→English 最新更新日:2010年06月14日

日本老年社会科学会  Japan Socio-Gerontological Society

最新刊案内:老年社会科学 2010.4 Vol.32-1
論文名 高齢者と家族介護者からみたデイサービス利用・非利用に関連する要因
― パネル調査の分析を通して ―
著者名 田代和子,杉澤秀博 
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 32(1):3−13,2010
抄録  本研究は,高齢者と家族介護者を対象に,それぞれの特性がデイサービスの利用・非利用を予測できる要因であるか否かをパネル調査に基づいて明らかにすることを目的とする.要因としては,主として家族介護とデイサービスに関する態度や意識を取り上げ,これらの要因は初回調査において測定した. 初回調査は高齢者・家族のペア104ケースに実施した.分析の結果,高齢者,家族介護者のいずれも,デイサービスに対する態度のうち利用による効果に対して否定的な考えをもっている人で利用の割合が低かった.また,高齢者については自立度が低い,経済的に苦労している,対人関係の面でサービス利用に抵抗がある場合に利用割合が低かった.以上の以外にも家族介護者の間では強い効果のある要因は観察されなかったものの,その結果は仮説を支持するものではなかった. 
キーワード 高齢者,家族介護者,パネル調査,デイサービス,利用・非利用 
目次へ戻る
論文名 訪問介護のサービス提供責任者のストレッサー尺度の開発
― 利用者・ケアマネ・ヘルパーの間を調整する役割葛藤 ―
著者名 須加美明
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 32(1):14−22,2010
抄録  訪問介護のサービス提供責任者を対象として,そのストレッサー尺度の開発を目的に2回の調査を行った.構成概念を利用者との関係,ケアマネとの関係,ヘルパーとの関係,上司との関係, 仕事の忙しさ,知識技術の6 因子で表わすモデルを設定し,探索的因子分析を行ったところ,2回の調査とも仮説どおりの因子が抽出された.また,モデルの評価のために確認的因子分析を行ったところ,モデルの適合度指標は十分な値を示し,構成概念妥当性が確認できた.基準関連妥当性を検討するためGHQ,バーンアウト尺度を外的基準としてストレッサー6因子との関連を調べたところ,いずれも有意な相関を示し妥当性が確かめられた.各因子の信頼性はCronbach のαが0.67 .0.93 になり,ある程度の信頼性が 確認できた.
キーワード 訪問介護,サービス提供責任者,ストレス,業務ストレッサー,役割葛藤 
目次へ戻る
論文名 閉じこもり改善の関連要因の検討
― 介護予防継続的評価分析支援事業より ―
著者名 山崎幸子,安村誠司,後藤あや,佐々木瞳,大久保一郎,大野 裕,大原里子,大渕修一,杉山みち子,鈴木隆雄,本間 昭,曽根稔雅,辻 一郎
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 32(1):23−32,2010
抄録  特定高齢者を対象に閉じこもり改善に関連する要因を明らかにすることを目的とした.分析対象者は,厚生労働省介護予防継続的評価分析支援事業で収集されたデータベースから,初回調査時に基本チェックリストによって,外出頻度が週1回未満と判定された閉じこもり高齢者(n= 274)とし,1年後の追跡調査時に閉じこもりが改善していた改善群(n= 168)と非改善群(n= 106)に分類して用いた.分析の結果,閉じこもりは,基本チェックリストのその他の要介護リスクである「運動器の機能向上」では約8割,「認知症予防・支援」「うつ予防・支援」とはそれぞれ約5割が重複していた.多重ロジスティック回帰分析の結果,具合が悪いときにいっしょに病院へ行ってくれる人がいること,認知的活動得点が高いこと,通所型介護予防事業( 運動器の機能向上)への参加が閉じこもり改善に寄与していた.一方,訪問型介護予防事業( 運動器の機能向上)への参加は,閉じこもり改善と負の関連が認められた.以上から,閉じこもり改善においては,通所型介護予防事業をより積極的に展開していくことに加え,訪問型介護予防事業における新しいプログラム内容の検討が示唆された. 
キーワード 閉じこもり,外出頻度,介護予防,特定高齢者,要介護リスク 
目次へ戻る
論文名 心理的well-being が高い虚弱超高齢者における老年的超越の特徴
― 新しく開発した日本版老年的超越質問紙を用いて ―
著者名 増井幸恵,権藤恭之,河合千恵子,呉田陽一,山 緑, 中川 威,高橋龍太郎,藺牟田洋美
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 32(1):33−47,2010
抄録  本研究の目的は,日本人高齢者に適した老年的超越質問紙を開発し,心理的well-beingが高い虚弱超高齢者の老年的超越の特徴を検討することであった.10人の高齢者へのインタビューから質問紙を作成し,在宅高齢者500人( 男性198人,女性302人)に実施した.因子分析の結果,「ありがたさ」「おかげ」の認識,内向性,二元論からの脱却,宗教的もしくはスピリチュアルな態度,社会的自己からの解放,基本的で生得的な肯定感,利他性,無為自然と命名された8因子を抽出した.次に,在宅超高齢者149人( 男性51人,女性98人)をクラスター分析により高機能高well-being( 以下,WB)群,低機能高WB群,低機能低WB群に分類し,質問紙の下位尺度得点を比較した.低機能高WB 群は低機能低WB 群より内向性,社会的自己からの解放,無為自然の得点が高く,宗教的もしくはスピリチュアルな態度の得点が低かった.これらの結果から老年的超越の一部の下位因子は心理的well-being の高さと関連し,その低下を緩衝する可能性が示唆された. 
キーワード 老年的超越(gerotranscendence),心理的well-being,虚弱,超高齢者(85 歳以上)
目次へ戻る
論文名 特別養護老人ホームの新人介護職員の看取りのとらえ方
著者名 小林尚司,木村典子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 32(1):48−55,2010
抄録  介護施設で看取りを行ううえで,新人介護職員へのサポートが課題である.サポートを検討する際には,介護職員の内面に注目し,看取りをどのように体験しているのかを明らかにすることが重要である.本研究では,特別養護老人ホームに勤務する新人介護職員4人に半構成面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析し,新人介護職員の看取り体験の仮説モデルを作成し,モデルの活用によって考えられるサポートのあり方を検討した.その結果,新人介護職員は,看取りの経験から【自分の死の受け止め方の気づき】をもたらすと感じて,【看取りを経験することは有意義】であると,〔自分にとって看取ることの意味づけ〕をしていた.看取り介護の実施においては,【看取り介護の目標】を考えるが,【介護の行き詰まり】と【次の看取りへの不安】を感じ,【他のスタッフのサポートを期待】するというように,〔自分が看取り介護を行ううえでの課題と対処〕をしていることがわかった.これらから,新人介護職員へのサポートにおいては,介護職員と看護師でそれぞれ違う役割をになって,不安を解消することが重要であると考えられた.
キーワード 看取り,新人介護職員,特別養護老人ホーム 
目次へ戻る
論文名 高齢期の貧困・格差問題にかかわる老年社会科学研究の展望
― 「格差センシティブ」な研究の展開に向けて ―
著者名 平岡 公一 
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 32(1):56−63,2010
抄録  近年の日本社会では,貧困・格差への社会的関心が高まる一方で,高齢期が,所得格差が拡大し貧困率が高まるライフステージであることが改めて確認されている.このようななかでは,老年社会科学研究においても,格差・貧困問題への取り組みがこれまで以上に期待される状況にある.
 このような状況を踏まえ,本稿では,相対的貧困概念,相対的剥奪論,社会的排除論を中心に,社会政策研究における貧困の概念,測定,分析枠組みに関する基本的な考え方と新たな研究の成果を紹介するとともに,ライフコース視角から高齢期の貧困・格差を分析するための新たな研究枠組みとしてA.M.ORandが提唱しているライフコース・キャピタルとライフコース・リスクの概念を中核においた研究枠組みを紹介し,若干の考察を行った.
 最後に,老年社会科学の諸分野の研究においても「格差センシティブ」であることが期待されるという問題提起を行った.
キーワード 貧困,格差,ライフコース視角,累積的不利・有利,格差センシティブ
目次へ戻る
論文名 介護予防の現状と課題
著者名 芳賀 博 
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 32(1):64−69,2010
抄録  介護予防の現状と課題,とくにポピュレーションアプローチとしての介護予防に視点を当て,論述した.介護予防の枠組みは,「新予防給付」「特定高齢者施策」「一般高齢者施策」からなる.制度創設からこれまで「新予防給付」と「特定高齢者施策」には多くの時間を割いてきたが,特定高齢者の把握方法を含め効果的な介入プログラムの確立までには至っていない.一方で,活動的な高齢者を対象とする「一般高齢者施策」にまで手が回らないのも現状である.積極的な健康・生きがいづくり対策としてのポピュレーション・アプローチにもっと力点がおかれるべきである.
 高齢者の社会貢献意識は高まっており,高齢者ボランティアを中核とする地域ぐるみの介護予防活動の展開が注目されている.研究者自身が行政,ボランティア,住民等との協働による介護予防の計画・実践・評価にかかわることで地域全体を視野にいれた効果的な介護予防プログラムの開発が可能になると考えられる.
キーワード 介護予防,新予防給付,地域支援事業,高齢者ボランティア,参加型アクションリサーチ 
目次へ戻る
論文名 認知症を生きる
著者名 高橋幸男 
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 32(1):70−76,2010
抄録  認知症の人を生きにくくさせている理由のひとつとして「恍惚の人」的認知症観に注目し,認知症になりゆく経過を“ 心理社会的病理” としてとらえた.認知症になりゆくことは,不安のなかで孤独を強いられ身近な者からの温かい関与が少なくなることである.一方家人からの励ましや注意などの指摘は続き,認知症の人は「叱られる」と受け止める.役割や立場を失い,居場所も追われ,尊厳さえも失いやすい.叱られ続けるなかで不安・緊張が強まり,周囲のささいな言動を契機にBPSD(behavioral andpsychological symptoms of dementia)へとつながっていく.この過程で家族介護者も疲弊しうつ状態になりやすく,それがまたBPSD を悪化させるという悪循環に陥る.認知症を生きるためには,認知症の人の不自由を受け入れ,孤立させず話しかけ,指摘を少なくする手立てを講ずることが肝要になる.認知症の早い時期での心理教育が本人,家族にとって重要である. 
キーワード 認知症,心理社会的病理,「恍惚の人」的認知症観,BPSD,心理教育 
目次へ戻る
論文名 成年後見制度の現状と課題
著者名 甲斐一郎
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 32(1):77−79,2010
抄録  2000年に,介護保険と同時期に導入された新しい成年後見制度は,認知症高齢者をはじめとする,意思決定能力の低下した人々の生活と財産を守り権利を擁護するために重要であると考えられる.後見人の絶対的な不足のなか,この制度をわが国に定着させるためのひとつの方策として市民後見人の普及が挙げられる.東京大・筑波大が中心になって行っている「市民後見人養成プロジェクト」について説明し,市民後見人の可能性と今後の課題について論じた. 
キーワード 成年後見制度,認知症高齢者,財産管理,身上監護,市民後見人 
目次へ戻る
↑トップページへ戻る
日本老年社会科学会事務センター
〒162-0825 東京都新宿区神楽坂4-1-1 株式会社ワールドプランニング内
TEL:03-5206-7431 Fax:03-5206-7757 E-mail: office@rounenshakai.org