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  専門看護師・認定看護師活動推進委員会報告

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公益社団法人日本看護協会が定めている資格制度に基づき、老人看護専門看護師は、複雑で解決困難な看護問題を持つ高齢者、家族及び集団に対して卓越した看護を実践し、関係者からの相談を受け、必要なケアが円滑に行われるために調整を行い、高齢者や家族の権利を守るための倫理調整、ケアを向上させるため教育的役割を果たし、さらに実践の場における研究活動を通して老年看護の質向上に寄与しています。また、認知症看護認定看護師は、認知症者とその家族および集団に対して、高い臨床推論力と病態判断力に基づき、熟練した看護技術及び知識を用いて、水準の高い看護実践を行い、指導相談を通して看護現場における認知症ケアの広がりと質の向上を図るために日々活発に活動しています。
一般社団法人老年看護学会はこれらの資格の誕生に関わっており、現在は専門看護師・認定看護師活動推進委員会がこれらの活動を一層活発にするために研修などを企画・運営することにより支援しています。
その一環としてCNSCN活動推進委員会では、老人看護専門看護師、認知症看護認定看護師の活動について会員・非会員を問わず広く知っていただき、理解を深めたいと考えHPに公表していくこととしました。概ね2か月に1回、報告内容を更新していく予定です。専門看護師、認定看護師の活動について理解を深めていただくとともに、看護実践の課題解決のヒントとして役立てていただければ幸いです。

Vol.19

Vol.18

Vol.17

Vol.16

Vol.15

Vol.14

Vol.13

Vol.12

Vol.11

Vol.10

Vol.9

Vol.8

Vol.7

Vol.6

Vol.5

Vol.4

Vol.3

Vol.2

Vol.1

Vol.19-1
地域中核病院の認知症看護認定看護師として果たす役割を模索して
2019年認定 認知症看護認定看護師
医療法人恒心会おぐら病院
松山美鈴

プロフィール写真

私が勤務する社会医療法人恒心会おぐら病院は、鹿児島県大隅半島の中心に位置する鹿屋市にあり、整形外科、消化器外科、脳神経内科の三つの急性期病棟と二つの回復期リハ病棟で216床のベッドを有しています。鹿屋市は、県下第3位の人口10万人を有する市で、高齢化率は30%未満ですが、隣接する自治体は40%を超え、県下でも有数の高齢化率が高い地域となっています。このような状況に応えるように、同法人は介護事業部をもち、老人保健施設や訪問系サービス等を展開しており、地域に開かれた組織を目指しています。
私は、認知症看護認定看護師の資格を得て、回復期リハ病棟の管理者をしながら多職種を交えた認知症ケアチームを立ち上げ、組織横断的に活動してきました。しかし、信頼関係の構築や環境調整等では認知症患者への対応は不十分で、不安が強くなる患者や家族、疲弊するスタッフを目の当たりにし、自分の限界や知識不足を感じる日々が続きました。そこで薬剤調整など学びを深めたいと考え、2022年に特定行為研修「栄養・水分に係る薬剤投与関連」と「精神及び神経症状に係る薬剤投与関連」を修了しました。
その後、新たな取り組みを始めました。入院当日に「せん妄のハイリスクと予測される患者と家族」を対象に、せん妄についての理解を深め、不安を払拭できるようにパンフレットを用いて説明する場、薬剤投与に対して評価する機会を設けました。その中で、てんかん発作や脳転移による認知機能の障害が疑われ、専門医につなげたケースがありました。薬剤は投与される前後の総合的なアセスメントが重要であり、それは多職種と協働しながら成り立つものです。その中で、患者、家族の最も身近な存在である看護師として、安心・安全の視点を忘れず取り組んでいこうと思っています。入院する前から退院するまで関わることで、自分の果たす役割が少し見えかけているところです。
今年度は懸案になっている高齢者の大腿骨近位部骨折術後の誤嚥性肺炎予防に関して、脳卒中リハビリテーション看護、摂食・嚥下障害看護、手術看護の各認定看護師をはじめ、病棟スタッフ、セラピストたちを巻き込み、取り組んでいきたいと考えています。
松山 美鈴(まつやま みすず)
1998年医療法人恒心会おぐら病院に入職。急性期病棟、法人内老人保健施設、回復期リハビリテーション病棟を経験し、2019年認知症看護認定看護師資格取得。現在は患者サポートセンター看護師長として勤務している。
Vol.19-2
在宅だからできる!インフォーマルを含めた多職種での高齢者ケアをめざす
2015年認定 老人看護専門看護師
複合型サービスじゃんけんぽん観音寺
佐藤文美

プロフィール写真

複合型サービスは2015年の制度改正により看護小規模多機能型居宅介護(以下、看多機)へ名称変更されました。現在全国で800か所を越える看多機が運営されており、通い、泊り、訪問を組み合わせた柔軟なサービス利用ができることが強みです。私が所属する複合型サービスじゃんけんぽん観音寺は、2023年5月で開設から10年目になります。お隣は保育園で子供たちの元気な声が聞こえたり、目の前には農園が広がり土に触れる機会が持てたりと刺激の多い事業所です。
私は、看多機で「在宅だからできること」を大切にしています。誰でも人は、家での心地よい過ごし方やゆずれない習慣などがあります。しかし、認知症の発症や患っている疾患や障害などにより、在宅生活を断念しなければならない高齢者もいます。断念せざるを得ない要因は何かをアセスメントしできる限りその方らしい暮らしができる方法を考えます。そのためには、アセスメント力やコミュニケーション力が必要で大きな責任も伴います。時には事業所のスタッフのみならず、近所の方やコンビニの店員さんにも在宅生活を見守っていただけるよう協力を求めます。「在宅だからできること」を実現するためには、倫理的な課題に直面することも多くあります。その方の生きてきた物語に思いをめぐらせ、支えているみんなで試行錯誤を繰り返しています。
その他に、看護学生など実習の受け入れを積極的に行っています。検査機器のほとんどない在宅で、高齢者の身体的な症状や認知症の方の言動をどのようにとらえるかなど、私のアセスメント過程を伝えたり、学生にも一緒に考えてもらったりしています。そして、少しでも在宅領域での看護の魅力や奥深さに触れ、興味を持ってもらえるような指導を心がけています。
在宅領域の看護の質向上がますます求められている今、一人ひとりの高齢者と向き合うことと、地域全体を見渡せる多角的な視野とを大切にして、これからも活動していきたいです。
佐藤 文美(さとう あやみ)
看護師資格取得後、回復期リハビリテーション病棟や脳神経外科などを経験。2014年より認定NPO法人じゃんけんぽんへ入職し、複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)のケアマネジャー兼訪問看護責任者として活動中。2015年老人看護専門看護師認定、2022年特定行為研修修了(在宅・慢性期領域)。