→English 最新更新日:2011年10月24日

日本老年社会科学会  Japan Socio-Gerontological Society

最新刊案内:老年社会科学 2011.10 Vol.33-3
論文名 高齢者の居住継続性とその関連要因
─ 別荘地に移住した高齢者への5 年間の追跡研究 ─
著者名 斎藤 民,甲斐一郎,杉澤秀博,柴田 博
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 33(3):385−394,2011
抄録   別荘分譲地の定住高齢者を対象に,5年間の追跡研究から居住継続性とその関連要因を検討した. 1997 年に実施された調査( 以下,初回調査)に回答の65 歳以上男女242 人( 初回調査時平均年齢72.2 歳, 男性49.8%)を対象に,自治体の協力を得て追跡期間中の死亡および転出の有無とその発生時期を把握 した.転出までの期間を従属変数とし,説明変数には,心身の健康,生活習慣,家族や子とのかかわり, 地域とのかかわり,および住居・近隣環境要因を用いた.5 年間の居住継続性は男性73.3%,女性 75.2%であり,女性のほうが転出割合が高かった.Cox 比例ハザードモデルによる分析の結果,高学歴, 別居子からの支援,見晴らしのよい住居ほど転出のリスクが高く,男性,温暖な地域に居住,近隣に助 け合う住民が多いと評価するほど転出のリスクが低かった.居住継続性の関連要因として別居子との関 係性とともに近隣環境が重要であることが示唆された.
キーワード 高齢者,居住継続性,縦断的研究,近隣環境,別荘分譲地
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論文名 地域高齢者における運動器の機能向上プログラムの社会活動促進への介入効果
著者名 木村みどり,山崎幸子,長谷川美規,安村誠司
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 33(3):395−404,2011
抄録  地域高齢者に対する運動器の機能向上プログラムの社会活動促進への介入効果について検証すること を目的とした.調査対象者は,介護予防事業における運動器の機能向上プログラムに該当した地域高齢 者322 人で,週1 回(120 分)3 か月間の運動教室に参加した者を介入群(92 人),しなかった者を対照 群(187 人)とした.分析は,介入・観察前後の得点差から,「増加」と「維持・減少」に分け,運動教 室の社会活動に対する介入効果について,性,年齢,今後やってみたい社会活動の有無を説明変数とし たモデル1 と,これらに腰・膝の痛みの有無を加えたモデル2 を設定して,ロジスティック回帰分析を 行った.なお,介入前の得点を調整変数として投入した.その結果,「社会活動合計」「社会参加・奉 仕活動」は,介入群で有意に増加した.これらから,事前調査時の基本属性や腰・膝の痛みの有無にか かわらず,運動教室に参加することは,地域高齢者の社会活動の促進に寄与することが示唆された.
キーワード 社会活動,地域高齢者,介護予防事業,運動器の機能向上プログラム
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論文名 居宅介護支援事業所における介護報酬加算の請求留保に関連する要因
著者名 吉江 悟,栗原直美,立野麻衣子,大川潤一,小山茂孝,中村真理,牧野雅美,水村美穂子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 33(3):405−416,2011
抄録   都内の全居宅介護支援事業所を対象として介護報酬加算の請求留保に関する質問紙調査を実施し, 1,293 票( 回収率50.4%)を得た.留保の割合は,認知症/独居高齢者/初回加算においては20%未満 と相対的に低く,退院退所/医療連携/特定事業所加算では30%超と高い割合であった.請求留保の 関連要因は,事業規模が小さい事業所では留保割合が高く,経営効率の観点から悪循環に陥っている可 能性が示唆された.また,医療施設併設の事業所や医療系基礎資格者が勤務する事業所では退院退所/ 医療連携/認知症加算の留保割合が低く,医師との連絡の取りやすさが留保割合に影響していると考え られた.さらに,留保の理由を検討した結果,留保の割合が高い事業所では面倒,苦手などの「主観的」 な理由,低い事業所では「客観的」な理由が多く挙げられていた.事業所の経営改善を目指すうえでは, 苦手意識等の感情と請求事務とを区別して臨む意識づけが重要と考えられた.
キーワード ケアマネジメント, 介護保険, 保険請求, 経営
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論文名 中・高齢者の運動停止を導くハイリスク状況への 対処方略とセルフ・エフィカシーとの関連
著者名 前場康介,満石 寿,飯尾美沙,藤澤雄太,竹中晃二
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 33(3):417−425,2011
抄録  本研究では,運動を実施している中・高齢者を対象として,運動実践を阻害するハイリスク状況とそ の対処方略,およびセルフ・エフィカシーとの関連について検討することを目的とした.211 人の中・ 高齢者を対象として,ハイリスク状況およびその認知的・行動的対処方略に関する自由記述,またセル フ・エフィカシーの測定を含む質問紙調査を実施した.その結果,ハイリスク状況としてもっとも多く 挙げられたものは「悪天候」であり,ついで「体調不良・怪我」「疲労」と続いた.また,認知的・行 動的対処方略いずれについても,その内容は先行研究とおおむね一致していた.ハイリスク状況に対し て肯定的な対処を実施している者は,否定的な対処を用いている者と比較して有意にその後に運動を実 践した割合が高く,セルフ・エフィカシー得点も高かった.今後は本研究の知見に基づき,運動停止の 予防に焦点を当てた研究が進められるべきである.
キーワード 運動,リラプス・プリベンション・モデル,運動停止を導くハイリスク状況,認知行動的対処方略, セルフ・エフィカシー
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論文名 介護業務およびその実践方法とケアワーカーの腰痛の関連性について
著者名 向井 通郎
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 33(3):426−435,2011
抄録   本稿ではケアワーカーの腰痛の罹患状況を介護業務の内容とその実践上の方法に着目し質問紙調査を実 施し検討した.対象者は介護老人福祉施設60 施設に勤務する,1,191 人のケアワーカーである.ケアワーカ ーの腰痛が問題視されて以来継続し腰痛有訴率が高く,この調査においても55%を超える者が腰痛を抱え ながら業務に従事していた.また,17%の者は腰痛の罹患歴があるものの現在は腰痛の訴えがない.27% の者はこれまで腰痛に罹患することなく業務をこなしている.身体負担の大きい介助動作として排泄や入 浴に伴う移乗・移動動作が負担となっていた.その介助の実施方法について,対象者との距離,立ち上がり 後の姿勢の安定に配慮し実践がなされてはいるが,多くのケアワーカーは,「持ち上げ」により実施してい る実態が明らかとなった.また腰痛の軽減・予防を目指すうえでは,身体への負担が少なく,安全に配慮し た介助技術を実践場面で具体的に伝達することが求められ,そのためには職員間の情報交換や教示の機会 を増すことが有効であると考えられる.
キーワード 介護老人福祉施設,腰痛,ケアワーカー,移乗・移動,介助技術
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論文名 ホームヘルプサービスを利用している要支援高齢者の特徴
著者名 村上智広,望月吉勝
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 33(3):436−443,2011
抄録  北海道の内陸部に位置する人口約18,000 人の一地方都市の住民で,要支援1 .2 の軽度要介護認 定を受けて介護保険サービスを利用している高齢者を対象に調査を行い,サービス種別に検討する ことでホームヘルプサービスを利用している要支援高齢者の特徴を把握することを目的とした.ホ ームヘルプサービス利用群33 人と通所利用群45 人の合計78 人を分析対象として2 群間で比較した. 調査期間は2009 年6 .9 月であった.
 ホームヘルプサービス利用群は,通所利用群に比べひとり暮らしと,同居家族内に介護認定者の いる者の割合,抑うつ状態ありの割合が有意に高かった.社会関連性指標の「生活の安心感」と SF-8 の身体的健康は,通所利用群に比べてホームヘルプサービス利用群のほうが有意に低かった. 以上より,要支援認定を受けてホームヘルプサービスを利用している高齢者は,抑うつ状態の割合 が高く,生活の安心感と身体的健康が低いという特徴が示された.
キーワード 要支援高齢者,介護保険,ホームヘルプサービス,通所サービス
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