→English 最新更新日:2016年10月31日

日本老年社会科学会  Japan Socio-Gerontological Society

最新刊案内:老年社会科学 2016.10 Vol.38-3
論文名 準市場・訪問介護サービスにおける非営利・営利事業者の行動比較
著者名 金谷信子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,38(3):297 - 307,2016
抄録 準市場化された介護保険サービスには,現在,営利・非営利の多様な事業者が参入している.新規参入が著しいサービスは訪問介護で,2014年時点の営利法人の事業者割合は64%に上る.一方,社会福祉法人,社会福祉協議会,医療法人やNPO 法人などの非営利法人もしのぎを削っている.こうしたなか本来の目的が異なる営利・非営利事業者の行動の差異に関しては十分解明が進んでいない.
このため本報告では「介護サービス情報公表システム」の個票データを利用して,経営主体別の事業者の経営実態( 事業規模・内容および雇用者・利用者の特性など)を比較し,@準市場における利用者 選別などのクリーム・スキミングの可能性,Aクリーム・スキミングが事業規模に与える影響を,サービスの利便性やサービスの質などを考慮したうえで分析した.その結果,営利法人にはクリーム・スキ ミング志向の行動が部分的に観察された.
キーワード 介護保険制度,訪問介護,準市場,非営利事業者,クリーム・スキミング
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論文名 若者における高齢者虐待の認識度と 高齢者への態度との関連 ― 虐待の背景に着目して ―
著者名 豊島 彩,田渕 恵,佐藤眞一
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,38(3):308 - 318,2016
抄録  本研究は,専門的知識のない一般的集団として学生を対象に,高齢者虐待に関する認識と高齢者に対する顕在的態度および潜在的態度との関連性の検討を行うことを目的とした.虐待行為そのものを示す項目と,虐待発生の前提条件を加えた項目を含めた高齢者虐待観尺度を作成し,学生49 人を対象として質問紙による顕在的態度と潜在連合テスト(IAT)による潜在的態度の測定を行った.高齢者に対する態度を独立変数,各虐待観尺度の得点を従属変数とした重回帰分析の結果,身体的虐待と心理的虐待の一部の項目において,顕在的態度が肯定的であることが虐待の認識の高さと有意に関連していた.心理的虐待では,前提条件があることで認識度が高まる項目において,潜在的態度が肯定的であることが虐待の認識の高さと有意に関連していた.本研究の結果から,虐待発生の前提条件がある項目の認識に関して,潜在的態度と顕在的態度の両方が虐待の認識に影響を与えていることが明らかになった./td>
キーワード 高齢者虐待,高齢者に対する態度,潜在連合テスト,虐待観尺度
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論文名 高齢者の電子メールおよびインターネット利用に関連する要因
著者名 深谷太郎,小林江里香,杉澤秀博,Jersey Liang,秋山弘子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,38(3):319 - 328,2016
抄録 本研究は,日本の代表性あるサンプルを用い,現在の高齢者の電子メール( 以下E メール)およびインターネット( 以下ネット)の利用状況と個人属性や社会関係との関連を探ることを目的とした.  月1 回以上の利用をもって利用と定義したところ,E メールとネットの利用はそれぞれ33.8%,23.4%であった.
両者の利用要因を探るため,多変量ロジスティック回帰分析を行ったところ,年齢が若い,就学年数が長い,夫婦年収が500 万円以上であるほど,両者を利用していた.性別では男性はネット,女性はE メールの利用が多かった.社会関係については,友人・近隣数が多いとE メールの利用が増え,若年同居者がいると ネットの利用が減っていた.
メディアの進化や初めて接した年齢の違いなどで,今後も同様の傾向が示されるとは限らないが,E メールやネットの利用は基本的な個人属性等に依拠する部分が大きい一方で,社会関係も一定の影響を与えていたことが示唆された.
キーワード 電子メール,インターネット,利用促進・阻害要因,ICT,高齢者
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論文名 過疎山村に住む高齢女性の社会関係 ― 岡山県鏡野町富地域の事例 ―
著者名 野邊政雄
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,38(3):45 - 56,2016
抄録 岡山県の富地域と岡山市で高齢女性にパーソナル・ネットワークに関する調査を実施した.両調査の データと比較することによって,次の3 点を明らかにした.@富地域の高齢女性は岡山市の高齢女性よりも多くの親族・近隣関係を取り結んでいたのに対し,後者は前者よりも多くの友人関係を持っていた.そして,両地域の高齢女性はほとんど職場仲間関係を保有していなかった.パーソナル・ネットワークの規模は富地域の高齢女性のほうが岡山市の高齢女性よりも大きかった.A富地域の高齢女性は岡山市の高齢女性よりもいずれかの他者にソーシャル・サポートを期待できる傾向があった.B富地域の高齢女性が子ども( 夫婦)と同居していなくとも,少なくとも1 人の子ども( 夫婦)は近くに居住していることが多かった.そうした子どものサポートのおかげで,高齢女性は子ども( 夫婦)と同居していなくとも富地域に住み続けることができた.
キーワード 社会関係,ソーシャル・サポート,高齢女性,山村
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論文名 高齢者の社会関係における世代的・時代的変化 ― 全国高齢者の長期縦断研究から ―
著者名 小林江里香
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,38(3):337 - 344,2016
抄録  全国高齢者の長期縦断調査(1987 ?2012 年)を用いた3 研究の分析結果に基づき,日本の高齢者において,@社会関係の多寡,A社会関係の加齢変化,B life satisfaction(LS)にとって重要な社会関係が,出生コホートや調査年によりどのように異なるかを検討した.その結果,@男性では最近の高齢者ほど社会関係が縮小して男女差が拡大しており,高度経済成長期に進んだ性別役割分業や,女性の高学歴化 などの影響が示唆された.また,Aグループ参加の加齢変化にはコホート差がみられ,B女性では,子どもと同居する人ほどLS が高いという関係が最近のコホートでは消失し,友人等との交流とLS との関連が強まっている傾向が示された.今後の注目点としては,ライフコースが変化するなかで,高齢期の社会関係の男女差にも変化があるか,家族の変容と「同居」概念の問題,ICT 普及が高齢者の社会関係に与える影響の3 点が挙げられる.
キーワード 社会的ネットワーク,出生コホート,加齢変化,時代効果,生活満足度
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論文名 高齢者が日常生活において交流している他者との関係 ― その分類と把握 ―
著者名 古谷野亘,澤岡詩野,菅原育子,西村昌記
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,38(3):345 - 350,2016
抄録 高齢者が日常生活において交流している他者を網羅的に把握し,分類する方法について検討し,概念的な整理と小規模なパイロット・スタディを行った.高齢者が日常的に交流している親族以外の他者には「目的内関係の他者」「場を共有する他者」「とくに親密な他者( 友人)」の3 つのタイプがあると考えられる.「目的内関係の他者」とは役割関係にある他者であり,「場を共有する他者」とは特定の場所あるいは場面を共有している他者である.「とくに親密な他者( 友人)」は,ほとんどが「目的内関係の他者」「場を共有する他者」として知り合ったあと,何らかの経緯を経て一定水準以上の親しさを有するに至った他者である.65 ?74 歳の男女各33 人の協力を得て,3 日間にあいさつ以上の交流をした他者をすべて記録してもらい,分類したところ,「目的内関係の他者」がもっとも多く,「場を共有する他者」がそれに次いだ.他方,「とくに親密な他者( 友人)」の割合は低く,このタイプの他者と交流する機会は, 日常的には多くないことが示唆された.今後はより大規模なデータの収集と分析が求められる.
キーワード 社会関係,交流,日常生活
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論文名 高齢者の社会とのつながりと健康およびwell-beingへの経路
著者名 菅原 育子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,38(3):351 - 356,2016
抄録 社会とのつながりは,さまざまな健康およびwell-being の指標と関連し生死にも影響することがこれまでの研究で明らかになっている.本稿では社会とのつながりを「社会関係」と「社会参加」という2 つの側面で整理し,またそれらが複数の経路をたどって心身の健康を左右するというプロセスモデルを概観した.ソーシャルサポート以外の経路に関する実証研究が乏しく,コンパニオンシップやネガティブな関係性,さらに社会参加が健康に影響するメカニズムに関する実証研究が求められる.社会とのつながりが健康に影響するプロセスは生涯にわたるものであるが,ライフコースの視点を含んだ理論や実証研究は限られてきた.高齢者の健康にとって重要な社会とのつながりとはなにかを明らかにし,適切な支援や介入の あり方を示すためにも,社会とのつながりと健康の研究にライフコースの視点を取り込むことが求められる.
キーワード 社会参加,社会関係,ソーシャル・サポート,well-being
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論文名 地域におけるアクションリサーチへの期待
著者名 田中元基,大橋靖史
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,38(3):357 - 363,2016
抄録 これまでの実証研究は,地域の課題解決のためにあまり役立っていないとの懸念から,研究者も問題を抱える当事者と協働で課題解決に取り組むアクションリサーチが注目されている.本論では,まず従前の質的な事例研究や実践報告とアクションリサーチの違いを説明することにより,アクションリサーチの意図する研究の方向性について整理した.次に,アクションリサーチでは,活動のプロセス評価が重要であるが,活動のプロセスを「見える化」するための技法としてのトライアンギュレーションについてふれた. そして,地域を基盤としたアクションリサーチにかかわる3 つの論文を取り上げ,研究の妥当性の基準との兼ね合いからプロセス評価の進め方について論じた.最後に,アクションリサーチが住民の主体的活動を促す方法でもあることを強調した.今後の地域における住民主体の健康づくりや介護予防事業の進展のためにはアクションリサーチによる研究の蓄積が必須である.
キーワード 参加型研究,プロセス評価,トライアンギュレーション,住民の主体的活動
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論文名 自分ではかる,地域高齢者の体力測定の意義
著者名 植木 章三
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学,38(3):364 - 369,2016
抄録  地域高齢者の介護予防を推進するためには,運動習慣の定着が有効であることは周知のことであるが,その多くは習慣化に至らない.また,習慣化に至った地域高齢者においても,老化に伴う体力低下を自覚 できないまま,現状にそぐわない運動プログラムを継続する可能性もある.そのためには,定期的な体力水準の把握が有効と考えられるが,高齢期の体力低下は,本人の気づきが遅れる場合も少なくない.自身の体力の状況をいち早く把握するためには,年1回の健診や体力測定では,虚弱ハイリスク者の「早期発見」にはつながらない.そのために,お風呂場にある体重計の如く,いつでも,気が向いたときに「はかる」ことができる身近な測定方法の提案が必須と考える.本稿では,これまでに高齢者の体力測定で採用されてきた測定項目を振り返り,高齢者の体力測定の意義を考察したうえで,「自分ではかる」体力測定項目の必要性について言及した.
キーワード 地域高齢者,介護予防,体力測定,虚弱,早期発見
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