◆どのような病気か?◆
うつ病は、気分が沈み、気力・意欲がなくなり、劣等感や罪責感をもち,生きていても仕方がない、死んだほうがましだと考え、時には自殺をはかる−−このようなうつ状態が主症状の原因不明の精神病です。老年期には、うつ病のほかにもしばしばうつ状態がみられますが、これには脳血管障害のような脳自体に何らかの病変が生じる脳器質性疾患の症状の1つとしてうつ状態を示すもの、身体疾患に伴ってうつ状態を示すものなどがあります。
うつ病は、30歳前後や50歳前後の初老期に多く発病することが知られています。初老期に発病するうつ病を退行期うつ病とか初老期うつ病とよぶこともあります。肺炎などの感染症、手術、外傷、視力や聴力の障害などの身体的要因と身内、同年代の友人の死、退職、子どもの結婚などの精神的そして環境的要因などを誘因として発病することがあります。
老人のうつ病では、不眠、頭痛、倦怠感などの身体的不定愁訴が多く、この身体的不定愁訴が前面にでて抑うつ気分が隠されていることがあり、本来はうつ病なのに、身体症状の仮面をかぶっているという意味から、これを「仮面うつ病」とよんでいます。
また一方、老人では、うつ病により痴呆様(ぼけのような症状が現れる)にみえることがあり、これを「仮性痴呆」とよんでいます。うつ病に伴う思考障害で、もの忘れ、集中力・行動力低下がみられ、時に幻覚、妄想なども現れ、老人の場合「ぼけ」と勘違いされることがあります。
◆症状と特徴◆
抑うつ気分や不安などのうつ病の症状が周期的に現れ、うつ病期でないときは正常であるのが特徴の1つです。そして症状の日内変動がみられ、抑うつ気分は朝に強く、夕方にはやや軽快するのが普通です。
身体症状としては、不眠、食欲不振、性欲減退、体重減少、関節痛、頭痛、倦怠感、めまい、四肢の冷感、そして肩こりなどがあります。
しかし、主症状は抑うつ気分で、物事をつまらなく感じたり、暗く沈んだ表情や態度がみられます。行動もおさえられて不活発となり、外出をしなくなったり、一人で部屋にこもったり、仕事を休んだりすることもあります。思考も抑制され、考えられなくなったとか、字を見ても頭にはいらないなどと訴えたりします。思考内容も悲観的、劣等的、自責的になります。不安感もあり、ささいなことを心配して苦悶を著しく呈することもあります。老人では、とくにこの不安苦悶を著しく示すことがあります。そして、自殺を考え、実行することもあります。
緊急時の応急処置
問題になるのは、自殺企図です。監視を怠らないようにして、専門医の診察を受ける必要があります。 |
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