高齢者診療に必要な諸検査

前田 潔(神戸学院大学総合リハビリテーション学部)


 高齢者の診療をする際に必要な検査について説明をする.対象が高齢者ということで注意する必要のある点がいくつかある.まず加齢が検査結果に影響することがあるということである.基準値,正常値が若年者と異なってくることがある.つぎに高齢者は精神疾患,認知症などのほかに,ときには複数の身体疾患を合併していることが多いため,異常値を呈することが多く,解釈が難しいことも多い.また高齢者には侵襲性の高い検査は行いにくいという点もある.病歴聴取,身体診察を綿密に行うことで必要性の少ない検査を省き,診断に必要な最小限の検査を行うよう考えるべきである.特に検査の侵襲性を常に考慮する必要がある. ここでは病歴を聞き,身体診察が終了し,その後に行われる検査について話をすることとする.高齢者の精神疾患・認知症を診断するうえで必要な検査は,血液・尿検査,ECG,身体各部位のX線検査,脳脊髄液検査,脳波検査,認知機能その他の心理検査,脳画像検査などがあるが,心理検査については他に譲ることとする.また高齢者の精神疾患・認知症に特異的な検査に限って話をすることとする.

  血液検査に関しては通常の血液学的検査,血液生化学検査,内分泌検査,ビタミン濃度,血液ガス検査,梅毒やAIDSなど感染症に関する検査などがある.また血液から検査するものとして遺伝子検査がある.脳脊髄液検査では通常の細胞数,蛋白,糖などのほかに感染症に関する検査,Aβ蛋白,タウ蛋白など特殊な物質の測定などがある.

  脳の画像検査は進歩の早い領域であり,診断に重要な意味を持つことも多い.CT,MRIの形態画像でも海馬の萎縮を数値化し,健常者と比較してZscoreを算出したりすることもルチーンで行われている.形態画像のほかにSPECT,PETの機能画像,またそれらの統計画像の利用,PETにおけるさまざまなトレーサーの開発などが行われている.

  当日はこれらの検査を実際の症例を提示して話をしたいと考えている.