論文名 | 訪問介護のアウトカム評価に関するシステマティックレビュー |
著者名 | 鳩間亜紀子 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,37(3):295 ? 305,2015 |
抄録 | 訪問介護に求められる効果や満足などのアウトカム,測定方法,関連要因を系統的に明らかにするこ とを目的とした.医中誌Web,メディカルオンラインによるデータベース検索とハンドサーチにより, 2000 ? 2014 年までに発表された訪問介護の効果や満足等に関する論文を収集した.採択基準にした がって選定された13 件について検討した.訪問介護の評価に焦点を当てたものは5 件に限定され,いず れも満足度を測定するものだった.縦断的研究におけるアウトカム測定について追跡期間に2 か月? 4 年のばらつきがみられた.アウトカム指標として,ADL / IADL,認知症,意欲,介護負担感等に関す る尺度や項目を複数用いている研究が多かった.アウトカムとの関連が認められた要因として,訪問介 護の内容( 身体介護/生活援助の別),要介護度,訪問介護員の技術,担当頻度等の状況,回答者の別が 明らかにされていた. |
キーワード | 訪問介護,アウトカム,システマティックレビュー |
論文名 | 都市高齢者の近隣との関わり方と支え合いへの意識 ― 非常時と日常における近隣への意識に着目して ― |
著者名 | 澤岡詩野,渡邉大輔,中島民恵子,大上真一 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,37(3):306 ? 315,2015 |
抄録 | 本研究は,都市高齢者の非常時( 災害時など)と日常における近隣との支え合いへの意識と,近隣と の関わり方との関連を明らかにすることを目的とした.横浜市に居住する65 歳以上の市民のうち,住 民基本台帳より無作為に抽出された2,800 人に対し,郵送法による自記式アンケート調査を実施した. このうち,分析に用いる変数に欠損のない1,477 人を対象に分析を行った結果,@あいさつやサポート の授受など,かかわる近隣の他者のいない人は男性で多いこと,A男性の近隣との支え合いへの意識は, 非常時では家族資源の存在が,日常では社会経済状況が影響を及ぼすこと,Bあいさつをときどきする, 町内会・自治会活動に年数回程度の参加でも,近隣との支え合いへの意識を高めていることが示された. 都市部の高齢者が支え合う地域社会のあり方を考えるうえで,これらの弱いかかわりにも目を向けてい くことが必要である. |
キーワード | 近隣,支え合い,都市高齢者,日常的交流,社会参加 |
論文名 | 介護老人保健施設における看護職の役割定義の活動の特徴 ─ 看護職と介護職との相互行為に焦点づけて ─ |
著者名 | 山田 千春 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,37(3):316 ? 324,2015 |
抄録 | 目的:介護老人保健施設( 以下,老健施設)における看護職の役割定義の活動の特徴を明らかにすること.
方法:老健施設に就業した経験のある看護職10 人と介護職13 人に「看護職の役割」について半構造化イ ンタビューを行った.その語りを質的記述的研究方法により分析し,それぞれの職種が協働するなかでと らえる「看護職の役割」を抽出し,比較した. 結果:看護職が認識している役割として4 カテゴリと14 サブカテゴリ,介護職が看護職に期待している 役割として4 カテゴリと12 サブカテゴリが抽出された. 結論:@看護職の役割定義の活動では,高齢者や家族,他職種,過去の病院経験での役割定義をもつ自分 など「他者」との関係をとおして,老健施設における看護職の役割を再定義していた.A日常生活援助につ いての看護職の役割定義では,看護職と介護職でその認識にズレがみられた.B医療に関する看護職の役 割定義では,病院の医療と老健施設の医療の認識にズレがみられた. |
キーワード | 介護老人保健施設,看護職の役割定義の活動,介護職,役割期待,高齢者 |
論文名 | 「叡智」研究の動向と新しいパラダイム |
著者名 | Masami Takahashi |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,37(3 ):325 ?333,2015 |
抄録 | Wisdom は,通常「叡智」や「知恵」などと翻訳されており( 以下,叡智),ベルリンのマックス・プラ ンク研究所においてバルテスらが進めてきたプロジェクトをはじめ欧米諸国ではさまざまな研究が行われ てきている.一方日本の老年学や発達心理学の分野では,このベルリン・パラダイムに沿った数件の実証 研究1)があるだけで,未開発の分野といえるのではないだろうか.そこで,本稿では,今後日本において「叡 智」研究が発展するためにも,同概念のこれまでの成り行きと研究分野全体の現状,そして今後の動向に ついて考察する.さらに新しい見地からの定義づけ,アセスメントの新しい判断基準などの検討が常に望 まれているなか,より包括的な方向性を保つためにも独自の発達的パラダイムを提唱する.これによって 古代から存在するものの,社会科学においては新しい分野となる叡智に一石を投じ得れば幸いである. |
キーワード | 叡智,知的考古学,潜在的意味論,包括的発達パラダイム,手段/ 表現 |
論文名 | 認知症にやさしい町づくりを目指して -認知症フレンドシップクラブの取り組み- |
著者名 | 井出 訓 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,37(3 ):334 ? 340,2015 |
抄録 | オレンジプランをはじめとし,「認知症になっても安心して暮らしていける町」や「認知症にやさしい町」 の構築が,今後の認知症対策のひとつとして語られることも少なくない.認知症になったときの自らの暮 らしを考えるとき,住み慣れた地域で安心して認知症と生きることができることは,とても重要なことで はある.しかし同時に,それが一体どのような町であり,だれがどのように築いていくのかに関する議論は, いまだ尽くされたとは言いがたい.むしろ,目標が定められはしたものの,はたしてわれわれはなにをす ればいいのかと置き去り感に抱かれている人も少なくはないだろうか.認知症フレンドシップクラブは, 認知症になっても安心して暮らしていける「認知症にやさしい町」づくりを目指し活動を続けている団体 であり,率先して議論の場に立つべき責務があると考えている.今回は当団体がなにを考え,なにを目指し, またなにをなそうとするのかを,町づくりという視点からまとめた. |
キーワード | 認知症,町づくり,健康生成論,指標,フレンドシップクラブ |
論文名 | 介護職員の離職を考える -メンタルヘルスと人材育成の視点から- |
著者名 | 小野寺 敦志 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,37(3):341?346,2015 |
抄録 | 本論は,介護職員の離職について先行研究を概観しつつ,メンタルヘルスと人材育成との関連から論じ た.介護職員の離職研究は,介護現場の職員への調査研究が多く,そのため実際の離職状況ではなく「離 職意向」に焦点を当てた研究が大半を占めていた.離職の要因として,賃金の低さが指摘されている.そ の点に関しては,男女や年代によって異なる現状があることを示し,一概に賃金の低さだけで離職の問題 を考えるのではなく,ほかの要因からも検討する必要性を指摘した.離職とメンタルヘルスならびに人材 育成との関連については,職場環境のあり方をストレッサーとしての側面と,職員のやりがいやコミット メントといった人材育成の側面から指摘した.そして,メンタルヘルス対策や人材育成の取り組みの必要 性を示唆し,研究者が前向き研究によって,離職率の低下に寄与するか否かを明らかにする必要性を指摘 した. |
キーワード | 介護職員の離職,メンタルヘルス,人材育成,職場環境 |
論文名 | 療養場所移動時におけるケアの質確保への取り組み |
著者名 | 石崎 達郎 |
雑誌名 巻/号/頁/年 |
老年社会科学,37(3):347? 352,2015 |
抄録 | 要介護高齢者は,療養場所を移動することがしばしば発生する.療養場所を移動する前後の時期は移行 期とよばれ,この時期にさまざまなトラブルが生じやすい.移行期におけるケアの質を確保するプログラ ムが欧米で導入されているが,わが国では包括的な移行期ケアプログラムは確立していない.わが国で要 介護高齢者の退院時の移行期ケアプログラムを開発する場合,その主な内容は,退院前は,@病棟訪問, A入院医療に関する情報収集,B退院後に必要となる療養体制の整備,退院後は,C退院後の療養生活の 評価と調整,D訪問指導,と考えられる.さらに,Eケアマネジャーとの情報交換とF医療・介護サービ ス提供者との意見交換は,移行期全体を通じて必要となろう.移行期における医療・介護の連携がより進 展するためにも,わが国の制度・環境に適した移行期ケアプログラムの開発とその導入が必要である. |
キーワード | 要介護高齢者,長期ケア,移行期ケア,連携 |