論文名 | 高齢者におけるインターネット利用者の情報プライバシーの特徴 |
著者名 | 佐藤広英,太幡直也 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,40(3):271 - 282,2018 |
抄録 | 本研究では,高齢者におけるインターネット( 以下,ネット)利用者の情報プライバシーの特徴と,情報プライバシーとネットトラブル被害経験との関連を検討した.高齢者800 人および若年者400 人を対象としたウェブ調査を実施し,情報プライバシー,ネットトラブル被害経験などをたずねた.結果は以下の3 点に整理された.第一に,高齢者は若年者よりも属性情報に対する情報プライバシーが 高かっ た.第二に,高齢者のうちネット高利用群では,低利用群や若年者よりも識別情報に対する情報プライバシーが低かった.第三に,高齢者において識別情報に対する情報プライバシーが低い者ほどネットトラブル被害経験を有する割合が多かった.以上の結果から,ネットを多く利用する高齢者は,識別情報に対するプライバシーが低く,それがネットトラブル被害につながると考えられる.本研究により,高齢者のネット利用状況に応じた教育的支援の必要性が示唆された. |
キーワード | 情報プライバシー,高齢者,ネットトラブル被害,ウェブ調査,インターネット |
論文名 | 訪問介護サービスを利用する高齢者のコンビニエンスストア利用の実態 ― コンビニエンスストアが生活支援の役割を果たしている事例に関する質問紙調査 ― |
著者名 | 五十嵐歩,松本博成,鈴木美穂,M田貴之,青木伸吾,油山敬子,村田 聡,鈴木 守,安井英人,山本則子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,40(3):283 - 291,2018 |
抄録 | 本研究は,訪問介護を利用する在宅高齢者におけるコンビニ利用の実態を把握することを 目的とした.東京都A 区において調査協力への同意が得られた訪問介護事業所および小規模多機能型居宅介護事業所の管理者(n = 28)を対象とし,コンビニが生活支援の役割を果たしている利用者の事例に関して,利用者特性やコンビニの利用状況を問う質問紙への回答を依頼した.対象事業所より64 事例について回答があった.事例の利用者は,平均年齢77.8±11.4 歳,男性30 人(47%)であり,要介護1(31%)と要介護2(30%)が多かった.1 人で来店する者が68%であり,徒歩での来店が75%を占め,購入品は弁当・パン・惣菜がもっとも多かった(91%).ADL 障害のある者はない者と比較して,サービス提供者の同行が多く(p = 0.001),車いす等徒歩以外の来店割合が高かった(p = 0.018).サービス提供者は,日中1 人で過ごす者(p = 0.064)とADL 障害がある者(p = 0.013)に対して,コンビニの存在をより重要と評価していた. |
キーワード | コンビニエンスストア,在宅高齢者,認知症,訪問介護,質問紙調査 |
論文名 | 臨床倫理学と死生学 人生の最終段階における医療とケアの共同の意思決定のために |
著者名 | 会田薫子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,40(3):292 - 300,2018 |
抄録 | 臨床上の意思決定型は歴史上,父権主義型から自己決定型へ,そして共同決定型へと変遷してきた.アメリカにおいて自己決定型が確立された1970 年代は,医療技術が急速に進展し,治療法の選択肢が格段に増えた時代でもあった.そうした時代の要請として臨床倫理学が成立し,1 人ひとりの患者の意思を尊重し,医療やケアの選択に至るための意思決定プロセスと合意形成はどうあるべきか,模索が続けられてきた.同時代に死生学も西洋にて成立し,日本でも1970 年代後半から本格的な取り組みが開始された.本人らしく生きて生き終わることを支援する医療とケアの意思決定のため, 近年,厚生労働省や各医学会から臨床倫理ガイドラインの発表が相次いでいる.本人・家族と医療・介護従事者らがよく話し合い,本人の人生の集大成を支援する医療とケアの文化の創成が目指されている.臨床倫理学と臨床死生学の知見の融合はその促進役となることが期待されている. |
キーワード | 倫理,臨床死生学,意思決定プロセス・ガイドライン,選択,エンドオブライフ・ケア |
論文名 | 多様化する家族介護の現状と今後の介護を支えるシステムについて考える |
著者名 | 涌井智子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,40(3):301 - 307,2018 |
抄録 | 超高齢社会となって久しい日本の緊迫の課題は,減少する人口問題に加えて団塊の世代が,介護がより必要な75 歳高齢者となる2025 年問題といわれる介護の問題である.日本においては,要介護高齢者を支える家族の役割が大きく,また介護保険制度を導入したあとも,在宅での家族の存在を前提とした介護保険制度の提供が続いている.しかし,これまで3 世代世帯において要介護高齢者を支えてきた女性の介護者らが社会進出している状況や,未婚や晩婚化,働き方の違いによる家族構造の変化が,要介護高齢者を支える介護者としての家族に変化を与えており,これまでと同じような介護保険制度の提供だけで, 家族を前提とした介護システムの維持を実現できない可能性を示唆している.社会において,要介護者を支える持続可能なシステムを実現するためには,両輪のひとつである高齢者を支える家族の状況を把握したうえで,今後の介護システムの維持を考えていく必要がある. 本論文では,多様化する家族介護の現状を概説するとともに,介護を支えるシステムについて議論する. |
キーワード | 家族介護,介護保険システム,社会保障,多重介護 |
論文名 | 高齢者の主体的社会参加促進型ヘルスプロモーション |
著者名 | 佐藤美由紀 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,40(3):308 - 315,2018 |
抄録 | 高齢者の健康の維持・増進を図るとともに,介護予防などの地域課題の解決に向けた取り組みへの主体的な参加を促進するヘルスプロモーションが求められている.このようなヘルスプロモーション活動おいては,高齢者が課題解決の過程すべてに参加し,プログラムや組織の運営において決定権をもつことが必要である.先行研究の概観により,「地域課題の特定から解決策の計画,実行,評価のすべての段階に高齢者が主体的に参加」し,「ポピュレーションアプローチとしての地域全体に対する効果評価」にとどまらず,「実践プロセスを可視化できる」実践研究の必要性を示し,アクションリサーチの活用を提案した.筆者らによる実践プロセスの分析と効果評価の事例を紹介し,高齢者の主体的社会参加促進型ヘルスプロモーションは,防犯,地域医療などの地域課題の解決方法として発展が可能であること,実践方法の確立が課題であることを述べた. |
キーワード | 地域高齢者,社会参加,当事者主体,ヘルスプロモーション,アクションリサーチ |