※所属は開催当時

プログラム/Program

タイムテーブル/Timetable

第34回大会:プログラム /Program

6月8日(土)

シンポジウム
シンポジウム4
2019年6月8日 9:30~12:00 老年精神第1会場(大ホール2F/共通第18会場)
認知症初期集中支援チームがめざすべきことは何か
座長: 内海久美子 ( 砂川市立病院認知症疾患医療センター )
    前田  潔 ( 神戸学院大学総合リハビリテーション学部 )
演者: 鷲見 幸彦 ( 国立長寿医療研究センター )
    福田 智子 ( 砂川市立病院認知症疾患医療センター(砂川市認知症初期集中支援チーム) )
    北村 ゆり ( (医)鳴子会菜の花診療所 )
    長谷川典子 ( 神戸市保健福祉局高齢福祉部 )
    佐藤  恵 ( 佐藤クリニック )
1.わが国の認知症初期集中支援推進事業の現状と課題
鷲見幸彦(国立長寿医療研究センター)
 
 増加する認知症の人と家族を地域で支えるために,多職種で認知症の人に対応する仕組みがいくつか検討されてきた.その中で平成25年度からモデル事業がおこなわれ,平成27年から29年度で全国の市町村に整備されたのが,在宅の認知症の人を支える「認知症初期集中支援チーム」(以後初期集中支援チーム)である.初期集中支援チームの現状と課題について述べる.
 初期集中支援チームは認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)のなかで,認知症の人や家族の支援の柱として重要な機能として位置づけられている.このチームは医療介護の専門家がチームを形成し,待つのではなく,こちらから認知症の人を訪問し,相談に乗ったうえで医療や介護につなぐ.さらに継続的に医療介護につながっているかどうかをモニターするというしくみを全市町村につくるという点がこれまでになかった試みである.平成31年1月の時点で99.8%の市町村にチームが設置された.また平成30年度までに全市町村の97%がチーム員研修の受講を済ませており,活動を開始するために必要なチーム員はほぼ研修を修了できたと考えられる.これまでの報告では,初期集中支援チームの活動(設置の検討段階から実際の訪問支援に至る全体)は,単に認知症の本人・家族へのアウトリーチ活動の機能・効果にとどまらず,自治体にとっては,早期発見や医療・介護連携の体制づくりのツールやチームのマネジメントを通じたガバナンスの向上に利点がある. また,活動するチーム員にとっては,多職種連携の実践,個人のケア技術の向上につながり,地域にとっては,社会資源の連携の核としてのチームが地域住民を巻き込んだ認知症に優しい街づくりへと発展することが期待できる.課題としてはチーム員が集められない,サポート医がいない,といった人材確保の問題や,引継ぐための医療や介護施設がたりないという社会資源の不足,対象がなかなかみつけられない,従来の仕組みに上手に組み込めない,ことに地域包括との役割分担がうまくいかない,行政が丸投げでガバナンスが効いていないといった運用上の問題も多くあがっている.またチーム員のアセスメント力に差があるといった声もある.開始から6年目のチームから,平成30年4月から活動を開始したチームもあり,今後の継続的な教育,全国の成功事例,困難事例の集積が必要である.またチーム活動の適切な評価指標が求められる.
2.チームが目指すゴールはなにか?
福田智子,内海久美子(砂川市立病院認知症疾患医療センター(砂川市認知症初期集中支援チーム))
 
 新オレンジプランの具体的な施策のひとつとして,早期に認知症の鑑別診断が行われ,速やかに適切な医療・介護等が受けられる初期の対応体制が構築されるよう,認知症初期集中支援チームの設置が推進されることとなった.具体的には,2013(平成25)年度の時点ではモデル事業として全国14カ所に設置されていたが,2015(平成27)年度からは地域支援事業に位置付けられ,2017(平成29)年度末には全市町村に設置されることとなった.
 認知症初期集中支援チームの目的は,適切な医療・介護サービスへつなげることや認知症の行動心理症状(BPSD)を軽減し,住み慣れた地域のよい環境で暮らし続けられるようにすることである.
 砂川市認知症初期集中支援チームは,2014(平成26)年9月より活動を開始し,2019(平成30)年1月現在,36人の支援を行ってきた.家族からの相談の多くは,「認知症の症状が目立つが本人が受診を拒んでいるので困っている」という内容であった.早期に認知症の鑑別診断が行われることは,治療薬の処方や介護への心構えができるなど意義は大きい.しかし,本人にとって認知症の診断を受けることは,悲観的な感情を引き起こす場合がある.認知症の早期診断が早期絶望になってはいけない.認知症の診断はゴールではなく,診断後の丁寧な心理的支援や生活支援を提供して本人と家族に寄り添って並走する応援者になってこそ,医療に結び付ける意味がある.また,今後,本人が望む生活を送るためには身体的にも健康であることが重要であり,身体疾患に対する適切な医療へのつなぎや治療の継続を支援することは,本人の望む生活を継続するためにとても重要な支援であると考える.
 介護サービス利用については,本人の望みと家族の望みにズレがある場合,本人の意向が置き去りにされ,家族の意向を中心とした支援となってしまう可能性がある.よって,本人にとって本当に必要なことなのかを十分に見極め,本人の意向を踏まえながら慎重に導入しなければならないと考える.また,公的なサービスだけでなく,インフォーマルなサービスも十分に活用しながら,本人が望む生活が継続できるよう支援することが重要であると考える.
 相談者が家族以外の場合,例えば近隣住民から「迷惑行為があるから何とかしてほしい」などという困難な事例もあるだろう.地域でのトラブルを解決することが中心となり,本人や家族の意向が置き去りにされ,近隣住民のための支援となってしまう可能性があるのではないか.そこで,今回,全国の複数の認知症初期集中支援チームから情報を集め,相談者や相談内容による支援の違いなどを分析し,その結果を当日,発表したい.そして,認知症初期集中支援チームが目指すゴールとは何か,常に本人の視点で支援ができているか,原点に立ち返り,皆様と一緒に考えてみたい.
3.問題山積-地方中核都市;高知市初期集中支援チームの現状
北村ゆり((医)鳴子会菜の花診療所)
 
 平成27年高知市認知症初期集中支援チームを立ち上げた当初,ゴミに埋もれて生活する人や,尿便を身体につけたまま受診にやってくる,俗に言う困難事例に直面し,「これのどこが初期なんだ…」と頭を抱えていたところ,モデル事業で先に認知症初期集中支援チームを開始していた先生方から,「2,3年したら困難事例の発掘は終わります.」と慰められた.そして現在,初期集中に関わって4年,さすがにゴミ屋敷にチーム員が突入することは減ったが,認知症-初期-集中支援というよりは,認知症-中期-集中支援という状況が続いている.
 この原因はどこにあるのだろうか.高知市では認知症初期集中支援の対象者の窓口は包括支援センターにあり,包括にアクセスした事例をフィルターにかけ,包括を通してチームに相談が上がってくる.初期集中支援の対象者がいない,事例が挙がってこない,といった話を時に耳にするが,高知市は人口33万人の地方都市であるため,高知県の他の町村ほど地域の密接なつながりはないものの,包括支援センター,在宅介護支援センターといった相談窓口は大都市圏ほど個人にとって縁遠いものではなく,それなりに認知症,物忘れの相談はこれらの窓口に上がってきている.にもかかわらず,認知症初期の事例が少なく,困難事例が大半を占めてしまうのは,やはり包括のふるいがうまく働いてないのである.例えば,当院初診患者の中にも,「物忘れが心配でセンターに相談したら,受診するように勧められた.1年ぐらい前に.」という方がいる. つまり,包括などの相談窓口にアクセスはしているものの,介護保険の説明や専門医受診の紹介のみで終わってしまい,初期,早期の対応がなされず,しばらくして困難事例化したところで,認知症初期(中期)集中支援の対象となっているのではないだろうか.認知症初期の窓口相談において,積極介入すべきかどうかの判断は,認知症についての知識,経験が必要であり,これは認知症初期集中支援に関わることでスキルアップが図れるが,問題は高知市においては包括支援センターが高知市の直営で,極めて度々人事異動があり,その経験値がうまく蓄積されないことである.
 また,高齢者の問題はアルコールも精神障害も何もかも包括支援センターが担当するため,業務は膨大であり,大きな問題が生じていなければひとまず引き出しにしまい込み,今目の前の火が噴いている問題事例の対応に追われてしまう.
 そして高知市のもう一つの問題は,高知に精神障害やアルコールについてのアウトリーチがなく,積極的に地域に出ている精神科医療機関もないことである.このため,「対象ではないかも…」と思いつつ,認知症初期集中支援チームに相談をあげるということが起こるのである.
 もちろん,能動的に地域の初期認知症を把握することも考えなければいけないが,まずは認知症初期集中支援チームの窓口である包括支援センターのフィルターにどう機能してもらうかが,現在の課題である.
4.神戸市における認知症初期集中支援チームの活動と課題
長谷川典子(神戸市保健福祉局高齢福祉部),前田 潔(神戸市認知症対策監,神戸学院大学リハリビテーション学部)
 
 神戸市は人口約150万人,高齢者人口約42万人の政令指定都市で,認知症初期集中支援事業は,2013年9月からモデル事業で開始し,2017年度からは,神戸在宅医療・介護推進財団に委託して実施している.神戸市の行政区は9区で,市全体でひとつの二次医療圏である.高齢者の総合相談窓口は,76か所の地域包括支援センターであり,各センターに1名ずつ認知症地域支援推進員を配置して,市民からの認知症に関する相談を受け付けている.認知症初期集中支援チームは市内中心部に一元化して1チーム設置している.地域包括支援センターからの相談は担当する区の専従コーディネーターが受け,認知症初期集中支援事業の対象者の条件に合致した者に対して二人組みで家庭訪問を行っている.2018年度,チーム員は専門職10名が専従し,非常勤で12名,非常勤の認知症サポート医70名が登録している.認知症初期集中支援チームの主な支援内容は,①医療機関への受診支援,②家族介護者への支援,③身体的なケアやBPSDへの対応支援,④介護保険サービス利用を含む生活支援,⑤住まいや生活環境への支援,⑥権利擁護の支援,⑦地域の見守りや社会交流への支援である.これらの支援が円滑にできたケースの介入ポイントは,本人の困りごとを傾聴し,助けてほしいと思っている部分からのアプローチである.日常からさまざまな機関と連携体制を構築しておき,本人の意思を尊重した介入のタイミングを逃さないことが重要である.活動実績は年々増加し,制度の周知も進んでいる.
 また,神戸市は,2018年4月に神戸市認知症の人にやさしいまちづくり条例を施行し,条例の中で新オレンジプランを推進することを謳い,早期受診体制も含めた認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供が行えるシステムを構築した.2019年1月に創設した認知症診断助成制度は,認知機能検診でスクリーニングを行い,認知症疑いであれば,精密検査を紹介する二段階方式の制度であるが,認知症ケアパスへの入り口を担う認知症初期集中支援チームの事例であれば,認知症疾患医療センターを直接受診できる制度とし,早期の医療対応ができるシステムにした.さらに,診断後支援として,認知症疾患医療センターに専門医療・日常生活支援相談窓口を設置して,認知症初期集中支援チームの支援が終結した後も,切れ目ない支援が行えるシステムを構築している.
 認知症初期集中支援チームの課題としては,①チームへの相談として,地域包括支援センターでの対応が困難な事例が多く,初期認知症の事例があがって来にくい,②認知症疑いとして相談してくるが,実際は精神疾患で地域では対応困難な事例を依頼される,③チーム員医師の人数が多いため継続的な助言が受けにくい,④医療拒否事例に対して有効な支援制度が整備されていない,⑤認知症疾患医療センターとの連携体制が不十分である等が挙げられる.これらの課題を改善するため,認知症初期集中支援事業等運営関連部会を設置し,具体的な改善案を検討している.
 シンポジウム当日は,神戸市システムを紹介し,認知症初期集中支援チームの活動を報告すると共に,現状の課題とめざすべき展望を考察する.
5.大都市における認知症初期集中支援チームの実際;東京都板橋区の実践から
佐藤 恵(佐藤クリニック)
 
 東京都内療養者は,単身世帯や後期高齢者世帯が急速に増加している.経済的には年金生活者が多く,年収150万未満の世帯が約4割を占める.社会的にも近所付き合いが少なく,自助互助能力の低下から孤立リスクの高い集団と言える.
 都市型療養環境における認知症初期集中支援事業の1例として板橋区の活動を報告し,見えてきた課題をまとめた.板橋区では平成28年度より認知症初期集中支援事業を開始し,区と区医師会が検討を続けながら認知症初期集中支援チーム数を増やしてきた.本年度は,目標とした区内18圏域包括支援センターごとのチーム配置(18チーム)が達成された.また板橋区では医師会のバックアップにより,チームの訪問には必ずその地域のチームメンバーであるサポート医が同行することになっている.平成28年度,29年度の事業データをまとめてみると単身,80歳以上の高齢者で医療や介護,地域の生活支援につながっていない方たちの割合が多かった.これは大都市型の特徴と考えられる.年2回行われる初期集中チーム検討委員会では,包括支援センターからチーム員会議や訪問活動により圏域内のサポート医と顔の見える連携が構築できたなどの感想が多かった.一方で,受動的情報収集の限界や終了後モニタリング方法の再検討などの課題も明確となった.
 本年度からは,認知症疾患医療センターのアウトリーチチームと認知初期集中支援チームの連携がさらに強化されている.両チームのサポートは包括支援センターが個々に尽力している介入困難療養者への支援に有益であると考えている.不足している生活支援に対しては,認知症サポート医が地域力の強化をめざして各地域のコミュニティーに継続して参加することが必要である.今後も地域や医師会,区の協働により,安心して暮らし続けられる療養環境が構築されることを願っている.
シンポジウム5
2019年6月8日 9:30~12:00 老年精神第2会場(小ホールB1F/共通第19会場)
アルツハイマー病のバイオマーカー研究と疾患修飾薬開発研究の現在
座長: 小原 知之 ( 九州大学大学院医学研究院精神病態医学,九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学 )
    田中 稔久 ( 大阪大学大学院医学系研究科精神医学 )
演者: 小原 知之 ( 九州大学大学院医学研究院精神病態医学,九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学 )
    森原 剛史 ( 大阪大学医学系研究科認知症プレシジョン医療開発学 )
    田中 稔久 ( 大阪大学大学院医学系研究科精神医学 )
    大八木保政 ( 愛媛大学大学院医学系研究科老年・神経・総合診療内科学 )
1.血清sTREM2と認知症発症の関係;久山町研究
小原知之(九州大学大学院医学研究院精神病態医学,九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学),二宮利治(九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学)
 
 認知症の原因は様々であるが,アルツハイマー型認知症をはじめとするほとんどの病型は成因がいまだ十分に解明されておらず,そのバイオマーカーや疾患修飾薬の開発は喫緊の課題である.脳内炎症は認知症の発症と密接に関連することが知られている.近年の基礎研究により,sTREM2(soluble triggering receptor expressed on myeloid cells 2)は脳内炎症におけるミクログリア活性化の指標であり,脳脊髄液中のsTREM2は認知症の初期から上昇することが報告されている.一方,sTREM2は脳脊髄液中のみならず血清中でも検出できることが知られているが,これまでに血清sTREM2値と認知症発症の関係について検討した研究はない.そこで本講演では,福岡県久山町における認知症の追跡調査の成績を用いて,血清sTREM2値と認知症発症の関係を検討した.
 2002年に久山町の生活習慣病健診を受診した認知症のない高齢住民1,349人において血清sTREM2を酵素免疫測定法(ELISA法)にて測定した.さらに血清sTREM2値を4分位(Q1:47.6-228.5pg/ml; Q2:229.2-352.1pg/ml; Q3:353.0-564.4pg/ml; Q4:564.6-4542.0pg/ml)に分類し,対象者を10年間追跡した.発症リスクはCox比例ハザードモデルを用いて算出した.多変量調整には既知の危険因子(性,年齢,学歴,収縮期血圧,降圧薬の服用,糖尿病,血清総コレステロール,BMI,心電図異常,脳卒中既往歴,喫煙,飲酒,運動,高感度C反応性蛋白質)を用いた.
 対象者における血清sTREM2の中央値(四分位範囲)は353.0(229.2-564.4)pg/mlであった.追跡期間中に全認知症300例(アルツハイマー型認知症193例,血管性認知症85例)を発症した.血清sTREM2値と全認知症発症の関係を検討したところ,血清sTREM2値の上昇に伴い,全認知症の累積罹患率(性・年齢調整後)は有意に上昇した(傾向性p<0.001).Q4群における全認知症の発症リスク(多変量調整後)は,Q1群に比べ2.03(95%信頼区間1.39-2.97)倍であった.また,認知症の病型別に検討しても同様の有意な関連が認められた(傾向性p<0.03).つぎに,既知の危険因子に血清sTREM2値を追加することで認知症発症の予測能が改善するかを検証した.その結果,血清sTREM2値を追加によりNRI(net reclassification improvement)は0.169(p=0.009),IDI(integrated discrimination improvement)は0.004(p=0.045)と認知症発症の予測精度は有意に改善した.
 福岡県久山町における追跡調査の成績から,血清sTREM2の上昇は認知症発症の有意な危険因子であり,血清sTREM2値の測定は認知症の早期発見の有効な血液バイオマーカーであることが明らかとなった.本研究結果は,ミクログリアを主体とした脳内炎症が認知症発症に関与することを示唆するものであり,認知症の予防法の確立に寄与することが期待される.
2.認知症のプレシジョン医療実現に向けて;疾患再分類,層別化マーカーと血液コアマーカー
森原剛史,永田健一(大阪大学医学系研究科認知症プレシジョン医療開発学),赤津裕康(名古屋市立大学地域医療教育学),Paillard Luc(フランス・レンヌ大学),池田 学(大阪大学精神医学)
 
 アルツハイマー病の克服への道は困難な状況が続いている.なぜであろうか?その理由として「疾患が複雑」「疾患が不均一」「使いやすいバイオマーカーがない」がよく挙げられている.アルツハイマー病と現在呼ばれている疾患は症候群であり,多種多彩な発症分子メカニズムが不均一に含まれていると思われる.このような状況でアルツハイマー病を発症メカニズムレベルで捉えなおし,細分類することは重要と考える.共通の発症メカニズムをもつ均一な患者群を抽出できれば,現状よりはるかに効率的な治療法開発も可能になる.いわゆるプレシジョン医療である.
 我々はAβが脳内に蓄積しにくいマウス系統があることに着目して,マウスおよびヒトのAβ病理を制御する遺伝子産物kinesin light chain-1 splice variant E(KLC1vE)を同定した(PNAS 2014 v111 p2638).さらにはGWASで報告されたものの機能不明であったアルツハイマー病リスク遺伝子がKLC1のスプライシングを制御していることを網羅的探索(CLIP-Seq)で発見した(未発表).マウスにおいて,Klc1のアレルの違いがKlc1vEの発現量が制御しておりさらにAβ蓄積量に大きな差(約3~4倍)を生じさせていることが分かった.我々だけでなく3つの研究グループがこの結果を直接ないし間接的に支持するマウス研究を報告している.ヒト剖検脳においてはアルツハイマー病リスク遺伝子の発現量はアルツハイマー病で低値であり,KLC1vEの発現量は高値であった.両者の発現量には極めて強い相関がみとめられた(R2=0.45,p=0.003).培養細胞においては,このアルツハイマー病リスク遺伝子をノックダウンするとKLC1vEの発現は上昇した.なおKLC1vEをノックダウンするとAβ産生量は抑制される. まとめると新規発症分子メカニズムとして「アルツハイマー病リスク遺伝子→KLC1vE→Aβ」が明らかになりつつある.
 さらに興味深いことは,KLC1vE mRNAは脳だけでなく末梢血においてもアルツハイマー病で高値(p<0,0013)なことである.この期せぬ結果は,アルツハイマー病を細分類する層別化バイオマーカーとなりうるものである.そしてKLC1に注目した治療法も共同開発中である.つまり血液KLC1vEを層別化マーカーとして用い,KLC1が発症に関与しているアルツハイマー病患者を抽出し,KLC1に着目した治療をする,または治療法を効率的に開発することが期待できる.その際,血液コアバイオマーカーも重要になる.その開発状況ついてもImmuno Magnetic Reduction(IMR)法など可能な範囲で触れたい.
 Aβ病理を規定する遺伝子産物KLC1vEを中心とした,孤発性アルツハイマー病の新規発症分子メカニズムの解明,対応する層別化マーカー開発と新規治療法開発を進めている.分子メカニズムを基盤とするプレシジョン医療という,新たな突破口が開きつつあるというのが現状かもしれない.
3.アルツハイマー病に対する新規治療薬の開発の流れ
田中稔久(大阪大学大学院医学系研究科精神医学)
 
 現行のアルツハイマー病(AD)に対するアセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害剤による治療は,減衰する認知機能低下をアセチルコリンの補正により何とか維持しようとするものであるが,効果は永続的ではない.現在開発進行中の新しい薬剤は病態の基本的メカニズムに抑制をかけることを目的としており,たとえ途中でその使用を中止しても使用しなかったときの水準まで認知機能が低下することはないというコンセプトが設定され,disease modifying therapy(疾患修正療法あるいは根治療法)と呼ばれている.ADに対するdisease modifying therapyには,アミロイドをターゲットとする治療法(免疫療法,セクレターゼ阻害剤,アミロイド凝集阻害剤など)と,タウ蛋白をターゲットとする治療法(リン酸化阻害剤,タウ重合阻害剤,免疫療法など)が存在する.
 まず,アミロイドをターゲットとする治療に関しては,免疫療法が進められてきた.Bapineuzumab,Ponezumab,Solanezumabなどアミロイドに対する抗体を用いた臨床治験が行われたが,残念ながら治療効果が確認できず開発は中止された.現在はアミロイドの中でも凝集性アミロイドをターゲットとしたAducanumab,BAN2401などの臨床治験が進行中である.また,アミロイドをターゲットとするγセクレターゼ阻害剤に関しては,LY-450139(semagacestat)の臨床治験が行われたが,血漿中のアミロイドβを低下させるものの疾患の進行抑制を示すことができず,また副作用の懸念から開発は中止された.そして,βセクレターゼ阻害剤に関しては,MK-8931の臨床治験が行われたが,これも血漿中のアミロイドβを低下させるものの疾患の進行抑制を示すことができず,開発は中止された.すでにいくつかのアミロイドをターゲットとする臨床治験が不成功に終わっていることから,このアプローチにはさらなる工夫が必要であることが考えられる.
 タウをターゲットとする治療法開発はまだ少ないが,アミロイドをターゲットにする治療法開発が十分進展していないことから,今後さらに活性化することが期待されている.タウのリン酸化阻害剤に関しては,タウを強力にリン酸化するグリコーゲンシンターゼキナーゼー3(GSK-3)を阻害する薬剤がいくつか開発中である.既存の薬剤としては躁病に用いられるリチウムがGSK-3を阻害し,軽度認知機能障害者への投与により脳脊髄液中のリン酸化タウを減少させることが報告されている.また,タウの凝集阻害剤に関してはPhenotiazine関連物質であるMethylene blueの臨床治験が行われたが,残念ながら疾患の進行抑制を示すことができなかった.BIIB092などタウに対する抗体を用いた臨床治験は現在進行中である.今後の研究の大きな発展により,少しでも早くADおよびその他の認知症に対するdisease modifying therapyが完成されることが期待されている.
4.アルツハイマー病における脳の糖尿病とアポモルフィン治療の可能性
大八木保政(愛媛大学大学院医学系研究科老年・神経・総合診療内科学)
 
 アルツハイマー病(AD)に対しては,amyloid-β蛋白(Aβ)および過剰リン酸化tau蛋白(ptau)を標的とする疾患修飾薬の開発が進められている.しかし,Aβを標的とする薬剤は臨床治験でほとんど不成功に終わっている.p-tauを標的とする薬剤は複数の臨床治験が進行中で結論はまだ出ていないが,ADにおける記憶力などの改善には,これら異常蛋白の蓄積に共通する分子病態をあきらかにし,それを正常化する疾患修飾薬の開発が必要と考えられる.
 近年,ADと糖尿病の関係は久山町などの疫学研究であきらかにされ,欧米ではADはしばしば「3型糖尿病」あるいは「脳の糖尿病」と称されるようになってきている.実際に,米国でインスリン点鼻治療により軽度AD患者における記憶障害の改善が確認されており,また,GLP-1アゴニストなどの糖尿病薬がADマウスモデルに有効なことが多数報告され,AD患者に対するいくつかの臨床治験も開始されている.
 私たちは以前,細胞外の老人斑に蓄積するAβよりも,微量だが神経細胞内に蓄積するAβが治療標的として重要と考え,培養細胞を用いて候補薬を探索した.その結果,パーキンソン病(PD)に対するドパミンアゴニストの一種であるアポモルフィン(Apomorphine,APO)が細胞内Aβ分解を促進し,3xTg-ADマウスの記憶障害やAD病理を改善することを報告した(Himeno et al,2011).私たちはさらに3xTg-ADマウス脳のインスリン抵抗性に着目して解析を進めた.インスリン抵抗性上昇により低下するAβ分解酵素のInsulin-degrading enzyme(IDE),および神経細胞のインスリン抵抗性を反映するリン酸化Insulin receptor substrate-1(IRS-1)のpS616 IRS-1とpS636+639 IRS-1をウェスタンブロットと免疫染色で定量的に解析した.13ヶ月齢の3xTg-ADマウスでは,IDEおよびpS616 IRS-1/pS636+639 IRS-1ともnon-Tgマウスに比べて有意に増加していた.さらに,APO皮下注射(週1回4週間)した3xTg-ADマウスでは,IDEの上昇およびpS616 IRS-1/pS636+639 IRS-1の低下が見られた. したがって,脳神経細胞のインスリン抵抗性改善と細胞内インスリンシグナリング回復が記憶障害の改善につながったと考えられた(Nakamura et al,2017).
 次に,私たちは軽度~中等度のAD患者5人に対して,APO(アポカイン注射?)投与の効果を検証した.PD患者に対する最小投与量の1mgを週1回12週間皮下注射した.治療前後でMMSEスコアは変化なかったが,ADAS-Jcogの言語性記憶力ではあきらかな改善を認めた(再認の平均:5.6→2.25).さらに,治療前ADAS-Jcog 30点の中等度AD患者では立方体描画もあきらかに改善し,視空間認知障害や構成失行の改善も示唆された.APOは近々米国でPD患者用に舌下シールが承認される見込みであり,ADの認知機能を改善させる新規治療薬の可能性が期待される.
シンポジウム6 <日本総合病院精神医学会共同企画>
2019年6月8日 9:30~12:00 老年精神第3会場(展示室B1F/共通第20会場)
認知症とせん妄の救急医療・急性期医療
座長: 小田原俊成 ( 横浜市立大学保健管理センター )
    岸  泰宏 ( 日本医科大学武蔵小杉病院精神科 )
演者: 岸  泰宏 ( 日本医科大学武蔵小杉病院精神科 )
    和田  健 ( 広島市立病院機構広島市立広島市民病院精神科 )
    古田  光 ( 東京都健康長寿医療センター精神科 )
    見野 耕一 ( 兵庫県立尼崎総合医療センター精神科 )
    武田 章敬 ( 国立長寿医療研究センター )
1.救急医療におけるせん妄対応
岸 泰宏(日本医科大学武蔵小杉病院精神科)
 
 重症疾患に対する病態理解や治療の進歩により,救急医療現場,とくに集中治療室(ICU)で治療を行う患者の救命率は著しく改善している.この中で,ICUせん妄ならびにPICS(Post Intensive Care Syndrome:集中治療後症候群)が救急・集中治療後の患者のQOLに大きな影響を与えることがわかっている.
 救急医療現場では,せん妄は頻繁にみられる.救急医療現場に搬送される症例には重度のせん妄直接因子が存在している.くわえて,せん妄の代表的背景因子もつ老齢者や認知症症例が救急医療現場に搬送されることも多く,せん妄に至る危険性は高い.せん妄は一過性の病態と考えられていたが,一旦発症すると持続して身体予後・医療経済的予後に悪影響を及ぼすことがわかっている.せん妄の発見には,評価尺度を使用するなどの積極的な発見方法をとらない限りには見逃しを減らすことは不可能である.せん妄診断の特異度の高い評価方法を用いた研究では,せん妄評価で陽性だった症例の27%しか臨床判断ではせん妄と診断されていないことが示されている.したがって,さまざまな評価尺度があるが,それぞれの利点・欠点を認識し,限界を知りながらでも評価尺度を臨床現場で使用する必要がある.PICSに関しても,せん妄のマネジメントが重要とされている.
 しかしながら,せん妄の早期発見・早期治療の有効性を示すデータはない.抗精神病薬によるせん妄治療がコンセンサスとなっているが,エビデンスは低い.したがって,せん妄マネジメントでは,予防が最も大切とされている.予防介入では,非薬物的予防介入(せん妄促進因子の軽減)が現在のところ推奨されている.薬物によるせん妄予防の報告も多くはないが散見されているが,確立されていない.
 現在,ICUせん妄やPICSへの対応としてABCDEバンドルが提唱されている.ABCDEバンドルとは,A:Awakening the patient daily(sedation cessation)(毎日の覚醒トライアル),B:Breathing(daily interruption of mechanical ventilation)(毎日の呼吸器離脱トライアル),C:Coordination(daily awakening and daily breathing)(ABの併用),D:Delirium monitoring(せん妄のモニター),E:Exercise/Early Mobility(早期離床と運動療法)の頭文字からきている.これらの多職種による包括的せん妄予防が医療・集中医療領域でのせん妄対応で重要である.
2.精神科リエゾンチームによるせん妄患者への対応
和田 健(広島市立病院機構広島市立広島市民病院精神科)
 
 入院患者におけるせん妄の有病率は,既報告で概ね10-30%と頻度が高く,せん妄患者への対応は,コンサルテーション・リエゾンサービスにおいて最もニーズが高く,適切かつ速やかな対応が求められる.近年,せん妄に対する予防的及び早期介入がトピックとなっており,100%の予防は困難でも,重症化する前に適切に対応することで,患者の苦痛やさまざまなリスクの軽減などにつながると考えられる.その背景には,入院患者の高齢化,認知症有病率の増加があり,せん妄発症リスクの高い入院患者が増加している現状がある.
 筆者の施設では,入院患者に対するせん妄早期介入プログラムを運用し,せん妄リスク患者を抽出して予防的介入を実践することを目指している.妊産婦を除く成人の入院患者に対して病棟看護師が所定のせん妄リスク評価を行い,①アルコール離脱せん妄リスク,②せん妄ハイリスク,③せん妄リスク,④リスクなしに分類する.①については速やかに精神科紹介を推奨し,②,③については引き続いてConfusion Assessment Method-J(CAM-J)によるせん妄スクリーニングを追加する.せん妄が疑われた場合は,速やかな精神科紹介を推奨し,それ以外は経時的にCAM-Jを施行して経過観察を行うとともに,誘発因子への介入を開始する.精神科リエゾンチームはできるだけせん妄早期介入プログラムと連動して活動することとし,予防的介入に重点を置いている.筆者の施設のチームは医師,看護師,心理職ともに専任であり,全ての紹介には対応できないため,術前のせん妄リスク患者への対応などを中心に動いている.
 2017年4月から2018年12月までに他科より精神科紹介となった患者はのべ2084例で,そのうちリエゾンチームで対応した患者は470例であった.そのうち65歳以上の高齢者は412例で,平均年齢は80.2±7歳であった.紹介時には,154例37.4%がせん妄,171例41.5%がせん妄リスク状態と診断された.入院前より認知症ありと診断された患者は104例25.2%で,そのうち精神科紹介時には44例42.3%がせん妄,42例40.4%がせん妄リスク状態と診断された.
 対象患者にはほぼ全例で薬物療法が施行され,術後など内服できない患者に対しては,haloperidol点滴やhaloperidol+hydroxyzine点滴などが選択された.チームの看護師は病棟看護師の相談に適宜応じ,ケアの助言などを行った.リエゾンチームで対応するメリットとして,看護師の活動によって家族からの情報収集がより詳細にできること,患者家族への説明が丁寧にできること,病棟看護師への教育的関与ができることなどが挙げられる.今後は,看護師の専従化を実現し,紹介患者全例に対応可能として,事前情報収集により看護師が標準的な薬剤選択を推奨して経過観察するか精神科医の評価を要するかトリアージを行ったり,病棟看護師からチーム看護師へのアクセスを強化し,現場の対応力向上につなげるなどをめざしていきたい.
3.認知症疾患医療センターにおける認知症患者の救急・急性期医療
古田 光(東京都健康長寿医療センター精神科)
 
 認知脳高齢者の増加に伴い,認知症患者の救急医療・急性期医療に対するニーズが増加している.認知症患者の救急医療・急性期医療は,認知症高齢者の身体疾患の救急医療・急性期医療と,認知症の行動心理症状(BPSD)の救急医療・急性期医療に大別される.国の示す認知症疾患医療センターの要綱には専門医療機関の要件として,「認知症疾患の周辺症状と身体合併症に対する急性期入院治療を行える一般病床や精神病床を有している」かもしくは,同様の機能を持つ一般病院又は精神科病院との連携体制を確保していることが求められている.東京都健康長寿医療センターは東京都区西北部に位置する550床(一般科520床,精神科閉鎖30床)の二次救急指定の総合病院で,東京都の地域拠点型認知症疾患医療センター(国の類型では地域型認知症疾患医療センターに類似)のひとつに指定されている.精神科閉鎖病床があるため,認知症患者の身体疾患のBPSDの両者の救急医療・急性期医療を行っている.入院患者の平均年齢が一般科,精神科ともに約80歳で,入院患者における高齢者の割合が大きい. 過去の調査では65歳以上の一般科入院患者のうち30%以上に認知症が疑われ,そのうち夜間休日に救急で入院した患者では70%近くに認知症が疑われた.身体的に重篤な認知症高齢者ではせん妄を合併したり,BPSDが活発となる可能性があり,一般病床での認知症患者の対応は病院全体の課題である.当院では,認知症疾患医療センターのスタッフを中心に,認知症看護認定看護師,精神科医師,臨床心理士,薬剤師,精神保健福祉士等の多職種からなる認知症ケアチームが一般病床の認知症・せん妄ケアをサポートしている.また,認知症患者へのより良い医療・ケアを提供するために,認知症に関する院内研修会を頻回に行い,医療スタッフ全体の認知症に対する対応力向上研修に努めている.一般病床は看護基準が7:1で,在院日数が非常に短い.自宅退院ではなく,引き続きの身体的治療のため転院する患者も多いが,転院先の病院に認知症・せん妄についてのみたてを的確に伝えることは課題である.精神科病床ではBPSDの急性期治療と一般病床で対応困難な認知症高齢者の身体疾患の急性期治療を行っている. 精神科病床は看護基準10:1で平均在院日数40日以下が目標なため,重篤なBPSDを主訴に入院した患者は急性期の症状がある程度改善し,身体的な問題がないと確認できた時点で,療養型病院に転院する例が多い.転院にあたっては認知症患者の個々の特性に応じたケアの方法についての情報を詳細に提供するよう努めている.当センターでは近隣の医療機関との密な連携で認知症患者の救急医療・急性期医療を行うことができている.認知症疾患医療センターの指定を受けている医療機関の形態はさまざまであるが,どのような形態でも他医療機関との連携は重要であり,地域の医療機関全体の認知症対応力向上があってこそ,認知症疾患医療センターも本来の役割を十分に発揮できるだろう.当センターでも地域の医療従事者向けの認知症対応力向上のための研修を頻繁に行っている.
4.認知症・せん妄サポートチームによる認知症患者への対応と課題
見野耕一,岡田滋裕,石橋直木(兵庫県立尼崎総合医療センター精神科),前田和美,金澤直美,吉田直江,吉田敬子(兵庫県立尼崎総合医療センター看護部),柳瀬圭花(兵庫県立尼崎総合医療センター地域医療連携センター),足立 萌,門倉史枝,永岩早稀,漣由里香,二星知紗,木下紗江,大庫百代(兵庫県立尼崎総合医療センター薬剤部),玉井寛子(兵庫県立尼崎総合医療センターリハビリテーション部),麻岡紀子(兵庫県立尼崎総合医療センターER 総合診療科),早坂有希,影山恭史,占部 泉(兵庫県立尼崎総合医療センター神経内科),横田菜津希(兵庫県立尼崎総合医療センター精神科),廣田兵庫(兵庫県立ひょうごこころの医療センター)
 
 兵庫県立尼崎総合医療センターは,病床数730床,阪神圏域175万人を対象にした高度急性期・高度専門医療病院である.
 当院では,認知症やせん妄を呈する人に幅広く対応するためには多職種によるチーム医療が有用であると考え,2015年7月の開院から,認知症・せん妄サポートチーム(以下DDST:Dementia&Delirium Support Team)を創設し活動してきた.DDSTは,認知症ケアチームとせん妄ケアチームで構成されている.モットーは,「どこでも出向くサポートチーム:DDST」を目指している.
 認知症の人が入院して大きな環境変化に適応できず,せん妄や行動心理症状を誘発されることは良くみられることである.
 病棟から認知症患者やせん妄患者に対する相談を受け,適切な予防や初期介入,ケアについて提案を行い,毎週火曜日の14時~16時にカンファレンス後にチームラウンドをしている.認知症ケアチーム登録と介入手順は,1)入院時に「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」に沿って病棟看護師が判定し,III以上の患者(65歳以上)を抽出する.2)「認知症高齢者の日常生活自立度」III以上の患者は,認知症ケア登録を行う.3)登録した患者の看護計画を立案する.4)認知症ケアチームが,登録患者の初期訪問を行い,介入とケアの開始となる.5)毎週火曜日の午後,認知症ケアチームによるカンファレンス・回診を行うことになっている.
 また,入院時せん妄ハイリスクのスクリーニングを導入して,認知症・せん妄ケアに対する教育・研究活動,地域連携勉強会や研修会なども行っている.
 DDSTは,認知症の人を直接診察することと,医療スタッフへのサポートを行うことを目的としている.チームラウンドとカンファレンスを行い,せん妄のリスクアセスメントや行動面の評価を実践している.
 精神科は,DDSTの一員として活動するとともに,精神科リエゾンチームとしても他科からのコンサルトを受ける.また毎朝,救急入院した患者のメンタル面をサポートできるように救命救急センターをチームラウンドしている.早期に精神症状の評価・介入を行うことで認知症の人のせん妄リスクもある程度軽減できている.精神科の特徴は,①救命救急センターとの円滑な連携,②精神疾患患者の身体的ケアと治療,③精神科救急医療システムの補完,④精神科医療機関との連携,⑤コンサルテーション・リエゾン・チーム医療の実践などである.また,身体合併症治療に特化した8床の精神科病床を有する.
 診療報酬面では,対象の人を病棟リンクナースと情報共有して,認知症ケア加算1,精神科リエゾンチーム加算をそれぞれ算定している.認知症ケアチームとせん妄ケアチームが,カンファレンスやチームラウンドも同時に行うことでマンパワー不足を緩和している.チームラウンド時には,認知症看護認定看護師2名,精神看護専門看護師1名がそれぞれリーダーの3つのチームとなり病棟をラウンドしている.そして診療報酬も重複しないように算定できている.
 精神科身体合併症治療病床に入院となったケースは,重度認知症加算を算定している.
 当日は,DDST活動の状況や課題について若干の考察を加えて報告する.
5.介護家族・救急病院から見た認知症の救急医療・急性期医療の課題
武田章敬(国立長寿医療研究センター),鈴木和代(認知症の人と家族の会),粟田主一(東京都健康長寿医療センター)
 
 認知症の人と家族が住み慣れた地域で安心して生活するためには,必要な医療・介護サービスやインフォーマルサービスが切れ目なく提供されることが必要である.認知症の人が肺炎や大腿骨頚部骨折,脳血管障害等の身体救急疾患に罹患した際に,認知症のない人と同様に遅滞なく適切な医療が受けられることが重要であるが,実態は明らかではなかった.
 演者らは平成25年度に認知症の人を介護する家族と全国の救急告示病院を対象とした調査を実施し,認知症を理由とした診療を拒否されたり入院を拒否された家族が一定数あること,入院した際に半数で問題(家族の付き添いや身体拘束等)があること,救急告示病院のほとんどが認知症の人の身体救急疾患の診療を行い,緊急入院の受け入れを行っていたが,一部で診療を行わなかったり,緊急入院を受け入れない病院もあること,ほとんどの病院が認知症の人の身体救急疾患への対応が困難であると答えたこと等を明らかにした.
 このような現状への対策として,平成25年度から病院勤務の医療従事者向け認知症対応力向上研修が始まり,平成28年度診療報酬改定において「認知症ケア加算」が創設され,一般病院における認知症の身体疾患への対応が評価されることとなった.
 これらの施策の有効性を検討する目的で,認知症の人を介護する家族を対象として身体疾患に対する医療に関する全国調査を平成29年度に再度行った.470名を対象として調査を行い,345名から回答を得た.認知症を理由に診察や治療を拒否された人が7名,入院が必要と考えられるのに入院を拒否されたりした人が5名あり,また,入院時の家族の付き添いや個室への入院を求められる等,認知症の人や家族を取り巻く状況は平成25年度調査時と比べ著明な改善は認めなかった.一方,全国の救急告示病院を対象とした実態調査も平成29年度に実施した.その結果,平成29年度の調査においては平成25年度よりも認知症の人の救急外来での診療や緊急入院の受け入れに積極的な病院が多く,マニュアルの整備や認知症の有無の評価等を行っている病院が多かった.認知症ケア加算を算定している病院は算定していない病院よりも認知症の人の緊急入院の受け入れに積極的であり,診療報酬上の評価によりスタッフのモチベーションが上がり,協力が得やすくなった等の良好な変化が示される回答が多くみられた.
 今後,施策の着実な展開によって認知症の人が身体救急疾患を来たしても適切な医療を安心して受けられる様になることが期待される.
シンポジウム7
2019年6月8日 14:25~16:25 老年精神第1会場(大ホール2F/共通第18会場)
認知症高齢者および障害高齢者の生活支援と意思決定支援
座長: 井藤 佳恵 ( 都立松沢病院精神科 )
    齋藤 正彦 ( 東京都立松沢病院 )
演者: 田山 輝明 ( 早稲田大学名誉教授 )
    田中 規倫 ( 厚生労働省老健局総務課認知症施策推進室 )
    川井 誉久 ( 社会福祉法人東京都社会福祉協議会地域福祉部 )
    淺沼 尚子 ( ソーシャルワーカー事務所長楽庵 )
1.障害者権利条約批准と成年後見制度
田山輝明(早稲田大学名誉教授)
 
 広義の成年後見制度は,民法上,狭義の成年後見,保佐,補助から成る.成年後見制度に関する統計によれば,広義の成年後見制度のうち,狭義の成年後見制度の利用が,80%弱を占めている.この場合には,成年後見人に広範な法定代理権が付与されるから,国連の障害者権利条約(以下,権利条約という.2018年8月現在の同条約の批准国は,日本を含めて177カ国)との関連で,重大な問題が生じている.法定代理権制度は,「他人による決定」を意味するので,権利条約の当事者意思の尊重の趣旨に反するからである.しかし,当事者の人権や意思の尊重の観点からは,単に法定代理制度を廃止すれば「条約との抵触」の問題が解決するわけではない.なお,日本は,個人通報制度を可能とする権利条約選択議定書(85締約国)には署名もしていない.
 権利条約が現行法による「代行意思決定制度」(法定代理制度)の転換(原則廃止へ)を求めている理由は,現行の法制度は,①本人の行為能力(法的能力)を排除し,②本人の意思に反して支援者を任命することがあり,③本人の意思と選好ではなく,客観的な最善の利益に基づいて決定する制度になっているからである.
 これに対して,権利条約第12条が提示している「支援つき意思決定制度」は,趣旨において,上記3つの現行制度とは正反対のものである.すなわち,同条は,本人が支援者を拒否でき,支援者の行動に対して第三者が異議を申し立てることでき,さらに,①利益相反の回避・不当な影響の排除,②本人の状況の変化への適合,③後見制度等の短期間の適用,④定期的審査の適用,を求めている(同条4項).支援付き意思決定制度は,個人の意思と選好に第一義的重要性を与え,人権規範を尊重する様々な支援の選択肢から成り,自律に関する権利(法的能力に関する権利,法律の前における平等な権利の承認,居所を選ぶ権利等)を含むすべての権利と,虐待及び不適切な扱いからの自由に関する権利(生命に対する権利,身体的なインテグリテイを尊重される権利等)を保護するものでなければならない.「最善の利益」は「意思と選好の最善の解釈」に取って代わられるべきである.
 権利条約は,障害者自身の意思の尊重を前提とし,関連諸施策の実施に際しても,その意思決定と表明をサポートすべきであるとしている.この観点からは,後見人のような法定代理人による「決定」は,極力避けられるべきである.欧米諸国においても,その方向で法律の改正が行われ,そこでは,「最善の利益」よりも「意思と選好の最善の解釈」が強調されている.法律行為の場合よりもさらに本人の意思が尊重されるべきであるのは,手術等の医療における同意である.
 日本も,権利条約を批准した国として,速やかに成年後見制度の改正を実現すべきである.最小限度の改正として,狭義の成年後見の利用を極力減少させ,保佐を中心とした制度に改編すべきである.その上で,国民感情の動向や社会システムの成熟等を見つつ,将来的には,補助を中核とした制度を検討すべきであろう.しかし,残念ながら「同条約12条に関する政府報告案」は,権利条約の趣旨を正確に理解して起案されているとは到底思われない.
2.成年後見制度利用促進と認知症施策
田中規倫(厚生労働省老健局総務課認知症施策推進室)
 
 認知症の人が認知症とともによりよく生きていくことができるよう,また,自らの意思に基づいた生活を送ることができるよう環境整備を行っていくことが重要である.
 政府としては,新オレンジプランの7つの柱に沿って認知症施策を推進している.
 新オレンジプランは,認知症の人とその家族などの関係者から幅広く意見を聴取しながら,厚生労働省と関係11府省庁が共同で策定した.①認知症への理解を深めるための普及・啓発の推進,②認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供,③若年性認知症施策の強化,④認知症の人の介護者への支援,⑤認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進,⑥認知症の予防法,診断法,治療法,リハビリテーションモデル,介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推進,⑦認知症の人やその家族の視点の重視,の7つの柱をかかげている.
 7つめの柱である「認知症の人やその家族の視点の重視」を重要な柱とし,他の6つの柱に共通するプラン全体の理念として位置づけている.具体的には,認知症の本人同士が集い,自らの体験や希望,必要としていることを語り合い,自分たちのこれからのよりよい暮らし,暮らしやすい地域のあり方を一緒に話し合う「本人ミーティング」の取組を進めている.また,診断後に,次の一歩を踏み出せるよう「本人にとってのよりよい暮らしガイド」の作成・普及を進めている.
 5つ目の柱である「⑤認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの推進」においては,生活しやすい環境の整備,就労・社会参加支援,安全確保の観点から高齢者にやさしい地域づくりを推進しており,この中で,権利擁護に関する取組を位置づけている.平成29年3月に「成年後見制度利用促進基本計画」が策定されたことを踏まえ,成年被後見人の財産管理の側面のみならず,意思決定支援,身上保護の側面も重視した支援に繋がるよう,地域連携ネットワークの構築を図っている.また,生活支援員や市民後見人の養成の推進のために財政措置を行い,権利擁護人材の育成を行うとともに,低所得の高齢者に対する成年後見制度の申立てに要する経費や成年後見人等に対する報酬の助成等を実施するなど,成年後見制度の利用促進を図っている.
 さらに,平成30年6月に「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」を策定した.認知症の人が日常生活・社会生活において,その意思が適切に反映された生活を送ることができるよう,意思決定支援の基本的考え方,姿勢,方法,配慮すべき事柄等を整理したものであり,認知症の人の意思決定支援に関わる,例えば,行政職員,家族,専門職種,成年後見人,地域近隣で見守りを行う人等による認知症の人の意思決定を,意思形成支援,意思表明支援,意思実現支援に整理し,プロセスとして支援を行う考え方を示した.本ガイドラインを活用した研修のあり方や意思決定支援に係る事例集の作成等を進めている.
3.地域と家裁の連携による成年後見制度の新たな選任・利用支援のしくみについて
川井誉久(社会福祉法人東京都社会福祉協議会地域福祉部)
 
 東京では,平成17年から都の独自施策である成年後見活用あんしん生活創造事業により,区市町村をベースにした成年後見制度の利用促進の取組みが進められてきた.現在までに町村部を除く全23区26市において成年後見制度推進機関(以下「推進機関」とする)が設置され,制度利用に向けた相談・支援をはじめ,後見人サポート,地域ネットワークの活用,市民後見人の養成・支援,法人後見の実施等の取組みが実施されている.
 それでは東京では,成年後見制度利用促進法や基本計画等の動向をふまえ,今後,どのように取組みを進めればいいか.そのポイントは,国の基本計画の冒頭に提起されている「財産管理のみならず,意思決定支援・身上保護も重視した適切な後見人の選任・交代」にあると考えた.
 同じく基本計画では現状認識として,「後見人による本人の財産の不正使用を防ぐという観点から,親族よりも法律専門職等の第三者後見人が選任されることが多い」,そして「第三者後見人の中には,意思決定支援や身上保護等の福祉的な視点に乏しい運用がなされている」と示されている.こうした状況は東京においても変わることはなく,親族後見を希望する多くのケースが不本意な形で専門職後見人を付され,納得がいかない後見人の納得がいかない後見業務に対し,庶民にとっては決して安くない後見報酬を生涯払い続けなければならない.そうした現状は,制度に対する利用者の不信と不満を招き,「知れば知るほど使いたくない制度」として利用の断念,忌避を招いている.
 そうした事態を招いている主な要因は,後見人を選任する家庭裁判所が,本人の希望や生活状況に関するきめ細かな情報を得られないままに,また地域において受けられる支援を見通すこともできないままに,財産管理や不正防止を過度に重視する観点から,親族よりも専門職を優先して選任する運用を強めてきたことによる.それにより,たしかに不正事案は減少したが,自己決定の尊重や身上保護は置き去りにされ,それが本人や本人が信頼する親族に幸せをもたらしたかというと,とてもそうとは言えない,との強い反省がある.
 こうした問題意識に基づき,本会は東京都と協働し,東京家裁と協議を進め,三士会(弁護士会,司法書士会,社会福祉士会),区市町村(社会福祉協議会を含む),当事者団体等の意見も聞きながら,表記のしくみを導入することとした.しくみでは,何よりもまず本人の自己決定(意思決定の支援)と身上保護を重視する観点から,もっとも適切な後見人の選任を実現することをめざしている.そのために,地域の中核機関(=従来の推進機関)が親族後見を希望する相談ケースについてきめ細かなアセスメントを行った上で「検討・支援会議」を開催する.この会議体は,弁護士等の専門職やケースごとの支援関係者で構成され,当該ケースについて最も適切と考えられる後見人(親族なのか弁護士等の専門職なのか,等)を想定した上で,その後見人が行うべき後見業務の内容と,中核機関や関係者が取り組むべき支援のあり方を「後見(支援)基本方針シート」として策定する.適切と考えられる後見人が専門職等の第三者の場合には,候補者の紹介と面接等により丁寧なマッチングも実施する. その上で,この基本方針シートを申立人が申立時に家裁に提出し,家裁はこれを参考にして,財産管理や不正防止に偏らない最も適切な後見人を選任する.さらに,このようにして選任された後見人に対しては,「後見・支援に関するプラン・モニタリングシート」を活用して地域において継続的な支援を実施する.
 こうした取組みにより,利用者と親族に「納得と合意」をもたらし,質の高い後見業務と機能的な地域連携ネットワークの形成を実現し,市民・利用者からの成年後見制度に対する信頼の回復,向上につなげたいと考えている.
4.地域の支援と成年後見制度;後見活動を通して経験する身近な課題
淺沼尚子(ソーシャルワーカー事務所長楽庵)
 
はじめに
 地域の状況は様々で,そこに暮らす人も同様だ.家族も支援者も各々の考え方を持っている.私は,一介のソーシャルワーカー(以下SW)が語れること,つまり「後見活動を通して経験する身近な課題」を報告したい.
1.個人への継続的関与を許さない保健医療福祉システム
 昭和初期から続く精神科病院で,私は精神科SWとして15年働いた.患者さんは地域で暮らす高齢者より早いペースで要介護状態となった.
 病院は衣食住を保障するが「その人らしく暮らす」ことは保障しづらい.近年,保健医療福祉システムの構造改革により職員は効率的思考・行動・成果を求められている.
 地域で孤立した高齢者が,精神的変調をきたし入院する例を見てきた.
 一時外出し自宅へ戻ると更地だったとか,本人の年金を親族が使っているなどの事例があった.一方通帳を病院金庫で管理し,職員が代行でお金を降ろす事務もある.
 後見制度等の普及により,本人の財産保護や契約行為は第三者が担うようになったが,「その人らしく暮らす」ためには支える人も時間も覚悟も足りない.
 SWにも後見人の代理代行決定に否定的意見がある.本人の「今したい,いずれ行いたい」という自己決定と抵触する考えからだ.
 私は長期入院の人を前に「それでも本人の側にいる」ため後見活動を始めた.後見人の強い権限で本人の生活を決して覆うことがないようにしたい.
2.後見制度への過大な期待
 保健医療福祉の現場からすれば後見人の存在は大きい.業務に収まらないあらゆることを委ね,その役を果たすことへの期待が募る.後見人の職務権限の無理解をなげくより,「人への関心」で接点を見つけたい.
 あらゆることの中には「その人なりの行いたいこと」も含まれる.システム下で満たせないことを後見人は問われる.しかし,いざ後見人として取り組むと,業務に収まらないあらゆることを後見制度は保障しない.まずは本制度に対する認識のズレを保健医療福祉システムの中で共有できていない課題を指摘したい.
3.後見制度において満たされない例
①外出同行・受診同行などの事実行為の担い手
 多くの後見人が直面する課題に,同行支援の要請がある.
 高齢者施設に入所中の人が外出を希望する.この場合,後見人は同行などの事実行為は職務ではない.契約行為の代理権を有するが,家族の代わりではない.保健医療福祉システムの中で対処すると費用がかかり,障害者総合支援法の行動援護や移動支援サービスも様々な条件があって利用が難しい.
②成年後見制度利用支援事業の充実
 後見制度は「本人が何を望み,本制度についてどう理解しているか」が重要である.本人抜きに申立てが進んだ事例には,後見開始後に関係悪化する例も多い.
 本人が制度利用したいと思った場合,現行の成年後見制度利用支援事業は,本人申立てを対象にしない自治体が多い.本人が納得しても,低所得で経費負担ができず利用を諦めるなど本事業も制約となっている.
おわりに
 私は地域に後見監督機能を求めたい.
 環境に目を向け,社会問題に関わるSWに本制度は地域の課題を教えてくれる.制度の改善と地域で本人や市民とともに,その人の立場に立った生活支援を保障していけるよう活動することが使命と考える.
シンポジウム8
2019年6月8日 14:25~16:25 老年精神第2会場(小ホールB1F/共通第19会場)
若年性認知症の臨床と社会支援
座長: 新井 哲明 ( 筑波大学医学医療系臨床医学域精神医学 )
    宮永 和夫 ( 南魚沼市立ゆきぐに大和病院 )
演者: 新井 哲明 ( 筑波大学医学医療系臨床医学域精神医学 )
    小長谷陽子 ( 認知症介護研究・研修大府センター )
    中西 亜紀 ( 大阪市立弘済院附属病院,大阪市福祉局高齢者施策部 )
    田中悠美子 ( 若年認知症ねりまの会MARINE )
1.若年性認知症の臨床的課題
新井哲明(筑波大学医学医療系臨床医学域精神医学)
 
 認知症は,65歳以上の老年期に発症することが多いが,65歳未満の初老期に発症する例があることが以前より知られており,近年はこれらを若年性認知症と総称することが多い.本邦では,平成18年度~20年度の厚生労働科学研究で若年性認知症有病率調査が実施され,有病者数・有病率は3.78万人(18歳~64歳人口10万対47.6)と推計されている.この10年の間に若年性認知症の研究が進み,その病態が明らかになりつつあるとともにそれに合わせて診断基準も変わってきている.そして,若年性認知症の生活実態は今なお不明な部分が多く,本人および家族を支援する社会的リソースも不足しているのが現状である.そこで,今日の若年性認知症の有病率・有病者数を明らかにするとともに,ご本人およびご家族の生活実態を明らかにするため,平成29年より国立研究開発法人日本医療研究開発機構の助成を受けて全国規模の調査が開始された.
 茨城県は先行研究と今回と両方において調査を行っていることから,現在の若年性認知症の臨床的課題を考える上で,茨城県における両調査の結果を比較した.まず有病者数・有病率に関する今回の一次調査の結果では,医療機関,介護系,障害関係,相談機関等計5,455施設に調査票を送付し,2,822施設より回答を得た(回収率51.7%).若年性認知症の人の総数は813名であり,医療機関に最も多く,特に200床以上の病院に多い傾向が認められ,これは前回調査と同様の傾向であることから,若年性認知症の人への対応は医療機関が中心である状態が続いていることが明らかとなった.診断の比率は,今回の調査では,アルツハイマー病が最も多く(56%),次いで前頭側頭型認知症(14%),血管性認知症(12%),レビー小体型認知症(3%),アルコール性(3%),頭部外傷後遺症(2%)の順であった. 前回調査では,血管性認知症が最も多く(42%),次いでアルツハイマー病(30%),レビー小体型認知症/パーキンソン病に伴う認知症(8%),頭部外傷後遺症(4%),アルコール性(3%),前頭側頭型認知症(2%)の順であり,今回の調査では,特にアルツハイマー病と前頭側頭型認知症の比率が上がり,血管性認知症の比率が下がっていた.これらの診断比率の変化の背景には,アルツハイマー病における高率な血管性病変合併の認識や高次脳機能障害概念の浸透,前頭側頭型認知症の国際診断基準の改訂による周知等が推察されるが,さらに検討を要する.
 また,今回の二次調査において,「若年性認知症の方の通いの場としてどのような場が必要か」を尋ねた質問への回答は,「外出や趣味活動を楽しめる通いの場」と答えた本人あるいは家族が最も多く(48.2%),「就労支援(9.1%)」や「軽作業などの就労に近いもの(25.5%)」を上回っており,本人および家族を支援する社会的リソースの整備を進める上で示唆的であった.
 シンポジウム当日は,若年性認知症の本人および家族に関する他の調査データも踏まえ,現在の若年性認知症の臨床的課題について論じたい.
2.若年性認知症の人と家族の生活実態と求められる支援
小長谷陽子(認知症介護研究・研修大府センター)
 
 働き盛りの65歳未満で発症する若年性認知症は,高齢者の認知症と比べて社会的認知がまだ十分でなく,必要とされる支援が本人や家族に届いていないのが現状である.
 認知症介護研究・研修大府センターでは,平成18年度から若年性認知症に対する効果的な支援体制を構築する研究事業を継続しているが,今回は,平成26年度に行った,全国15府県における若年性認知症の人と家族の生活実態調査の結果を報告する.
 対象機関(医療機関,介護保険施設,障害者施設)21,525件からの1次調査の回収割合は52.8%であった.2次調査の本人・家族からの回答で,383人の該当者を把握した.性別では,男性209人,女性174人,平均年齢±SDは男性58.9±6.3歳,女性が59.4±6.0歳であった.原因疾患は,アルツハイマー病が最も多く,次いで血管性認知症であった.
 発症時に仕事に就いていたのは221人で,勤務形態は,正社員・正職員が最も多く,次いで非常勤・パートであった.該当者に対する職場の対応としては“その他”が最も多かったが,“配慮が無かった”が次いで多く,“配置転換などの配慮があった”はわずかであった.また,調査時の仕事の状況は“退職した”が最も多かった.
 本人を含む世帯の主な収入では,家族の収入が最も多く,次いで,本人の障害年金等であった.本人が認知症になってから世帯の収入は約6割で減少していた.調査時の家計の状態については,“何とかまかなえている”世帯が最も多く,次いで“やや苦しい”と,“とても苦しい”が同程度であった.
 必要な情報しては,病気の症状や進行に関する情報,治療方法や薬に関する情報,専門医や専門病院に関する情報,障害年金など経済的支援に関する情報が多く挙げられ,また,困りごととしては,認知症の症状が進行していることと今後の生活や将来的な経済状態に不安があることが多かった.
 若年性認知症の人や家族に対する支援は高齢者の場合とは異なり,経済的課題や就労に関する支援,居場所の提案などさまざまであり,これらを一元的に行う役割を担う立場として,「若年性認知症支援コーデイネーター:支援コーデイネーター」が各都道府県に配置された.
 支援コーデイネーターは,若年性認知症の人のニーズに合った関係機関やサービスの担当者との「調整役」になることが期待されている.支援コーデイネーターが配置される相談窓口は,本人や家族の支援をワンストップで行い,必要に応じて職場や産業医,地域の当事者団体や福祉サービスの事業所と連携し,就労の継続や居場所づくりの支援を行うなど,市町村と共同してそれぞれの役割分担を協議しつつ,本人が自分らしい暮らしを続けられるよう,本人の生活に応じた総合的なコーデイネートを行う.
 具体的な業務としては,相談者からの相談内容を確認し,記録して整理することや,利用できる制度・サービスの情報提供が含まれる.また,都道府県に配置されているが,身近な地域である市町村が,主体的に若年性認知症の人やその家族を支援する体制を構築できるよう支援していくこと,および若年性認知症に関する知識の啓発・普及などである.
 支援コーデイネーターの配置状況や配置による効果・課題などについても述べる.
3.今日の公的事業の課題と行政が果たすべき役割
中西亜紀(大阪市立弘済院附属病院,大阪市福祉局高齢者施策部)
 
 現在,わが国では,認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)に基づいて認知症施策が進められている.厚生労働省は,若年性認知症施策の強化に関して「若年性認知症の人については,就労や生活費,子どもの教育等の経済的な問題が大きい.主介護者が配偶者となる場合が多く,時に本人や配偶者の親等の介護と重なって複数介護になる等の特徴があることから,居場所づくり,就労・社会参加支等の様々な分野にわたる支援を総合的に講じていきます」と述べている.具体的な施策としては,1)若年性認知症コールセンターの配置,2)全国若年性認知症コールセンターの設置,3)若年性認知症ハンドブックの普及が主たる施策として挙げられている.しかし,それ以外の認知症施策として進められている各種事業も,介護保険事業であれば2号被保険者(40歳から64歳)も対象となる.2018年に全自治体に設置された認知症初期集中支援チーム(以下「チーム」)でも支援対象者に若年性認知症の人があり,その後方支援が求められている認知症疾患医療センターは若年性認知症の診断・治療に重要な役割を担っている. また,2011年から配置された認知症地域支援推進員(以下「推進員」)は,2017年にその業務を①医療介護等の支援ネットワーク構築,②認知症対応力向上のための支援,③相談支援・支援体制構築と整理されたが,若年性認知症の人に重要な役割を担う「認知症カフェ」の開設やチームとの連携が業務となっており,また,若年性認知症支援コーディネーターは,推進員との連携が求められている.
 大阪市では,2014年のモデル事業から地域包括支援センター(以下「包括」,各区の包括設置数は1~5か所)チームを設置してきたが,2016年に24区にそれぞれ各1チームを設置した際に,それまで認知症疾患医療センター1か所あたり1人で配置していた推進員を,チームを補完するかたちで各チームに併置して市内24人とした.翌2017年には,チームと推進員を配置した包括を認知症強化型地域包括支援センターとして位置付け,さらに各事業を後方支援して地域課題を分析し,各区内の認知症施策を統合的に推進させる「認知症施策推進担当」を配置した.推進員の24区への配置については,若年性認知症の有病率を考えると,多くの専門職が個々に支援技術を高めることに困難があるが,一方で若年性認知症コーディネーターが,人口の過多によらず都道府県1か所の設置であったこと(現在は,政令市にも設置可能と拡大されている)から府下1か所では対応が困難と考えられたこと,チームの業務が6か月のため,若年性認知症や支援困難例への対応が不十分となりうること等を鑑みての判断であった. 2017年,2018年の2年間で,推進員は122人の若年性認知症の人を支援した.その支援結果からは,厚生労働省が指摘している課題がそのまま浮かび上がってきており,当日はその詳細をお示ししたい.
 行政は,限られた予算の中で,地域の実情に沿って課題を整理・検証し,地域に応じた施策展開を進めていく責務がある.我々専門職も,より望ましい道筋を,ともに考えていく役割が求められていると考える.
4.本人・家族・市民協働の暮らしづくりをめざして
田中悠美子(若年認知症ねりまの会MARINE)
 
1.活動概要
 2009年7月より東京都練馬区を拠点に,6名で設立準備会を発足し,同年10月に任意団体として設立をした.「若年認知症になっても,今までと同様な生活が送れるように,社会や地域に働きかけ,社会資源を有効に活用していく.また,若年認知症を含む病気や障がいを持った人が差別なく生活し,相互に人格と個性を尊重して安心して暮らすことのできる地域社会の実現をめざすこと」を理念としている.今年は発足から10年目の節目の年である.
 会員状況は,2019年1月末時点で,総数84名(本人25名,家族41名,サポーター18名)である.診断後まもない人から,介護保険サービス未利用の人,症状が進行し自宅で生活している人,病院や施設で暮らしている人まで多様である.最年少51歳,最年長76歳.原因疾患は,多い順にアルツハイマー病(75%),ピック病(12%),意味性認知症(8%),レビー小体型認知症,脳血管性認知症である.
 活動内容は,毎月の定例会(マリネサロン)の他に,家族介護者中心の集まり,子ども世代(30~40代が多い)の集まりを開催している.また,相談支援活動(年間約70件)を行っている.地域に根差したインフォーマルな共同体として,同じ病気や生活課題を持つ仲間同士,互いに経験や思いを共有しながら交流をしている.
2.喜びも悲しみも分かちあう
 当会の最大の強みは,本人や家族が相互に,思いや経験を共有し,個々の生活課題の解決に向けて活かしていることである.初めて相談をされる方々の多くは,孤独や喪失感,不安感を抱えている.その感情を吐露することで,抱えているものを一度手放すことができ,聴き手が理解し,受けとめてくれると感じることで少しずつ安心感を得ていく.話を聴く側も,自らの経験を振り返りながら,相手が安心できるように共感的な声かけをしている.専門的な相談支援機関と異なって,ピア(仲間)という存在が居ることは,若年認知症と向き合う上で大変心強いと考える.
 インターネットの普及で多くの情報を目にすることができるが,かえって情報の多さに困惑し,何が自分に必要な情報なのか迷走してしまう場合もある.なので,対面や電話で対話をすることの意義は大きいと考える.本人や家族は,最初は緊張しているが,うち解けて交流するにはあまり時間を要しない.
3.環境づくりや環境調整の重要性
 当会は,安心して話せる居場所・拠点づくりを意識して活動を行っている.その際に,サポーターの存在は大きな役割を果たしている.サポーターは,福祉や医療の専門職に加えて,認知症サポーター養成講座を受けた市民ボランティア,看取りを終えた家族が担っている.マリネサロンの企画運営や本人への個別サポート,会計事務などそれぞれが役割を持つ.
 今後の展望としては,持続可能な運営資金獲得と事務局体制の基盤強化,そして,各相談支援機関とのネットワークを構築していくこと.そして,若年認知症の本人,家族の拠り所になり,個々の状況に応じて,地域住民や様々な活動場所とつながれるハブ機能を展開していくことである.
シンポジウム9
2019年6月8日 14:25~16:25 老年精神第3会場(展示室B1F/共通第20会場)
高齢者の精神療法と心理社会的ケア
座長: 上村 直人 ( 高知大学医学部神経精神科学教室 )
    繁田 雅弘 ( 東京慈恵会医科大学精神医学講座 )
演者: 塩路理恵子 ( 首都大学東京人間健康科学研究科作業療法学域 )
    稲村 圭亮 ( 東京慈恵会医科大学附属柏病院精神神経科 )
    荒井由美子 ( 国立長寿医療研究センター長寿政策科学研究部 )
    扇澤 史子 ( 東京都健康長寿医療センター精神科 )
1.高齢者の不安と森田療法
塩路理恵子(首都大学東京人間健康科学研究科作業療法学域)
 
 森田療法は日本で発祥・発展してきた精神療法であり,不安・恐怖などの感情は人間が有限の生を生きる上で必ず生まれる自然なものと捉える点に大きな特徴を持つ.高齢者はこれまでと異なる身体の変調や体力低下,そして認知機能の低下を経験しやすい.それらから不安・注意・感覚の悪循環に陥ることがあり,森田療法的アプローチが活用され得る.高齢者の不安は背景因子が多様であり,幅もその深さ・強さも極めて広い.ここでは神経症性の不安と認知機能の低下に関する不安に絞って森田療法が活用できる点を考えていきたい.
①老いの受け入れ難さを伴う高齢者の神経症性の不安と森田療法
 A氏は青年期から何回かの危機と森田療法の治療を受けてきたケースであり,高齢になって改めて森田療法での治療を求めている.症例提示にあたりプライバシー保護のため本質を変えない範囲で改変を加えている.
【症例A】再入院時80代男性(初診時70代後半)身体表現性障害
主訴:首や後頭部の違和感
現病歴:10代後半に鼻炎を契機に鼻の違和感のために読書・勉強が困難となった.20代半ばで森田療法の本に出会い入院森田療法を受けた.40代半ばにも受療したが,69歳まで会社員として勤め上げた.70代後半に親戚との問題,ボランティアにパソコンが導入されたことに悩んでいた.首や肩の違和感と不安が再燃し,約3カ月の入院森田療法を受けた.82歳時に再燃,再入院となった.
 入院森田療法では,現在に応じた程よい行動を探るプロセスそのものが,老いによる変化を受け入れるプロセスとなっていた.落ち着いて動けるようになったとき「花がいい匂いがする」などの五感の表現,それまで口にしなかった年齢についての発言が見られるようになった.それは「老いの受け入れ難さ」を直接的に話題にし扱うこととは異なる回復過程と考えられる.「現在」を重視することは森田療法の特徴的なアプローチだが,高齢者の「現在」を扱うことはそこを起点として過去の体験,現在の程よい行動,近い未来にもつながる.それは高齢で入院森田療法を受けた症例の特殊なことではなく,「今日は何をやりましょうか」と問いかける日常の中で活用される.
②認知機能の低下に関する不安と森田療法
 近年,認知症に関する関心が高まり情報も多い.一方で認知機能の低下にまつわる不安を訴える人も多くみられる.その受け入れ難さも大きな問題であり,橋本(2018)によると専門外来通院中のMCIもしくは軽度AD患者を対象として実施した調査において多くが「認知症を否認したい気持ち」と「受容せざるを得ない気持ち」との間で揺れ動いていたという.認知機能の低下にまつわる不安に森田療法を活用するには「認知症が不安な気持ちの背後にあるのは何か」という問いがあるだろう.それは不安の背後に求めているもの・守りたいものがあればこその不安と読み直すことにつながる.「受け入れがたい気持ち」をねじ伏せるのではなく,不安を持ちながら「生活」に目を向け手探りをしていく.
 その人の過ごしてきた「時間」に敬意を持つ,不安を持つその人のあり方に目を向けていく,年代に特有な背景因子の理解と同時に個別性を重視する,共有できる伝え方などを基盤とした森田療法的アプローチを検討したい.
2.高齢者の身体症状症に対する介入;「心気症状」に対する洞察および疾患モデルからの解釈
稲村圭亮(東京慈恵会医科大学附属柏病院精神神経科)
 
 DSM-5診断基準における身体症状症の基本的な疾患概念は「1つまたはそれ以上の,苦痛を伴う,または日常生活に意味のある混乱を引き起こす身体症状」および「身体症状,またはそれに伴う健康への懸念に関連した過度な思考,感情,または行動」として一括して定義される.しかし,身体症状症におけるこれらの身体症状の背景には様々な心理機制が存在する.古典的には,疾病利得的な色彩が強く,失立・失歩などの随意運動機能障害を呈したり,他者への訴えが顕著なものは,「転換症状(ヒステリー)」と呼ばれ,また,その中でも多彩な身体症状を呈するものは「身体化」という概念で説明されてきた.一方で,自己の身体への関心の集中により疾病恐怖的な訴えが前景にあるものは「心気症状」と呼ばれてきた.身体症状症の背景には,これらの代表的な3つの概念が存在することが従来の考え方であった.しかしながら,DSM-5診断基準においては,これらの病因を問わず,これらを身体症状症と一括して称するようになった.
 一方で,高齢者における身体症状症の背景基盤は,若年者とは異なることが多い.実際の疫学調査からも,若年者における身体症状症の背景には「転換症状(ヒステリー)」や「身体化」といった心理機制が存在する傾向にあるが,高齢者では「心気症状」が存在することが多い.その理由として,様々な近親者の死や実際の身体疾患の罹患などのライフイベントにより,自己の身体に対する不安が高まることなどが挙げられる.
 近年,この「心気症状」という言葉はDSMの改変などに伴い使用されることが少なくなっているが,高齢者における身体症状症の治療介入において重要な役割を果たす.例えば,患者の身体症状の背景に「心気症状」が存在し,それに対する洞察を得ることができれば,治療意欲も得られやすい.実際,身体症状症患者における治療意欲は,その治療経過に大きく反映されることも知られている.逆に「心気症状」に対する洞察が得られなければ,背景に「転換症状」が存在する可能性や,うつ病などに代表される気分障害との合併に留意しなければならない.
 本シンポジウムでは,高齢者の身体症状症の自験例をもとに,「心気症状」に対する洞察の有無に応じた介入を,実臨床の補助となる疾患モデルを呈示することで,介入の一端を紹介したい.
3.短縮版Zarit介護負担尺度日本語版(J-ZBI_8)を用いたハイリスク介護者の迅速な同定と簡便な家族介護者支援の試み
荒井由美子(国立長寿医療研究センター長寿政策科学研究部)
 
 先行研究によれば,家族介護者にとって在宅介護が負担であると,介護者自身が抑うつ症状を呈したり,介護される側(以下,被介護者)に対する在宅介護の質の低下や不適切処遇に至り,在宅介護の継続が困難になる場合があることが明らかになっている(Arai&Zarit, 2011 ; Joling et al, 2017).こうした状況になる可能性のある家族介護者(以下,ハイリスク介護者)を,介護の現場において迅速に同定し,支援していくことは,認知症当事者のQOLを保つような在宅介護を継続していく上でも極めて重要であると考えられる.
 そこで,演者らは,短縮版Zarit介護負担尺度日本語版(J-ZBI_8)(荒井ら,2003;尺度使用許諾先:三京房)を用いて,臨床の現場においてハイリスク介護者を迅速に同定することを企図して,家族介護者の大規模データ(n=3,572)(Arai, et al, 2014 ; Arai&Zarit,2014)を用い,家族介護者が抑うつ症状を呈するJ-ZBI_8得点の閾値(カットオフポイント)(Arai&Zarit, 2014),および不適切処遇に対するカットオフポイントを算出した(Arai&Zarit, 2017).演者らが算出したカットオフポイントは,あくまでも目安ではあるが,臨床の現場においてハイリスク家族介護者を迅速に同定し,支援に繋げていくことへの一助となりうると考えられる.次に,こうした手続きで見いだしたハイリスク家族介護者に対し,時間的・物理的な負担が寡少であり,同時に支援する側(医療,看護,介護,福祉従事者など)にとっても負担が少ない方法を開発すべく,J-ZBI_8の回答状況に基づいた簡便な介護者支援法(A prompt and practical on-site support programme,以下,PPOS支援プログラム)を作成した. その結果,試験研究の段階ではあるが,看護師らによるPPOS支援プログラム施行の前後において,家族介護者におけるJ-ZBI_8得点が有意に低下し,一方で,介護に対する充実感得点は有意に上昇していた(Arai et al, 2018).さらに在宅介護の現場においても,上述の方法に準拠して,介護支援専門員が訪問時に家族介護者に対し簡便な支援を行い,その効果を試験的ではあるが検証した(梶原,荒井ら,2019).当日は,これらの知見をもとに,臨床現場において持続可能な家族介護者支援のあり方について考察したい.
4.心理職による心理社会的ケアの実践;認知症とともに生きる希望を支えることを目指して
扇澤史子(東京都健康長寿医療センター精神科)
 
「忘れても生きていける力を,自分は持っているだろうかと思うときがある.」
 認知症と診断された本人を対象としたプログラム「私たちで話そう会」で,ある参加者が語った言葉である.
 認知症本人にとって,進行性の生活障害は,単なる日常の困り事を超えて,生活の基盤を徐々に揺るがす「自己像の変化」と同義の場合がある(扇澤2015).したがって,生活障害を補う工夫を本人とともに考える作業は,変わりゆく自己像に向き合う本人を全人的に支える取り組みであると考え,筆者らは2015年から「私たちで話そう会」を行ってきた.
 近年,認知症に対する社会的関心が高まり,早期の段階で自ら認知症を疑って受診する者も少なくない.彼らが求めているのは,認知症の正確な診断だけでなく,冒頭のように,今後自分がどうなっていくのか分からない不確かさの中で,どのように生きていくのかという根源的な問いに対する答えと支えであろう.
 これまで認知症の医療介護現場で実践されてきた心理社会的介入の多くは,主として低下しつつある認知機能や意欲・自発性の維持・改善,あるいは不安や抑うつ等の心理的サポートを目的としたものが多く,自分が認知症になったことの意味付けや今後認知症とともに生きていくための工夫・気持ちの持ち方といった根源的な問いに正面から取り組んだものは,ほとんどなかった.
 「私たちで話そう会」は,参加した者に「物忘れを隠さなくてもよい,等身大の自分でいられる居場所」あるいは「(認知症でない者には容易に理解しがたい)自分と同じ孤独を持つ者に出会える場所」と認識され,繰り返し足を運ぶ人が徐々に増えてきた.開始後1~2年間は,予定を失念する者も多く,参加者が1,2名という時期が続いたが,リマインドの方法を試行錯誤して,4年が経とうとする現在,7~8人が互いを支え合うグループに成長した.
 「私たちで話そう会」は,互いの名前や顔を覚えていなくても,同じ話を何度繰り返しても安心していられる場であり,「物忘れがあっても,生きていればいい」と笑い合ったり,時に,進行という抗えない事実を突きつけられて落ち込むことがあれば,そっと受け止めあう土壌が育ってきた.このような仲間と専門職の双方向的なピアサポートは,1か月に1度たった1時間の試みであるが,その後1か月間の支えや張り合いになると言う.仲間同士で日常のささやかな出来事から深刻な悩みまでを恰好つけずに自由に話せることで,悩みをもつのが自分だけでなく認知症は特別な病でもないという「経験の共有化」や「相対化」(宮上,2004)が生じ,認知症である自分を少しずつ受け入れるようになる者もいる.
 多くの現場で,従来の心理社会的ケアと併せて,診断後支援のひとつとしてこのような試みが広がれば,認知症診断によって一度は自分らしく生きることを断念しかけたその手に自分なりの展望を取り戻し,今後どうなるか分からない不確かさを持ちながらも新たな一歩を踏み出せる人が増えるかもしれない.当日は,これまで試みた様々な心理社会的ケアの具体的な取り組みとともに,筆者には到底答えられない冒頭の難題について,参加者の方々から教えてもらったいくつかの答えを紹介できたら嬉しく思う.
教育講演
教育講演5
2019年6月8日 13:20~14:20 老年精神第1会場(大ホール2F/共通第18会場)
成年後見制度;問題の所在と今後の展望
座長: 深津  亮 ( (公財)西熊谷病院埼玉県認知症疾患医療センター )
演者: 齋藤 正彦 ( 東京都立松沢病院 )
齋藤正彦(東京都立松沢病院)
 
 1999年12月,民法改正を含む後見4法が成立し,2000年4月介護保険のサービス開始と同時に新しい制度がスタートした.新制度のスタートに当たり,立法担当者らは,『自己決定の尊重,残存能力の活用,ノーマライゼーションの推進』(小林明彦ら2000)を新しい理念として掲げた.より障害の軽い人を対象とした補助類型の新設,任意後見制度を創設することによって多様な能力障害,必要とされる保護の多様性に対応できるようにしたという.この時,『保護の実効性を向上するため』(前掲書)として,保佐,補助にも本人の同意を条件に代理権が付与された.また,親族からの申し立てが期待できない場合に備える制度として市区町村長による請求を認められるようになった.2000年度に9千件余りだった1年間の成年後見に関する審判請求数は,2017年には3万6千件弱とおよそ4倍に増加し,市区町村長による申請も全体の0.5%から19.8%にまで増加した.この間,高齢者の利用が増え,2017年には後見等開始の原因として,認知症が63.3%を占めるに至った.
 こうした中,2016年には成年後見制度利用促進法が成立し,2017年度から5年をめどに,利用促進基本計画が策定されることとなった.内閣府によれば,計画のポイントは,利用者がメリットを実感できる制度・運用の改善,権利擁護支援の地域連携ネットワークづくり,不正防止の徹底と利用しやすさとの調和であるという.利用促進法の制定に伴って,厚生労働省が,成年後見制度利用促進に関する業務の一部を担当することになった.
 2000年の法改正以来,制度運用の状況を振り返ると,意思能力が不十分である人の資産を保護するための制度であった成年後見制度が,家族による支援が受けられない認知症の高齢者等の生活全般を支援する制度に変化しつつあるということがわかる.
 この教育講演に置いて論じたいことは,こうした成年後見制度運用を『推進』してよいものか,という演者の強い疑問である.1947年の民法において,禁治産・準禁治産制度の根拠は,本人の財産保全,親族の相続期待権・扶養請求権の保全,扶養義務の発生予防,社会公共に対する危害及び公的財政負担の予防とされていた(小林一俊,1996).新しい理念を掲げた2000年の民法改正でも制度の根幹は全く変わっていない.ほとんどすべての財産行為に関する代理権,同意権・取消権という強大な権限を持つ後見人に,対等な立場で自己決定を促すことはできない.さらに,現行制度は,審判の後,本人が異議を申し立てるデュープロセスさえ確立されていない.これは,著しい私権制限を伴う制度として致命的な欠陥だと言ってよい.内閣府によるパンフレットには,今後,検討されるべき課題として,『本人の生活状況等を踏まえた診断内容について分かりやすく記載できる診断書の在り方の検討』が挙げられている.これは,生活の破たんを根拠に,大きく私権を制限してしまう可能性を開くもので,『浪費者』を制度の対象から除外した2000年の改正から後退するものである.
 制度の骨格からも,現在の運用状況からも,成年後見制度と障碍者の『自己決定支援』という理念は,相矛盾するものであると言わざるを得ない.
教育講演6
2019年6月8日 13:20~14:20 老年精神第2会場(小ホールB1F/共通第19会場)
若年認知症の疫学調査と社会政策
座長: 新井 平伊 ( アルツクリニック東京 )
演者: 宮永 和夫 ( 南魚沼市立ゆきぐに大和病院 )
宮永和夫(南魚沼市立ゆきぐに大和病院)
 
 種々の施策は,統計に基づいている.若年認知症の疫学調査は現在までに全国規模で3回行われた.それぞれに厚生労働省の指導によって行われたこともあり,色々な点で施策などに反映されている.ここでは私が関係した範囲で,疫学調査の内容,厚生労働省の施策,若年認知症本人と家族ないし家族会の歩みの3点に関して,相互に影響し合ったであろう内容と経過について述べたい.併せて,今後の若年認知症の課題を纏めてみた.なお,調査内容や研究者などの詳細は当日のスライドで示したい.
1 .第1回全国調査(1996-1999)の結果
 報告の内容は,①有病率や疾患の種類,社会制度の浸透率などであるが,その後に,②疫学調査に協力された家族や支援者らを中心とした若年認知症家族会の設立,③認知症と鑑別されることになった高次脳機能障害モデル事業への貢献がある.なお,最初の全国規模の若年認知症家族会(彩星の会,愛都の会など)発足の後に,各地に家族会(奈良・きずなや,北海道ひまわりの会など)が生まれ,それらの家族会の活動の内容が,同じ時期の厚生労働省の政策に反映されてきた.
2 .第2回全国調査(2006-2008)の結果
 報告の内容は,10年後の有病率や社会制度の変化などとともに,本人や家族の要望を施策に組み込む動きがみられた.具体的には,「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」の中に,①認知症に対する就労支援を目的に地域包括支援センター内に認知症連携担当者が置かれ,それは②若年性認知症支援コーディネーター制度に引き継がれるとともに,③労働局により制度化された両立支援の対象疾患に若年認知症が含まれることになった.なお,若年性認知症コーディネーターの内容や研修は,NPO若年認知症サポートセンターの若年認知症専門員研修も影響し,新宿区の就労型デイ「ジョイント」や町田市のデイサービス「DAYS BLG!」の活動は2011年,厚生労働省から介護を受けている人の労働対価を認める通達へと結びついた.
3 .第3回全国調査(2016-2019)の結果
 現在進行中であり,結果は出ていない.10年間の有病率の変化などと共に,地域差の有無や社会保障制度の達成率などの確認とともに,家族の実態調査などもあり,今後の施策への参考資料になると思われる.併せて,個人情報保護法が疫学調査に悪影響を及ぼした点も触れたい.
4 .今後の課題
 現時点の制度的な不備として,①若年認知症の障害年金の等級基準かないことや初診後1年6ヶ月という申請基準の縛り,②39歳以下の認知症患者が介護保険で非該当であること,③社会参加支援としての移動支援制度の不備・不足,④若年性認知症支援コーディネーター設置人数の不足,⑤介護保険での若年認知症受け入れ施設の少なさ,がある.また,地域支援(自助・互助)関係では,⑥若年認知症家族会への人的・経済的支援の欠如,⑦認知症カフェを含む居場所作りへの支援の欠如がある.
 なお,2017年の新オレンジプラン改訂の中で,「若年性認知症の人の社会参加の取組み支援」が提案されたが,具体的取り組みは各地の組織や団体に委ねられる形態をとっている.いわゆる公・共(公助・共助)でなく,私(自助・互助)の仕組みになっているため,全国で偏りが出るなど,新たな問題が生じるかもしれない.
教育講演7
2019年6月8日 13:20~14:20 老年精神第3会場(展示室B1F/共通第20会場)
高齢者や認知症患者に対する小精神療法の有用性
座長: 真田 順子 ( さなだクリニック )
演者: 繁田 雅弘 ( 東京慈恵会医科大学精神医学講座 )
繁田雅弘,稲村圭亮(東京慈恵会医科大学精神医学講座)
 
 従来,高齢者や認知症患者は精神療法の対象ではなかった.自己洞察が得られにくく,人格の修正や成長は期待できないと考えられるからである.たしかに,若年者や認知機能障害のない患者と比べれば,精神面での可塑性は低いかもしれない.しかし,高齢者でも若年者と同様の葛藤や不安を有する者も少なくない.そうした患者に対し,支持的精神療法の出発点である患者への共感的な関心や,医師と患者との信頼関係の構築が,結果的に高齢者の適応能力を高めることをしばしば経験する.
 また近年,アルツハイマー型認知症を中心とした認知症に関する診断技術が向上し,早期診断が広く行われるようになった.軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment:MCI)も含めて早期診断・早期介入の啓発がさかんに行われるようになった.そしてMCIや病初期の認知症患者は,「これまでとはどこかが違う」といった自らの変化を自覚できる程度の認知機能は十二分に保たれている場合が多く,それゆえに自己の変化に対して心理反応性に不安や抑うつが生じやすい.また記憶障害や遂行機能障害などを自覚すると,必ずしも認知症との診断には至らない状態であっても,もの忘れや生活上の失敗が不快だけでなく不安や緊張,困惑や混乱いといった症状を引き起こすこともまれではない.時間や場所などの見当識の低下も容易に不安や混乱を引き起こす.物の置き忘れ,とりわけ大切なものが見つからなくなると,焦燥やパニックが生じることもある.「あそこ」に置いたはずだとの記憶錯誤が生じると誰かが持っていったと被害的になるかもしれない. 周りに迷惑をかけることが苦になって自責感も生じ得る.失敗が重なればうつ状態に陥ったり,自己効力感が低下し,意欲低下や自発性低下を伴うことにもなる.こうした状況で周囲が批判や非難を繰り返せば(場合によっては助言や励ましでさえも)本人を精神的に追い込んで,情動を不安定にさせることもある.このように認知症疾患では,繰り返される生活上の困難への直面と,周囲からなされる助言や介入が(場合によっては管理や監視が),行動心理症状Behavioral and psychological symptomとまでは呼べないものの,様々な精神心理症状を呈しやすい状態に陥っているといえる.こうした精神症状は,顕著に患者の自尊感情や自己効力感を低め,ひいては現実検討能力を不安定にさせ,感情統制力を低めてしまう.その結果,自分が置かれた状況での適応能力も低下してしまう.こうした状態に対しても,支持的精神療法や外来森田療法を試みることで,社会適応能力が回復することがまれでない. 結果的に何らかの洞察が得られることもあるが,それを治療目標とはせず,本人らしい生活の再発見を目指した対話を試みることで,治療効果が得られることが少なくない.今回の教育講演では,高齢者や認知機能障害の人が有する様々の神経症症状に焦点を置き,精神療法的アプローチの可能性を論じたい.認知機能低下に対する不安を無理に排除しようとするのではなく,不安のままに生活を再構築していくこと,そのような姿勢に転じることが鍵になると考えられる.
共催セミナー
ランチョンセミナー5
2019年6月8日 12:10~13:10 老年精神第1会場(大ホール2F/共通第18会場)
認知症の早期診断
座長: 池田  学(大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室)
演者: 新井 哲明(筑波大学医学医療系臨床医学域精神医学,筑波大学附属病院認知症疾患医療センター)
共催: エーザイ株式会社
ランチョンセミナー6
2019年6月8日 12:10~13:10 老年精神第2会場(小ホールB1F/共通第19会場)
レビー小体型認知症に伴うパーキンソニズム
座長: 數井 裕光(高知大学医学部神経精神科学講座)
1.レビー小体型認知症のパーキンソニズムの捉え方─脳神経内科医の立場から─
演者: 佐光  亘(徳島大学大学院医歯薬学研究部臨床神経科学分野(脳神経内科))
2.レビー小体型認知症に伴うパーキンソニズムの治療戦略─精神科医の立場から─
演者: 小林 良太(山形大学医学部精神医学講座)
共催: 大日本住友製薬株式会社
ランチョンセミナー7
2019年6月8日 12:10~13:10 老年精神第3会場(展示室B1F/共通第20会場)
認知症と生活習慣病・身体合併症~その実態と対策・治療を考える~
座長: 新井 平伊(アルツクリニック東京)
演者: 川畑 信也(八千代病院愛知県認知症疾患医療センター)
共催: 第一三共株式会社
ランチョンセミナー8
2019年6月8日 12:10~13:10 老年精神第4会場(第3会議室2F/共通第21会場)
脳腸相関から考える慢性便秘症
座長: 北村  伸(医療法人社団仁寿会中村病院神経内科)
演者: 福土  審(東北大学大学院医学系研究科行動医学分野)
共催: マイランEPD合同会社
モーニングセミナー1
2019年6月8日 8:30~9:20 老年精神第2会場(小ホールB1F/共通第19会場)
今求められる認知症多職種連携と薬物療法への期待
座長: 羽生 春夫(東京医科大学高齢診療科)
演者: 小林 直人(あずま通りクリニック)
共催: ヤンセンファーマ株式会社,武田薬品工業株式会社
モーニングセミナー2
2019年6月8日 8:30~9:20 老年精神第3会場(展示室B1F/共通第20会場)
認知症の診断に画像検査を活かしておられますか?~高齢者診療の最近の話題と脳SPECTの役割~
座長: 塩﨑 一昌(横浜市総合保健医療センター地域精神保健部)
演者: 千葉 義幸(ろっぽう診療所)
共催: 日本メジフィジックス株式会社
後援: 日本脳神経核医学研究会,日本核医学会
一般演題(口頭発表)
老年精神第4会場(第3会議室2F/共通第21会場)
6月8日(土) 9:30~10:18 地域医療・医療施設①
10:18~10:54 地域医療・医療施設②
10:54~11:30 神経画像・検査
13:20~14:20 若年性認知症・非薬物療法
一般演題(ポスター発表)
ポスター会場(2F)
合同シンポジウム13 主導学会:第24回日本老年看護学会学術集会
2019年6月8日 10:00~11:30 東北大学百周年記念会館「川内萩ホール,2F」(共通第16会場)
救急医療の現場での高齢者をとりまく諸問題
座長: 湯浅美千代 ( 順天堂大学大学院医療看護学研究科 )
    大黒 正志 ( 金沢医科大学高齢医学 )
演者: 大黒 正志 ( 金沢医科大学高齢医学 )
    鵜飼 克行 ( 総合上飯田第一病院,名古屋大学大学院医学系研究科精神医学分野 )
    比田井理恵 ( 千葉県救急医療センター )
合同シンポジウム14 主導学会:第42回日本基礎老化学会大会
2019年6月8日 13:00~14:30 東北大学百周年記念会館「川内萩ホール,2F」(共通第16会場)
老化制御の可能性
座長: 石神 昭人 ( 東京都健康長寿医療センター研究所老化制御研究チーム分子老化制御 )
    江頭 正人 ( 東京大学大学院医学系研究科医学教育国際研究センター医学教育部門 )
演者: 石神 昭人 ( 東京都健康長寿医療センター研究所老化制御研究チーム分子老化制御 )
    中島 友紀 ( 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子情報伝達学,日本医療研究開発機構AMED-CREST )
    浦野 友彦 ( 国際医療福祉大学医学部老年病学講座 )
市民公開講座
2019年6月8日 15:00~17:00 東北大学百周年記念会館「川内萩ホール,2F」(共通第16会場)
健康長寿を語る~人生100 年時代に向けて~
1.政宗公長寿の心得
  演者: 伊達 泰宗(伊達家三十四世仙台伊達家十八代当主)
  ※名前の文字「泰」は、正しくは旧字「𣳾(https://jigen.net/kanji/146686)」です.ホームページでは当用漢字を使用しております.
2.スマートエイジングと健康長寿
  演者: 川島 隆太(東北大学加齢医学研究所)