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日本老年社会科学会  Japan Socio-Gerontological Society

書 評
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更新日 2024/6/13

“生活環境病”による不本意な老後を回避する;幸齢住宅読本
伊香賀俊治監修,住まいと住まい方のジェントロジー研究会企画 定価1,500円+税
発行:社会保険出版社
年齢を重ね,生活圏が狭まっていくほどに重要になってくるのが自宅,住まいといえる.1日の多くの時間を過ごす場であるからこそ,いかに生きるかを反映させた「住まい方」を形にできる場でなくてはならない.本書では,老年学の視点から歳を重ねるなかでの健康や幸せの考え方を提示し,建築学や経済学の視点からこれを実現する「幸齢住宅」の作り方をわかりやすく解説している.
1章と3章では,そもそもの「幸齢住宅」の目指す幸せな住まい方について,概念整理やポイントの整理を行っている.2章と3章では「幸齢住宅」の作り方について,2章では住環境からくる循環器疾患としての「生活環境病」の回避にむけ,リフォームの際のポイントを具体的に解説している.4章では幸齢住宅の実現に役立つ資金サポートや,リフォームすることで得られるであろう経済的なメリットなどを解説している.最後に5章では,5つの事例を挙げ,オーナーの求める住まい方と具体的に行なったリフォームを紹介している.
本書の特徴として,単に知識を一方的に伝えるだけではなく,住まいを考える根底にある「いかに歳を重ねたいか?」を,読者に問いかけていることがあげられる.多様な視点から健康長寿に関する研究を積み上げてこられた星旦二氏が,自宅を「幸齢住宅」とするために行ったリフォームと得られた幸せな住まい方を紹介しているのもユニークな点である.
高齢社会に関する研究者のみならず,リフォームや住宅設計に関わる民間事業者のみなさん,実際に高齢者の生活に関わる福祉職だけではなく,ご自身や身内の高齢期の住まい方を考えはじめた中高年のみなさまに読んでいただきたい良書といえる.

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