※所属は開催当時

プログラム/Program

タイムテーブル/Timetable

第34回大会:プログラム /Program

6月6日(木) 第31回日本老年学会総会のみ

※7学会共通会場番号を設けています(ポケットプログラム掲載用).

第31回日本老年学会総会
会長講演
2019年6月6日 12:40~13:10 仙台国際センター会議棟「大ホール,2F」(共通第1会場)
老年学先端研究と平衡老化
座長: 荒井 啓行 ( 東北大学加齢医学研究所脳科学研究部門老年医学分野 )
演者: 佐々木英忠 ( 東北大学名誉教授/日本老年医学会元理事長 )
特別講演
2019年6月6日 13:10~14:00 仙台国際センター会議棟「大ホール,2F」(共通第1会場)
現代人の死生観;QOLはQOD
座長: 服部 佳功 ( 東北大学大学院歯学研究科加齢歯科学分野 )
演者: 鈴木 岩弓 ( 東北大学 )
合同シンポジウム1 主導学会:第61回日本老年社会科学会大会
2019年6月6日 9:30~11:30 仙台国際センター会議棟「大ホール,2F」(共通第1会場)
認知症の人と家族への支援
座長: 長田 久雄 ( 桜美林大学大学院老年学研究科 )
    山崎 英樹 ( 医療法人社団清山会いずみの杜診療所 )
演者: 松本 一生 ( 医療法人圓生会松本診療所 )
    平野 浩彦 ( 東京都健康長寿医療センター病院歯科口腔外科 )
    田中 和子 ( わそら街なかナースステーション )
    服部万里子 ( 服部メディカル研究所 )
    矢吹 知之 ( 認知症介護研究・研修仙台センター,東北福祉大学 )
合同シンポジウム2 主導学会:第61回日本老年医学会学術集会
2019年6月6日 14:30~16:00 仙台国際センター会議棟「大ホール,2F」(共通第1会場)
老年学における認知症研究の最前線
座長: 羽生 春夫 ( 東京医科大学高齢総合医学分野 )
    繁田 雅弘 ( 東京慈恵会医科大学精神医学講座 )
演者: 木村 展之 ( 国立長寿医療研究センター認知症先進医療開発センターアルツハイマー病研究部病因遺伝子研究室 )
    東海林幹夫 ( 老年病研究所附属病院認知症センター )
    數井 裕光 ( 高知大学医学部神経精神科学講座 )
    鈴木みずえ ( 浜松医科大学臨床看護学講座 )
合同シンポジウム3 主導学会:第18回日本ケアマネジメント学会研究大会
2019年6月6日 16:00~18:00 仙台国際センター会議棟「大ホール,2F」(共通第1会場)
大規模地震災害への対応
~東日本大震災等の教訓と予想される今後の大規模地震災害対応~
座長: 関田 康慶 ( 東北福祉大学感性福祉研究所 )
    冲永 壯治 ( 東北大学加齢医学研究所老年医学分野 )
演者: 今村 文彦 ( 東北大学災害科学国際研究所津波工学研究分野 )
    大塚耕太郎 ( 岩手医科大学神経精神科学講座,岩手県こころのケアセンター,岩手医科大学災害・地域精神医学講座 )
    足立 了平 ( 神戸常盤大学短期大学部口腔保健学科,ときわ病院歯科口腔外科 )
    吉田 俊子 ( 聖路加国際大学大学院看護学研究科 )
    関田 康慶 ( 東北福祉大学感性福祉研究所 )
合同シンポジウム4 主導学会:第61回日本老年医学会学術集会
2019年6月6日 9:30~11:30 仙台国際センター会議棟「橘,2F」(共通第2会場)
AI(人工知能)は超高齢社会の課題を救えるのか
座長: 飯島 勝矢 ( 東京大学高齢社会総合研究機構 )
    百瀬由美子 ( 愛知県立大学看護学部 )
演者: 諏訪さゆり ( 千葉大学大学院看護学研究科訪問看護学領域 )
    鹿野 佑介 ( 株式会社ウェルモ )
    小川 晃子 ( 岩手県立大学社会福祉学部社会福祉学科 )
    金澤  学 ( 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野 )
    坂田 宗之 ( 東京都健康長寿医療センター研究所神経画像研究チーム )
合同シンポジウム5 主導学会:第30回日本老年歯科医学会学術大会
2019年6月6日 14:30~16:00 仙台国際センター会議棟「橘,2F」(共通第2会場)
栄養・食べる力
座長: 菊谷  武 ( 日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック )
    樋上 賀一 ( 東京理科大学薬学部生命創薬科学科 )
演者: 樋上 賀一 ( 東京理科大学薬学部生命創薬科学科 )
    菊谷  武 ( 日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック )
    山田 律子 ( 北海道医療大学看護福祉学部老年看護学部門 )
    利波美也子 ( 有限会社となみ・元気ケアステーション )
合同シンポジウム6 主導学会:第34回日本老年精神医学会
2019年6月6日 16:00~17:30 仙台国際センター会議棟「橘,2F」(共通第2会場)
高齢者の住まいと生活支援
座長: 足立  啓 ( 和歌山大学名誉教授 )
    中嶋 義文 ( 三井記念病院精神科 )
演者: 狩野  徹 ( 岩手県立大学社会福祉学部 )
    岡村  毅 ( 東京都健康長寿医療センター研究所自立促進と精神保健研究チーム,東京大学医学部精神神経科,大正大学地域構想研究所,上智大学グリーフケア研究所 )
    柿沼 倫弘 ( 国立保健医療科学院医療・福祉サービス研究部 )
1.可能な限り長く生活が継続できる住宅の建築計画的課題
狩野 徹(岩手県立大学社会福祉学部)
 
 本来,住宅は人の生活を支援したり守ったりする役割があり,自宅で生まれ,自宅でさまざまな行事などを行い,地域の住民と交流し,最後は自宅で息を引き取り,生活の場としての機能があった.しかしわが国では高度成長期,都市への集中が始まり,また住宅取得を大きなゴールとする経済的な価値観の変化があり,住宅が経済的な条件で左右されるのが普通になってしまった.北欧などのように住まい・住宅が生活の基本で社会保障の根本である国とは異なる方向を取ってきた.
 伝統的な住宅では,和室が中心で多様な使い方に対応し,食事の場であったり,就寝の場であったり,催事の場であったり,自由に使える構造であった.日当たり,風通しなどを自由にコントロールできなかったときは,自然と玄関の位置や,台所の位置,トイレの位置,さらには屋根の形や材料などがほぼ地域の状況に合わせ自然と地域らしさなどを出していた.しかし技術が進歩した結果,どの位置でも何の部屋でも配置することに問題が少なくなり,自由に家の設計ができるようになり,さらに,各室が機能分担し,寝室は寝るだけ,食堂は食べるだけの部屋のようになり,必要な部屋の種類が増えることから各室の面積が小さくなっていった.例えば小さな子供部屋は他への転用が難しく,家族単位が小さくなると,ほとんど使わない部屋となっていく.高齢者のみの世帯になれば,家全体としては面積があるものの,実際に使える部屋は限られ,広くほしい,浴室やトイレは狭く困ることになる.技術がなかったときは,だいたいトイレの位置,食堂の位置,などはほぼ一定の配置があったため,どの家に行ってもほぼ共通で迷うことはなかった.
 住宅は個人的要素が大きいため,民家等を利用した認知症高齢者向けグループホームなどの事例を紹介しながら,課題を紹介する.
2.精神的課題を持つ人の住まいと生活支援;ホームレス支援の現場から
岡村 毅(東京都健康長寿医療センター研究所自立促進と精神保健研究チーム,東京大学医学部精神神経科,大正大学地域構想研究所,上智大学グリーフケア研究所)
 
 ホームレスの人々はこの社会で最も困難に直面している弱者といえる.とりわけ高齢者ではそうだろう.彼らが幸福に暮らせる社会こそが,誰もが幸福に暮らせる社会であろう.本シンポジウムではホームレス支援および研究に従事した経験に基づいて,高齢社会における住まいと生活支援を論じたい.
 NPO法人ふるさとの会は,東京でおよそ1200名のホームレスの人を支援する,日本を代表するホームレス支援団体の一つである.その住まい・生活支援は高く評価されているが,演者らのグループは縁あって彼らと研究してきた.
 これまで,ホームレスの人々は,住み込みで働いていた中高年男性が住まいと仕事を同時に失う経路(貧困研究2013),精神的健康度が極めて低い(Psychiatry Clin Neurosci 2014),自殺関連行動のリスクが高い(Soc Psychiatry Psychiatr Epidemiol 2014),精神疾患をもつものが多い(Psyachiatric Services 2015),高齢者の8割がMMSEでカットオフ以下である(Psychogeriatrics 2017),統合失調症と器質性精神障害では地域移行の経路が異なる(Psychogeriatrics 2018)などの知見を得てきた.
 近年は,高齢期までは安定して暮らしてきた方が,一人で生活できなくなり,孤立し,何らかのきっかけで住まいを失い,ホームレス支援団体の利用者となるケースが増えている.実はこれはホームレス研究の領域では「高齢期にはじめてホームレスとなる群」という世界的な新現象である.
 現代社会では,高齢,単身,独居,貧困,無縁,障害をもつ高齢者が増えており,彼らが住まいを失うリスクは増していることは,臨床家は感じていることだろう.老年学には,成功した(サクセスフル),生産的な(プロダクティブ)高齢期を追求するだけでなく,住まいを失い,生活もままならない高齢者が希望と尊厳をもって暮らせる社会を創るという使命がある.その実現のために,社会で最も困難に直面している弱者を支援してきたホームレス支援団体の持つ臨床知が貢献してくれるに違いない.
3.高齢者の住まいと生活支援のためのマネジメント
柿沼倫弘(国立保健医療科学院医療・福祉サービス研究部)
 
 高齢者の生活を支援していくための機能として,居住,保健,医療,介護,リハビリテーション,社会福祉,生活支援(保険外のサービスも含む)等といったものがある.これらの組み合わせがサービスとして提供されている.
 わが国では,認知症高齢者の数は急速に増大していて,その居住支援と生活支援のあり方が問われている.しかし,利用可能な資源は限られているので,それらを効果的かつ効率的に活用し,成果を得ることのできるマネジメントが求められる.
 このようなマネジメントを可能にするためには,特定の主体のみが考えるのではなく,複数の主体がそれぞれの立場から認知症高齢者の居住支援と生活支援を考えなければならない.ここでは国,都道府県,市町村,医療機関,介護サービス等提供事業者,地域包括支援センター,患者・利用者,利用者家族,地域住民等があげられる.
 国,都道府県や市町村には,地域づくりといった観点から上記の要素に関するデータ分析に基づいた課題解決のための適切な資源配分とシステム構築が求められる.これが今後より重要になるマネジメントの大きな柱の一つであると考える.このことは,人材確保とも関連が深く,一体的な議論が期待される.医療機関や介護サービス等の提供事業者には,経営の持続可能性の確保と地域貢献が求められる.そのためには,データ分析や専門的な観点からの関係機関や専門職との連携の円滑化,質向上のみではなく,本来業務に携わるための業務の効率化も必要である.これらが良質な入退去・入退院支援にもつながる.地域の特性に応じたサービスの組み合わせや雇用の創出も期待される.
 サービス提供者側のみではなく,現段階では医療介護サービスを常時必要としない地域住民の参加も認知症高齢者の居住支援と生活支援には不可欠である.社会的なコンセンサスが形成できるような取り組みが必要である.人口減少と長命化したわが国においては課題が多いが,多様な立場からの意見と議論を通じて,認知症とともに暮らすことへの示唆を得たい.
合同シンポジウム7 主導学会:第34回日本老年精神医学会
2019年6月6日 9:30~11:00 東北大学百周年記念会館「川内萩ホール,2F」(共通第16会場)
高齢者の地域生活における権利擁護を考える
座長: 飯島  節 ( 介護老人保健施設ミレニアム桜台 )
    成本  迅 ( 京都府立医科大学大学院医学研究科精神機能病態学 )
演者: 植村 和正 ( 愛知淑徳大学健康医療科学部健康栄養学科 )
    吉川 悠貴 ( 東北福祉大学総合福祉学部社会福祉学科,認知症介護研究・研修仙台センター )
    井藤 佳恵 ( 東京都立松沢病院精神科 )
    正木 治恵 ( 千葉大学大学院看護学研究科 )
1.高齢者を取り巻く倫理と法律
植村和正(愛知淑徳大学健康医療科学部健康栄養学科)
 
 高齢者であるか否かを問わず,医療倫理にはいくつかの原則があるが,高齢者の場合,それら原則からの逸脱や原則間の葛藤がしばしば生じる.このような困難な状況への社会的対応としての法律や制度について,我が国の状況を国外と比較検討した.次に,終末期医療を取り巻くこれまでの判例,特に平成7年の横浜地裁の判決文をもとに,司法が医療に期待する医療倫理のあり方について考察した.いわゆる尊厳死を認める要件からは,1.きわめて限られた状況でしか尊厳死を許容しない点は,日本の伝統的な法律的価値観である生命尊重の思想は引き継がれている.2.自己決定権の尊重と並んで「医師の治療義務の限界」を根拠とする点は,「限界を超えた治療は患者にとって最善の利益ではない」と考える点で,医療倫理の善行原則を特に尊重している.3.すべての医療行為において「治療義務の限界」の判断を医療チームに委ねており,従来の医療慣行の科学的客観性を信頼している,と言える.
 一方で,相次いで生じた医療現場への警察権力の介入(人工呼吸器を取外した医師の逮捕)は,「一旦開始した延命措置の中止は許されない.だからどんな状況でもしない」という医療現場の硬直化を生んでいる.「治療義務の限界」を超えた時点での延命措置の中止が社会的に許容されない(と医療者が信じる)ことは,延命のためだけとなってしまってもその措置の中止ができない理由で,救命の可能性がありながら,治療の「不開始」を選択する医師が増えるという問題を引き起こしうる.回復の可能性がある場合の治療の開始(試行)と,「治療義務の限界」を迎えた時点での適正な手続きに基づいた治療中止を検討すべきと考える.その文脈で,厚生労働省が制定した「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」を紹介する.さらに,超党派の国会議員連名による尊厳死の法制化の動き(「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案(仮称)」)についても私見を述べる.
2.高齢者の権利侵害,その解決に向けて
吉川悠貴(東北福祉大学総合福祉学部社会福祉学科,認知症介護研究・研修仙台センター)
 
 地域で生活する高齢者が,権利侵害の被害に遭うさまざまな場面が課題となっている.特に,虐待や財産上の不当取引などの具体的かつ深刻な被害はしばしば耳目を集めるところであり,対策が急務であることはいうまでもない.しかしそこには課題山積といわざるを得ない状況がある.
 一例として虐待の被害について示せば,例年15,000件以上の養護者による虐待事例が確認され,法に基づく対応実態が調査により把握されている.2017年度にはようやく死亡事例を含む重篤事案の分析も行われた.しかしそれらの結果が法改正や法の運用改善に活かされているか,相当数の潜在事例が存在する可能性に目が向けられているか,養護者支援・家庭支援を考慮した機関・制度横断的あるいは階層的な支援スキームが構築されているか,実務の一翼を担う地域包括支援センターに過重な負担が生じていないか,等々多くの課題が指摘されている.
 一方,「権利擁護」の全体像からすれば,虐待や不当取引被害等への事後対応はいわば「権利侵害とたたかう」「権利救済」のための取り組みであり,それ以前に未然防止を主眼とした取り組みが求められよう.さらに,権利侵害への対策やその未然防止以前に,あるいは未然防止の取り組みと強く関連して,「権利実現」「(『たたかう』に対して)支えるアドボカシー」とも呼ばれる課題がある.最近であれば「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」策定の取り組みのように,自身の力だけでは自己の権利や自由を実現しがたい状態にある人に対して,自己決定やその主張の支援を行っていくような取り組みである.地域包括ケアシステム構築,成年後見制度の利用促進等の取り組み等もこのことに大きく関連しているといえる.しかし,効果や実現性の検証,全体像の整理等には課題があると思われる.
 本シンポジウムでは,これらの課題の構造をなるべく整理し,共有するとともに,今後の展望について検討したい.
3.高齢者の人権と精神科医療
井藤佳恵(東京都立松沢病院精神科)
 
 平成24年に認知症推進5か年計画,平成27年に認知症施策推進総合戦略が策定された.そこには「認知症の人の意思が尊重され,できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現」が基本目標として掲げられている.しかしながら,困難事例と称される人たちについて,「在宅生活は無理だから精神科病院に入院」というケースワークの方針は,行政機関をふくむ地域保健の専門機関の中に今も根強く残る.
 困難事例とは,当事者,家族,支援者,そして彼らを取り巻く社会環境との相互作用によって可変的に顕在化する関係概念であり一義的には定義されない.本発表における困難事例は,地域保健の場における「本人やその家族が困難事象を抱えているが,接近が困難で,支援が困難な事例」を指す.地域における困難事例のケースワークでは,精神科受診歴の有無,それがない場合は今現在,認知症や精神病性疾患が疑われる言動がないかという情報が収集される.精神医療は精神疾患をもつ者のソーシャルワークを含有するものであり,ソーシャルワークの大きな流れのある一時期に,入院が必要なこともあるだろう.しかし困難事例についていえば,多くの場合,精神科への入院は,適切な医療を受ける権利や治療による症状改善の可能性,そういったことの実現によってソーシャルワークの選択肢が拡大する可能性に主眼が置かれるわけではなく,精神科病院への入院そのものが目的とされる. 多くのケースで,入院を依頼する側に,精神疾患をもつ者は,今現在の自傷他害の可能性や精神科治療の必要性とは無関係に精神科入院の適応があるという,意識化されない思考がある.
 さてここで,困難事例と称される人が自らの意思で医療を求めることは期待できないことだろうか.受診困難という課題が本人に医療ニーズが生まれることによって解決できたら,今後の生活についても本人の意向が尊重されることにつながるだろうか.本発表では事例を通じて受診困難事例の医療受診における意思決定の在り方について考察する.
4.高齢者の看護と倫理;「急性期病院において認知症高齢者を擁護する」日本老年看護学会の立場表明2016
正木治恵(千葉大学大学院看護学研究科)
 
 急性期病院において多様な身体疾患を併存する認知症高齢者が増加しているにもかかわらず,認知症のある人のための特別な環境は整えられていない.また,医療従事者に必ずしも認知症ケアの知識や経験が求められているわけではなかった.そのため,認知症のある人への治療遂行やケアには困難が大きく,身体拘束等倫理的な課題にもつながる対応策しか取れない現状があった.このような医療の現状を鑑み,日本老年看護学会は2016年8月に「急性期病院において認知症高齢者を擁護する立場表明2016」を発表した.
 本立場表明において認知症高齢者とは,「認知症の診断の有無によらず,加齢や疾病等によって,日常生活の遂行に何らかの支障をきたすほどの認知機能の低下を示しつつも,潜在する力を有し,主体的に自分の人生を生きようとしている高齢者であり,コミュニケーション障害によりうまく表現できないとしても,自らの意思を有している人」と定義した1).認知症高齢者が病院に入院した際にも,認知症高齢者の尊厳が損なわれることなく円滑に治療を受けることができ,心穏やかに療養生活を送ることができるよう,また家族も,認知症高齢者の最良の理解者として医療者から信頼と配慮を受け,望む範囲でケアに参加することを通して,少しでも重圧から緩和されることを目指している.急性期病院で働く看護師に対して看護の方向性を示すとともに,医療・ケアチームの連携協働を図り,かつ急性期医療を受ける認知症高齢者とその家族の安心と安寧を保証する看護を推進することを目的として,8つの立場を表明した.
 時を同じくして急性期病院における認知症ケア加算が新設された.認知症ケア加算算定病院では認知症ケアの体制整備が進み,その効果も確認できている.
 本セッションが,高齢者の人権とケアの倫理について,学会としての役割を検討していくための一助となれば幸いである.
 
1)「急性期病院において認知症高齢者を擁護する」日本老年看護学会の立場表明2016.http://184.73.219.23/rounenkango/news/news160823.htm
合同シンポジウム8 主導学会:第42回日本基礎老化学会大会
2019年6月6日 14:30~16:00 東北大学百周年記念会館「川内萩ホール,2F」(共通第16会場)
フレイル・サルコペニア・健康寿命
座長: 重本 和宏 ( 東京都健康長寿医療センター研究所老年病態研究チーム )
    渡邊  裕 ( 北海道大学大学院歯学研究院口腔健康科学分野高齢者歯科学教室 )
演者: 荒井 秀典 ( 国立長寿医療研究センター )
    重本 和宏 ( 東京都健康長寿医療センター研究所 )
    渡邊  裕 ( 北海道大学大学院歯学研究院口腔健康科学分野高齢者歯科学教室 )
    河野あゆみ ( 大阪市立大学大学院看護学研究科在宅看護学 )
合同シンポジウム9 主導学会:第61回日本老年社会科学会大会
2019年6月6日 16:00~18:00 東北大学百周年記念会館「川内萩ホール,2F」(共通第16会場)
高齢者支援における多職種連携の意義
座長: 大久保幸積 ( 社会福祉法人幸清会 )
    北川 公子 ( 共立女子大学看護学部 )
演者: 戸原  玄 ( 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科医歯学系専攻老化制御学講座高齢者歯科学分野 )
    原田かおる ( 高槻赤十字病院 )
    北村  立 ( 石川県立高松病院精神科 )
    久松 信夫 ( 桜美林大学健康福祉学群 )
    高砂 裕子 ( 南区医師会居宅介護支援センター )