→English 最新更新日:2015年3月9日

日本老年社会科学会  Japan Socio-Gerontological Society

最新刊案内:老年社会科学 2015.4 Vol.37-1
論文名 コメディカル学生の高齢者に対する態度尺度の作成と信頼性・妥当性の検討
著者名 宮本礼子,ボンジェ ペイター,須山夏加,小林法一
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 37(1):3-16,2015
抄録 高齢者支援のなかでも,中長期的に生活支援を行うコメディカルスタッフや学生の高齢者観は,支援 姿勢に影響を及ぼす.またコメディカル学生の高齢者への態度変容は,その後のキャリア選択にも関与 する.だがコメディカル学生を対象とし,時代に合った高齢者観をもとに作成された尺度は,国内で報 告がない.本研究では,海外で作成されたUCLA-GAS を参考にコメディカル学生の高齢者に対する態 度尺度を作成し,その信頼性妥当性を検討した.
 翻訳の検討により表面的妥当性を確保し,探索的因子分析を実施した結果,この尺度は10 項目4 因子 構造であることが推察された.検証的因子分析では9 項目が採用され,適合度指標はχ2 値= 19.16(p = 0.58 > 0.05,df = 21),GFI = 0.97,AGFI = 0.93,CFI = 1.00,RMSEA = 0.00 で,構成概念妥当性 は高いことがわかった.またCronbach α= 0.74 で一定の信頼性が確認された.
キーワード コメディカル学生,高齢者に対する態度尺度,信頼性,妥当性,Dual Panel Methodologies
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論文名 介護施設における要介護高齢者への倫理的配慮の現状と課題 ─ 介護職員と介護実習生に対する調査から ─
著者名 横山さつき
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 36(4):409-422,2015/td>
抄録 [目的]介護職員の要介護高齢者に対する倫理的配慮の現状と課題を明らかにし,倫理観の醸成教育に資 する.[方法]184 施設199 人の介護職員に対して,倫理的配慮状況を把握するための6 カテゴリー12 サブ カテゴリー32 コードから成る自己評価票を用いての質問紙調査を行った.加えて,76 人の介護実習生に対 して,実習で体験した倫理的ジレンマを抽出するための自由記述による質問紙調査を行った.[ 結果]介護 実習生の自由記述からは41 コードの倫理的ジレンマが抽出され,介護職員の倫理的配慮度が低いにもかか わらず介護実習生がジレンマとして認識していないサブカテゴリーとして「組織的管理による個人情報の 保護」「プライバシーに配慮した排泄介助」「同性介護による心理的負担の軽減」が見いだされた.[ 結論] 学習者の倫理性の高いケア実践に対する認識や知識の状況を踏まえたうえで,自己覚知を促し倫理的感性 を磨く教育方法を工夫する必要がある.併せて,倫理的配慮のあるケアを遂行し得る高度な専門知識・技 術を修得できる教育プログラムを構築する必要がある.
キーワード 要介護高齢者,介護職員,介護実習生,倫理的配慮,倫理教育
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論文名 日本の高齢者の社会参加は進んだか -高頻度参加層の拡大と非参加層の縮小の視点から-
著者名 小林 江里香
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 36(4):423-432,2015
抄録 高齢者の社会参加の向上について,高頻度で参加する「高参加者」割合の拡大と,活動にまったく参加 しない「非参加者」割合の縮小の観点から検討した.無作為抽出された60 歳以上の対象を分析可能な3 つ の全国調査データにより,1980 年代後半以降の変化を分析した結果,@友人等との私的な交流とAグルー プ参加については,高参加層の拡大,非参加層の縮小ともみられず,個人属性によってはむしろ逆方向の 変化を示していた.Bボランティア活動については,高参加層の拡大は示唆されたが,非参加層は縮小し ておらず,C趣味・学習を含む自主的活動のみ,高参加層の拡大と非参加層の縮小が示された.社会参加 から取り残されている高齢者( 非参加層)への対応は依然として課題である.
キーワード 社会参加,グループ活動,ボランティア,趣味・学習活動,時系列変化
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論文名 要介護高齢者の貧困と社会的排除
著者名 和気 純子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 36(4):433-438,2015
抄録 介護保険法施行以後,民間事業者の参入によってサービスの基盤整備が進められている一方で,要介護 貧困高齢者が住み慣れた地域や法的な介護サービスから排除される事態が生じている.本稿では,社会の 無縁化や介護の市場化を背景に深刻化する要介護高齢者の貧困と社会的排除の論理とプロセスについて, 筆者らが東京都生活福祉部と連携して行った研究結果や先行研究を参照しながら論及した.2015 年から は,介護保険法の改正により予防給付の一部が市町村の実施する地域支援事業に移行する.介護予防サー ビスの非保険化によって社会的支援の脆弱な貧困高齢者のいっそうの孤立やサービスの無理な利用抑制が 生じないよう,格差にかかわらず多様な人々を包摂する地域包括ケアが構築される必要がある.
キーワード 要介護高齢者,貧困,社会的排除,市場化,地域包括ケア
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論文名 「エイジング・イン・プレイス」と「住まいとケアの分離」 -「地域包括ケア」への示唆-
著者名 松岡 洋子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 36(4):439-445,2015
抄録 日本においては「地域包括ケア」が推進され,サービス付き高齢者向け住宅が整備されて,定期巡回・ 随時対応型訪問介護看護サービスも遅々とした速度ではあるが堅実に広がり始めている.一方で世界に目 をやれば,1990 年代より「エイジング・イン・プレイス( 地域居住)」が大きな潮流を形成し,いまに至っ ている.
 本稿では,エイジング・イン・プレイス概念誕生の歴史を探りつつ定義を明らかにし,「住まいとケア の分離」に関する論考にも触れながら,「地域包括ケア」を支える日本の基幹サービスについて考察する ことを目的としたい.
キーワード エイジング・イン・プレイス,住まいとケアの分離,地域包括ケア,サービス付き高齢者向け住宅, 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
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論文名 ハワイ州における日系高齢者の長期ケアの現状と課題
著者名 石川 久展
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 36(4):446-454,2014
抄録  本稿では,アメリカ・ハワイ州オアフ島における日系高齢者を対象とした長期ケアの現状と課題につい て検討することを目的とした.まず,ハワイ州全体の高齢化と日系人の高齢化の現状を人口データ等から 把握し,次に,連邦政府レベルおよび州政府レベルの高齢者に対する長期ケアプログラムのシステムを概 観した.それらを踏まえたうえで,オアフ島においては,現在,日系高齢者を対象とした長期ケアのニー ズは高いとは考えられるが,現実的には日系人に対するケアサービスはほとんど提供されていないことが わかった.そして,実際にオアフ島において日系高齢者を対象とした長期ケアを提供するためには,その 背景にさまざまな課題が存在しており,本稿ではそのなかでも3 つにポイントに絞り,それらについて検 討を試みた.オアフ島では,今後,日本からのケアニーズのある高齢者の旅行者の増加も含めて,日本人 や日系人を対象とし,日本食や日本文化,そして日本語による長期ケアのニーズがいっそう高まると予測 されるが,それらのケアサービスの充実が必要である.
キーワード 日系高齢者,長期ケア,オアフ島
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論文名 超高齢社会におけるフレイルとサルコペニア
著者名 鈴木 隆雄
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 36(4):455-462,2015
抄録 今後急増する後期高齢者の特徴のひとつとしてフレイルの顕在化を挙げることができる.これまで日本 では「虚弱」とされてきた状態であるが,これは老化に伴う種々の機能低下,すなわち予備能力の低下が 基盤にあり,健常な状態と機能障害(disability)との間にある,いわば移行状態とも考えられるが,その ためにさまざまな健康障害(adverse health outcomes)に対する虚弱性(vulnerability)が増加した状態で ある.このようなフレイルは,単に身体的要素だけではなく,精神的要素や社会的要素も含まれている. なかでも身体的要素のなかには昨今大きな問題となってきたロコモティブシンドローム( 運動器不安定 症),あるいはサルコぺニア( 加齢性筋肉量減少症)がその中心的コンポーネントとして含まれ,フレイル の予防対策には欠くことのできない重要な要素となっている.サルコぺニアについては筋力の測定方法や 定義そして診断のアルゴリズムなどが整備されてきている.
キーワード 超高齢社会,フレイル,サルコぺニア,定義,実態
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