→English 最新更新日:2017年10月31日

日本老年社会科学会  Japan Socio-Gerontological Society

最新刊案内:老年社会科学 2017.10 Vol.39-3
論文名 在宅高齢者のテレビ視聴形態と生活機能との関係
-基本チェックリストとの関係分析から-
著者名 荻原牧子,戸ヶ里泰典,川原靖弘
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,39(3):305 - 315,2017
抄録 高齢者の生活においてはテレビ視聴が相当の割合を占め,これと生活機能との間には関連があると予 想される.本研究の目的は,先行研究との比較からテレビ視聴形態の変化をみることと,生活機能の違 いによるテレビ視聴形態の違いを明らかにすることである.407 人の在宅高齢者に対し,自作のテレビ 視聴形態アンケートと厚生労働省による基本チェックリストを実施し,その相関をもとに分析した.過 去との比較において視聴時間はおおむね3 時間であり,視聴番組はニュース・報道番組と天気予報が上 位を占めており,視聴動機は情報入手が主であり,過去から現在までテレビの視聴形態には大きな変化 のない可能性が高いと考えられた.生活機能との関連については,前期高齢者における特徴は少なかっ たが,後期高齢者においては,生活機能の低下と社会・情報番組および学習・教養番組の視聴頻度の低 さとの間に関連のあることが明らかになった.
キーワード 在宅高齢者,テレビ視聴形態,生活機能,前期高齢者,後期高齢者
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論文名 中高年の老後観,老後の準備行動および情報活用と社会活動への参加との関連
-中年前期群と中年後期群および高齢期群との比較検討-
著者名 茨木裕子,李 泰俊,加瀬裕子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,39(3):316 - 329,2017
抄録 本研究は,社会活動への参加に至るまでの中高年の老後観と老後の準備行動を活動志向とみなし,情 報活用の位置づけを年代による比較をとおして明らかにした.対象者は40 歳以上の男女676 人であった.
 その結果,中年前期群(40 . 54 歳)の社会活動は,余暇活動的意味合いが強く,情報活用も関連して いなかった.中年後期群(55 . 64 歳)では,「技術の習得や能力向上」の準備行動に沿った「公的地域 情報誌」の活用が社会活動への参加に関連を示した.一方,高齢期群(65 歳以上)では,「変化挑戦的」 な老後観と「人との関係性構築」「生きがい」「技術の習得や能力向上」「安定した経済状態の維持」の 準備行動に沿った「紹介」「公的地域情報誌」の活用が社会活動への参加に関連していた.
 本研究により,中年後期以降の社会活動への参加における情報活用の有効性が実証され,年代によっ て異なる情報提供手段が必要とされることが示唆された.
キーワード 社会参加,老後観,老後の準備行動,情報活用,中高年
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論文名 在宅要介護者が通所リハビリテーションサービスに見いだす意味
-参加観察による分析-
著者名 佐々木由佳,小賀野操,高村直裕,小林大作,荻原喜茂
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,39(3):330 - 340,2017
抄録 本研究の目的は,通所リハは利用者にとってどのような意味があるのかをとらえることである.対象 は同一曜日に利用する36 人で,参加観察を15 日間行った.データをスプラッドリー(2010)にしたがっ て分析したところ,15 のカバータームを抽出し,そこから包括的な意味をもつ5 つのテーマが生成され た.利用者は健康への積極的な行動や,心身の苦痛を軽減する【障害に対処する】場として利用するの みでなく,【保障された場】として安心して外出し,仲間と【共同体の一員としてふるまう場】として すごし,家ではできない経験ができる【ハレの場】として通所リハをとらえ,さらにその利用は習慣化 された【暮らしの一部】となっていた.通所リハは利用者にとって,障害に対処するのみならず,社会 の一員として活動できる場としての意味をもっていた.以上より,利用者を地域参加につなげる通所リ ハの役割は,利用者の視点からも意義あるものと示唆された.
キーワード 通所リハビリテーション,要介護高齢者,参加観察
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論文名 要支援・要介護高齢者と一般高齢者の主観的健康感の関連要因の特徴
著者名 池田晋平,植木章三,柴 喜崇,新野直明,渡辺修一郎,佐藤美由紀,安齋紗保理,田中典子,芳賀 博
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,39(3):341- 351,2017
抄録 本研究の目的は,要支援・要介護高齢者の主観的健康感に関連する要因の特徴を明らかにすることで ある.対象は北海道A 市B 区在住の要介護認定を受けている要支援・要介護と,要介護認定を受けてい ない一般高齢者である.それぞれの高齢者を2,500 人ずつ無作為に抽出し,主観的健康感,身体,心理, 社会的変数を郵送によるアンケートで調査した.有効回答はそれぞれ1,059 人,1,699 人で,それぞれ の群においてロジスティック回帰分析にて主観的健康感に関連する要因を確認した.その結果,要支援・ 要介護高齢者は疾患,転倒,ADL,孤独感,情緒的サポートの受領が関連し,他方一般高齢者では疾患, 転倒,IADL,外出頻度,孤独感が関連していた.以上のことから,要支援・要介護高齢者では,社会 生活の技能よりも周囲の人々とのかかわりを充実させることで主観的健康感が良好に維持できる可能性 が考えられた.
キーワード 主観的健康感,情緒的サポート,孤独感,要支援・要介護高齢者
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論文名 高齢者の閉じこもりをもたらす同居家族の関わりチェックリストの開発
著者名 山崎幸子,藺牟田洋美,増井幸恵,安村誠司
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,39(3):352 - 364,2017
抄録 閉じこもりをもたらす同居家族の関わりチェックリストを開発することを目的とした.閉じこもり高 齢者とその同居家族への予備調査から15 項目を収集した.本調査は2014 年4 月,福島県C 村在住で70 歳以上の要介護認定を受けていない高齢者1,229 人とその同居家族を対象とした.調査内容は,高齢者 本人には,性,年齢,外出頻度,うつ傾向,生活体力指標,老研式活動能力指標,ソーシャル・サポー ト等,同居家族には,予備調査で作成した家族の関わりチェックリスト素案,性,年齢,精神的健康状 態(WHO-5)をたずねた.2015 年9 月,高齢者本人に対し閉じこもりの発生の有無を追跡調査した. 最終的な分析対象者は497 人であった.新規閉じこもりの有無と家族の関わりチェックリスト素案15 項目の関連について,基準関連的手法による項目分析により6 項目を選定し,閉じこもりをもたらしや すい家族の関わりチェックリストを作成した(α= 0.63).ソーシャル・サポート,WHO-5 等との関 連から併存的妥当性を確認した.また,本チェックリストのカットオフポイントを超える場合には,そ の他の要因と比しても約1 年半後の閉じこもり発生が高いことを確認した.
キーワード 閉じこもり,外出頻度,介護予防,地域高齢者
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論文名 百寿者にとっての幸福感の構成要素
著者名 安元佐織,権藤恭之,中川 威,増井幸恵
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,39(3):365 - 373,2017
抄録 本研究は,諸機能の喪失を経て幸福感の概念が変化し得ると考えられる百寿者にとっての幸福感の概念 の構成要素を記述することを目的とした.13 人の百寿者の語りを分析した結果,「前向きな気持ちで生きる こと」「制限のなかで生きること」「他者とのよい関係を築くこと」「人生の充足感を感じること」「あるが ままの状態を受け入れること」の5 つのカテゴリーが,百寿者の幸福感を理解するために重要な概念の構成 要素であることがわかった.そして,百寿者にとっての幸福感は,さまざまな喪失( 身体機能の低下,社会 的地位の喪失,他者との交流頻度の低下)に直面し,制限が多い生活のなかでポジティブな感情を自ら生み 出す適応的な姿勢から生じることが示唆された.百寿者の幸福感の概念は,従来の幸福感の概念と老年的 超越とを比較検討することで理解が深まると考えられる.
キーワード 百寿者,超高齢者,幸福感,質的研究,老年的超越
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