→English 最新更新日:2021年06月23日

日本老年社会科学会  Japan Socio-Gerontological Society

「社会的側面からみたフレイル」検討委員会からの提言

検討委員会発足の背景と経緯
 
 「フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント」2014年5月が発表されて以来、フレイルは生活機能が低下し、要支援・要介護に至る前の段階の状態として、身体的問題のみならず、精神・心理的問題、社会的問題を含む包括的な概念として認識されるようになった。これを受けて近年、フレイルに関する研究のなかに「社会的フレイルsocialfrailty」という用語が散見されるようになった。フレイルに対する社会的関心の高まりを示すと考えられるが、一方、概念や定義について十分に考慮されることなく、マス・メディア等を通じて、用語のみが流布されているのではないかとも危惧される。
 こうした現状をふまえ、日本老年社会科学会は「社会的フレイル」に関する見解を、社会に向けて提言する責務があると考え、2020年1月に検討委員会を設置し、検討を続けてきた。
 
 
検討委員会における4つの論点
 
 これまでに発表された研究のなかには、「社会的フレイル」を「身体的フレイル」「認知的フレイル」などと同列と見なし、一つの概念としてとらえている研究と、「フレイルの社会的側面」すなわちフレイルな人の社会的特徴やフレイルに影響する社会的要因を便宜的に「社会的フレイル」と称している研究がある。
 一般に、新しい学術用語の導入は、既存の用語によってとらえきれない事象や概念を表現しうる場合にのみ意義を有する。また、新しい用語の導入が新たな差別・偏見を生むものであってはならない。これらのことをふまえると、「社会的フレイル」という新たな用語を使用するにあたっては、主に四つの観点から慎重を期する必要がある。
 第一に、「社会的フレイル」の具体とされることが多い社会活動、社会関係、社会環境などの脆弱さはフレイルな人に見られる社会的特徴であり、フレイルの促進要因である可能性がある。しかし、こうした既知のリスク要因に新たに「社会的フレイル」いう用語を冠することに意義があるか否かは検討されねばならない。
 第二に、フレイルは、身体的側面のみならず、精神・心理的側面、社会的側面を含む包括的な概念である。フレイルを細分化して「社会的フレイル」という狭義の定義づけを行うことは、概念の包括性を損ない、各側面の相互連関を見逃すことにつながる。
 第三に、上記、フレイルの諸側面の一つ、社会的側面もまた、包括的な概念といえる。「社会的フレイル」の指標とされることが多い社会活動、社会関係、社会環境などは相互に関連しており、独立したリスク要因ではない。これらを単独のものとして列挙し、単純に加算して評価を行うとすれば、相互連関の詳細を見逃す恐れがある。
 第四に、フレイルの社会的側面は環境から切り離された個人の病的な特性ではない。本人の価値観や選好の結果であったり、自ら選択・実現できなかったライフ・コースの帰結であったりする。社会規範、制度・政策などの環境条件が反映される例もあり、検討されるべきは個人ではなく、社会的環境と判断される場合もある。このことを忘れて個人の病的な特性であるかのように扱ってしまうとすれば、結果的に更なる、新たなスティグマを生む可能性が大きい。
 以上をふまえ、本検討委員会の見解として、以下のように提案する。
 
 
本検討委員会の提言
 
 「社会的フレイル」の語を安易に用いるべきではなく、「フレイルの社会的側面」、すなわちフレイルな人に多く表れる社会的特徴もしくは生活機能の低下をもたらしうる複雑なプロセスを持つ社会的な要因として捉え、表現を勘案すべきである。
 そのうえで、あえて「社会的フレイル」の語を用いるのであれば、
用いることの意義を明らかにし
フレイルの概念の包括性を踏まえて
社会活動、社会関係、社会環境などの社会的諸側面の相互連関を視野に入れ
対象の価値観や選好、ライフ・コース、社会規範・制度・政策などの環境条件に鑑みつつ表記することが望まれる。
 
 2021年6月
 日本老年社会科学会「社会的側面からみたフレイル」検討委員会

 

 

     
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