→English 最新更新日:2019年1月28日

日本老年社会科学会  Japan Socio-Gerontological Society

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最新刊案内:老年社会科学 2019.1 Vol.40-4
論文名 高齢期における抑うつ症状の変化と身体的健康との関連
―― 2 つの縦断研究の統一的分析 ――
著者名 中川 威
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,40(4):351 - 362,2019
抄録  本研究では,高齢期における抑うつ症状の変化と,身体的健康との関連を検討した.1987 年に開始した9 年間4 時点の研究1 と,2007 年に開始した4 年間3 時点の研究2 のデータを用い,統一的分析を行った.研究間で概念的に等価な変数を選定し,類似の統計モデルを推定した.抑うつ症状がどのように変化し,身体的健康( 生活機能障害と疾患数)の個人間差と個人内変動と関連するか検討するため, データ別にマルチレベルモデルを推定した.年齢,性別,教育歴,配偶者有無を共変量として用いた.2 つの縦断研究の結果,平均的には抑うつ症状は継時的に増加していた.生活機能障害と疾患数が多い者は,抑うつ症状が多いという個人間関連が認められた.また,おおむね70 歳以降で,生活機能障害が通常よりも多かった時点で,抑うつ症状が多くなるという個人内関連が認められた.これらの結果,高齢期には抑うつ症状は増加し,同一個人内で生活機能障害と共変動することが示唆された.
キーワード 併存疾患,障害,統合的データ分析,マルチレベルモデル,個人内効果
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論文名 認知症高齢者グループホームにおける職員の静的・動的見守りからみた建築空間に関する研究
著者名 谷本裕香子,佐藤将之,水村容子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,40(4):363 - 374,2019
抄録 【目的】本研究では,認知症高齢者グループホーム入居者の重度化の傾向やそれに対応する職員の仕事量の増加に伴って,職員の見守りを考慮した空間評価に着目した.見守りのあり方の現状を明らかにするために,場所を移動しながらの見守りについては「動的見守り」,移動しない見守りを「静的見守り」と定義する.静的見守り・動的見守りからみた建築空間を実現するための条件を提示にすることを目的とする.
 【方法】職員の見守りに影響を及ぼす共用空間の構成が異なる2 ホームを選定した.調査員1 人が職員1 人を行動観察し,1 分ごとの位置と作業内容を記録した.また,10 分ごとの入居者全員の居場所を記録した.
 【結果・結論】静的見守りに配慮した建築空間の実現のためには,台所,食堂,職員拠点の空間の可視率を上げる必要がある.動的見守りのためには,台所,食堂,洗面所,職員拠点の空間およびそれらの経路の可視率を連続的に上げる必要がある.
キーワード 認知症高齢者,グループホーム,建築空間,見守り
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論文名 日本の介護職の連携と職務満足
著者名 大平剛士
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,40(4):375 - 383,2019
抄録 本研究は日本の介護職の連携と職務満足の関係性を解明し,施設介護と訪問介護という提供サービスの違いや,組織内連携や組織間連携という連携の形態の違いが連携と職務満足の関係にどのような影響 を与えているのかを資源保存理論とReeves らの専門職連携の分類を基に検証した.平成20 年度介護労働実態調査の労働者調査票の18,035 人の介護職を対象とした分析結果より,介護職の連携は職務満足を高めていたことと,訪問介護職は組織間連携を施設介護職よりもとれていたことの2 点は仮説が支持 された結果であった.一方,訪問介護職は組織内連携を施設介護職よりもとれていたことや,介護職の組織内連携や組織間連携が職務満足に与える影響の度合いに関しては,提供サービスによる違いはみられなかったことの2 点は仮説とは異なる結果であった.
キーワード 介護職,連携,職務満足,施設介護・訪問介護,資源保存理論
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論文名 地域高齢者における性別・居住形態別にみた食行動の実態
著者名 吉田祐子,鈴鴨よしみ,岩佐 一
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,40(4):384 - 392,2019
抄録 本研究では,地域高齢者を対象とした標本調査を行い,高齢者の食行動の実態把握を行った.
 60 〜 84 歳の地域高齢者829 人( 男性379 人,女性450 人)のデータを使用した.食事の準備状況( 調理,食材購入,食費管理),共食の状況,食品摂取多様性,食生活満足度等について調査した.分析は,性別・居住形態別( 独居,夫婦のみ,家族と同居)に行った.
 食事の準備は,男性では,独居では本人が,夫婦世帯および家族と同居では本人以外が,女性では,いずれの世帯でも本人が主に担っていた.1 日の共食が0 回( 孤食)の割合は,男性11.6%に比べ女性19.6%で多く,居住形態別にみると,独居,夫婦のみ,家族と同居の順に,男性で79.5%,2.1%,6.2%,同じく女性で,80.3%,4.7%,11.0%であった.食品摂取多様性と食生活満足度は男性では独居で低く,女性では居住形態による差が認められなかった.
 上記より,独居者に対して,男性では多様な食品を摂る支援や共食の機会をつくる支援が必要であるが,女性では必ずしもそうした支援が必要ではない可能性が考えられた.
キーワード 地域高齢者,食行動,独居,孤食
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論文名 要支援高齢者の社会活動に関連する要因
著者名 宇都宮すみ,小岡亜希子,陶山啓子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,40(4):393 - 402,2019
抄録 本研究の目的は,要支援高齢者の社会活動の実態を把握し,社会活動に影響を及ぼす要因を明らかにすることである.対象は,中核市にあるA 地域包括支援センターが担当する地区に居住し,要支援の認定を受け た65 歳以上の高齢者のうち,施設入所者を除く788 人である.調査内容は,社会活動とそれに影響を及ぼすと考えられる個人的要因,身体的要因,社会的要因とし,無記名自記式質問紙にて調査した.有効回答は411 人で,重回帰分析にて社会活動に関連する要因を確認した.その結果,要支援高齢者の社会活動は,地 域・近所との交流が多く,関連する要因は,老研式活動能力指標,認定区分,ソーシャルサポートの提供,非家族支援ネットワーク,公共交通機関の利用の5 項目であった.要支援高齢者の社会活動を促進するためには,身体機能を維持することに加えて,地域での友人・知人とのつながりやサポートを提供できる役割を支援する必要性が示唆された.
キーワード 要支援高齢者,社会活動,介護予防,ソーシャルサポート,ソーシャルネットワーク
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論文名 当事者学としての老年学
著者名 直井道子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,40(4):403 - 408,2019
抄録 高齢者にとって自分のニーズを明らかにし,それをほかの高齢者などと語り合い,相互につながってニーズの類似性と差異を理解する当事者学が重要になってきている. たとえばこれまで各家庭に分断されてい た要介護高齢者は, ニーズを語り合う当事者学によって,介護保険制度では供給されていないサービスニーズを明らかにし,声を上げることができるだろう. これによって新たなサービスメニューやサービス供給方法の工夫( たとえば共同化),市場サービスの活性化を生むことも可能かもしれない. また一般の, みたところ元気な高齢者のなかからリスクのある高齢者を発見したり, 見いだされたリスクのある高齢者のその後をチェックするための相互安否確認などの工夫にも当事者学は有効だろう. その結果, 緊急のリスクに対応できるような「今後安心して暮らしていけるシステム」を切れ目なく希望する高齢者全員に用意できるようにすることに貢献できるかもしれない.
キーワード 当事者,支援者,被支援者,ニーズ
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論文名 幸福感再考
個人中心主義を超えた調節モデルの可能性
著者名 岡林秀樹
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,40(4):409 - 416,2019
抄録 本小論では,老年期に取り扱われることの多い幸福感にかかわる問題について,@主観的幸福感と心理学的幸福感の関係,A目標指向的パースペクティブを超えたコントロールモデル,B階層的な生態学的システムにおける調節過程間の協応という3 つの側面から検討した.議論をとおして,これまでの考え方は,いずれも,合理的な個人が自らの快や利益を効率的に追求するという西洋的人間観に基づいていることを 指摘した.しかしながら,人間性のより広く深い側面をとらえるためには,東洋的な人間観も取り入れて,過去から現在,そして未来に向けての時間的な広がり,合理性だけではなく不合理性, 自己と他者との関係を含めた,コントロールと幸福感についての新しい理論的枠組みを構築する必要があることを指摘した.
キーワード 主観的幸福感,心理学的幸福感,一次的コントロール,二次的コントロール,生態学的システム理論
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論文名 身体疾患で治療を受ける認知症高齢者の拡がりと課題
著者名 北川公子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,40(4):417 - 422,2019
抄録 近年,高齢化の進展,認知症高齢者の増加に伴い,身体疾患の治療を目的として急性期病院等に入院する認知症高齢者が増えている.認知症高齢者を受け入れる病棟では,認知症ケアの実践の蓄積がないために,身体拘束が禁止されている介護保険施設等に比べ,治療や安全優先の立場から身体拘束が適用されやすい.本稿では,身体疾患で治療を受ける認知症患者に関する研究動向を概観したうえで,認知症を併存 するがん患者や透析患者の実態と生じている困難を紹介した.今後は介護保険施設等で蓄積されている認知症ケアのグッドプラクティスを共有する,専門職間の交流が求められる.
キーワード 認知症高齢者,急性期病院,一般病床,認知症ケア加算
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日本老年社会科学会事務センター
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