→English 最新更新日:2014年1月30日

日本老年社会科学会  Japan Socio-Gerontological Society

最新刊案内:老年社会科学 2014.04 Vol.36-1
論文名 家族介護者ソーシャルサポート尺度の開発
著者名 西村 昌記
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 36(1):3-12,2014
抄録 サポートの内容と提供主体による効果の比較が可能な下位尺度を有する家族介護者向けのソーシャル サポート尺度を開発し,その構成概念妥当性と信頼性の検証を行った.調査は2011 年10 .11 月,神奈 川県伊勢原市の居宅介護支援事業所利用者1,316 人( 要介護1 以上)の家族介護者のうち838 人を対象に, 訪問配布郵送回収法により実施された.調査票の配布には介護支援専門員の協力を得た.有効回収数は 450,有効回収率は53.7%であった.構造方程式モデリングを用いた分析の結果,親族からの情緒的サ ポート,親族からの手段的サポート,非親族からの情緒的サポート,非親族からの手段的サポート,被 介護者からの情緒的サポートを第1 次因子,サポートの提供主体を第2 次因子,ソーシャルサポート全 体を第3 次因子とするモデルの構成概念妥当性が検証された.また,7 つの下位尺度と全体尺度の信頼 性も十分な値が示された.さらに,非親族からの手段的サポートを除く7 つの尺度得点とCES-D 得点 の間に有意な負の相関が認められた.本尺度は,家族介護者のソーシャルサポートを総合的に評価する ために有用である.
キーワード ソーシャルサポート,家族介護者,測定
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論文名 在宅要支援・要介護高齢者に対する運動器機能訓練前の健康スクリーニングの必要性と課題
- デイケアH 利用者の実態報告 -
著者名 菱井修平,久保晃信
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 36(1):13-21,2014
抄録 年々増加する要介護高齢者に対する運動による身体機能の改善が数多く報告されているが,要介 護高齢者に対して安全かつ効果的に運動器機能訓練を実施するためには,対象者の身体状況を理解 しておく必要がある.本調査では,在宅要支援・要介護高齢者136 人を対象として実施した形態, 安静時心電図,血圧脈波,骨密度の測定結果をもとに,機能訓練実施前の健康スクリーニングの必 要性と課題について検討した.測定結果から,各測定項目において全体の異常者の割合は,肥満度 では35.3%,心機能および血管機能において1 つでも異常値を示す者の割合はそれぞれ17.3%と 90.4%であり,骨密度では79.4%であった.  運動に関与する心臓・血管・骨における異常値を示す者の割合が高いことから,要支援・要介護 高齢者に対して,安全かつ効果的に機能訓練を実施するためには,運動負荷の設定には注意が必要 であり,潜在疾患を十分に理解する必要性が再確認された.
キーワード 健康スクリーニング,機能訓練,要介護高齢者,通所リハビリテーション,潜在的疾患
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論文名 調査と調査地域の概要新
著者名 新名正弥, 出雲祐二, 西村昌記, 須田木綿子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 36(1):23-27,2014
抄録 介護保険制度下における都市と地方の高齢者と家族介護者の実態を把握するために2003 年に開始し, 2005 年および2007 年に実施した追跡調査から構成されるパネル調査を実施した.本稿は,その概要と 調査地域である東京都葛飾区および秋田県大館市の介護保険行政についてまとめる.
キーワード パネル調査,都市と地方,自治体,介護保険行政,介護
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論文名 地域在住の要介護高齢者における2年間の日常生活動作の推移
著者名 石崎達郎
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 36(1):28-33,2014
抄録 要介護高齢者を対象とする前向きコホート研究では,入院・入所・死亡の発生リスクが高く,追跡中 に脱落しやすいため,長期間にわたる追跡はむずかしい.本研究は,要介護高齢者の日常生活動作(ADL) 自立度の推移や転帰を2 年間で把握し,要介護高齢者の健康状態の自然史を把握することを目的とする. 本研究のように2 年という比較的短い期間であってもADL を再評価できた要介護高齢者は半数にとど まっていた.ADL が非自立状態にあった者の約4 割が入院・入所または死亡したため,ADL 自立度推 移割合に大きな影響を及ぼした.さまざまな限界はあるが,要介護高齢者の日常生活動作の推移や入院・ 入所,死亡等の自然史を把握することは介護保険サービスの需要を予測するうえで重要である.
キーワード 要介護高齢者,日常生活動作,推移
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論文名 高齢者と家族介護者の精神的健康
著者名 須田木綿子,児玉寛子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 36(1):34-38,2014
抄録  東京都葛飾区および秋田県大館市で,2003 .2008 年に要介護高齢者とその家族介護者から収集した パネルデータをもとに,両者のCES-D 得点の比較と相関関係の検討を行った.併せて事例を参照し, 高齢者と家族介護者の精神的健康を論ずる際の課題として以下を指摘した.まず,高齢者と家族介護者 の精神的健康の関連の検討では,相互の影響の時間差を考慮するとともに,統計調査の対象とはなり得 ない集団を捕捉する工夫が必要だと考えられた.また,介護関係は日本国内で均一ではなく,その多様 性を地域資源とのかかわりで検討することは,未開拓の興味深いテーマであると思われた.最後に,高 齢期の精神的健康をめぐる近年の傾向はsuccessful aging の視点からのアプローチが主流であるが,人 生の終盤における当事者の精神的健康を論ずるには必ずしも的確ではない側面もあり,これに関する今 後の議論の深まりが期待された.
キーワード パネルデータ,高齢者,家族介護者,CES-D,successful aging
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論文名 高齢者の認知機能変化と家族介護者の認識,および相互関係の影響について
著者名 高 橋 龍太郎,平 山  亮
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 36(1):39-42,2014
抄録  高齢者本人の認知機能(MMSE 得点)と家族介護者による16 項目の認知関連症状の有無評価のペア データを用い,両者の経年変化のパターンの違いによって死亡と関連があるかどうか,高齢者との過去 の関係がこれら認知機能関連指標の経年変化に影響するかどうかを調べた.その結果,MMSE の低下 が続いているにもかかわらず家族介護者が認知関連症状を認識していない群において死亡が高頻度にみ られた.一方,「よく話をしたという関係」の介護者はその後の認知機能関連症状の出現をよくとらえ ているようであった.認知機能の低下は生命予後の悪さを示している可能性があるが,相互に良好な関 係が維持されている場合,たとえ認知症が発症しても比較的早期に気づき,介護関係の安定化につなが るかもしれない.
キーワード 認知機能低下,早期死亡,家族関係,早期発見
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論文名 家族介護者のサポート源とその経時的変化
― 家族からの協力と介護保険サービスに焦点を当てて ―
著者名 平山 亮
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 36(1):43-47,2014
抄録  家族介護者にとって主要なインフォーマル・サポートであるほかの家族からの協力と,フォーマル・ サポートに当たる介護保険サービスの関係を検討するため,家族からのサポートの得やすさの経時的変 化に応じて介護者のサービス利用にも変化がみられるか否かを検討した.LTCI 調査の3 回の調査のう ち,少なくとも第1 回に参加している家族介護者のデータ(n = 1,036)に成長混合モデリングを用いて 分析した結果,家族からのサポートの得やすさの経時的変化は3 パターンに分類された.しかし,サー ビスの利用頻度の経時的変化には,それらのパターンに応じた違いはみられなかった.また,時間とと もに家族からのサポートが得にくくなっている介護者に,配偶者介護者がとくに多いという結果を踏ま え,介護保険サービスの利用に関する今後の研究課題を議論した.
キーワード 家族介護者,家族の介護協力,介護保険サービス,成長混合モデリング
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論文名 介護は成就できたのか
著者名 西村 昌記
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 36(1):48-51,2014
抄録  東京都葛飾区および秋田県大館市で調査した3 時点(2003,2005,2007 年)の家族介護者データ(W3 時点で在宅継続254 人,死別146 人)をもとに,「成就モデル」の再検証を行った.「成就モデル」とは, 死別による介護の終了が家族介護者に心身の健康の回復をもたらすだけでなく,介護をまっとうしたと いう何らかの達成感・満足感を得ることを意味している.「抑うつ」を従属変数,時点(W1,W2,W3 の3 水準)と転帰( 死別,在宅継続の2 群)を独立変数とする反復測定分散分析の結果,時点と転帰の有 意な交互作用効果が認められた.すなわち,死別群と在宅継続群では「抑うつ」の変化の仕方が異なる ことが明らかになった.しかしながら,W3 時点の「抑うつ」得点には有意な差は認められなかった. 一方,死別を経た家族介護者に介護体験をふりかえってもらったところ,ほぼ半数に「介護を成し遂げ た自己と被介護者との別れへの〈積極的受容〉」が認められた.「成就モデル」を単なる仮説に終わらせ ないためにも,死別後の家族への配慮を含む家族介護者支援策の充実を図る必要がある.
キーワード 家族介護者,死別後の適応,抑うつ,成就モデル
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論文名 日本の高齢者の健康状態の推移
― 高齢者は健康になっているか ―
著者名 新野 直明
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 36(1):52-54,2014
抄録  わが国の高齢者の健康状態の推移について,死亡率,寿命,有訴者率などの疫学的指標,体力,うつ状 態,生活意識といった複数の指標から検討を加えた.死亡,寿命など生命に関する面,体力面は向上がみ られ,生活意識は20 世紀後半に比べると悪い状態が続くが,ほかの指標には大きな変化が認められない結 果であった.高齢者の健康状態は,悪くなっているとはいえないが,よくなっているとも言い切れない状 況と考えられる.
キーワード 高齢者,健康,推移
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論文名 地域高齢者における性格と健康アウトカムの関連
著者名 岩佐 一
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 36(1):55-59,2014
抄録  近年,「性格5 因子モデル」(「神経症傾向」「外向性」「開放性」「調和性」「誠実性」)と健康の関連に ついてさまざまな検討が行われている.@地域高齢者における性格と健康アウトカムの関連について検討 した研究について概観した.性格と生命予後の関連や,性格と生活機能の関連について前向きコホート研 究により明らかにした知見が蓄積されてきており,性格5 因子モデルのうち誠実性がもっとも健康と関連 することが示されている.A性格と健康の関連の媒介機序について概説した.視床下部―下垂体―副腎皮 質系や交感神経系による「ストレスによる生理学的作用」とBelloc and Breslow の7 つの健康習慣に代表 される「健康習慣・健康行動」の2 つの機序が有力視されており,前者は神経症傾向や外向性と,後者は 誠実性と関連が深いと考えられている.性格検査の短縮版を疫学調査において実施する等の方策により, 日本においてもより多くの知見を蓄積し,性格と健康の関連ならびにその媒介機序について明らかにして いく必要がある.
キーワード 地域高齢者,性格5 因子モデル,健康アウトカム,媒介機序
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論文名 知能のエイジングに関する研究の動向
著者名 西田 裕紀子
雑誌名
巻/号/頁/年
老年社会科学, 36(1):60-69,2014
抄録  本論文は,知能のエイジングに関する心理学的研究における最近の動向を概観することを目的とした. 主な内容は以下のとおりである.@知能の定義に関する議論の変遷をたどり,いまだに統一した知能の定 義は存在しないが,知能の理論的研究は進展していることを示した.A知能の加齢変化に関する代表的な 研究を紹介し,流動性知能と結晶性知能の変化が異なることは明らかであるが,その様相に関しては現在 もいくつかの議論があることを指摘した.B知能の加齢変化に影響を及ぼす要因を検討する際の視点や, 最近の重要な文献に関して展望した.C知能のエイジングが日常生活,健康や生存に影響を及ぼす可能性 について検討した.D「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」のデー タの一部を紹介し,知能のエイジングを検討する重要性を論じた.
キーワード 知能,加齢変化,流動性知能,結晶性知能,認知疫学
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日本老年社会科学会事務センター
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