→English 最新更新日:2018年5月10日

日本老年社会科学会  Japan Socio-Gerontological Society

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最新刊案内:老年社会科学 2018.4 Vol.40-1
論文名 高齢者における日常活動指標と記憶成績および記憶信念との関係
著者名 金城 光,清水寛之
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,40(1):9 - 21,2018
抄録  高齢者の日常活動( 主に日常的楽しみに関する活動)の程度の指標および活動程度に関連する要因を 明らかにするため,若齢群,中年群,および高齢群を対象に記憶成績と記憶信念の観点から調査した. 活動状況の指標は,従来の頻度評定のほか,活動の重要度評定と,重要度を加味した重みづけ頻度評定 を用いた.記憶信念は日本版成人メタ記憶尺度短縮版で測定した.相関分析の結果,頻度得点と重要度 得点の関連は高齢群でもっとも高く,記憶成績と記憶信念の関連は高齢群のみで認められた.階層的重 回帰分析の結果,重要度得点と重みづけ頻度得点では,どの年齢群でも記憶信念の下位尺度を加えたモ デル3 で10%以上の説明率を確認した.一方,頻度得点では,ほかの年齢群とは異なり高齢群でモデル 3 の説明率は0%だった.以上から,日常活動の程度には記憶信念が関連し,高齢者の活動特性把握には 頻度のみならず,活動の重要度も考慮すべきであることが明らかになった.
キーワード メタ記憶,記憶信念,記憶の自己効力感,日常活動,記憶
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論文名 高齢期における主観的幸福感の安定性と変化
― 9 年間の縦断研究 ―
著者名 中川 威
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,40(1):22 - 31,2018
抄録  本研究では,高齢期における主観的幸福感の個人内変化を分析した.PGC モラールスケールを主観 的幸福感の指標とし,全国高齢者パネル調査の9 年間4 時点( 第1 波調査時点で2,169 人;年齢範囲60 .94 歳)のデータを用いた.欠損値を推定し,潜在成長曲線モデルを行った結果,主観的幸福感は変 化せず,安定していることが示された.個人内変化の個人間差に関連する要因を探索した結果,第1 波 調査時点の年齢が高いほど,主観的幸福感の初期値は低い一方,主観的幸福感は向上した.死亡者を含 む脱落者は調査への継続者に比べ主観的幸福感の初期値が低かった.これらの結果,高齢期における主 観的幸福感の安定性が再現され,縦断データには適切な欠損値の対処法を適用すべきであることが示さ れた.今後,追跡期間を延長し,調査時点を増やすとともに,潜在的な共変量を考慮することで,主観 的幸福感の軌跡とその共変量をより詳細に記述すべきだろう.
キーワード 主観的幸福感,PGC モラール,縦断研究,潜在成長曲線モデル
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論文名 地域在住高齢者における健康関連の逆境に対するレジリエンスの構成概念
著者名 小林由美子,杉澤秀博,刈谷亮太,長田久雄
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,40(1):32 - 41,2018
抄録  地域在住高齢者のレジリエンスの構成概念を検討した.レジリエンスを,疾病などの健康関連の逆境 に直面した際の生活機能の回復と維持を促進する認知的・心理的特徴と定義した.研究協力者(N = 20,平均年齢81.45 歳,年齢範囲は72 .92 歳)に,直面した健康関連の逆境の内容と,回復や維持を進 めるにあたっての努力や工夫について,インタビューを行った.回答の逐語録から,@活発化( 新奇性 への興味,直感の重視,持続力,活力),A自然体(コントロール,楽観性,自然の流れを選択),B人 生の目的( これからをどう生きるか,肯定的受容,過去の克服の成功感,現実に合わせた再構築),C関 係志向(サポート希求,貢献の欲求,関係の基盤),Dマネジメントスキル( 情報への敏感さ,残存能力 の活用,勤勉さ,評価)という5 つの構成概念を得た.レジリエンスは連鎖的に回復・維持を促進する 構成概念から成り,レジリエンスには認知的予備力が配分されていることが示唆された.
キーワード レジリエンス,人生の目的,再構築,生活機能,認知的予備力
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論文名 閉じこもり傾向にある高齢者の教室型プログラム参加につながる要因と継続要因
著者名 山縣恵美,小松光代,杉原百合子,渡邊裕也,木村みさか,井上恒男,岡山寧子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,40(1):42 - 53,2018
抄録  本研究では,有効な閉じこもり予防策の確立に向けて,閉じこもり傾向にある高齢者の教室型プログ ラム( 以下,教室)への参加および継続に関連する要因を明らかにすることを目的とした.われわれは, 閉じこもり傾向にある高齢者を対象とした教室に参加した者に対しフォーカス・グループ・インタビュー を行い,質的な分析を行った.
 その結果,教室案内時,対象者にはもともと【参加を検討する背景】があり,そこに【参加を後押し する決め手】が加わり参加に至っていた.教室参加後も,【継続に傾く判断材料】と【中断に傾く判断 材料】の間で参加することの意義を模索しながら,修了まで継続していた.
 以上より,教室参加者は,案内時から参加に至ったあとも参加するか否かで気持ちの揺らぎが生じて いることがうかがえた.教室型プログラムにおける閉じこもり傾向にある高齢者に対する支援では,教 室案内時から修了までを通して,個別的な支援の必要性が示唆された.
キーワード 高齢者,閉じこもり,介護予防プログラム,フォーカス・グループ・インタビュー
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論文名 テクノロジーを使った高齢者の生活支援
著者名 野田和恵
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,40(1):54 - 58,2018
抄録 生活を便利で快適なものにするテクノロジーであるが,高齢者にとっては在宅生活の継続を困難にする 要因にもなりかねない.ひとり暮らしや高齢者世帯ではとくにその危険性が高い.そこで高齢者にとって テクノロジーはどのような存在なのか,高齢者のテクノロジー使用の困難の解明を試みた研究とその困難 の解決に挑戦した実践,テクノロジーが高齢者にもたらす恩恵について取り扱った研究や試みといったマ イナスとプラスの二方向から研究と実践について紹介した.また高齢者にとっての課題や将来の展望につ いても言及した.
キーワード 高齢者,テクノロジー,生活支援,うながし
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論文名 高齢者における健康格差研究のリサーチ・クエスチョン
― 社会階層に着目して ―
著者名 杉澤秀博
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,40(1):59 - 66,2018
抄録 高齢者における健康格差研究の蓄積は,日本だけでなく欧米においても乏しい.日本における高齢者の 健康格差研究の発展を期して,本稿では,この研究課題に関して,回答が必要と思われるリサーチ・クエ スチョンを取り上げ,それぞれのクエスチョンに対する日本内外の研究の到達点と課題を示すことにある. リサーチクエスチョンとは,@高齢期ではそれ以前の年齢と比較して社会階層による健康格差は拡大する のか,縮小するのか,A高齢期の社会階層による健康格差は時代やコホートによって異なるのか,B社会 階層が健康格差を生じさせるメカニズムはなにか,C個人の社会階層のみが問題か,地域の社会階層的な 特徴は問題にならないのか,D高齢期の社会階層による健康格差は高齢期だけの問題か,それ以前のライ フコースの影響はどの程度か,E健康リスクを多く抱えている社会階層の高齢者はその原因をどのように 認知しているか,である.
キーワード 年齢―時代―コホート効果,ライフコース,健康影響のメカニズム,地域の社会階層的特徴,質的研究
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論文名 サードエイジ研究の射程と課題
著者名 片桐恵子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,40(1):67 - 72,2018
抄録 定年後から身心の衰えが始まるまでの元気な期間を指すLaslet のサードエイジという考え方は,高齢者 の多様性が高くなってきた現在,暦年齢にとらわれない点で有用な考え方である.サードエイジ自体に焦 点を当てた研究は少ないが,これまで元気な高齢者に関しては,主に高齢者就労,社会参加,生産的活動 という分野から知見が蓄積されてきた.サードエイジの側に立てば,いかなる生き方の選択肢が可能なの か,またいくつかの活動を組み合わせて,より本人のwell-being を高めるにはどうしたらいいか,という 視点が必要であるが,そのようなサードエイジ側の視点に立って統合された研究はまだ少ない.サードエ イジに対する実践的な貢献という意味からも,サードエイジを,セカンドエイジから移行し,フォースエ イジに対する準備期間であるととらえるライフサイクル的な観点からも,今後これらの活動を包括的に統 合する視点が求められる.
キーワード サードエイジ,高齢者就労,社会参加,生産的活動,市民参画
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論文名 家族の高齢者虐待を未然に防止するための介護者教育プログラム
著者名 矢吹知之
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,40(1):73 - 78,2018
抄録 在宅で認知症の人の家族介護者への公的な支援策は乏しい.その背景にはわが国ではRCT に基づく研 究に関する倫理的な課題もあり,蓄積が遅れている.本稿では,諸外国の教育的介入プログラムの近年の 流れを概観した.また,これまで,集合型か個別型が代表的だった教育的介入プログラムは双方を組み合 わせたブレンデッドなプログラムが主流となり,自宅でいかに介護負担軽減に向けた取り組みを継続する かが重要か鍵になっている.さらに今後は,ICT を活用した介護者教育が求められることが予測できるが, その内容を検討するうえで,これまでの蓄積を生かした教育プログラム検討の要点を整理した.
キーワード 高齢者虐待,介護者教育,介入プログラム,教育プログラム
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日本老年社会科学会事務センター
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