気,性格特性,感情状態,精神的健康について回答を求めた.60 歳以上の高齢者 186 人を分析した結果,本尺度は1 因子構造を示し,信頼性の高い尺度であることが確認された.本尺 度を目的変数とした重回帰分析の結果から,平均聴力レベル,補聴器装用の有無,外向性,ネガティブ 感情が有意に関連することが示された.本尺度によって,平均聴力レベルとは異なるが,日常生活にお ける聞こえの困難さを簡便に把握することができる.今後本尺度を用い,高齢期の聴力低下が心理・社 会的側面に与える影響について検証することが望まれる.
キーワード 聴力の主観評価尺度,聞こえの困難さ,純音聴力検査,平均聴力レベル,高齢者
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論文名 訪問介護におけるサービス提供責任者の調整業務の評価尺度の開発
― モニタリング機能とヘルパー指導機能の評価を中心として ―
著者名 須加美明
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 34(3):325-334,2012
抄録  目的:サービス提供責任者の調整業務の評価尺度の開発を目的にした.  方法:モニタリング機能とヘルパー指導機能を尺度の主な構成概念とし,サービス提供責任者167 人 を対象に質問紙調査を行った.有効回答は112 件,回収率67%であった.統計解析は探索的因子分析 と確認的因子分析を行った.  結果:確認的因子分析によるモデルの適合度はよく,構成概念妥当性がある程度確認できた.バーン アウト, 仕事への満足感などを外的基準に関連を調べたところ,有意な相関を示し基準関連妥当性が確 かめられた.2 因子のクロンバックのαは.77 と.84 で,一定の信頼性が認められた.  結論:モニタリング機能とヘルパー指導機能を構成概念とした尺度の信頼性と妥当性がある程度確か められた.調整機能の全体を評価するためには,ケアマネとの調整などを評価する尺度を追加して開発 することが今後の課題である.
キーワード 訪問介護,サービス提供責任者,モニタリング,ヘルパー指導,評価
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論文名 介護支援専門員のとらえる認知症高齢者への在宅環境配慮の効果
― テキストマイニングによる自由記述回答の分析―
著者名 大島千帆,児玉桂子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 34(3):335-349,2012
抄録  本研究の目的は,介護支援専門員がとらえる在宅生活を送る認知症高齢者の在宅環境配慮の効果を明 らかにすることである.  関東地方の居宅介護支援事業所2,000 か所に郵送調査を行い,254 人の介護支援専門員の担当してい る認知症高齢者の在宅環境配慮の具体的な効果に関する735 件の自由記述回答をテキストマイニングに よって分析した.その結果,「在宅環境配慮の効果」として<生活の活性化><身体や設備の清潔保持> <安全確保や危険防止><動作のしやすさ><介護負担軽減><わかりやすさ><生活の落ち着き>の 7 つを抽出した.
キーワード 認知症高齢者,在宅環境配慮,介護支援専門員,自由記述回答,テキストマイニング
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論文名 同居家族からのソーシャル・サポートが高齢者のうつ傾向発生に与える影響
― 5 年後の追跡調査 ―
著者名 島田今日子,山崎幸子,中野匡子,斉藤恵美子,渡辺幸子,安村誠司
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 34(3):350-359 ,2 012
抄録  本研究は70 歳以上の地域高齢者を対象とし,同居家族からのソーシャル・サポートの有無が,うつ 傾向の発生に与える影響を5 年後の縦断データで検討した.分析対象者は男性223 人,女性309 人( 平 均年齢76.2 歳)であった.調査では性別,年齢,家族構成,ソーシャル・サポート,うつ傾向,身体, 心理的要因について回答を求めた.ソーシャル・サポートは情緒的,手段的ソーシャル・サポート別に し,うつ傾向の発生に関連する要因を調整変数として,各ソーシャル・サポートを説明変数,うつ傾向 発生を目的変数としたロジスティック回帰分析を行った.その結果,手段的サポートとの関連は認めら れなかった.一方,同居家族からの情緒的サポートが低い人は,高い人に比較してうつ傾向発生のリス クが有意に高く(OR = 2.31,95% CI 1.16.4.60),うつ傾向の発生を防ぐためには同居する家族から の情緒的な支援が重要であることが示唆された.
キーワード ソーシャル・サポート,同居家族,うつ傾向,地域在住高齢者,コホート研究
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論文名 介護老人福祉施設で働く介護職員の仕事満足度と認知症ケア困難感との関連
著者名 原 祥子,實金 栄,吉岡佐知子,太湯好子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 34(3):360-369,2012
抄録  本研究は,介護老人福祉施設における介護職員の仕事満足度と認知症ケア困難感との関連について検 討することを目的とした.介護職員1,266 人に調査票を配布し,576 人の有効回答を分析した.介護職 員の認知症ケア困難感が仕事満足度に影響するという因果関係モデルを設定し,その因果関係モデルの データに対する適合性と各変数間の関連を構造方程式モデリングで検討した.その結果,前記因果関係 モデルはデータに適合し,認知症ケアの困難感は介護職員の仕事満足度と有意な負の関連性があること が実証できた.この結果から,介護職員の仕事満足度の向上につなげていくためには,個々の介護職員 の効力感を高めていけるような職員教育を進めていくことの必要性が示唆された.本研究では一定の施 設の限られた介護職員を対象にしたこと,結果における仕事満足度の寄与率は5.2%で高い説明率には 至っていないことから,今後さらに検討を加えることが課題である.
キーワード 認知症ケア,仕事満足度,介護老人福祉施設,介護職員,構造方程式モデリング
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論文名 高齢者の抑うつはその後の知能低下を引き起こすか
― 8 年間の縦断的検討 ―
著者名 西田裕紀子,丹下智香子,富田真紀子,安藤富士子,下方浩史
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 34(3):370-381,2012
抄録  本研究では,高齢者の抑うつがその後8 年間の知能低下に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし た.分析対象は,「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」の第1 次調査(ベースライン)に参加した65 .79 歳の地域在住高齢者805 人である.ベースラインの抑うつ はCenter for Epidemiologic Studies Depression(CES-D)尺度を用いて評価した.また,知能の変化 は,ベースラインおよび2 年間隔で行われた4 回の追跡調査において,ウェクスラー成人知能検査改訂 版の簡易実施法( 知識,類似,絵画完成,符号)により測定した.線形混合モデルを用いた分析の結果, 抑うつの有無は,「知識」「類似」「符号」の経年変化に影響を及ぼすことが示された.一方,抑うつか ら「絵画完成」の経年変化への影響は認められなかった.以上の結果から,高齢者の抑うつは,その後 8 年間の一般的な事実に関する知識の量,論理的抽象的思考力,および情報処理速度の低下を引き起こ す可能性が示された.
キーワード 抑うつ,知能,縦断研究,線形混合モデル
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論文名 小学生時の世代間交流が中学入学後の地域交流参加意識に及ぼす影響
― 絵本の読み聞かせ高齢者ボランティアREPRINTS の実践報告から ―
著者名 村山 陽,安永正史,大場宏美,野中久美子,西真理子,李 相侖,渡辺直樹,小宇佐陽子,深谷太郎, 竹内瑠美,倉岡正高,新開省二,藤原佳典
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 34(3):382-393,2012
抄録  本研究は,小学校時における高齢者の絵本読み聞かせボランティア“REPRINTS” との世代間交流が 中学入学後の地域活動参加意識に及ぼす長期的効果について検証した.調査対象者は川崎市の中学1 年 生181 人であり,そのなかで小学生時に“REPRENTS” と交流体験がある55 人を「交流体験あり群」, 交流体験がない126 人を「交流体験なし群」として効果の検証を行った.パス解析を実施した結果,「交 流授業体験」が,「高齢者ボランティアとの親密さ」「絵本読み聞かせへの関心」および「高齢者イメー ジ」を媒介として,中学入学後の「地域活動参加意識」の向上に影響していた.また,「性別」が「絵 本の読み聞かせ関心」を媒介にして「地域活動参加意識」を規定していた.青年前期の地域活動参加を 促すには,児童期の世代間交流体験,性別に加えて高齢者イメージ,交流プログラムへの関心,高齢者 ボランティアとの親密感といった認知・情意的プロセスを考慮した交流内容が重要になろう.
キーワード 世代間交流,地域活動参加意識,高齢者イメージ,絵本の読み聞かせ,高齢者ボランティアとの親密さ
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論文名 75 歳以上高齢者の社会要因,食と栄養情報と食品摂取の多様性
著者名 相原洋子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 34(3):394-402,2012
抄録  経済や教育といった社会要因と健康格差について,世界的な関心が高まっている.社会要因は食生活行 動,栄養状態と強い関連を示し,その背景として食や栄養に関する情報量や知識との関連が示唆されてい る.高齢化が著しいわが国では,介護予防や医療費抑制のうえで,高齢者の栄養状態の改善を検討するこ とは,重要な保健課題であるとし,本研究では社会要因と食と栄養の情報源,さらに多様な食品摂取との関 連について分析した.分析対象者は地域の75 歳以上高齢者645 人であり,経済,教育年数によって情報源, 食品摂取の多様性に違いがある結果が得られた.多変量解析の結果,本・雑誌,新聞から栄養情報を得てい る人は,多様な食品を摂取する傾向にあった.活字を媒体とした情報源が,高齢者の食生活行動を促すうえ で有用であることが示唆された.一方で社会経済状況の低い人に対して,アクセスならびに理解しやすい 情報媒体の検討が重要であると考えた.
キーワード 社会要因,食と栄養情報,食品摂取の多様性,後期高齢者
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論文名 地域高齢者の栄養改善のための生活支援
著者名 大塚理加,野中久美子,菊地和則,大島浩子,三浦久幸
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 34(3):403-411,2012
抄録  高齢者の低栄養状態は,免疫力を低下させ,虚弱を招くことから,その改善は在宅生活を継続するうえで 重要である.とはいえ,地域高齢者の栄養改善のための生活支援の実態はほとんど明らかになっていない. そこで本研究では,栄養改善のための地域高齢者への生活支援の現状と問題点を明らかにすることを目的 にした.そして医師と地域包括支援センター職員を対象にインタビュー調査を実施し,グラウンデッド・セ オリー・アプローチを用いて分析した.この結果,低栄養の高齢者の把握がなされていないという問題が 示唆された.また,栄養状況の改善には,そのための生活支援の必要性を地域包括支援センター等が把握す ることが必要であり,そのために,家族からの協力を得ることや高齢者がコミュニティからの支援を受けら れることが重要であることが示された.
キーワード 地域高齢者,栄養改善,生活支援,低栄養,地域包括支援センター
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論文名 高齢者見守りセンサーに関する研究の現状と課題
著者名 小池高史,野中久美子,渡邊麗子,深谷太郎,藤原佳典
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 34(3):412-419,2012
抄録  見守りセンサーに関する研究で,これまでになにが検討され,明らかにされてきたかを把握しようと試み た.「CiNii」「PubMed」を用いて検索された研究のなかで,見守りセンサーと関係のあるものを抽出した. 和文の論文は90 編あり,2002 年以降,顕著に論文数が増加していた.各論文が掲載されている雑誌の属す る分野は,医学・看護学分野と工学分野に分けられたが,工学分野での研究が大半を占めていた.英文の論 文は77 編あり,2000 年代後半以降に急増していた.検索された研究の多くは,センサー機器やセンサーを 用いた見守りシステムの開発を報告するものや,センサー自体の機能を検証するものであった.少数の医 学・看護学系研究においても,その対象や検討範囲は限定されていた.今後は,見守りセンサーによって高 齢者のADL やIADL といった生活機能が維持されるかどうかという点に加えて,主観的幸福感や生活満足 度が向上するかなどという心理的側面の検討も必要だと考える.
キーワード 独居高齢者,見守り,見守りセンサー
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論文名 高齢期の食・栄養の重要性と食環境の整備
著者名 新開省二
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 34(3):420-425,2012
抄録  高齢期の適切な栄養は,生活の質のみならず,身体機能を維持し,生活機能の自立を確保するうえでも, きわめて重要である.とくに,わが国の高齢者においては,肥満あるいは過栄養というよりも,むしろや せあるいは低栄養が,要介護および総死亡のリスクとしてより重要である.また,やせあるいは低栄養と, 要介護および総死亡との関連性は,基礎疾患等の重要な交絡要因の影響を除いても残ることから,独立し たリスク要因とみなされる.したがって,高齢者の低栄養状態を予防あるいは改善し,適切な栄養状態を 確保することは,健康余命のさらなる延伸につながると考えられ,高齢者の健康づくりの重要な戦略のひ とつである.しかし,高齢者の食をめぐる環境は大きく変貌しており,個人の努力だけでは適切な栄養状 態を確保できない状況にある.高齢者の食の自立に向けた支援や食のアクセス環境を地域ぐるみで向上さ せる必要がある.
キーワード 高齢者,長期追跡研究,低栄養,健康日本21,食環境
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論文名 閉じこもり研究の動向と課題
― 心理的支援の観点から ―
著者名 山崎幸子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 34(3):426-430,2012
抄録  本稿は,これまでの閉じこもり研究の動向を概観し,閉じこもり改善に向けた心理学的支援における今 後の課題について検討した.閉じこもりの関連要因では,身体,心理,社会・環境要因のそれぞれにおい てさまざまな要因との関連が認められた.一方,介入研究はきわめて少ない状態であった.これら近年の 閉じこもり研究の動向を踏まえると,介入手法の確立が今後の課題と考えられた.介入にあたっては,閉 じこもりの解消に向け,その要因の改善を図るための複合的な支援が必要である.とくに,その1 つをに なう心理的側面においては,閉じこもり高齢者は外に出かける自信が低いことが明らかにされたことから, 自信を高めるためのアプローチなど,科学的根拠に基づいた支援方法の確立が求められる.
キーワード 閉じこもり,介護予防,自己効力感,地域高齢者,尺度開発
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論文名 退職後の社会参加
― 研究動向と課題 ―
著者名 片桐恵子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 34(3):431-439,2012
抄録  本稿では,社会参加とその隣接概念について整理し,退職後の社会参加の可能性について議論すること を目的とした.  はじめに社会参加とその隣接概念である余暇活動,生産的活動,市民参加,ソーシャル・キャピタルの 定義や概念を示し,それぞれが統一的な概念が確立されていないという問題点を指摘し,社会参加活動と の概念上の重複や包含関係があることを提示した.  次に社会参加概念自体の定義や範囲のあいまいさを指摘し,Bulov ら,Levasserur ら,片桐が提案する 3 種類の社会参加活動の分類を比較することにより,社会参加概念の整理を試みた.それを踏まえ,社会 参加と隣接概念との統合を図り,仕事を含めた退職後の社会参加の可能性を提案した.  最後に日本の退職者の社会参加の現状から今後進むべき道を示すとともに,これからの社会参加研究に 求められる方向性を論じた.
キーワード 社会参加,市民参加,生産的活動,退職
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日本老年社会科学会事務センター
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