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災害支援活動
長野県栄村では、東日本大震災の翌日、2011年3月12日震度6強の地震があり、大きな被害がでました。当時の被災の状況は、栄村ホームページをご覧ください。栄村は特に過疎化の進む地域であり、現在、高齢者の生活と健康についての問題が大きくなっております。  災害支援検討委員会の渡辺みどり委員より、被災高齢者のその後と、大学での支援活動についてご報告いただきました。
 
過疎・高齢化に直面しているわが国の中山間地域(里山・里海)における災害:高齢被災者の生活の様子概観と遠隔ケアシステムの導入について
2014/5/28
災害支援検討委員会委員
長野県看護大学 渡辺 みどり
 
[報告]過疎・高齢化に直面しているわが国の中山間地域(里山・里海)における災害.pdf
 

仮設住宅住民の支援を通じて
2014/5/28
災害支援検討委員会委員
宮城大学看護学部・大学院看護学研究科 小野幸子
 
私が所属する宮城大学では、震災直後より、主に南三陸、気仙沼、石巻等々の県内の被災地へ出向き、被災者やその支援者を対象とした支援として、教員・院生・学部学生など、3学部(事業構想学部・食産学部・看護学部)が組織的に、また各学部独自に、看護学内の看護学領域別に、あるいは個別に、被災地に出向いたボランティアを継続しております。老年看護学領域の教育・研究担当者4〜5名は、震災発生から約1ケ月後より、実習関連施設の要請により被災地にある特別養護老人ホームの看護師支援ボランティアを実施しました。
これを契機に、この施設が担当する仮設住宅の住民の方々の健康管理を目的に、学生ボランティアを募って、毎月、地区の研修所を借用して支援活動を行っています。具体的な支援内容は、健康チェックと健康相談、健康教育の講義や研修会、自分史作り、また、学生主体による様々なゲームや歌を取り入れた身体運動のための取り組み、さらに、年に数回ですが、仮設住宅の住民のみでなく地域住民も含めた、娘すずめサークルメンバーによる"すずめ踊り"の演舞などです。こうした取り組みを通じて、住民の方々による"民謡や自作の舞"の披露なども企画されるようになりました。
この地域はもともと高齢化率が高い(40%)こともあり、仮設住宅住民は、全ての方々が75歳以上の後期高齢者です。独居の方も少なくありません。このようなことから、この2年余りの間で、既存の高血圧症や心臓病などの悪化や関節の老化現象に伴う痛みや動きの制限の増悪などにより、入院治療を余儀なくされた方々、また、新たにがんを発症し、短期間のうちに亡くなられた方もいらっしゃいます。
ご存じのとおり仮設住宅は、広さ・温度の面など、四季を通じて居住するには過酷です。もともとの地域住民との関係がなく、住みにくさもあります。改善しつつあるとはいえ、食材や生活用品の入手、受診のための移動手段などでも、高齢者には大きな負担があります。
それでも、仮設住民同士で支え合い、力強く生活する姿がみられます。一方で、仮設住宅住民を含む地域の住民の方々を対象にした研修所で行われる行事*や私達の企画に参加されない仮設住宅の方々の中には、様々な喪失体験と日々の不自由な暮らし、未だ見通しが立たない今後の行方に対して、「なるようにしかならない」と諦めの心鏡がみられます。同時に、自分を鼓舞しつつも、喫煙量やアルコール量が増加し、このままでは早晩、健康破綻が生じると捉えられる高齢者がいます。体調不良を抱え医療の必要性を感じながらも、なかなか受診行動に繋がらない高齢者もいます。
毎月、出かけるたびに、様々な店や新築の家が建っており、町全体としては、確実に復興しつつあることを感じることができます。この3月から、仮設住民の方々の一部は復興住宅に移動しております。しかし、その数はまだまだ数える程度であり、今後の住まいの見通しが立っていない方々も少なくありません。復興住宅に移動する前に寿命が尽きるのではとないかと心配されます。また、復興住宅に移られた方々は住まいが保障されても、地域の人々との繋がりを新たに形成する必要があります。
復興しつつあるとはいえ、仮設住宅の高齢者、復興住宅に移動された高齢者のいずれも、依然として健康維持のための支援が必要な状況です。被災者の方々が、普通の生活を取り戻し、心身の状態に合わせてより健康的な生活が可能になるまでには、相当の年月を要するでしょう。「忘れないでほしい!」「また、来てね!」と訴える高齢者の方々です。「1名でも待っていて下さる方いれば、支援を続けていきましょう」と決意を新たにしているところです。
私たちの活動は、範囲も狭く、できることには限りがあります。多くの課題がある中で、被災地にある大学として、老年看護学会会員の皆様による支援の中継的な役割を担うことも期待されていると存じます。どのような支援をどのように継続していくか、共に考え、実践に繋げられたらと考えております。
*現在、開設当初は多くあった外部からのボランティアはほぼなくなりました。
 

被災地の現状報告
2013/1/31
災害支援検討委員会委員
岩手県立大学看護学部 千田睦美
 
被災地の2度目の冬は例年より寒い毎日が続いています。
先日、大船渡市と大槌町に行き、病院職員の方と事業所職員の方にお話を伺う機会がありました。被災地の復興は、地域のほとんどが津波の被害を受けてしまった自治体と、そうでない自治体とで進捗状況が異なる、と地域住民はみているようです。ソフト面、ハード面を含めた行政機能が被害にあった地域では、徐々にではありますが高齢者ケアのためのサービス事業所が地域に新しく展開し始めています。しかし新しく大きな法人がサービス事業所を複合的に展開することは難しく、また小規模事業所のみが増加しても事業所ごとの連携がなかなかスムーズにいかず、高齢者の生活をメッシュで守る体制にはなっていない、とのことでした。また、サービス事業所の数が増加しても、ケアの質を担保できる体制や職員の確保が大変難しいそうです。被災後は高齢者施設などのケア提供者の精神的な疲弊が大変目立ち、管理者は苦労しているとのことでした。自分の生活で手一杯な被災者がケア提供者となり同じ地域の被災者を支えるという状況は、地域の自力復興の根源になりうるとともに、脆さも孕んでいるように感じています。日本老年看護学会のような大きな学会がこれからの復興支援としてできることがあるとすれば、このような専門職への支援ではないかと思います。
さらに、被災から2度目の冬を迎えて、孤独の中で自死を選択する方が続いていると、大槌町にお住まいの方に聞きました。被災直後の混乱を生き抜いたのに、いつまで続くかわからない孤独や、先行きが見えない生活にどうしても耐えられなかった方。仮設住宅の孤独死を防ぐべくさまざまな取り組みがなされていますが、被災から一定の期間が経過した後に何が起こるのかを想定した取り組みが再検討される必要がありそうです。