HOME ENGLISH 

入会案内機関誌学術集会委員会活動報告・発行物リンク
トップページ > 報告・発行物 > 専門看護師・認定看護師活動推進委員会
  専門看護師・認定看護師活動推進委員会報告

公益社団法人日本看護協会が定めている資格制度に基づき、老人看護専門看護師は、複雑で解決困難な看護問題を持つ高齢者、家族及び集団に対して卓越した看護を実践し、関係者からの相談を受け、必要なケアが円滑に行われるために調整を行い、高齢者や家族の権利を守るための倫理調整、ケアを向上させるため教育的役割を果たし、さらに実践の場における研究活動を通して老年看護の質向上に寄与しています。また、認知症看護認定看護師は、認知症者とその家族および集団に対して、高い臨床推論力と病態判断力に基づき、熟練した看護技術及び知識を用いて、水準の高い看護実践を行い、指導相談を通して看護現場における認知症ケアの広がりと質の向上を図るために日々活発に活動しています。
一般社団法人老年看護学会はこれらの資格の誕生に関わっており、現在は専門看護師・認定看護師活動推進委員会がこれらの活動を一層活発にするために研修などを企画・運営することにより支援しています。
その一環としてCNSCN活動推進委員会では、老人看護専門看護師、認知症看護認定看護師の活動について会員・非会員を問わず広く知っていただき、理解を深めたいと考えHPに公表していくこととしました。概ね2か月に1回、報告内容を更新していく予定です。専門看護師、認定看護師の活動について理解を深めていただくとともに、看護実践の課題解決のヒントとして役立てていただければ幸いです。

Vol.15

Vol.14

Vol.13

Vol.12

Vol.11

Vol.10

Vol.9

Vol.8

Vol.7

Vol.6

Vol.5

Vol.4

Vol.3

Vol.2

Vol.1

Vol.15-1
認知症の人の思いを代弁し、急性期医療のその先の生活に戻れる継続看護を
目指す
東京慈恵会医科大学附属柏病院
認知症看護認定看護師
石井晃子

東京慈恵会医科大学は1881年に学祖・髙木兼寛が開設した成医会講習所を起源とし「病気を診ずして病人を診よ」という建学の精神のもと、患者の立場に寄り添った全人的医療と質の高い医療を追求している病院です。柏病院は千葉県の東葛地域北部にあり、地域連携しながら多種多様な役割を担っています。私が所属する看護部は、F・ナイチンゲールの考えにもとづき、看護とは「生命力の消耗を最小にするよう生活過程を整えること」と捉え、地域包括ケアシステムにおける急性期医療の役割を発揮するため多職種との協創による患者参画型チーム医療の質向上に取り組んでいます。私は2018年に認知症看護認定看護師を取得後、患者支援センターに所属し活動しています。PFM(Patient Flow Management)の考え方をもとに入院前から認知症患者自身が自らの力を活かした意思決定ができ、治療に続く療養生活の支援をしています。
右上顎癌と診断された軽度認知障害(MCI)の患者さんが化学療法と放射線療法を同時に行うことになり、治療選択の場面で悩んでいました。本人は、「先生がやってくれているならどんな治療でも受けます」と医師からの治療提案に前向きな一方で、妻は「治療を受けるのは賛成だけど、私はこれ以上認知症が進んで、私のことまで忘れてほしくない。だから治療を本当にやったらいいのかを考えたい」と思っていました。患者さんは長く新聞社に勤めていた寡黙な人で、受診日や約束を忘れ、新聞の購読や読書が億劫になり、身体的な衰えから長距離の歩行は困難になりつつありました。治療に臨みたい、でも本当にそれでいいのか、副作用に耐えられるのか、治療の後には自宅でまた生活ができるのか、夫婦の思いは揺れていました。短期記憶障害はありますが周囲の人の話を聞いて自ら判断する事はできると捉え、治療を即決せずに可能な限り機会を設けて医師、外来看護師、がん相談看護師、認知症看護認定看護師で患者自身の思いを聞きました。最初は「治療はやるしかないよね」と言っていましたが、普段の生活の様子を聞くと「本を読むことは昔から好きだから図書館に行くよ」「食べる事は得意ですよ。あと、寝る事も得意ね。でも歯が1本ずつ抜けるんだよね。歳かな?」「散歩は時々いくね」と本人が長年大切にしている事や生活のありようが見えてきました。自分の生活も大切にしながら、治療後の生活を一緒に考えると「そんなに大変な治療だったか。じゃあ、少し考えないといけないかな」と、患者さんの思いは変化してきました。私がキャッチした本人と家族の治療への思いや大事にしていることを担当医師、外来看護師と共有しました。後日、再度治療についてお話を伺うと、家族とも話し合った結果「治療をするか迷ったが、治療はいつでも止められるから、やれる事があるなら頑張りたいと思う」と、受診時に意思決定し入院治療を開始することになりました。入院中は定期的に妻に電話連絡を入れること、食後の歯磨きやうがいや入浴など患者さんが行えるように毎日のケア計画をカレンダーに書き込み、認知機能に合わせてアプローチができるよう病棟看護師と情報共有と調整を行いました。また入院前に本人の誕生日を祝った家族写真をテーブルに飾り、訪室時に家族の話題や自宅での生活を話すようにしていきました。最初の1週間は自室が分からなくなることもありましたが、約1月半にわたる治療を無事にのり超えて退院することができました。
認知症高齢者の方々の急性期病院での治療は一時的ですが、心身共に大きな負担となります。だからこそ今の揺れる思いを代弁し、家族と一緒に最善を考えていく事が大切だと思います。治療を決定する時から、治療後のその人の生活を見据えた継続看護が私の認定看護師としての役割と考えて今後も取り組んで行きたいと思います。
石井晃子(いしい あきこ)
東京慈恵医科大学附属柏病院 勤務
1992年 東京慈恵医科大学附属柏病院 入職
2015年 認知症看護認定看護師の認定を受ける
Vol.15-2
住み慣れた地域で在宅生活を続けるための初期支援から年単位のケア
2017年度認定 老人看護専門看護師
エム・ケア名東
荒井祐子

私が所属するエム・ケア名東は、グループホームと小規模多機能型居宅介護(以下、小規模)を併設する地域密着型サービスを提供する施設であり、現在は小規模の総合ケアマネジャーとして勤務しています。小規模とは「(なじみの関係を作るため)小さい規模で多くの機能を持ち、通い・訪問・宿泊を一つの事業所で行い、24時間の見守り支援を含む」ものです。
小規模への相談内容としては、急に認知症が進んだ(何もやらなくなった、食べなくなった、入浴しなくなった)、デイサービスを休みがちになった、徘徊して警察のお世話になっている、退院後の行き先がない・・など様々です。家族が「在宅介護の限界」で相談に来られる方が多く、グループホームは常に満床状態です。
そこで、小規模を利用しながら在宅生活を続けられるように、利用者と家族の情報収集とアセスメント、そこから生活の再構築を行うことが私の大きな役目です。
初期支援では、口腔と全身の清潔に注目しています。口腔の観察を行い、汚れをきれいにします。義歯が合わなくなっている人も多く、嚥下機能と合わせて食事形態や栄養管理を行います。合わせて全身の観察、特に足や足の爪が何年も放置されていることが多いため丁寧にみていきます。その際、利用者自身の抵抗が少なくない為、必要なケアを安全に行えるように看護・介護職員を巻き込んでいきます。教育的立場から、観察ポイントや洗浄・保湿・必要な薬剤塗布の方法を教えていくなど、初めは自ら実践していくことを中心に、その後はスタッフが継続していけるようにリーダーシップを発揮しています。また、利用者の歴史や背景を家族から教えていただくことで、安心できる言葉がけを探っていきます。
数か月を目途に利用者の出来ること・出来ないことを多角的にアセスメントし、利用者と家族に対してどのような支援が適切かを判断していきます。家族との関係構築も重要で、介護をねぎらいながら今後(加齢に伴う認知症の進行により)予測される問題の説明と認知症ケアの継続性を保証していきます。初期支援に力を入れることで、その後の年単位のケアが少しでも高齢者・家族・職員にとって安心したものとなるように心がけています。
老人看護専門看護師として、高齢者から多くのことを学ばせていただいています。その経験値を言語化・文章化し次につなげていくことが、今の目標です。
荒井祐子(あらいゆうこ)
看護師免許取得後、京都第一赤十字病院に勤務。大学院(CNSコース)修了後、看護大学助教、急性期病院の勤務の後、現職で2017年に老人看護専門看護師の認定を受ける。
地域に暮らす認知症高齢者の生活において、リスクを予測・対応しながらその人らしい生活が続けられるように日々奮闘している。