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最新更新日:2021年11月5日
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最新刊案内:老年社会科学 2021.10 Vol.43-3
論文名
高齢者における通いの場参加と社会経済階層
―― JAGES 横断研究 ――
著者名
井手一茂,辻 大士,渡邉良太,横山芽衣子,飯塚玄明,近藤克則
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,43(3):239 − 251,2021
抄録
サロン,スポーツ,趣味,ボランティアグループ参加は,どの社会経済階層に多いのか明らかにする ことを目的とした.2016 年度の日本老年学的評価研究(JAGES)のデータを用い,38 市町の65 歳以上 の高齢者20,972 人を対象とした.目的変数は各グループへの参加有無とした.説明変数は,教育歴,等 価所得,最長職,調整変数は,人口統計学的要因など計11 要因とした.変数の欠損値は多重代入法で補 完し,男女別にポアソン回帰分析を実施した.サロンはどの社会経済階層とも有意な関連を示さなかっ た.スポーツは,男性で低所得層の参加が少なく(出現割合比0.90),趣味は,男女とも低学歴層の参 加が少なかった(男0.92,女0.81).最長職は,スポーツ・趣味で,管理職以外の社会経済階層が低い 人たちの参加が少なかったが,ボランティアで参加が多かった.介護予防事業の評価では,社会経済階 層に着目した評価も重要と考えられる.
キーワード
社会参加,健康格差,通いの場,介護予防,評価
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論文名
地域在住高齢者の抑うつと客観的および主観的評価による口腔機能との関連
著者名
深瀬裕子,上出直人,村上 健,市倉加奈子,村瀬華子,坂本美喜,柴 喜崇,田ヶ谷浩邦
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,43(3):252 − 261,2021
抄録
高齢者の抑うつに関連する因子について,とくに口腔機能を,反復唾液嚥下テストと舌圧による客観 的評価と,基本チェックリストの口腔機能の項目を用いた主観的評価の両側面を用いて検討することを 目的とした.分析対象者は271 人( 平均年齢73.42±4.71 歳)で,Geriatric Depression Scale-5 のカッ トオフ得点に基づき46 人(17.0%)を抑うつ群に分類した.年齢と性別の影響を調整したロジスティッ ク回帰分析の結果,主観的評価による口腔機能の低下は,社会的ネットワークや運動機能と独立して有 意に抑うつと関連していた.また,主観的健康状態の影響を考慮しても主観的評価による口腔機能は抑 うつと関連を示した.以上の結果から,高齢者における抑うつには,社会的機能,運動機能,主観的健 康状態とは独立して,主観的な口腔機能低下が影響していることが示唆された.とくに,基本チェック リストにおける口腔機能の項目が,幅広い機能のスクリーニングとして利用できる可能性が示された.
キーワード
地域在住高齢者,うつ,有病率,口腔機能,自覚症状
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論文名
ポジティブな精神的健康をとらえる日本語版 Mental Health Continuum Short Form(MHC-SF-J)の高齢者における妥当性と信頼性の検証
著者名
大片 久,澤田陽一,大形 篤,矢嶋裕樹,坂野純子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,43(3):262 − 273,2021
抄録
本研究は,高齢期の精神的健康のポジティブな側面を評価するために,日本語版MHC-SF 尺度 (MHC-SF-J)の妥当性と信頼性の検証を行うことを目的とした.60 歳以上の地域在住の協力者567 人 に対して,MHC-SF-J およびその他の尺度・指標に回答してもらい,欠損のない547 人の回答を使用し て分析を行った.確証的因子分析(3 因子2 次因子モデル)の結果,MHC-SF-J は原版と同様,3 因子構 造でおおむね良好な適合度指標を有することが確認された.信頼性に関しては,MHC-SF-J の合計得 点および3 つの各下位因子得点のCronbach’s α係数は0.84 ?0.94 で高い内的整合性が担保されており, また,当該尺度の下位尺度の得点パターンから分類されるもっとも精神的健康が良好なflourishing(フ ラリッシュ)の割合が23.6%であったことはおおむね先行知見と一致していた.また,ポジティブな精 神的健康と関連が想定された尺度や指標との相関関係を検討した仮説検証においても,おおむね有意な 関連が認められ,MHC-SF-J の構成概念妥当性は確認された.
キーワード
高齢者,精神的健康,日本語版MHC-SF(Mental Health Continuum Short Form J),flourishing(フラリッシュ),妥当性
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論文名
訪問看護師と連携するための訪問介護員の基礎的行動評価尺度の開発
著者名
須加美明
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,43(3):274 − 286,2021
抄録
目的:訪問介護員が,訪問看護師と連携するための行動をどの程度行っているかを評価する尺度の開発 を目的とした.
方法:訪問介護員503 人を対象に質問紙調査を行い,有効回答286 件(57%)を分析した.先行研究から 構成概念の枠組みは情報提供と情報収集になること,双方の情報交換の内容の調査から構成概念は,排泄の 情報提供,服薬の情報提供,看護からの情報収集になると仮定した.聞き取り調査から作成した16 項目を 因子分析した.尺度の外的基準にヘルパー援助力,業務能力向上,地域連携尺度を用いた.
結果:探索的因子分析により3 因子6 項目の尺度が得られ,構成概念にした仮説モデルの適合度を確認的 因子分析で調べた結果,尺度の適合度はよく,外的基準は有意な関連を示し,一定の妥当性が認められた. 信頼性はα係数.874 であった.
考察:訪問介護員が訪問看護師と連携する基礎となる情報提供と情報収集を評価する尺度の可能性が示 唆された.
キーワード
訪問介護,訪問看護,連携,情報提供,情報収集
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論文名
エイジズム研究の展開とこれから
――コロナ禍を超えて――
著者名
原田 謙
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,43(3):287 − 297,2021
抄録
本稿では,まずエイジズムは,「高齢者に対するステレオタイプ・偏見・差別」という狭義の定義のみ で議論するのではなく,「若年者に対するステレオタイプ・偏見・差別」にも目を向けるべきであること を確認した.そして国内では,この10 年間に,主にエイジズムの心理的メカニズム,職場におけるエイジ ズム,世代継承性に着目した研究が蓄積されてきた.またコロナ禍における海外の研究動向として,高齢 者と若年者の「隔離」や恣意的な年齢制限の問題点,ソーシャル・メディアにおけるエイジズム表現に関 する議論が展開されていた.さらに今後の展望として,中高年女性の労働力率の上昇に伴うセクシズムと エイジズムの重複,老いの文化的側面からエイジズムとらえ直す比較研究の必要性について言及した.
キーワード
エイジズム,世代間関係,高齢就業者,ソーシャル・メディア,新型コロナウイルス感染症
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論文名
高齢期の世代性(generativity)と世代間相互作用
著者名
田渕 恵
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,43(3):298 - 303,2021
抄録
本稿では,高齢者が若い世代に手を差し伸べようとする利他行動に着目し,その背景にある世代性 (generativity)の発達と,世代間相互作用との関連を取り上げた研究について概観した.一連の研究により, 世代性の発達や利他行動は,世代間相互作用のなかで高齢者が若齢者から「感謝された」と感じなければ 停滞すること,そして,若齢者は「次世代が自分と同じ失敗を犯さないように」という高齢者の行動を受 容しやすく,そうした自らの失敗を基にした利他行動に対して若齢者から「感謝された」と感じた場合に, 高齢者の世代性はより向上する,というサイクルが明らかとなった.高齢者の世代性が次世代にうまく働 き,両世代にとってメリットとなる相互作用の仕組みを作るためには,どちらか一方の視点に立つのでは なく,両世代の立場から相互作用のプロセスを精緻に検討した知見の蓄積が求められる.
キーワード
世代性(generativity),世代間相互作用,利他行動,利他性,失敗経験
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論文名
高齢者の閉鎖的ネットワークの要因に関する考察
著者名
中田知生
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,43(3):304 − 310,2021
抄録
本論の目的は,高齢者の閉鎖的ネットワークについて,筆者が行ったパネル調査データを用いた社会的 ネットワークに関する分析結果に対して,ソーシャル・キャピタルの側面から考察を加えることである.
筆者が行ったミシガン大学=東京都老人研究所が収集した「全国高齢者パネル調査」を用いた分析では, ソーシャル・サポートの供給者は,一部の例外を除き,年齢とともにソーシャル・サポート・システムの 内側へ移行する傾向があることが見て取れた.
この結果を解釈すると,高齢者は,閉鎖的ネットワークに取り込まれることとなる.この趨勢については, 多くの解釈が可能である.日本の家族やジェンダー関係からみると,実は女性が,政府を信頼できないな かで,世帯の資源の流出を防ごうとすることから閉じたネットワークに高齢者が移行する可能性があるこ とが,これまでの先行研究から導き出された.
キーワード
ソーシャル・キャピタル,閉鎖的ネットワーク,全国高齢者パネル調査
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