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日本老年社会科学会 Japan Socio-Gerontological Society

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最新刊案内:老年社会科学 2023.1 Vol.44-4
論文名 特別養護老人ホームの介護職が苛立ち感情の生起を抑制するためのプロセス
著者名 梅沢佳裕
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,44(4):347 − 358,2023
抄録  本研究は,特別養護老人ホームの介護職が苛立ち感情の生起を抑制するためのプロセスを明らかにすることを研究目的とした.特養の介護職員11人にインタビュー調査を実施し,修正版グラウンテッド・セオリー・アプローチを用いて分析を行った.その結果,35の概念から6カテゴリー,8サブカテゴリーが生成された. 介護職は,《苛立ちが生起する直接要因》と《苛立ちにつながる背景要因》が影響し合うことで苛立ち感情が生起した場合に,《自己努力で抑制》《職場サポートで抑制》の相互影響関係によって,一時的には苛立ち感情が生起したとしても,支え合うことで虐待行動を及ぼす状態にまで感情をエスカレートさせないよう《冷静に考え直す専門職としての自分》という意識を取り戻していた.一方で,苛立ち感情の抑制における課題として,“国のストレスチェック体制不備”と“上司の指導・教育力不足への不満” が浮き彫りとなった.
キーワード 高齢者虐待,特別養護老人ホームの介護職,苛立ち感情の抑制,修正版グラウンテッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)
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論文名 地域在住高齢者と看護学生による世代間オンライン交流会の試み
― 地域交流における情報通信技術活用可能性の検討 ―
著者名 篠原 彩,影山隆之,荒木章裕,福田広美,品川佳満,堀 裕子,永松いずみ,佐藤 愛,木嶋彩乃,村嶋幸代
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,44(4):359 − 368,2023
抄録  本研究は,地域在住高齢者と看護学生とのオンライン交流会を開催して,世代間交流や地域での社会交流における情報通信技術(Information and Communication Technology ; ICT)の活用を検討することを目的とした.オンライン交流会を開催後,参加した高齢者5 人と学生8 人に半構造的インタビューを行い,その逐語録を帰納的に分析した.高齢者は【体感したオンライン交流の楽しさ】を語りながらも,【地域在住高齢者では困難なICT 活用】と考えていた.学生も【世代内・世代間がオンラインでつながる楽しさと期待】を感じながらも,【困難の多い高齢者のICT 活用】を改めて知り,【地域在住高齢者間のオンライン交流に必要な支援】を考えていた.一方,両世代ともに【見直した対面交流のよさ】や【大切にしたい対面での交流】が語られた.対面での交流を最大限に行いながら,これを補う方法としてオンライン交流が有効な機会,また地域交流でのICT 活用に向けた支援方法を検討する必要がある.
キーワード 世代間交流,オンライン,看護学生,地域在住高齢者,情報通信技術(ICT)
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論文名 介護保険制度の20 年とリハビリテーション
著者名 高橋幸生
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,44(4):370 − 375,2023
抄録  介護保険制度施行後の10 年間で,リハビリテーションの考え方は,国際生活機能分類(ICF)も踏まえ,心身機能に限らず,活動,参加を要素として,全人間的復権の理念が掲げられ,地域包括ケア全般に広がっていった.次の10 年では,医療介護連携の強化を契機として,制度化されたリハビリテーションのサービス・事業は,心身機能への重点化,ICIDH への回帰の傾向がみられる状況となっている.リハビリテーションの考え方およびICF の機能が,さまざまな事業・サービスに分散する現状において,「全人間的復権」の理念は,「尊厳」「自立」と併存しつつ,事業・サービスの一体性を検証する軸になり得るのではないか.また,医療介護のサービス提供体制の一体性の要請が高まっているが,高齢者が自らの「全人間的」「復権」の意味を考えること,それをサポートすることが必要とされていると考える.
キーワード 介護保険制度,国際生活機能分類(ICF),全人間的復権,地域支援事業,生活期リハビリテーション
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論文名 認知機能低下に伴う生活行為障害に対するリハビリテーション
著者名 田平隆行,池田由里子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,44(4):376 − 384,2023
抄録  高齢者は認知機能の低下に伴い複雑な手段的日常生活活動(IADL)から障害され次第に基本的日常生活活動(BADL)に困難をきたす.主観的認知機能低下や軽度認知機能障害の段階においても服薬管理などのIADL が低下し,家電製品の使用に困難を有す.筆者らが開発した生活行為工程分析表は,生活行為を詳細に工程分析することにより,ADL の障害部分と残存部分を明らかにすることができる.たとえば,洗濯では「洗濯物をしまう」は障害されやすいが,「洗濯物を干す」「洗濯物を取りこむ・たたむ」といった手続き的記憶を活用できる工程では認知症の重度者でも残存しやすかった.生活行為工程分析に基づいた3 か月の目標指向的なリハビリテーションによって,IADL,とくに目標として多かった洗濯において介入効果が得られた.在宅での生活行為を詳細に分析することで支援ポイントが明確となり,環境への介入等によって認知機能は変化せずとも自立度を高める可能性が示された.また認知機能が低下しても残存する工程を生かすことで在宅生活の継続の一助となり得る.
キーワード 認知症,生活行為,工程分析
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論文名 地域に根ざした高齢者の介護予防に関する実践的活動
著者名 上出直人,安藤雅峻
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,44(4):385 − 391,2023
抄録  1960年代に建設された大規模団地に居住する高齢者の介護予防における実践活動について報告する.活動を展開している団地は高齢化率が約50%と高く,エレベーターのない集合住宅であるため,住み慣れた地域で暮らし続けるためには,階段昇降能力の維持が必須となる.そこで,産学官連携での地域に根ざした介護予防のための活動を創出した.活動内容としては,高齢住民の階段昇降能力の維持を目標とし,団地内に整備された多世代交流拠点を活用した身体的フレイルに関する測定会を定期開催している.また,多世代交流拠点で運営されている通所型サービスに対し,身体的フレイルの予防に重点をおいた運動プログラムの開発と効果判定についても支援を行っている.活動を推進するにあたり,産学官がそれぞれの役割をもって協働することで,自立高齢者から要支援高齢者まで幅広く介入していくことを目指している.さらに,学生も実習を通じて活動に参画することで,団地の高齢者と学生との多世代交流についても展開している.今後,自主グループ活動などの自助・互助に関する活動についても支援をしていくことで,地域に根ざした系統的な予防活動として発展させていくことが目標である.
キーワード 団地,介護予防,フレイル,下肢運動機能,産学官連携
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論文名 介護予防の効果
―― 医療経済学的な立場から ――
著者名 井手一茂,近藤克則
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,44(3):392 - 398,2023
抄録  介護予防の効果検証が進められてきた.「効果」にもアウトプットから初期・中間・最終アウトカム,より長期的な介護費用などインパクトまであり,多様な側面がある.また,前後比較で改善がみられたことを根拠に効果があったとしている研究でも,対照群との比較がなされておらず,「効果」検証とは言いがたい研究も多い.「効果」を論じる場合には,これらの多面的な評価や前後の変化を対照群と比較した評価,さらには費用に関する評価,「効率」や「公正・公平」などの評価も期待される.小論では,通いの場を中心とした介護予防事業において,効果評価のロジックモデルを示したうえで,費用を含むこれまで蓄積されたエビデンスと今後の研究課題について概説した.今後,介護予防の費用研究を進めるためには,多市町村の長期間の生涯医療・介護費が含まれる長期縦断データ整備と利活用に向けた関係者・機関の連携が求められる.
キーワード 通いの場,ポピュレーション戦略,ロジックモデル,医療費,介護費
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論文名 運動による介護予防・フレイル対策
著者名 山田 実
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,44(4):399 − 408,2023
抄録  高齢化率の増加,大規模自然災害,それに新興感染症の感染拡大など,さまざまな社会問題の影響を受け,高齢者の介護予防・フレイル対策の重要性は増している.健康寿命の延伸に向けた取り組みとして,さまざまな健康関連アウトカムに対して「運動」の効果が示されている.近年では,各種システマティックレビュー,関連領域のガイドラインなどでも運動の有用性が示されるなど,その重要性は確立されたものとなっている.介護予防・フレイル対策に向けては,この運動の効果を最大限に高め,そして効果を持続させることが求められる.
キーワード 運動,介護予防,フレイル対策
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