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日本老年看護学会

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トップページ > 報告・発行物 > コロナ渦での高齢者と家族へのケアQ&A 

コロナ渦での高齢者と家族へのケアQ&A

1.面会禁止・制限のある中での高齢者と家族へのケア

2.新型コロナウイルス感染症の高齢者と家族へのケア

 Q1. 個室隔離あるいはゾーニング時、高齢者にどのような配慮をしていますか?

 Q2. 新型コロナウイルス感染症で入院する高齢者への対応として、一般的にどのようなことに留意しておくとよいでしょうか?

 Q3. いつもの生活環境とは異なる新型コロナウイルス感染症対応病棟(病床)で、認知機能に障害のある高齢者へのケアとして留意することはありますか?

 Q4. 新型コロナウイルス感染症で入院中の高齢者の廃用症候群を予防するためにどのようなケアができるでしょうか?

 Q5. 新型コロナウイルス感染症もしくはその疑いで入院する高齢者の機能低下を予防するために、他職種とのような連携をとっていますか?

 Q6. 治療の意思決定支援についてどのように支援していますか?

 Q7. 高齢者の家族も新型コロナウイルス感染症に罹患していたり、濃厚接触者になっている場合は、高齢者の状況を誰に、いつ、どのように伝えていますか?

 Q8. 新型コロナウイルス感染症の罹患によって廃用症候群のために自宅退院が難しくなった場合、受け入れ施設との連携における留意点を教えてください。

 Q9. 新型コロナウイルス感染症の高齢者を看護する職員に対してどのようなケアが必要でしょうか?

1.面会禁止・制限のある中での高齢者と家族へのケア

 Q1. 入院(入所)時、高齢者やご家族に対してどのようなことに留意しておくとよいでしょうか?

 A1. 

 入院(入所)時、高齢者やご家族に対しては、感染対策、面会制限の必要性などをわかりやすく丁寧に説明します。面会制限の中でも安心して、心地よい日常生活が過ごせるよう高齢者やご家族と検討をします。ご家族に対しては、面会制限下での連絡手段や連絡頻度を伝え、ご家族の心配に配慮して関わります。

1)入院(入所)時に留意すること
  • 入院(入所)に際して、PCR検査を実施しています。緊急入院の場合は事前にPCR陰性が確認できないため、陰性が確認できるまで個室管理が必要になります。そのため、個室管理の必要性、病室から出られない理由、どのような状態になれば多床室に移動できるのかについて、高齢者、ご家族に説明して理解を得るようにします。
  • コロナ禍であっても心地よい日常生活ケアで快適さを提供するために、高齢者、ご家族から入院(入所)前の日常生活動作や生活習慣、こだわりなどの情報を得ながら入院(入所)中に取り入れられることを検討し、必要な物を準備してもらえるようご家族に協力してもらいます。
    (例)馴染みものがないことで落ち着きがなくなったり、不眠になることがあります。日頃から使用していたパジャマや肌着、コップなどを持参してもらい、入院中も使用しています。

2)面会制限の説明

 Q2. 入院(入所)中の高齢者にどのようにケアを提供したらよいでしょうか?

 A2. 

 コロナ禍での入院(入所)中は、面会やアクティビティケアなどが制限されることがあります。制限下でも高齢者が安心・安全に過ごし、心身の機能低下を抑えるようなかかわり、いつもどおりの丁寧な日常生活援助が必要です。

1)高齢者とのコミュニケーション

 職員全員がマスクを装着しており、目しか見えず表情が分かりにくい状況です。

  • 名前を伝えて挨拶することで相手が誰なのか見当をつけやすくなります。
  • 見えている部分の目で笑顔を作るように配慮します。
  • 職員の話し方や声のトーンなども印象に残りやすいため、意識して声のトーンを明るくするようにします。

2)心身機能の廃用やせん妄予防ケア

 家族との面会禁止、入院による環境変化等の刺激の減少による心身機能の廃用やせん妄予防のため、以下のようなケアを積極的に行います。

  • テレビや新聞、雑誌などの提供による日常生活を継続できるよう支援します。
  • 時計やカレンダーの設置、治療や検査の予定をカレンダーに書き込み今後の見通しを伝える工夫など、見当識を補い現状認識を促すように関わります。
  • ベッド上安静でも日中は上半身を挙上し、見える景色を変化させたり、短時間でも車いすでの座位を促したり、心地よい音楽をかけたり、精神面の活性化を促します。
  • 感染対策を講じながら、病棟単位で体操DVDの視聴による体操の時間を設ける、個別のアクティビティケアなどを提供します。

3)個室隔離となる場合
  • 入院前に自立した生活をされていた高齢者には、入院前の生活状況を参考に、生活パターンや室内の動線を考慮し、環境変化や限られた空間の中でもできるだけ自立した生活を継続できるよう支援します。
  • 認知機能維持のために、毎日の出来事などをメモするよう提案します。

 Q3. 病院や施設では、対面式の面会にかわる方法として、どのような取り組みが行われていますか?

 A3. 

 高齢者と家族の絆を大切にするため対面式にかわる方法としてオンライン面会、窓越し・ガラス越し面会、電話連絡、高齢者の写真付きのはがきを家族宅へ郵送するなどの様々な取り組みが行われています。

例1)一般病院での面会の工夫
  • 入院時の配慮:入院時には家族へどの程度の頻度で高齢者の様子を伝えて欲しいか希望を聴取し、家族の希望に合わせて、電話連絡をし、高齢者の入院中の様子を伝えています。
  • 高齢者が携帯電話を持参し家族と連絡を取りたいと希望した場合、家族のどなたに、どの時間帯に連絡させていただいてよいか事前に確認し、職員間で共有しています。
  • 病院のリハビリテーション室がガラス張りなので、リハビリテーション室が空いている時間帯を確認し、ガラス越し面会をしています。寝たきりの高齢者でも、ベッドのままリハビリテーション室にお連れして家族と面会することができます。家族からは「病室に入れなくても顔を見ることができてよかった」との感想がありました。
  • 入院が長期化したときの配慮:病院は面会禁止であるため自宅療養の継続を希望する家族もいます。自宅療養を継続できるように家族の介護力をアセスメントし、社会資源の利用により地域で暮らし続ける支援を行っています。

例2)高齢者施設での面会の工夫
  • 施設から高齢者の写真付きのはがきを家族宅へ郵送し、近況伝えています。家族からは、「家族の健康を気遣う言葉が書き添えられ、施設職員の温かさを感じ、面会制限への寂しさや心配が軽くなります」との感想がありました。

例3)面会時の高齢者への支援
  • 電話連絡やオンライン、ガラス越し面会のときは、看護師も付き添い、高齢者から家族、家族から高齢者への声かけができているか確認し、うまく聞き取ることができていない場合は、音量、画面の角度・距離などの調整、代弁するなどのお手伝いをしています。また、少しでも家族と触れあえるように、小窓を設置しました。小窓は、手を握り触れあうことができるようにと考えたものです。家族、患者共に前後の手指消毒は必須です。

例4)高齢者の精神的なつらさを緩和するケアの提供
  • 家族からの手紙やメッセージ、写真などを部屋に飾る、携帯電話等での家族との会話の時間や機会を保証する等、家族や大切な人とのつながりを感じられる支援を行っています。

 Q4. 終末期にある高齢者への面会対応として、他の施設での取り組みを教えてください。

 A4. 

 面会人数・時間を決め、健康確認と個人防護具(PPE)装着を行い、面会を許可している施設が多いようです。

  (例)
  • 個室対応となっているため、家族の健康確認(身体症状や接触者、住所等)を行った上で、手指消毒、マスク、フェイスシールドを装着してもらい、15分程度の面会を行っています。
  • 面会できる家族を2人までと人数を制限し、受付で検温と手指消毒を実施し個人防護具(PPE)を装着して病棟に来ていただいています。1回の面会時間は15分程度にしていただいています。それ以外の家族に対しては、面会時に家族の携帯電話でビデオ通話を用いて声をかけてもらったり、面会時の様子を家族が動画に撮り自宅で見ていただいたりしています。
  • 面会は基本的にはキーパーソンに限定していますが、会わせたい親族がいる場合は人数を1回2名までに限定し1回15分程度で面会をしていただいています。ただし、小学生以下の子供は、学校など集団生活をする機会が多く様々な感染症を発生しやすいため面会できません。受付で検温と手指消毒を行い、エレベーターで病棟まで来ていただき病棟の入り口で個人防護具(PPE)を装着して面会をしていただきます。手を握るときはご本人に温かさを感じてもらうため手袋をはずして素手で手を握っていただいています。
  • 事前に電話で申し込みをすれば、1回2名まで小学生以下の子供以外の親族に限り面会できます。1回の面会時間は10~15分程度です。受付で検温と手指消毒を行いエレベーターで病棟まで来ていただき病棟の入り口で個人防護具(PPE)を装着して面会をしていただきます。面会できない家族には携帯電話のビデオ通話を用いて声をかけてもらうなどの工夫をしています。

 Q5. ワクチン接種が進んでいますが、他の病院や施設の面会制限はどのような状況でしょうか?

 A5. 

 ワクチン接種は進んでいますが、変異株の出現で複数の都道府県に緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置が実施されていることから、感染経路の遮断という観点で多くの病院・施設で面会制限が継続されている状況です。
 施設によっては、手術や検査、病状説明や看取りに際して面会制限を緩和している場合もあります。その際も、面会者の健康観察・マスク着用の上、人数や時間の制限、患者との関係性や面会者の居住地域によって制限を設ける場合が多いようです。(2021年9月1日時点)

【参考】厚生労働省では、面会に際して以下のような対策を推奨しています。
  • 面会者に対して、体温を計測してもらい、発熱が認められる場合には面会を断る。
  • 面会者がのどの痛み、咳、倦怠感、下痢、嗅覚・味覚障害等の感染症が疑われる症状を有する場合やその他体調不良を訴える場合には面会を断る。
  • 面会者の氏名・来訪日時・連絡先については、感染者が発生した場合に積極的疫学調査への協力が可能となるよう記録しておく。
  • 面会者は原則として次の条件を満たす者であること。
    • 感染者との濃厚接触者でないこと
    • 同居家族や身近な方に、発熱や咳・咽頭痛などの症状がないこと
    • 過去2週間内に感染者、感染の疑いがある者との接触がないこと
    • 過去2週間以内に発熱等の症状がないこと
    • 過去2週間以内に、政府から入国制限、入国後の観察期間を必要とされている国・地域等への渡航歴がないこと
    • 人数を必要最小限とすること
    • 面会者には、面会時間を通じてマスク着用、面会前後の手指消毒を求めること
  • 面会場所での飲食は可能な限り控えること。大声での会話は控えること。
  • 面会時間は必要最小限とし、1 日あたりの面会回数を制限すること。
  • 面会後は、必要に応じて面会者が使用した机、椅子、ドアノブ等を清掃すること。
    出典:高齢者施設等における面会に係る事例集及び留意事項等の再周知について(厚生労働省事務連絡 令和3年7月19日)より一部抜粋

 Q6. 面会制限について認知機能に障害のある高齢者への伝え方の工夫や留意点などありますか?

 A6. 

 認知機能に障害のある高齢者は、記憶障害、見当識障害などから、現在どのような状況にあるのか理解することが困難な場合が少なくありません。また、現状の説明を聞いても忘れてしまうことがあります。本人にわかりやすい言葉を探し、納得できるように説明する必要があります。忘れてしまう場合には、メモや説明文を作成し覚えやすいようにすることが有効です。

1)認知機能に障害のある高齢者にわかりやすいコミュニケーションの工夫
  (例)
  • メモや説明文は、記憶障害のある高齢者が何度もその情報を確認できるというメリットがあります。
  • 感染症という言葉ではなく、結核の流行を経験したと思われる年代の方には「結核のような病気が流行っています」など、その人にわかりやすい言葉を探し、面会が難しいことを説明しています。

2)認知機能に障害のある高齢者へ面会制限を理解できるように伝える工夫

 認知機能に障害のある場合は、記憶障害等から現状が理解しにくいです。また、面会制限になっている理由を覚えて実行することが難しい場合もあります。

  (例)
  • 直接の面会はできないが、電話やオンライン面会、手紙などで連絡を取ることは可能であることを、パンフレットを作成し説明しています。記憶の保持が困難な場合には、繰り返し説明しています。その時、高齢者になじみのある名前である、家族の方の実際の名前をあげて説明しています(例えば、「花子さんとは直接会えませんが...」など)。
  • テレビやラジオを活用し、患者に世の中の情報が目に入りやすいようにしています。
  • その人にあった方法で、わかりやすく丁寧に今の状況について繰り返し説明しています。「たとえば結核が流行した時代の経験を持っている人には「以前、結核が流行った時期があります。今は新しい病気が流行っていて、あの時のようにマスクをしなければならない状況になっています。ですのでマスクはしていてください」などとその人の経験にあるような事柄で説明すると想像しやすいと思います。

 Q7. 入院(入所)中の高齢者への感染対策としてどのようなケアを行っていますか?

 A7. 

 まずは、職員自身が感染源にならないように標準予防策を遵守しています。個人防護具(PPE)の装着、手洗い・消毒を徹底しています。そして、高齢者にも標準予防策が遵守できるように関わっています。人との接触が感染リスクになりますので、高齢者が3密(密閉・密集・密接)にならない空間で生活できるように環境整備をしています。また、換気や患者同士の間隔を空ける(空間分離)、時間をずらす(時間分離)、デイルームなど人が集合する場所の利用を控える、使用物品の消毒を徹底しています。

活動自粛によりフレイルが進行すると、感染症リスクが高まるため、身体的状態、認知機能、精神状態を整えるケア、オンラインや電話などによる家族との関係性の維持も感染の予防につながります。

例1)職員自身の感染の予防
  • 業務は完全固定チームナーシングとし、職員がチームを越えて患者と接することのないように勤務を組み立てています。
  • 休憩室では換気と清掃をこまめに実施し、集団での飲食は控えています。食事時間をずらし、少人数で休憩しています。パーテーションがない場合は、対面飲食を避け、一定の間隔をあけて着席します。飲食中はマスクをはずすため、会話はせず、食事終了後は速やかにマスクを着用します。食後の歯磨きでは、飛沫が飛ぶため、人のいない方向を向いて行います。
  • 不要不急の外出や飲食は控えるよう周知しています。やむを得ず、県外・市外への移動が必要な場合には、移動先の感染者数等の情報を把握し、移動目的や時期などを踏まえて慎重に判断すること、さらに、標準予防策(手指衛生、マスク着用など)を遵守することを伝えています。
  • 3密の状態が懸念される場合や感染対策が不十分と判断されるような施設(報道等でクラスター発生が確認されている施設と類似の施設)は利用しないことを伝えています。
  • 職員には出勤前の体温測定を義務化しています。37.5度以上の発熱がある職員は、所属長に報告の上、自宅待機としています。なお、所属長は感染対策チームに報告し、受診や勤務等について指示を受けます。
  • 発熱した職員は、解熱後48時間自宅待機してから出勤するようにしています。しかし、呼吸器症状(咳・痰)の持続があればさらに自宅待機を延長しています。37.5度以上の発熱が4日間以上もしくは解熱しても咳と痰の症状が持続する場合、再度所属長へ報告し、所属長は感染対策チームへ報告、相談しています。
  • 同居家族に体調不良(発熱や風邪症状等)がある場合、職員自身に症状がなければ出勤しています。ただし、休憩時間や飲食でマスクをはずすときは他の職員に接触しないようにしています。

例2)高齢者への標準予防策の呼びかけ
  • 自宅で行ってきた感染対策について確認しています(「ワクチン接種をすればマスクを着用しなくて良い」、「2m離れていればうつることはない」など誤った情報の理解や感染対策を実施しているケースが少なくないため)。
  • 施設内にマスクや手指衛生の必要性を記載したポスターを掲示し、高齢者の視覚に働きかけています。ポスターは高齢者が見やすいように全体の色合い、文字の大きさ、わかりやすい言葉遣いに配慮し作成しています。
  • 認知機能に障害のある高齢者の場合は、手指衛生など一緒に動作しながら行い、忘れる場合は繰り返し一緒に行うようにしています。

例3)マスクや手指消毒の必要性を判断したケアの提供
  • 高齢者に常時マスクと手指衛生を強要するのではなく、他者との距離が2m以内になるようなときにはマスクを着用してもらうように声をかけています。高齢者が一人で過ごせる環境ではマスクは必要ないと判断しています。高齢者の食事前後、排泄後の手指衛生は実施するように伝えています。

例4)高齢者にマスクや手指消毒が必要な場合の声のかけ方
  • 高齢者にマスクと手洗いが必要であることを口頭の説明で終わらせるのではなく、看護師がマスク着用の手順や手洗いの手順を見せ、「一緒にマスクをしてみましょう」「一緒に手を洗いましょう」と伝えています。認知機能に障害のある高齢者の場合も、看護師と一緒に行うことで手順がわかり、実施できるようになる場合もあります。

2.新型コロナウイルス感染症の高齢者と家族へのケア

 Q1. 個室隔離あるいはゾーニング時、高齢者にどのような配慮をしていますか?

 A1. 

 個室隔離やゾーニング(病原体によって汚染されている区域 (汚染区域)と汚染されていない区域(清潔区域)を区分けすること)によって行動制限が生じるので、行動制限の範囲やその必要性、個人防護具(PPE)装着によって職員や介護者の姿(服装)が普段とは異なることを丁寧に説明します。行動制限は不安を増すので、緩和できるようなケアを工夫しています。

  (例)
  • 「咳やくしゃみ、会話を通して飛ぶ唾液などからコロナウイルスに感染します。感染を予防するため、このような姿になっています。普段とは異なる姿になっていますが、お世話させていただくことに大きな変化はありません」など丁寧な説明を心がけます。
  • 隔離の前に家族や親しい人たちと連絡をとったり、隔離やゾーニング後も必要に応じて家族等とつながる場をつくっています。
  • 隔離やゾーニング後、極端に看護師の訪室回数を減らすのではなく、時間を決めて、あるいは適宜訪室し、時にはナースコールやオンラインにて、感染対策を心がけながらコミュニケーションを図っています。
  • 携帯電話などを利用してご家族の写真、自宅や好きな庭の写真などを送ってもらい、職員は患者が見ることができるように操作を支援しています。

 Q2. 新型コロナウイルス感染症で入院する高齢者への対応として、一般的にどのようなことに留意しておくとよいでしょうか?

 A2. 

 個室隔離による行動制限や職員が訪室するまでに時間を要することを説明します。個人防護具(PPE)装着によって個々の職員の見当がつきにくいことへの配慮も必要です。また、行動制限の中の不自由さを少しでも解消できるように、療養環境を整え、入院前の日常生活が継続できるようにケアを心がけています。

1)治療への協力と病状悪化の早期発見
  • 病状の急変を踏まえ、バイタルサインの変動や活気のなさ、苦痛表情、食事摂取量などの変化から病状の悪化を早期に把握していきます。
  • 低酸素状態が持続するとその状態に慣れてしまい、自覚症状が乏しくなることがあります。酸素を外したり、この位の動作なら自分だけでできると思ったり、身体に思いがけず負荷をかけてしまうことがあります。呼吸困難感がなくとも酸素投与が必要なこと、体動によって酸素消費量が上昇し身体に負荷がかかっていることを説明し、酸素投与の必要性や日常生活動作の範囲を説明し、治療への協力を得ます。
  (例)
  • 日常生活動作の目安として、動作前後のバイタルサインの変化、動作に伴う酸素飽和度の低下の程度、呼吸困難の有無等から、実際の動作(例えばトイレまでの移動)が可能かどうかを判断して説明しています。
2)職員の対応のタイミングと環境調整
  • 他の患者の個室に入っているなどすぐに対応できない場合があったり、個人防護具(PPE)装着に時間を要するため、ナースコールを押しても直ぐに対応できないことを説明し、可能であれば時間的余裕をもってナースコールをしてもらうよう伝えています。
  • 看護師がすぐに対応できない状況を想定し、必要なものをあらかじめ確認し、高齢者の希望する場所や手の届く場所に準備されているように環境を整えます。
  (例)
  • テレビのリモコン、飲料、時計、眼鏡、携帯電話、手帳、本など必要な物をオーバーテーブルやベッド周囲に準備し、職員が訪室しなくても困らないようにしておきます。
3)職員が分かりやすい工夫
  • 個人防護具(PPE)装着で高齢者にとっては対応している職員が誰か見当がつきにくい状況です。相手が誰か分からないことで不安が増したり、安心感が得られなかったりするため、誰が対応しているのか高齢者に分かるよう工夫しています。
  (例)
  • 訪室する度に氏名を名乗ったり、ガウンの胸元に大きな文字で職種や氏名等を記載したり、顔写真を貼ったりしています。
4)隔離生活に取り入れられる生活習慣を検討し継続
  • 居室に入れた私物は陰性確認後にしか室外へ出せないため、日常生活で大事にしていたことやこだわり等を確認し、隔離生活の中でも取り入れられる物を検討し、入院前の生活習慣を継続できるようケアを提供していきます。
  (例)
  • レンタルのパジャマを好まない場合、陽性期間分の衣類が準備できるようであれば、ご自身の衣類を使用しています。居室に入れた物を居室外に出すことはできませんが、陰性確認後、衣類を袋に密閉し一定期間(72時間以上)おけば自宅で洗濯が可能です。
  • 毎日、新聞を読む習慣がある高齢者には、購入を代行して毎日届けるようにしています。

5)入院の長期化による精神的不安と日常生活への影響
  • 中等症や重症の場合は隔離期間が長期になり、不安や孤独感などの精神症状が出現しする場合があります。精神症状より不眠や食事摂取量の低下など日常生活への影響がみられることがあります。その場合はチームで情報共有や検討し、身体面での安楽を図るとともに、精神的ケアとしてオンライン面会等、家族とのつながりを感じられるように支援しています。

    →     Q1.(例) 参照

 Q3. いつもの生活環境とは異なる新型コロナウイルス感染症対応病棟(病床)で、認知機能に障害のある高齢者へのケアとして留意することはありますか?

 A3. 

 患者にとって感染対策をした職員の姿は、これまで見たことのない姿であることを心に留めておくことが必要です。その上で、高齢者の不安を取り除けるようなコミュニケーションの工夫やリスク防止を行います。

  (例)
  • 個人防護具(PPE)の上からでも、タッチングを行い、コミュニケーションを図りながら、患者の状態に関心を示していることを伝えるようにしています。その後、しっかり手洗い、手指消毒は徹底するように職員には指導しています。
  • 防護服を着用しコミュニケーションをとることになるので、目元でしか自分の表情を伝えることができません。いつも以上に笑顔で接することを意識し、ジェスチャーもいつもより大きくして関わります。
  • ゾーニングしている場所から出てしまう可能性がある場合は防護服を着たまま患者のそばで見守りや記録を行い、すぐに対応できるようにしています。

 Q4. 新型コロナウイルス感染症で入院中の高齢者の廃用症候群を予防するためにどのようなケアができるでしょうか?

 A4. 

 新型コロナウイルス感染症の治療の場では、一般に廃用症候群のケア・予防として推奨される関わりを行うことが難しくなります。面会制限のみならず、患者同士や職員との会話も減少し、大勢で行うレクリエーションが難しくなります。また、新型コロナウイルス感染症の病棟や病室には私物の持ち込みも制限されるため、個別の気分転換にも工夫が必要となります。

1)人とのかかわりの継続
  (例)
  • 感染対策を行っている職員は、一回の対面で有効なコミュニケーションとなるように患者が納得のいくまで話をするようにします。話の終わりには「また何分後にきます」などの言葉をかけ、患者の不安が少しでも和らぐ声かけに努めています。
  • 電話やタブレットなどを使用し、家族と会話できるようにしています。家族の顔が見えるタブレットはかなり安心につながるようです。
2)高齢者の生活・趣味などの継続
  (例)
  • 臥床していても動かせる部分は動かすことが重要です。トイレへの移動など、生活に必要な行動は安全に配慮しながら維持するようにケアしています。
  • 患者のこれまでの生活習慣や趣味の情報は必要ですが、コロナウイルス感染者の場合、職員が濃厚接触者となった家族と会えないことも少なくありません。保健所の指示で入院先が決まるため、いつも通院している病院に入院することができないこともあり、職員が高齢者の生活に関する情報を得にくくなっています。可能な範囲にはなりますが、家族の都合や事情に配慮しつつ、電話等を利用して情報を積極的に得るようにしています。
  • まずは一人でできて、多くのデイサービス等で取り入れられている塗り絵や折り紙、囲碁や将棋などを準備しておき、本人の体調と希望に合わせて対応しています。
  • 排泄や食事などの日常生活支援時には、体調に合わせてできることをやっていただいたり、自分で動くことが難しい場合も、ケアの流れの中で関節の他動運動を促したり、積極的に会話を持ちかけるなど廃用症候群の予防に努めています。

 Q5. 新型コロナウイルス感染症もしくはその疑いで入院する高齢者の機能低下を予防するために、他職種とどのような連携をとっていますか?

 A5. 

 他職種と普段から顔の見える関係を構築し、相談体制を整えていくことが重要です。

1)医師・多職種チームとの連携
  • 通常の入院環境よりも制限され、精神面へのケアが必要不可欠であるため、精神科医やリエゾンナースとの連携をはかります。
  • 必要に応じて、認知症ケアチームや栄養サポートチーム、呼吸サポートチームなどと連携をはかります。

2)薬剤師・管理栄養士との連携
  • 感染症によって食欲が低下したり、低栄養状態になったりする高齢者も多いため、食事内容や食事形態、栄養補助食品などの利用を相談します。

3)リハビリ職員との連携
  • 病院組織によっては、他職種が新型コロナウイルス感染症の高齢者に直接関わる時間が限定されています。リハビリ職員と情報を共有し、リハビリ職員が作成したリハビリメニューをパウチングし、看護師が床上での他動運動や日常生活動作支援を行っています。

4)病院施設課との連携
  • 動ける場所を提供するために、病棟の環境整備を依頼することもあります(例えば、病棟内にエアロバイク、乗馬マシンを設置する、など)。

 Q6. 治療の意思決定支援についてどのように支援していますか?

 A6. 

 入院時から病状悪化を予測して、高齢者本人の意思が尊重された医療が提供されるように支援することが基本になります。病状説明は高齢者本人へ行うことが基本であり、入院時、病状変化時に繰り返し意思を確認していきます。意思の表出や意思決定できない場合も考慮し、キーパーソンや代理意思決定者を確認し、急速な判断が求められる家族の心情にも配慮しながら意思決定を支援します。

1)病状の説明と意思確認のタイミング
  • 病気の進行により必要となる医療処置に関して、具体的にイメージできるよう言葉、文字に加え、写真、絵などを用いて説明し、ご本人が理解しやすい様に工夫しながら説明します。

  (例)
  • 酸素投与の方法としては、カニューレやマスクを用いますが、投与できる酸素量の上限があり、それを上回る場合は直接肺に酸素を送りこむ必要があります。そのためには気管にチューブを挿入する必要があります。本人には、声が出せなくなることと、意識があると辛いため眠るようにする薬を使うこと等を分かりやい言葉を用いて説明します。
  • 覚醒状態や解熱時、呼吸困難による苦痛が少ない時など、体調のよいタイミングを見計らい説明をします。
  • 入院時に高齢者本人と家族に対し、重症肺炎に移行する可能性について説明し、希望する医療処置を事前に確認します。病状が悪化し、人工呼吸器装着の必要性があると医学的に判断した場合、気管内挿管、人工呼吸器装着の必要性とともに日常生活が制限されることについても丁寧に説明し、決定するための時間的猶予も伝えながら意思決定を支えます。

2)病状に応じて他病院へ転院する可能性
  • 重症者の対応が難しい医療機関では、入院時に病状によっては他の医療機関に転院する可能性があることを説明します。

3)家族が高齢者の意思決定を支えるための支援
  • 家族へは定期的に面談や電話等で現在の病状や治療内容、療養生活状況をお伝えし、家族の不安や悩みを受け止めながら支援します。
  • 高齢者が意思の表出や意思決定できない場合に備え、高齢者の意思決定の代弁者を確認します。その際、家族の意向ではなく、高齢者の意向について家族が考えられるように支援しています。

  (例)
  • 「ご本人がこれまでの生活の中で、人生の最期や受けたい医療処置などについてどのように話しておられましたか」と過去を想起してもらうよう家族に声をかけます。
  • 病状が急変し家族の意思決定が必要な場合は、できる限り家族と対面方式により病状説明します。急な判断が求められる場合は家族の心情を推し量り、高齢者本人だったらどのような選択をされると思うかを考えられるように声をかけながら、意思決定を支えていきます。

 Q7. 高齢者の家族も新型コロナウイルス感染症に罹患していたり、濃厚接触者になっている場合は、高齢者の状況を誰に、いつ、どのように伝えていますか?

 A7. 

 高齢者のキーパーソンとなっている家族も新型コロナウイルス感染症に罹患している場合は、その他の家族・支援者の存在を確認し、その方に伝えています。しかし、感染している家族しかいない場合、家族が自宅やホテルで療養をしていれば、家族の体調も確認し配慮しながら、電話やオンラインにより高齢者の状況を伝えています。家族が病院入院中であれば、保健所・家族が入院中の病院と連携し、病状を確認し合い、退院支援・調整を行っています。家族が濃厚接触者になっている場合は、家族の体調も確認し配慮しながら、電話やオンラインにより高齢者の状況を伝えています。

【家族への配慮】

 家族自身が新型コロナウイルスに罹患したり、濃厚接触者になっている場合は、自分の病状に対する不安や心配、恐怖を抱いていることが考えられます。そのため、高齢者の状況を伝える前に、まずは家族の体調や精神状態を聞いています。そして、高齢者の状態を、いつ、誰に、どのように伝えたらよいのかを確認し、家族が希望する方法で高齢者の状態を伝えています。

 Q8. 新型コロナウイルス感染症の罹患によって廃用症候群のために自宅退院が難しくなった場合、受け入れ施設との連携における留意点を教えてください。

 A8. 

 近隣の医療機関や高齢者施設でのアフターコロナの高齢者の受け入れについて相談・連携することが必要です。

  • アフターコロナの高齢者の受け入れについて組織内で基準を作成します。
  • (本来退院時にPCR検査の義務はありませんが)医療機関への転院の場合は、安心して受け入れてもらえるようPCR検査を2回実施し、陰性を確認した上で転院調整をしている医療機関もあります。
  • アフターコロナの高齢者を受け入れる際の職員の恐怖感に対して、感染管理認定看護師もしくは感染対策チームから隔離解除の条件を満たしていることを説明したり、受け入れ先の不安が軽減するよう、こまめに病状を共有したりしています。
    <参考>厚生労働省:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第5.2版より(2021年7月30日発行)

1.退院基準
1)有症状者【注1】の場合
  1. @ 発症日【注2】から10日間経過し、かつ、症状軽快【注3】後72時間経過した場合、退院可能とする。
  2. A 症状軽快後24時間経過した後、PCR検査または抗原定量検査【注4】で24時間以上間隔をあけ、2回の陰性を確認できれば、退院可能とする。

2)無症状病原体保有者の場合
  1. @ 検体採取日【注5】から10日間経過した場合、退院可能とする。
  2. A 検体採取日から6日間経過後、PCR検査または抗原定量検査【注4】で24時間以上間隔をあけ、2回の陰性を確認できれば、退院可能とする。


*上記の1)、2)において、10日以上感染性を維持している可能性がある患者(例:重度免疫不全患者)では、地域の感染症科医との相談も考慮する。

  1. 【注1】人工呼吸器等による治療を行わなかった場合
  2. 【注2】症状が出始めた日とし、発症日が明らかではない場合には、陽性確定に係る検体採取日とする
  3. 【注3】解熱剤を使用せずに解熱しており、呼吸器症状が改善傾向である場合をいう
  4. 【注4】その他の核酸増幅法を含む
  5. 【注5】陽性確定に係る検体採取日とする
  6. 【注6】退院後に再度陽性となった事例もあることから、退院・解除後4週間は自ら健康観察を行い、症状が出た場合には、速やかに帰国者・接触者相談センターへ連絡し、その指示に従い、医療機関を受診する

3)人工呼吸器等により治療を行った場合
  1. @ 発症日から15日間経過し、かつ、症状軽快後72時間経過した場合(発症日から20日間経過までは退院後も適切な感染対策を講じること)。
  2. A 発症日から20日間経過以前に症状軽快した場合に、症状軽快後24時間経過した後、PCR検査または抗原定量検査で24時間以上をあけ、2回の陰性を確認した場合。

 Q9. 新型コロナウイルス感染症の高齢者を看護する職員に対してどのようなケアが必要でしょうか?

 A9. 

 メンタルヘルスへの支援や労務環境の整備、また高齢者看護の実施にあたって相談できる体制を整えることが求められます。具体的には、以下のような取り組みがあります。

1.メンタルヘルスへの支援

  (例)
  • 隔離やゾーニングされた中で思うような対応ができないこと、普段ならもっと予防的対応ができるのに…と悶々としたり、感染への不安が常にぬぐえず、それが過度なストレスとなっていることがあります。精神科医や心理療法士などの専門家に定期的に話を聞いてもらえる体制を作り、集団あるいは個別に思いを聞いたり、ストレスチェック等で数値化し経過を追って対応につなげたりしています。
  • 「ただ聞いて欲しい」と訴える職員も少なくありません。他者に話をすることで考えを整理できたり、不安も一緒に吐き出すことができます。専門家でなくても、「誰かに話す」ことで少しでも気持ちが楽になるようです。

2.看護以外の業務(清掃等)を担っている場合のマンパワーの確保

  (例)

  • 専用病棟やゾーニング範囲での清掃等業務が看護師のモチベーションを低下させている現状もあるようです。こういった業務が高齢者看護のモチベーションを低下させてしまうため、看護師が看護業務に専念できるよう、できる範囲でマンパワーを確保しています。

3.職員自身の感染防止対策の徹底

  (例)
  • 感染対策については、個人防護具(PPE)の着脱方法、標準予防策とその実施タイミングなど基本的には決まっています。慣れない場合は互いに確認したり、手順を貼りだしたりするなど、誰もが確実に実施できるよう工夫しています。吸引や排泄介助(おつむ交換・ハルンパックからの尿捨て・ポータブル介助など)では、感染源を扱うため特に留意して対応するよう伝えています。

4.専門的知識の提供とケアの保証

  (例)
  • 高齢者や認知機能に障害のある高齢者が入院される際は、これまでどのように生活してこられたのかに着目し、その機能を生かすこと(廃用させないこと)、そして安心できる環境調整を心がけるよう職員に伝えています。決して特別なケアではなく、苦痛を緩和する、安心できるコミュニケーションを心がけるなど、当たり前のことを当たり前に実施するよう伝え、できていることはできていると保証しています。
  • 個人防護具(PPE)装着によって、声はこもって聞きづらくなり、表情も分かりにくくなります。普段以上にゆっくりと活舌よく言葉を発することを意識し、明るい声のトーンで話すこと、目元を意識した笑顔でコミュニケーションを心がけるよう職員に説明しています。
  • 一般病棟と同じようにケアできない場合も、できていることに目を向けて自分たちのケアを認め合うことを勧めています。「みんなはよくやっている!」、「私たちは頑張っている!」と管理者から声をかけ、職員同士でも認め合うよう伝えています。
  • 病状がせん妄を悪化させていることも多々あります。新型コロナウイルスへの基本的な治療が確実に実施できることも重要なケアであることを説明しています。
  • 専門的知識については、組織の中に認知症看護認定看護師や老人看護専門看護師、認知症ケア専門士に相談するよう勧めています。人的資源がない場合は、本学会はもとより、一般社団法人日本認知症ケア学会(ninchisyoucare.com) や一般社団法人日本老年医学会(jpn-geriat-soc.or.jp)など関連学会等で資料の提示や研修会が紹介されていることを伝えています。

5.感染症に関する知識の共有とアップデート

  (例)
  • Infection Control Team(ICT)や診療部とともにガイドラインを確認し、施設内の治療方法や重症度判定などをまとめて職員へ院内配布物(感染対策室ニュース等)等で周知しています。
  • 治療方法や変異株に対する情報など、毎日のように状況が変化するため、感染症の専門家、とりわけ感染管理認定看護師や感染看護専門看護師からの情報提供が職員の安心感につながっています。

6.組織の中で専用病棟を例外扱いしない

  (例)
  • 新型コロナウイルス感染症病棟においても、病棟管理者と職員との日々の申し送り、伝達事項や申し合わせなど、一般病棟と同様に行えることは実施しています。また、一般病棟と同様に、看護補助者を配置し、管理栄養士や薬剤師、リハビリセラピストや他科の診療科医の介入もあります。新型コロナウイルス感染症病棟は“特別”ではなく、組織の動きから切り離されないように組織内の一部署として体制をつくっています。