−皮膚系−
その他の病気



皮膚系
湿   疹

 

◆どのような病気か?◆
 皮膚の病気のなかで最もよくみられる疾患です。
 衣類や寝具などのさまざまな皮膚に対する刺激により、また誘因・原因となる物質やその他の因子により引き起こされ、現れる皮膚の炎症です。
 湿疹の特徴は、小水疱(水ぶくれ)、小丘疹(皮膚面の隆起・もり上がり)、小膿疱(水疱の内容が膿性、うみであるもの)、痂皮(かさぶた)などのいろいろな発疹が同じ場所に混ざって現れることでかゆみを伴います。そして、いわゆる湿疹のなかには、アトピー性皮膚炎・接触性皮膚炎・主婦湿疹・乾燥性湿疹・乾皮症・貨幣状湿疹・自己感作性皮膚炎・脂漏性皮膚炎・ビダール苔癬、などとよばれる疾患があります。

◆症状と特徴◆
 湿疹とよばれるもののうち日常よくみられる代表的なものとして、接触性皮膚炎と主婦湿疹について、その症状と特徴を説明します。
(1)接触性皮膚炎
 外部から物質が皮膚に直接触れたために、炎症を引き起こすもので、俗にかぶれといわれるものです。原因には、その物の物理的化学的性質や接触の頻度また個人の素因が関係します。
 接触性皮膚炎には、ある物質の刺激が強く1回の接触で引き起こされる炎症と、弱い刺激が繰り返されるために起こる皮膚炎の2種類があります。またある物質に感作され、すなわちいいかえれば、ある物質で皮膚に発疹を生じやすい状態になってしまった場合、次の機会に同一の、あるいは類似の物質に触れたため発症することもあります。また、感作された物質を皮膚以外の部位から取り込んだために、たとえば食べたり飲んだりしたために全身に皮膚炎を発症するようなこともあります。
 接触性皮膚炎には、ある特定の物質により、ほかの人では起こらないのにその人に限って起こるアレルギー性のものと、強い刺激のある物質たとえば強いアルカリや酸、ハチなどの昆虫類の毒性物質などにより引き起こされる一次刺激性の皮膚炎があります。
 症状としては、原因と思われる物質が皮膚に触れた場所に、発赤、腫脹(はれ)が著明で丘疹、小水疱、びらん、ただれ、結痂(かさぶた)などがみられ、かゆみや灼熱感を伴うこともあり、また浮腫、すなわちむくみがひどいこともあります。
(2)主婦湿疹・手湿疹
 症状は、手荒れ、乾燥、亀裂、指紋の消失、さらには紅斑(充血による紅潮、赤み)や小さい水疱、びらん、痂皮(かさぶた)などの変化を生じ、また強いかゆみを伴うこともあります。これらは、洗剤・石鹸や掃除・調理など家事一般、水仕事にかかわる刺激により現れます。湿疹には、かゆみを伴うアレルギー性のものと、皮膚が乾燥し、亀裂すなわちひびわれにより痛みを伴う非アレルギー性タイプのものとがありますが、実際には両者の混合したかたちが多くみられます。
 手は、外部からのいろいろな刺激に触れる機会が多いわけですが、それらの外的刺激に対し、ある程度の防御能力、バリヤー機能をもっています。健康な皮膚は、皮脂膜や角層がその役割を担っているわけですが、洗剤・石鹸・シャンプーなどの使用により、その皮脂膜を洗い流してしまうことになります。とくに手のひらには皮脂腺がなく、角化細胞のつくる皮脂だけなので、皮脂膜の破壊は角層の障害になり、水分を奪われカサカサになるのです。そしてさらに進むと、亀裂を生じることになります。
 炊事、洗濯などの際に使われる洗剤類の脱脂作用のため角層が傷害損傷され、角層のバリヤー機能が失われるために外からの刺激を直接受けやすくなり、弱い外的な刺激に対しても症状が悪化するため、きわめて治りにくいものです。

◆どこを注意すればよいか◆
 接触性皮膚炎では、第一に原因となる物質を避ける、また再び接触しないように注意することです。
 原因と考えられるものには、石鹸・シャンプー・リンス・洗剤・漂白剤・光や太陽のエネルギー・食品・果物・スパイス・植物(漆・松・ぎんなん・よもぎなど)・動物(犬・猫・小鳥などのペット、それらの毛・皮)・金属・農薬・繊維・ゴム・化粧品(アイシャドー・乳液・化粧水・ファンデーション・口紅・香水・マニキュア・ペディキュア・毛染剤・養毛剤・整髪料・ヘアスプレー・脱毛剤)・装身具(手袋・ピアス・イヤリング・ネックレス・指輪・時計バンド・ブレスレット)・外用剤・染料・防腐剤・化学薬品(オイル・アルコール・ホルマリン・キシレン)・その他避妊具・サンダル(鼻緒)・カーテン・じゅうたんなど、さまざまであり、また人それぞれです。
 物質が皮膚に付着したところに光が作用して皮膚炎を生じるものもあります。そうした原因物質としては、殺菌防腐剤・香料・紫外線吸収剤・非ステロイド系消炎鎮痛剤などがあります。原因となった物質が含まれていれば、最初のものと違ったものでも皮膚炎を引き起こすこともあり、注意が必要です。たとえば、外用剤に含まれていた物質が石鹸や化粧品などに入っていても皮膚炎を引き起こすことがあり、どんなもので皮膚炎を起こしたことがあるかを記憶しておかなければなりません。
 かゆみがあってもむやみにかいてはいけません。かいた傷口から菌が侵入し化膿する原因にもなります。入浴は体を清潔にするためにも欠かせませんが、石鹸でゴシゴシこすったりするのはあまりよくありませんし、また刺激の強いシャンプーなども使わないようにしたほうがよいでしょう。そしてやさしく洗うよう心がけることです。
 規則正しい生活をし、バランスのよい食生活を送らなければなりません。食べてはいけない食物は避けて、それ以外の食物でバランスのとれた食事をするよう努力することが大切です。
 主婦湿疹では、基本的には、洗剤類の接触を避けることが大切で、その他の手指への刺激を避けることが重要です。すなわち日常生活での注意が第一となります。
 失われたバリヤー機能が回復するのには、1〜2か月が必要です。この間、炊事・洗濯・入浴・洗髪をはじめ、職業や趣味などで手指にかかる外的な刺激を極力避けることが大事です。家事労働という生活環境をかえるということはかなり困難なことですし、患者の素因も関与するためなかなか治りにくいものです。
 水仕事の際、うすい木綿の手袋をした上にビニールの手袋をするという二重着用を試みるのも1つの方法です。ビニール手袋をじかにすると、その刺激でかえって湿疹が悪化することが多いので注意しましょう。
 水仕事のあとや入浴の際は、水気を十分よく拭き取って、ハンドクリームなどを塗っておくようにするのがよいでしょう。市販薬で、手の皮膚保護薬なども出されていますのでそうしたクリームの使用もよいでしょう。

 

 

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