→English 最新更新日:2012年1月27日

日本老年社会科学会  Japan Socio-Gerontological Society

最新刊案内:老年社会科学 2012.1 Vol.33-4
論文名 同居者のいる住民基本台帳上の一人世帯高齢者の特性
著者名 斉藤雅茂,藤原佳典,小林江里香,深谷太郎,西真理子,新開省二
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 33(4):527−537,2012
抄録   住民基本台帳から判断される一人世帯のうち,実際には同居者がいる( 名目独居)高齢者の基本属性 および心理的健康を分析した.調査は,2008年7月〜2009年3月にかけて埼玉県和光市で行われ,そ のうち,一人世帯調査における名目独居と実質独居,一般世帯調査における一般同居の2,644 人につい て分析した.名目独居と実質独居および一般同居を従属変数にした二項ロジスティック回帰分析,およ び,3群間での心理的健康に関する差の検定を行った.分析の結果,(1)性別や年齢,生活機能,収入に かかわらず,名目独居は婚姻状態と当該地域の居住年数において実質独居と一般同居と顕著な違いがあ ること,他方で,(2)同居者のいる高齢者のなかでも孤立傾向にある高齢者ほど名目独居に該当しやすい という関連はないこと,(3)名目独居は一般同居と同程度に将来への不安は少ないが,実質独居と同程度 に健康度自己評価は低く,抑うつ感が高い傾向にあることが確認された.
キーワード 住民基本台帳,一人世帯高齢者調査,名目独居,抑うつ,婚姻状態
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論文名 「軽度要介護認定」高齢者の5年後の要介護度の推移の状況とその要因
著者名 和泉京子,阿曽洋子,山本美輪
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 33(4):538−554,2012
抄録  本研究の目的は,在宅の軽度要介護認定高齢者の要介護度の推移の状況とその要因を明らかにし,介 護予防対策の示唆を得ることである.2004年度に要支援と認定された939人と要介護1と認定された 659人の計1,598人について分析を行った.基本属性,身体・心理・社会的項目について単変量の解析 より,5年後の要介護度と有意であった項目について,多重ロジスティック回帰分析を行った.要支援 者および要介護1者共に,悪化の抑制には老研式活動能力指標得点の1点あがる毎が関連し,悪化の促 進には後期高齢者,排泄の失敗ありが共通して関連していた.要支援者では,主観的健康感の非健康, 趣味なし,要介護1者では,過去1年間の転倒経験ありも悪化の促進に関連していた.
 軽度要介護認定高齢者に対しては,排泄の失敗の予防・支援,要支援者へは,趣味をもち活動するこ とへの支援,要介護1 者へは転倒予防の支援が介護予防につながると考えられる.
キーワード 在宅高齢者,要介護度の推移の要因,軽度要介護認定,介護予防,多重ロジスティック回帰分析
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論文名 要支援から要介護3の後期高齢者の認知機能・うつ傾向・握力に対する二重課題の有効性
― デイサービスにおける「かぞえて体操」の実践を通じて ―
著者名 菊池有紀,薬袋淳子,島内 節,成順 月
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 33(4):555−565,2012
抄録   本研究の目的は,デイサービスを利用する要支援から要介護3 までの後期高齢者が,座位で50 から0 まで声を出して数えながらセラバンド運動を行う「かぞえて体操」( 二重課題)の実施が,認知機能と うつ傾向,筋力( 握力)に有効であるかを検証することである.
 3 施設のデイサービスから,介入群63人,対照群59人を選出した.介入群は,連続12 週間中の利用 日( 週平均2.0 ± 0.8 回)に二重課題を実施し,介入前後の MMSE 得点,GDS 得点,握力について多重 ロジスティック回帰分析による比較検証を行った.
 分析対象は,介入群61人,対象群55人であった.介入群は,MMSE 得点とGDS 得点,握力が有意に 向上し,オッズ比はそれぞれ5.12(95%信頼区間:2.11-12.42)と2.95(1.28-6.83),右手3.40(1.36- 8.46),左手3.25(1.40-7.55)であった.対照群は変化がなかった.
 デイサービスを利用する要支援から要介護3までの後期高齢者が二重課題を実施することで,認知機 能とうつ傾向の改善と,筋力の向上に効果的であることが示唆された.
キーワード デイサービス,後期高齢者,二重課題
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論文名 ホームヘルパーの援助力を測る尺度の開発
著者名 須加 美明
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 33(4):566−574,2012
抄録  ヘルパーの援助力尺度の開発を目的として,ヘルパーを対象に調査1(n= 264)と調査2(n= 531) を行った.調査1を基に因子分析を行い,利用者への気づき,考える援助,後ろ向きの態度(クライエ ント中止の逆)の3因子でヘルパーの援助力を表すことにした.利用者への気づきと考える援助の因子 は,アセスメントと計画性を表しているので,上位に2次因子(ニーズ把握と計画力)をおき,これと 後ろ向きの態度が共分散をもつというモデルを設定した.モデルの評価のために確認的因子分析を行っ たところ適合度指標は2回の調査で十分な値を示し構成概念妥当性が確認できた.自己効力感,バーン アウト,職務満足感を外的基準として関連を調べたところ,いずれも有意な相関を示し基準関連妥当性 が確かめられた.下位尺度のひとつでクロンバックのαが低いものの,尺度全体ではある程度の信頼 性が認められ,ヘルパーの援助力を測る手がかりになると思われる.
キーワード 訪問介護,ホームヘルパー,援助,尺度開発,確認的因子分析
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論文名 中・高齢者における運動セルフ・エフィカシー情報源の特徴
─ クラスタ分析に基づく検討 ─
著者名 前場康介, 竹中晃二
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 33(4):575−584,2012
抄録   本研究では,中・高齢者の運動セルフ・エフィカシー情報源における関連パターンをクラスタ分析により 類型化し,各クラスタにおける対象者の特徴を明らかにすることを目的とした.60 歳以上の中・高齢者858 人( 男性449人,女性409人)を対象として質問紙調査を実施し,運動セルフ・エフィカシーおよびその情 報源などを含む諸変数を測定した.クラスタ分析の結果,中・高齢者における運動セルフ・エフィカシー 情報源の関連パターンは,(1)全情報源充足型,(2)全情報源不足型,(3)自己関連情報源充足型,(4)代理的体験 充足型,(5)言語的説得充足型,の5 つに類型化されることが明らかになった.全情報源充足型では運動セル フ・エフィカシーが高く,定期的な運動習慣を有している者の割合が高いといった特徴が示された.また, 全情報源不足型は,それと対照的な特徴を示していた.今後は,運動セルフ・エフィカシーとの関連変数を 含んだ包括的な検討を行う必要がある.
キーワード 中・高齢者,運動セルフ・エフィカシー,運動セルフ・エフィカシーの情報源,クラスタ分析
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論文名 高齢者施設での防災
著者名 高橋 洋
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 33(4):586−591,2012
抄録  災害にも各種あり,高齢者施設では,火災,土砂災害,地震災害などで被害を受けてきた.2004 年か ら,災害時要援護者問題が本格的に検討され,全国で問題の認識が深まっていたが,まだ十分なレベル ではなく,災害時の迅速かつ継続的な支援の仕組みが必要である.世界的大ヒットをしたアニメ作品“ 崖 の上のポニョ” は主要登場人物のひとりとして介護従事者が登場し,またデイサービスが津波に襲われ る「予言」的作品であったため,作者の意図の有無にかかわらず重要な問題を提起していた.東日本大 震災では津波,原発事故で,甚大な被害をこうむったことから,即時避難が困難な高齢者施設は,低い 土地や原発の近傍(30km 圏内)に立地困難なことが判明し,大規模な対策が必要である.24 時間365 日 高齢者を支えることは,災害時にあっても同様で,必要な準備が求められる.
キーワード 災害時要援護者,東日本大震災,高齢者施設,原子力災害
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論文名 高齢者施設の震災時の対応と仮設住宅の高齢者対応について
― 岩手県内の状況から ―
著者名 狩野 徹
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 33(4):592−597,2012
抄録  今回の震災は広範囲に甚大な被害をもたらした.岩手県の事例から,高齢者施設の被災と対応の状況, その後建設された仮設住宅の高齢者対応の状況について報告する.高齢者施設は地震そのもので倒壊す るほどの被害は少なかったが,津波による被害が目立った.施設の立地条件が大きく影響したこと,実 質的に福祉避難所として機能したあとから,さかのぼって福祉避難所として指定されたという課題はあ ったが,福祉避難所としての役割が重要であることがわかった.さらに,福祉避難所としてだけでなく, 地域の拠点になることもあり,高齢者施設の地域的役割が重要であることがわかった.また,仮設住宅 については,高齢者等に対する一定の配慮がなされたものの,短期間に大量の建設が必要であったこと から課題もあった.今回は,コミュニティケア型仮設住宅の提案など新しい提案もあり,今後の仮設住 宅のあり方の方向性も示された.
キーワード 災害,福祉避難所,コミュニティケア型仮設住宅,サポートセンター
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論文名 東日本大震災と被災者の行動
著者名 加藤伸司,矢吹知之,阿部哲也,吉川悠貴,合川央志,田村みどり,菊池 令
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 33(4):598−605,2012
抄録   東日本大震災では,地震と津波の影響で多くの人が犠牲になった.被害が拡大した理由は,停電など による情報源の遮断や,避難時の同調行動,道路の渋滞,経験の逆機能などが挙げられる.しかし,施 設や事業所などでは,迅速な決断や適切な判断,避難経路選択の判断,過去の実践的な避難訓練などが 生かされたことなどによって多くの施設等の利用者が助かっている.震災時の認知症高齢者は,比較的 落ち着いて行動したという報告もあるが,その後の環境の激変が認知症の人に悪影響を与えている.ま た介護スタッフは,自分自身が不安を抱えながらも不眠不休の活動を続けていた人たちも多く,PTSD を抱えている人たちも少なくない.今後は被災者に対する支援だけではなく,将来起こりうる災害に備 え,備蓄の再検討や情報入手手段・通信手段の検討,防災・災害マニュアルの整備,認知症高齢者等に 対する二次避難先・三次避難先の事前確保など,想定外を想定した対策を考えていく必要があるだろう.
キーワード 東日本大震災,被害拡大,避難行動,認知症高齢者,介護スタッフ
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論文名 被災高齢者の健康・生活ニーズと看護支援
著者名 松岡千代
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 33(4):606−612,2012
抄録  災害時要援護者の筆頭として高齢者が挙げられるが,その理由は災害時の避難支援が必要であること, 被害を受けやすいこと,被災後の健康・生活問題を生じやすいことなどである.東日本大震災でも多く の高齢者が被害を受け,震災後10か月を経過しても健康・生活支援を必要としている人は多い.そこ で災害看護支援の立場より,災害亜急性期から慢性期における避難所での被災高齢者の健康・生活ニー ズと看護支援,そして福祉避難所と仮設住宅での支援課題について,東日本大震災での実情を交えなが ら述べる.そのうえで,災害時に有効的かつ継続的に支援を行っていくための仕組みづくりと,災害前 の備えとしての地域づくりの必要性についてまとめてみたい.
キーワード 被災高齢者,健康・生活ニーズ,看護支援,東日本大震災
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