→English 最新更新日:2011年5月31日

日本老年社会科学会  Japan Socio-Gerontological Society

最新刊案内:老年社会科学 2011.04 Vol.33-1
論文名 高齢者の立位バランスと心理的適応の関係性
─ 臨床動作法の観点から ─
著者名 足立 匡基
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 33(1):3−14,2011
抄録  本研究の目的は,臨床動作法の観点から,高齢者の立位バランスと心理的適応との関係性を,バラン ス測定装置と質問紙を用いて検討し,その関係性について仮説的モデルを示すことである.測定する心 理的特性としては,臨床動作法の先行研究から,ADL,Locus of Control(LOC),状態不安,主観的 幸福感を採用した.
 高齢者100 人をバランス測定装置の測定結果から,バランス良好群と不良群に分け,上述の尺度得点 を群間で比較したところ,バランス良好群は不良群に比べ,ADL,LOC における内的統制傾向,主観 的幸福感が高く,状態不安が低いという結果が得られた.さらに,相関分析および偏相関分析,重回帰 分析,構造方程式モデリングの結果から,高齢者の主観的幸福感に直接的な影響を与えているのは LOC と状態不安といった心理的特性であるが,ADL や立位バランスといった身体的制御機能はLOC や状態不安に影響を与えており,主観的幸福感に対し間接的な影響を与えている可能性が示唆された.
キーワード 臨床動作法,バランス測定装置,ローカスオブコントロール,主観的幸福感,構造方程式モデリ ング
目次へ戻る
論文名 地域在住高齢者における社会的サポートと抑うつの関連
─ AGES プロジェクト ─
著者名 村田千代栄,斎藤嘉孝,近藤克則,平井 寛
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 33(1):15−22,2011
抄録  社会的サポートは,日常的な手助け,悩みの相談など人間同士がやりとりする支援であり,これらの サポートの授受は,健康に良好な影響を与えることがわかっている.しかし,サポート授受の相手によ りその影響が異なるか否かについては必ずしも明確ではない.本研究では,2003 年に一般高齢者を対 象に行ったAGES プロジェクトのデータ( n = 32,891)を用い,サポート授受の相手と抑うつの関連に ついて検討を行った.サポート授受の相手として,同居家族,別居の子や親族,近隣・知人・友人の3 種類を用いた.うつ(GDS15 項目版で5 点以上)の有無を目的変数,年齢,疾患の有無,配偶者の有無, 独居の有無を共変量に,性別にロジスティック回帰分析を行ったところ,サポート授受の相手にかかわ らず,相手がいる高齢者は抑うつが少なく,独居など同居家族からのサポートが得られない状況であっ ても,それ以外の人々とのサポートの授受が高齢者の抑うつを防ぐ可能性が示唆された.
キーワード サポート授受の相手,抑うつ,高齢者
目次へ戻る
論文名 地域高齢者の転倒に対する脅威の構造
─ 年代および老性自覚と転倒の脅威との関連についての検討 ─
著者名 梅田奈歩,山田紀代美
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 33(1):23−33,2011
抄録  地域高齢者が抱く転倒恐怖感(fear of falling)に対してLazarus の認知的・動機的・関係的情動理論 を参考に仮説モデルを示した.
 筆者らの先行研究では地域高齢者の転倒に対する脅威としての評価(appraisal)は転倒により生じる 身体的影響に加えて生活の変化や人間関係の変化,アイデンティティの変容に関する内容を含んでいる ことを明らかにした.本研究ではこの結果に基づき転倒に対する脅威評価項目を作成し地域高齢者289 人を対象に質問紙調査を実施した.287人を有効回答とし妥当性と信頼性を検討した.調査結果に対し て項目分析および探索的因子分析を行い最終的に24項目5因子を抽出した.5因子は「QOL 低下の引き 金」「自己の自立性の喪失」「身体的苦痛」「他者依存に対する心理的負担」「重篤な末期へのきっかけ」 と命名した.測定概念の妥当性は年代および老性自覚との関連により確認した.また信頼性はクロンバッ クα係数( α≧ 0.7)により内的整合性を確認した.
キーワード 地域高齢者,転倒恐怖感,転倒の脅威評価項目,老性自覚
目次へ戻る
論文名 個性が尊重されない「組織風土」における, 「キャリア・コミットメント」の高い介護職員の離職意向と「介護観」の関連
著者名 白石旬子,藤井賢一郎,大塚武則,影山優子,今井幸充
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 33(1):34−46,2011
抄録  本研究の目的は,個性が尊重されない「組織風土」における「キャリア・コミットメント」の高い介 護職員の離職意向と「介護観」との関連を検証することであった.全国の介護老人福祉施設に勤務する 介護職員を対象として,層化二段無作為抽出法により12,000 人を抽出し,質問紙調査を行った.分析に 用いた項目に回答不備があるもの等を除いた2,520 票が有効回答であった( 有効回答率21.0%).
 ロジスティック回帰分析を行ったところ,「低個性重視組織」において「高キャリア・コミットメント」 群の離職意向は,「考え,振り返る実践重視」という「介護観」(オッズ比= 1.167, p= 0.044,95%信 頼区間1.004 − 1.355),年齢「40歳以上」(オッズ比= 0.443, p= 0.009,95%信頼区間0.230 − 0.853) と有意な関連がある結果が示された.
 本結果より, 個性が尊重されない「組織風土」の下においては,「キャリア・コミットメント」の高い 介護職員の離職意向が「介護観」によって高まる可能性が示唆された.
キーワード キャリア・コミットメント,「キャリア・コミットメント」の高い介護職員,離職意向,「介護観」,「組 織風土」
目次へ戻る
論文名 社会関係の研究において用いられている非親族との関係の指標
― 日本の高齢者を対象とした最近の量的実証研究のレビュー ―
著者名 澤岡詩野, 古谷野亘
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 33(1):47−59,2011
抄録   1995 .2009年までに国内で発表された高齢者の社会関係周縁部に関する量的実証研究をレビューし,社 会関係の測定に用いられている指標について検討した.文献検索には社会老年学文献データベースDiaLを 用い,77件の論文を取り上げた.
 検討の結果,(1)社会関係そのものの分析を主たる目的とした論文ではタイ単位の測定が多く行われてい ること,(2)他者の続柄の区分は厳密さを欠き,交流の指標もまちまちであること,(3)タイ単位の測定では, 他者を選定する際の基準と選定する他者の人数がとくに重要で,さらなる検討を要すること,(4)最周縁部の 他者を分析対象として選定できる基準はいまだ開発されていないこと,が示された.
 周縁部の他者を調査・測定する方法を開発し,高齢者の社会関係そのものに関する研究を重ねることが 必要である.
キーワード 社会関係,ソーシャル・サポート,ソーシャル・ネットワーク,質問項目,レビュー
目次へ戻る
論文名 非拘束なモニタリングシステムによる見守り支援が介護スタッフに及ぼす影響
著者名 内田勇人,藤原佳典,谷口和彦,新開省二
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 33(1):60−73,2011
抄録  本研究は,施設入所者のベッド上の体動が把握できるモニタリングシステム(センサー)を介護 施設に導入することによって,介護スタッフの活動量,関わり,見守り,心身の機能に何らかの影 響がみられるかどうかについて明らかにすることを目的とした.研究参加者として,大阪府S 市の 特別養護老人ホームA に勤務する介護スタッフ20 人を選んだ.2008 年の10 月上旬に施設にセン サーを導入した.センサーの導入階に勤務する介護スタッフ(介入群,10 人)と非導入階に勤務す る介護スタッフ(対照群,10 人)の間で,センサーの導入前後における各種検討項目値の変化を, 反復測定による二要因分散分析により検討した.分析の結果,介護スタッフの「オムツ交換回数」 と「ストレッサー評価尺度総得点」において,有意な交互作用がみられた(各p < 0.05).センサー の導入により,介護スタッフの夜間勤務時におけるオムツの交換業務量,および仕事上の心理的ス トレス度が軽減する可能性が示唆された.
キーワード モニタリングシステム,関わり,見守り,介護スタッフ,認知症高齢者
↑トップページへ戻る
日本老年社会科学会事務センター
〒162-0825 東京都新宿区神楽坂4-1-1 株式会社ワールドプランニング内
TEL:03-5206-7431 Fax:03-5206-7757 E-mail: office@rounenshakai.org