→English 最新更新日:2015年12月1日

日本老年社会科学会  Japan Socio-Gerontological Society

最新刊案内:老年社会科学 2015.4 Vol.37-1
論文名 コメディカル学生の高齢者に対する態度尺度の作成と信頼性・妥当性の検討
著者名 宮本礼子,ボンジェ ペイター,須山夏加,小林法一
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 37(1):3-16,2015
抄録 高齢者支援のなかでも,中長期的に生活支援を行うコメディカルスタッフや学生の高齢者観は,支援 姿勢に影響を及ぼす.またコメディカル学生の高齢者への態度変容は,その後のキャリア選択にも関与 する.だがコメディカル学生を対象とし,時代に合った高齢者観をもとに作成された尺度は,国内で報 告がない.本研究では,海外で作成されたUCLA-GAS を参考にコメディカル学生の高齢者に対する態 度尺度を作成し,その信頼性妥当性を検討した.
翻訳の検討により表面的妥当性を確保し,探索的因子分析を実施した結果,この尺度は10 項目4 因子 構造であることが推察された.検証的因子分析では9 項目が採用され,適合度指標はχ2 値= 19.16(p = 0.58 > 0.05,df = 21),GFI = 0.97,AGFI = 0.93,CFI = 1.00,RMSEA = 0.00 で,構成概念妥当性 は高いことがわかった.またCronbach α= 0.74 で一定の信頼性が確認された.
キーワード コメディカル学生,高齢者に対する態度尺度,信頼性,妥当性,Dual Panel Methodologies
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論文名 生きがい就業を支えるシルバー人材センターのシステム
著者名 石橋智昭
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 37(1):17-21,2015
抄録 シルバー人材センターは,生きがいを充足する手段として就業を望む高齢者に仕事の機会を提供するシステムである.法制化されたこのシステムは,その公共的な性格から扱える仕事の内容や組織運営に制約が課される一方で,互助と共働に基づく自主的な会員組織として地域に定着しており,異なる側面を抱えながら機能している.
これまでの30 年間で,シルバー人材センターは飛躍的な増大をみせたが,近年は会員数,契約金額ともに減少傾向にあり,事業の停滞に直面している.生きがい就業の理念を守りつつ社会環境の変化にどう対応するか,そのシステムの再構築を迫られている.
高齢者の人材活用と社会的包摂という2 つの側面をもつシルバー人材センターの重要性は今後さらに増すと考えられ,老年学には学際的なアプローチからその有用性を解明する研究が求められる.
キーワード シルバー人材センター,就労,生きがい,社会参加,プロダクティビティー
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論文名 超高齢社会における地方都市の街づくり
著者名 大橋美幸
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 37(1):22-27,2015
抄録 サービス施設にはスーパー等の日常生活を送るために必要不可欠な必需的サービス施設と,百貨店や家電量販店等の生活や余暇をより快適で潤いのあるものにするための選択的サービス施設がある.人口減少過程において地方都市で維持がむずかしくなりがちな選択的サービスが高齢者の高頻度利用によって支えられている.選択的サービス施設が空いている時間帯,日中昼間に地元高齢者の行く場・居場所となっているのである.北海道函館市において,大型ショッピングセンター,競馬場・競輪場,アリーナにおける高齢者利用の状況を紹介した.今後,後期高齢者の増加等の課題があるが,選択的サービス施設を送迎と介助付きで利用し,健康状態に配慮した食事が提供され,独自のプログラムが実施される形態はすでに存在しており,普遍化が期待される.
キーワード 超高齢社会,人口減少,地方都市,余暇,飲食店
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論文名 地域包括ケアシステムの確立に向けて
著者名 白澤政和
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 37(1):28-35,2015
抄録 地域包括ケアシステムの確立が求められているが,その確立に向けて核となる実施すべきことを示すことが重要である.地域包括ケアシステムには,在宅で支援が困難な人々であっても地域で継続して生活することができる工夫がなされ,同時に,地域の人々が生活を継続するうえで必要とされる新たなサービスやサポートが開発される仕組みが必要である.ここではこれらを実現するために,支援困難事例を検討する地域ケア個別会議と,地域ニーズを検討・充足していく地域ケア推進会議を,連続性のあるものとして実施することの重要性とそれらの方法について示すことにある.さらに,こうした2 つの地域ケア会議と地域の団体・機関によるネットワークづくりの関係について整理する.
キーワード 地域包括ケアシステム,地域包括支援センター,介護支援専門員,地域ケア個別会議,地域ケア推進 会議
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論文名 一人暮らし高齢者の地域での生活における安全の確保
著者名 工藤 禎子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 37(1):36-41,2015
抄録  一人暮らし高齢者の地域での生活の安全を脅かす主要な要素は,健康上の問題,将来の要介護の不安,認知症,犯罪,災害などである.一人暮らし高齢者の生活における安全確保について,自助,安全を支援するシステム,共助としての近隣関係という視点から先行研究を概観した.自助として,一人暮らし高齢者は状況を受け入れ,自律的に体調や生活の管理を行っている.安全を支援するシステムには,機器を使うものと人的資源によるものがあり,利用割合と意向にずれがみられ,有効な方略が求められている.共助としての近隣関係の構築は,通常の近所付き合いや,介護予防活動とも一連のものである.一人暮らし高齢者の在宅死の事例から,住民参加型の地域活動が,高齢者が最期まで暮らせる地域づくりへとつながっていることを示した.一人暮らし高齢者の地域での生活における安全の確保のための自助,共助,公助などを紡ぐ支援が重要である.
キーワード 一人暮らし高齢者,安全,見守り,共助,ソーシャル・ネットワーク
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論文名 介護は現代社会にとって最も重要な課題である
著者名 大和三重
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 37(1):42-47,2015
抄録  団塊の世代が75 歳以上になる2025 年には現在よりさらに100 人近くの人材が必要となり,介護人材不足はいまや深刻な社会問題となっている.この人材不足問題に本気で取り組むには次の3 点が重要と考えられる.第一に,教育・研修の充実である.賃金の改善は必要であるが,それだけでは不十分であり,知識・技術の修得や価値観の共有等を教育・研修で確かなものにする必要がある.第二に,適切な評価である.日常業務における上司や施設長からの評価だけでなく,介護という職業に対する社会的評価を含む.第三に,自分のこととして考える社会をつくる.介護人材不足は他人事ではない.人材不足の解消を安易に外国人労働者の技能実習生受け入れという形で済ませず,真剣に議論する必要がある.介護人材の定着には介護職の社会的地位の向上が重要であり,そのためには世代を超えてあらゆる分野の知恵を集結して取り組む必要がある.
キーワード 介護職員,人材不足,定着促進,教育・研修,評価
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論文名 高齢者の病と障害の体験からのリカバリー
著者名 粟生田友子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 37(1):48-56,2015
抄録  病や障害の体験からの高齢者のリカバリーには,肉体の加齢現象によって失ったエネルギーを賦活していくことが必要である.病や障害を体験することは,高齢者にとってエネルギーを喪失し,感情の落ち込み現象を生じ,理想自己とのギャップをもたらす.先行研究では,脳卒中者の回復過程においては,賦活していく過程が当事者の視点で描かれているが,臨床の現場でみていると,高齢者1 人ひとりのリカバリーの過程では,とても小さなエピソードがエネルギーを得ていくきっかけになることもある.
 再び力を取り戻すには,リハビリテーションのなかで高齢者の社会化が織り込まれることも必要であり,高齢者が生きてきた人生を折り返し,存在の回復をどう果たすかが問われてくる.
キーワード リカバリー,高齢者,病と障害,エネルギーの賦活,存在の回復
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論文名 高齢者の自殺および自殺予防対策
著者名 藤田幸司
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 37(1):57-63,2015
抄録  近年,わが国の自殺者は減少しているが,高齢者の自殺死亡率は横ばい,もしくは漸減傾向であり,高齢化の影響により高齢者の自殺者数自体は増加傾向にある.そして,高齢者の自殺予防対策は他の年代と異なった高齢期特有のリスクを十分に考慮する必要がある.本稿では,高齢者の自殺の動向を概観したうえで,高齢期に特有のリスク因子についてとくに心理社会的側面から再考した.高齢者の自殺予防対策でも,うつ病をはじめとする精神疾患の早期発見とケアとともにその一次予防的対策が重要であるが,さまざまな社会的支援が心理的危機に直面した高齢者にはとくに有効であり,そのためにも地域の絆,ソーシャル・キャピタルの醸成を目指した地域づくり,地域社会の再構築が求められる.
キーワード 自殺,うつ病,喪失体験,社会的孤立,ソーシャル・キャピタル
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