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 世界に類をみない速さで進む日本の高齢社会に対し,現状の保健医療福祉は十分に対応できているとは言いがたい.また,高齢者の特徴を踏まえることなく,疾患や問題にばかり焦点を当て,当然存在するはずの高齢者の人権はなおざりにされているのが現状である.そこで団塊の世代が一気に高齢化を迎えようとしているいまこそ,高齢者に対する看護のありようの転換が必要となっている.成人看護の延長ではなく,老人看護独自の根拠をもった考え方や方法論を示していかなければならない.
 
 高齢者をひとりの人として包括的にとらえ,看護を提供していかなければならない.このような社会ニーズをうけ,老人看護専門看護師には,現場での活動を通してケアの有り様を提言し,老人看護ケアの質の保証に関するリーダーシップをとり,高齢者や家族のQOLの向上に貢献することが求められている.
 
 

 日本の高齢社会を考えたとき,老人看護専門看護師には非常に広範で多岐にわたる場での活動が必要になる.いずれの場においても,疾患や問題に焦点を当てた医学モデルの視点ではなく,高齢者をひとりの人としてとらえ,ケアを提供する方法を提言し,方向を修正していくことが重要となる.
 
 具体的には,通常の高齢者には,健康な状態での生活を維持するための予防的見地に立った活動や生活環境の整備,病んだ高齢者には,身体・こころの老化とせん妄や低栄養・褥瘡,脱水などに対する早期介入,早期回復が必要となる.また,いずれ訪れる別れが高齢者にとっても,家族にとっても納得のいくものとなるような終末期(緩和)ケアの確立を重要な役割としている.さらに,老人虐待に代表される高齢者への人権問題の対応も必要不可欠である.
 
 これらの役割に対して,高齢者個人や家族はもちろん,地域集団や関連組織,医療チームと関わりを保ちながら,1つひとつのケースとシステムの両面から働きかけていかなければならないと考えている.