理事長 村井 俊哉
京都大学大学院医学研究科
脳病態生理学講座(精神医学)
「神経精神医学」へのお誘い
「神経精神医学」って何? 多くの方にとっては、まず、この問いが頭に浮かぶのではないでしょうか。よく似た名称の「精神神経学会」という巨大学会があるため、検索エンジンに神経精神医学と入力するだけでは、「精神神経学会」の情報に完全に埋もれてしまします。当学会について検索されるときは、""で囲って検索してみてください。そうしてみてもなお、正式名称を「神経精神医学」としている大学や病院の部門名がたくさんヒットしてきます。これらの看板を掲げている教室や部門は、実際には普通の精神医学教室や精神科です。ですので、当学会の情報にたどり着くには、"神経精神医学会"と入力してみてください。
では、単なる精神医学の別名ではない「神経精神医学」とはいったい何なのでしょうか? 神経精神医学は、英語ではneuropsychiatryですが、脳の疾患、つまり、脳血管障害、変性疾患(アルツハイマー病など)、外傷性脳損傷、脳炎、などの疾患に伴って生じる精神症状を理解し治療法を考えていく、そのような分野ということになります。扱う疾患が脳疾患・神経疾患なので、「脳神経内科のサブスペシャルティの一つ」ということになりますが、扱う症状が精神症状なので、「精神科のサブスペシャルティの一つ」ということにもなります。つまり、精神科と脳神経内科の境界領域にある分野ということになります。
精神科も脳神経内科もそれぞれ様々なサブスペシャルティがありますが、その中で、神経精神医学という分野の魅力は何なのでしょうか?それは「臨床に非常に近い学問である」というところにあります。年次大会で報告される演題の多くが、一例一例を丁寧に考察していく症例報告になります。若手の医師の皆さんが医局の症例検討会で議論をしてきたような症例を、さらに掘り下げて考えてみたい、エキスパートのコメントを聞いてみたい、と思う時には、うってつけの学会ということになります。
自らの診断や治療の「技」をワンランク高めてみたいと思っている方。日々の臨床実践を単なるルーチンにとどまらせず、そこから脳と心の関係についてもっと深く考えてみたいと思っている方。こうした思いを持たれている医師やメディカルスタッフの方には、是非、一度、このアットホームな学会の年次大会に足を運んでいただけると嬉しいです。
歴史
日本神経精神医学会(The Japanese Neuropsychiatric Association)は、脳・神経疾患における精神症状ないし神経行動障害に関しての研究を推進し、わが国における神経精神医学の発展を図ることを目的として発足した学会です。 初代理事長は京都大学の三好功峰教授で、第1回神経精神医学研究会(1996年)は、横浜市立大の小阪憲司教授を会長として開催されました。その後、年次大会を重ねています。 第5回大会(2000年)は第3回国際神経精神医学会とともに三好功峰教授を会長として、京都国際会館で開催されました。初代三好理事長の後、理事長職は小阪憲司教授、愛媛大学・田邊敬貴教授、神戸大学・前田潔教授、順天堂大学・新井平伊教授、島根大学・堀口淳教授、福島県立医大会津医療センター・川勝忍教授が引き継がれ本学会を発展させてこられました。 2024年、第29回日本神経精神医学会終了後より、第8代理事長を京都大学精神医学講座の村井俊哉が務めさせて頂いております。