- 日本老年社会科学会 研究倫理指針
- 平成24年6月10日施行
- 第1章 総 則
- 日本老年社会科学会は老年社会科学の研究において必要な倫理的配慮の基準として本指針を定める.
- 第1条(目的)
- 本指針は日本老年社会科学会会員が老年社会科学の理論的・実践的向上を目指して行う研究活動に対し,個人の尊厳および人権の尊重,その他倫理的・科学的観点から研究活動のあり方を示すものである.
- 第2条(適用範囲)
- 本指針は,学会員の行うわが国における老年社会科学研究の向上に寄与することを目指して行われる,すべての研究活動を含むものとする.
- これらの研究活動とは,日本老年社会科学会が主催する学会大会等における研究発表,実践・調査報告等,および機関誌「老年社会科学」に掲載される研究論文等を含むものとする.
- 第3条(学会員が遵守すべき基本原則)
- 研究活動における科学的合理性と倫理的妥当性の確保
- 個人の尊厳および人権を尊重して研究活動を実施する.
- 科学的合理性および倫理的妥当性が認められる研究活動を実施する.
- 研究計画について,所属機関の倫理委員会等が設置されている場合には,その許可を受けなければならない.これを変更しようとするときも同様とする.
- 学会員は,本指針を遵守するとともに,その研究内容に応じて文部科学省等より発出されている研究に関する倫理基準に従わなければならない.
- 研究活動におけるインフォームド・コンセント
- 研究活動を実施する場合,事前に研究対象者からインフォームド・コンセント(十分な説明を行い,同意を得る)を受けることを原則とする.
- 研究活動を実施する場合,インフォームド・コンセントの手続きを研究計画に記載しなければならない.
- 研究成果の公表
研究対象者の個人情報を保護するための必要な措置を講じたうえで,研究成果を公表しなければならない.
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- 第2章 指 針 内 容
- 第4条(引用)
- 先行研究の明示
- 研究とは先行研究のうえに新たな知見を積み重ねることである.
- 研究においては,参考にした先行研究を明示するとともに,先行研究が示す知見を区別して述べる必要がある.
- 先行研究からの知見を自らの研究に援用した場合,その先行研究について原著者名,書名または論文名,引用頁,出版社,出版年を明示しなければならない.
- 長文の引用,図表写真の転載等を行う場合には,原則として出版社および原著者からの承諾を得る.
- 引用を行う場合は,原典を確認することが原則であり,原典が入手できない等,真にやむを得ない場合にのみ「孫引き」が許される.
- 盗用・剽窃
- 他者の行った研究成果を,出典を明記せず,そのまま,あるいはわずかに 変えただけで自分の論文に使用することは,盗作もしくは剽窃として糾弾・告発される行為であり,厳に慎まなければならない.
- 第5条(事例研究)
- 匿名性の確保
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事例を用いた研究を行う場合,事例の公表による研究対象の特定化によって研究対象が不利益を被ることを防ぐため,匿名化する必要がある.ただし,公表について研究対象の了承があり,その社会的必要性が認められる場合はこの限りではない.
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匿名性を確保するには,研究対象が特定できないように,事例の経過や内容を,研究の目的および科学的客観性・妥当性を損なわない限りで加筆修正を行う必要がある.また,その場合には,事例を加筆修正している旨を明示する必要がある.
- 事例使用の承諾
- 事例を含んだ論文の執筆および口頭発表を行う場合,発表を行うことについて事前に研究対象から文書で承諾を得ることを原則とする.また,事例使用について研究対象から承諾を得ている旨を論文等に明示する.
- 研究対象から実名公表の承諾を得ている場合には,その旨を明示する.
- 他の研究者が執筆した事例を使用する場合,引用の典拠を明示する.
- 第6条(調査研究)
- 調査方法
調査用紙(質問紙)等は,対象者の名誉やプライバシー等の人権を侵害するものであってはならない.
- 調査手続き
- 調査結果の改竄をしてはならない.
- 調査用紙(質問紙)および結果データは開示要求に対応すべく,結果の公表後最低2年は保存する必要がある.
- 他の研究者が行った調査で使用された調査用紙(質問紙)の全部または一部を使用する場合には,その旨を明示し,出典を明らかにする必要がある.
- 使用料の発生する調査用紙(質問紙)を使用する場合,適切に対応しなければならない.
- 恣意的使用
- 調査データを恣意的使用すること,データの一部分を改竄すること,さらに分析・解釈を容易にするために特定のデータを削除することは,厳に慎しまなければならない.
- データの一部のみを示す場合には,その選択の客観的な基準を明示する必要がある.
- 第7条(書評)
- 書評は,発刊された研究業績の評価を含むものであるから,評者は全文を 読了したうえで公正・客観的に批評しなければならない.
- 書評は,著者の人格を傷つけるものであってはならない.
- 書評に対して,著者からの要求があった場合には,その反論が許されなけ ればならない.
- 第8条(査読)
- 匿名性の確保
投稿された研究業績の査読を行う過程において,著者と査読者の双方の匿名性が保持されなければならない.
- 公平性
- 査読は,投稿された研究業績の評価を含むものであるから,査読者は全文を読了したうえで,公正・客観的に評価を行い,かつ指摘する内容が明確でなければならない.
- 査読は,著者の人格を傷つけるものであってはならない.
- 査読結果に対して,著者から要求がある場合には,その反論が許されなければならない.
- 査読者は,原稿が公刊される前に,その内容を自分の研究に利用したり,第三者に明かしたりすることは許されない.
- 手続き
査読を依頼されたとき,査読原稿の内容をみて,評価を行うには自身が不適格であると判断した場合には,査読を辞退し,原稿を返却する.
- 第9条(二重投稿・多重投稿の禁止)
- 二重投稿・多重投稿
- 同じ内容の研究論文を同時に二つ以上の研究誌に投稿してはならない.
- すでに出版物に掲載されている論文と同一の内容の原稿を投稿することもしてはならない.
- これらの二重投稿・多重投稿が明らかになった場合,投稿論文は却下され,掲載を取り消しされる.
- 連続した研究の場合
- 前回発表した研究論文と同一の結果(データ)を用いて,次の研究論文を執筆し,投稿する場合には,前著を引用し,かつ,前著と同一でない旨を明示しなければならない.
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二重投稿にあたるかどうかの判断は編集委員会が行う.そのため,投稿した原稿と類似した内容の原稿を他の雑誌に投稿している場合やすでに出版している場合には,研究論文等を投稿するにあたり,当該論文を添えて編集委員会に提供しなければならない.
- 第10条(大会等での発表)
- 姿勢
- 大会等で発表する場合は,その内容が老年社会科学研究の向上に寄与することの自覚の下で行わなければならない.
- 発表の登録をした場合,取り消しを行うことは出来る限り慎むようにしなければならない.どうしても取り消しを行う場合には,速やかに届け出ることを義務とする.
- 同じ研究グループに所属する複数の発表者が一連の発表を主発表者の名義を変えて,一つの分科会を独占するような発表の方法は慎むべきである.また,同一会場での一連の発表は2つまでとする.
- シンポジウムや個人発表等においては,所定の時間を厳守しなければならない.
- 匿名性の確保
- 個別の事例について発表を必要とする場合には,第5条に従わなければならない.
- 第11条(データ管理の留意点)
- 調査研究で得られたデータは,調査対象者の了承を得たものでなければならない.
- 調査研究のデータ管理は厳重に行わねばならない.個人情報を含んだデータをコンピュータに入力し,データファイルとして管理する場合については,個人を特定できる情報(氏名など)はコード化するなどして,本デー
タから削除したうえで管理する.また,各データファイルは可能な限りの セキュリティー対策を講じたうえで,漏洩等に対する対策を万全にしなけ ればならない.
- コンピュータ上のデータに関しては,そのコンピュータが完全にインターネット環境から独立している場合を除き,ファイル交換ソフト,スパイウェア等の影響を排除できるような配慮を行うべきである.
- 調査表等の管理は,施錠可能な引き出しや棚に収納するなどして,第三者の目に触れることがないようにしなければならない.
- 原データおよびそれを電磁化あるいはプリントアウトしたものは,研究終了後も可能な限り保管されるように努めなければならない.
- 第12条(権利関係についての注意)
- 研究データの権利
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研究データ使用の権利は,そのデータを直接集めた者だけでなく,研究に学術的な貢献をした者や組織すべてが何らかの権利を保有していると考えられる.研究発表においては,そうした関係者の権利にも十分な配慮をしなければならない.
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研究に学術的な寄与をした個人には,その研究を発表する際,連名著者となる権利がある.この学術的な寄与とは,研究計画の立案,分析方法の決定,データの解釈,論文の執筆などに参加することを意味する.ただし,統計解析ソフトへの調査データの入力や分析作業の実施などの単純作業は,通常,学術的な寄与とはみなされない.
- 著述作品への責任
- 連名著者は論文の内容に責任をもたなければならない.したがって,連名著者になるか否かについて,著者は本人の意思を確認する必要がある.
- 連名で著述する場合においては,その貢献度に基づいて,著者の順位を決定すべきである.
- 研究への寄与が単純作業のみである場合,または,寄与がそれほど大きくない場合は,謝辞・脚註などで謝意を表するだけにとどめることができる.
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連名著者となるかどうか,連名著者の順序をどうするか,謝辞・脚註に姓名を記すかどうかについては,論文の執筆を始める前までに,遅くとも原稿を投稿する前までには,関係者全員の合意を得ておく必要がある.
- 第13条(人権への配慮)
- 研究による人権侵害の禁止
研究において,対象者に人権の侵害や差別を助長するおそれのあることは取り上げるべきではない.
- 差別を助長する用語の使用の禁止
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口頭発表・研究論文の執筆等にあたって,研究目的を外れて社会的に不適切と考えられる用語を用いてはならない.ただし,引用文献である原典において用いられている場合はこの限りではないが,その旨を明示し,不必要な人権侵害・差別が起こらないように配慮しなければならない。
- 学会員は,差別的表現とされる用語や社会的に不適切とされる用語について理解を深めなければならない.
- その他
- 日本老年社会科学会研究倫理指針は,以下の資料を参考に作成している.
- 文部科学省,厚生労働省,経済産業省「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(令和3年3月23日)
- 日本学術会議「科学者の行動規範―改訂版―」(平成25年1月25日)
- 日本学術振興会「科学の健全な発展のために―誠実な科学者の心得―」(平成27年4月9日)
- 附 則
- 本指針は平成24年6月10日から施行する.
- 2)本指針の改訂は日本老年社会科学会理事会および評議員会の議を経,総会の承認を得て行うものとする.