論文名 | 通いの場の多様性と主目的による類型の活用 |
著者名 | 植田拓也 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,45(3):249-254,2023 |
抄録 | 一般介護予防施策の主戦略としての通いの場には多様性が求められるが,多様性の考え方や,行政が把握し支援・連携すべき通いの場の概念や類型は明確ではなかった.筆者らは,通いの場の概念および主目的による類型を提示した.通いの場の類型は,3つのタイプ(タイプⅠ:趣味活動,他者といっしょに取り組む就労的活動,ボランティア活動の場等の「共通の生きがい・楽しみを主目的」,タイプⅡ:住民組織が運営するサロン,老人クラブ等の「交流(孤立予防)を主目的」,タイプⅢ:住民組織が運営する体操グループ活動等の「心身機能の維持・向上等を主目的」)に分類した.この類型は2021年度に厚生労働省が示した「運営主体,場所,内容」による類型とも相補的に活用可能であり,地域資源としての通いの場の把握と展開および評価の系統的な実施の一助となると考えられる. |
キーワード | 地域づくり,通いの場,多様性,概念,類型 |
論文名 | 通いの場の担い手としての住民参加―都市部の中高年者におけるニーズの分析― |
著者名 | 小林江里香,根本裕太 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,45(3):255-263,2023 |
抄録 | 本研究では,就労者の多い中年者(55~64歳)と前期高齢者(65~74歳)に焦点を当て,通いの場の種類別の参加意向,担い手としての参加意向や意向をもつ人の特徴,希望参加頻度を検討した.都内4自治体で実施した郵送調査のデータ(中年者4,333人,高齢者6,363人)を分析した結果,通いの場への参加意向は概して中年者より高齢者のほうが高かったが,担い手としては,中年者の意向のほうが高い役割もあった.フルタイム(月20日以上)の就労者は,高齢者では非就労者より担い手意向が低く,中年者では差がなかったが,労働日数の少ない就労者の意向が非就労者より高い点は両群に共通していた.つまり,就労者は担い手となる意欲が低いわけではない.一方で,就労率の高い中年者では月1回やそれより少ない頻度での参加希望が多いことから,「ゆるやかな参加」を可能にするための役割分担(ワークシェアリング)の導入などが必要である. |
キーワード | 通いの場,社会参加,ボランティア,就労,地域社会 |
論文名 | PDCAサイクルに基づく多様な通いの場の推進と評価 |
著者名 | 清野 諭 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,45(3):264-267,2023 |
抄録 | 令和2年度老人保健健康増進等事業および令和3〜4年度厚生労働科学研究(研究代表者:藤原佳典)において,「通いの場の取り組みをPDCAサイクルに沿って推進・評価するための枠組み」が検討された.本稿では,通いの場の取り組みにおけるPDCA サイクルと,各局面で重要となる10 のコア項目について概説する.行政レベルでの通いの場の取り組みは,以下の6つの局面に整理できる.1.「理解」:介護予防・フレイル予防の要点や通いの場の必要性について理解する局面,2.「調査・計画」:地域アセスメントによって通いの場の現状と地域の強み・課題を明らかにし,課題解決に向けた計画を立案する局面,3.「体制・連携」:課題解決に必要となる行政内外の組織と連携し,体制を構築する局面,4.「実施」:課題解決に必要な取り組みを実施する局面,5.「評価」:取り組みによる直接の成果と効果を確認する局面,6.「調整・改善」:評価結果をもとに計画や体制,内容,目標を再検討する局面である.これらを活用することで,今後,PDCAサイクルに沿った通いの場の取り組みや効果評価がますます進むことを期待したい. |
キーワード | 通いの場,PDCA サイクル,ロジックモデル,評価 |
論文名 | 持続可能な通いの場とは―多世代・民間連携の視点から― |
著者名 | 倉岡正高 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,45(3):268-275,2023 |
抄録 | 介護予防・フレイル予防に資する通いの場等の事業において,これまで各自治体で進められてきた運動教室のみではない,多様な取り組みや多様な主体との連携がよりいっそう求められている.一方,多世代が集う通いの場や民間企業と連携した取り組みなどは全国でも限定的である.持続可能な通いの場づくりには,多世代が参加するのみでなく担い手として,また地域の高齢者の健康づくりの理解者として地域全体を巻き込む仕組みをつくっていく必要もある.多世代型の居場所に関する調査では,活動頻度と継続性の関係性が示唆されたことから,常設型を広めていくことや,単なる居場所のみでなく,地域全体の世代間の交流をゆるやかなつながりで深めていくことが,若い世代への理解や機運の醸成につながると考えられる. |
キーワード | 多世代,世代間交流,通いの場,社会参加,地域社会 |